東方高次元   作:セロリ

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20話 やっぱりばれてました……

嘘は良くないよね嘘は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

期限の半年が来た。俺に対しての依頼は幽香の討伐。そしてその証明として本人と断定できるものを持ってくる事である。

 

元々結婚する目的ではないので、討伐はしていない。証の物は持ってきているが。

 

さて、では行きますか。

 

そうして俺は意気揚々と輝夜の屋敷へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜の屋敷に着いたのだが、人がいない。普段なら大勢の人で溢れ返っているというのに。

 

一目見ようとする者。本気で求婚する者。冷やかしで来る者。さまざまだ。

 

しかしいない。なぜだろう? しかも大貴族の求婚となれば大勢の人間が来てもおかしくは無いはず。俺は庶民なんだけどね。

 

おまけに本命の皆さまはまだ来ていないようだ。どうしたものか、……少しウロチョロしていようかな。

 

そう思いながら屋敷の外周を歩く。

 

あらためて見ると決して大きいとは言えないが、重厚な創りになっている。まあ月人から金貰ってたらしいし、竹の柵があるのもうなずける。

 

普通の家の外見はもっとみすぼらしいからな。でもお爺さんたちは、輝夜の事を大事に思っているからこそなのだろう。良からぬ事を考えて侵入しようとする輩もいるだろうし。

 

そして今も怪しい奴を発見。こいつどこかで見た事が……ああ、妹紅じゃないか。髪の毛の色がまだ黒いから分からんかった。

 

今は着物姿ではないが、貴族の中では幾分か薄着で動きやすそうな服装だ。浴衣っぽいような服と言えば分かるだろうか。そんな感じの服を着ている。

 

しっかし負のオーラがモワ~っと広がっている気がするのはなぜだろう。屋敷の中を凝視しながら目を爛々と輝かせながらブツブツと何かをつぶやいている。

 

このままだと危ないので声を掛けてみようか。

 

「もしもし、そこのお方。何をしているのですか?」

 

そう俺が声を掛けると一瞬固まり、俺の方を見て、そして急いで前方へと走り樹の影へと隠れた。

 

あの、バレバレなんですけど……あれで隠れているつもりなのだろうか?

 

何て反応したらいいのか分からない。

 

普通に反応してみるか。

 

「あの、思いっきり分かるんですけど。」

 

すると木の影から妹紅が

 

「だ、誰! まさか輝夜の回し者!? 私を誰だと思ってるの!? この無礼者!」

 

あの~、姿見えないと誰だか普通は分からないんじゃない? 幸いにも俺には分かるんだけどさ。

 

「もちろん存じております。貴方様は藤原妹紅様でいらっしゃいますね? 私は怪しいものではございません。どうか姿をお見せになってください。」

 

そう言うと妹紅はしばらくの間黙っていたが、やがて観念したのか姿を現した。そして視界に俺をおさめた瞬間に「あっ!」と驚きの声を上げながら指を指して言う。

 

「貴方お父様と一緒にいた陰陽師じゃない!どうしてこんなところに!」

 

むしろこっちが聞きたいです。

 

と、心の中で突っ込みを入れながら、理由を話す。

 

「いえ、予定よりも早く来過ぎたようでして。暇なのでぶらぶらと散歩をしていたのですよ妹紅様。では逆にお聞きしますが、妹紅様はなぜこのような所に?」

 

そう俺が聞き返すと、妹紅は何かを思いついたような顔をして、俺に駆け寄ってくる。

 

「貴方からお父様に言ってあげて! 輝夜は諦めろって。 お父様ったらあんな女に首ったけで、私に最近構ってくれなくなっちゃったのよ。」

 

妹紅様。何歳ですか? 見た目17か18ぐらいなんですけど……親離れは少しした方がいいぞ?

 

それに俺が言ったところで聞く耳を持ってやしないだろう。おまけに失礼すぎる。この世界での階級の差は絶対的だし、何より庶民と大貴族って天と地の差だし。

 

「いや~妹紅様。ちょっとそれは厳しいです。陰陽師といっても俺は例外で庶民同然ですから。」

 

この言葉を聞いた妹紅は明らかに落胆したような表情を見せ、言った。

 

「そうよね。……ごめんなさい。変な事を言ったりして。」

 

「いえ。お気になさらず。そして申し訳ありません。お役に立てずに。」

 

「いいわ、気にしないで。それと、貴方はなんで輝夜に求婚したの?」

 

妹紅はそれが不思議でならなかったようだ。

 

いや、俺も巻き込まれただけなんだけどね。顔見に来ただけだったしなぁ。

 

まあ、これくらいなら話しても問題ないだろう。

 

