東方高次元   作:セロリ

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40話 体力は貴重なんだ……

もう泣きそうだよこんちくしょう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~っと、俺が美味そうに見えるとは一体……?」

 

才鬼の突然の言葉にちょっと動揺している自分がいる。これも彼女の戦法の一つなのだろうか?

 

確かに人間と妖怪という存在は食う食われ、退治する退治されるという関係なのだから、この言葉を人間に言う事で恐怖感を与えて戦意喪失を誘うという事に関して言えば効果的でもある。

 

まあ、大妖怪とかの強き者たちは人間に興味が無いという一部例外もあるが。

 

その事を踏まえてニンマリと笑う彼女の口から覗く歯を見てみる。

 

サメのように尖っているという訳ではないが、かといって草食動物や人間みたいにつぶれた歯を持っているわけではない。

 

何と言うか、中間的な歯である。だがその中でも、犬歯に関して言えば凄まじい尖り方をしており他の歯よりも若干長い。

 

噛まれたくないという気持ちになるのは必然というべき結果であった。

 

しばらく歯について観察したりしていると、才鬼が俺の質問に答える。

 

「いや、そのまんまの意味だよ。お前の部下は条件でもう食えないが、それでもその二人と比べると桁違いに美味そうに見えるんだよ。不思議なことだよね~」

 

何が不思議というかそんな事を考える材料が俺の中には無い。人間を食うことなんてしたこともないし、したくもない。

 

だが、自分の身体の一体何が不思議なのかを聞きたいという好奇心が頭の中を埋め尽くし、自然と口から声が出てしまった。

 

「不思議といいますと?」

 

その言葉に待ってましたと言わんばかりに才鬼は喋り始める。

 

「そう、その不思議さはね、女よりも子供よりも美味そうだってことなのさ! 実際子供は食った事は無いんだけど……。まあとにかく、なんで君は女より美味そうなんだい? 普通は女の方が絶対美味そうに見えるというのに」

 

そんなもん知るか。俺に聞いて答えが出るわけがないでしょうに。

 

聞いておいてなんだが、この質問の回答内容に呆れてしまう。普通は被捕食者にこんなことを聞くわけが無いのだが。

 

だが、このやりとりをしていて少々思い出した事があった。

 

かなり昔。そう、俺が文と初めて会ったときにもこんなやりとりがあったのである。

 

確かあの時は看守だったはず。あんまりにも不快だったものだから話題をそらすために鯨の大和煮を出したのが懐かしい。そしてこの状況におけるやりとりはあの時とほとんど同じだ。だとすると、やはり俺はどんな妖怪にも美味く見えてしまうのだろうか?

 

もしかしたら幽香や藍も……。いや、彼女たちはそんな素振りは見せなかったし何より彼女たちは人間の肉に興味は無いはずだ。だから大丈夫。

 

しかし、文は俺を食う事に対して執着していたから…………もういいや。

 

自分が文に食われる様をふと想像してしまった為に気分がさらに滅入ってくる。

 

そんな事を考えながら目の前の不思議そうな顔をしている才鬼に答えを返す。

 

「そんなこと知るわけがないじゃないですか。…それより、いつまでこんな無駄話を続けているんですか?」

 

そう言うと、才鬼はハッとした表情になり、そしてすぐに笑いながら頭を掻くしぐさをしながら下をペロリと出す。

 

「ゴメンゴメン。早く始めないとね。外野もうるさいし」

 

物騒な事を言わなければ純粋にかわいいだけなのに。なんか色々と残念だ。

 

そんな事を考えていると、結界の中から勇儀が大声を出す。

 

「さっさとしな! 後がつかえてるんだから。…さっさと始めないのなら私が合図を出す。いいね?」

 

これに関しては俺は文句もないので素直に頷く。

 

そして才鬼も納得したのか、同じく頷き返す

 

勇儀は俺たちの反応に満足したのか結界の中から出てきて片手を上げる。

 

「では両者向かい合って。…始めっ!!」

 

その言葉と共に才鬼は大声を張り上げる。

 

「火を操りし鬼、麗蒼 才鬼! いざ尋常に、勝負!」

 

そして俺はというと、何と声を掛ければいいのか全く分からず、とりあえず適当に。

 

「陰陽師、大正耕也! 参る!」

 

これしか思いつかなかった。

 

だが、まあこれくらいの言葉で良いのだろう。彼女たちは自分の存在を相手に知らしめるための掛け声なのだろうから。

 

俺にとっては掛け声があろうとなかろうとどっちでもいいのだから。その場のノリというやつですな。

 

そして才鬼が自身の身体から大量の妖力を噴出させながら俺に話しかける。

 

「さあ、お前も陰陽師なら霊力を出して私を威圧してみたらどうだい!?」

 

だがしかし、そんな事を言われても困る。俺に霊力とか妖力とかそんなみょうちきりんな力は持ち合わせていない。

 

俺も他人のことは言えないが…。

 

しかし俺は彼女の答えに応ずる事ができない。…どうしたものか。とりあえず何