「いや~。実は言うと自分も求婚する気なんて無かったんですよ。ただ、あの現場にいただけで、巻き込まれてしまいまして。」

 

その言葉に妹紅は驚いたようで

 

「へえ~、輝夜に靡かない男もいるのねぇ。もしかして男色?」

 

「ちがう!」

 

脊髄反射で答えてしまったが、何て事を言うんだこのマセガキ。

 

「あらあら、随分失礼な言い方ね。親の顔が見てみたいわ。」

 

それはこちらのセリフです妹紅様。

 

口に出してしまいたかったが、我慢して心の中でつっこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなことをやりとりしている間に、他の牛車が来ている事に俺は気づいた。

 

「妹紅様。私はこれで。そろそろ時間のようですので。」

 

すると妹紅は納得して頷き、笑顔で

 

「分かったわ。また会ったら話しましょう? 陰陽師さん。」

 

「大正耕也です。」

 

「なら…またね、耕也。」

 

「ええ、ではまた。」

 

そうして俺は玄関前まで行き、屋敷の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中へと入った俺は、前と同じ所へと案内された。

 

皆は様々な表情をしている。妙に自信のある顔、心配そうな顔、緊張している顔などである。ちなみに俺は、だらけている表情。

 

しばらく俺たちはその場で待っていると、ついに輝夜が姿を現した。

 

やばいな。幽香とかもメチャクチャ美人だが、輝夜は一線を画している。神奈子や幽香とかは妖艶という部類なのだろう。

 

しかし輝夜は妖艶というのではなく、純粋に美しいのだ。世の男が惚れてしまうのも分かる。

 

そんな感想を考えていると、石作皇子が輝夜に鉢を差し出した。

 

「輝夜様。これが御所望なされた、鉢にございます。」

 

すると俺を除く全員が宝を差し出した。

 

そして俺も上着を差し出す。

 

宝を差し出された輝夜は鑑定をすると言って、宝をもって奥に引っ込んでしまった。

 

さてさて、どうなる事やら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると輝夜が再び宝を持ってきた。

 

そして俺たちの目の前に座るなりこう言った。

 

「では石作皇子殿から。貴方様の鉢はただの鉢です。違いますか?」

 

そう言われた石作皇子は偽物だとバレた瞬間に肩を落とし、そのまま黙りこくってしまった。

 

次に藤原不比等の宝を持ち、こう言った。

 

「先ほど、貴方様の雇った職人が来てお爺様に、藤原不比等殿からの支払いがまだだと伝えてくれと言ったそうです。ふふ、詰めが甘かったですわね。」

 

その言葉を聞いた瞬間に顔を赤くして、口を開いて何かを言おうとしたのだがそのまま俯いてしまった。

 

そして順々に嘘を見破られていき、ついに俺の番になった。

 

輝夜が俺の持ってきた幽香の上着を持ちこう言った。

 

「貴方様の持ってきた服は確かに本物です。しかし討伐をしたはずにもかかわらず、風見幽香の姿が確認されています。これはなぜですか?」

 

これははっきり言うべきだろうか? 実は元々求婚するつもりはありませんでした。と。

 

でもまあ、当たり障りのない回答をすべきだよな。

 

「実を言いますと、戦闘にはなったのです。しかし、その後停戦となり話し合ってみたところ、彼女は自分の花畑を荒らされない限り手出しはしないとの事です。ですからこれ以上の争いは不要と判断し、上着だけを持ち帰りました。」

 

俺が訳を言うとしばらく輝夜は思考の海に潜る。

 

しばしの後、答えが出たらしく切り出す。

 

「確かに貴方の考えはあっています。褒められる部分もあるでしょう。しかし私は討伐を依頼したのです。話し合いではありません。また、貴方は平気かもしれませんが、現に民衆は恐怖を抱いています。それを解決できなかった。よって貴方も依頼達成にはなりません。」

 

分かり切っていた事なんだけどね。もし俺が火鼠の裘だったら余裕だったんだけどね。シリカ製の布なら1100℃まで耐えられる。焚火の温度は800~900℃程度だしね。

 

でも例えそれが依頼だったとしてもさっさと硝化綿を持って行って失格にしてもらうのだけれど。

 

そんな事を考えながら、俺は輝夜に言葉を返す。

 

「分かりました。では私はこれで。」

 

そう言って俺は立ち上がり部屋を出る。そして部屋を出た瞬間に見てはいけないものを見てしまった気がする。

 

妹紅が遠くから輝夜を睨みつけていたのだ。おそらく原作のとおりに恨んでいるのだろう。これは下手に介入しない方がよさそうだな。

 

そう思い、俺は屋敷を後にして幽香の所へ遊びに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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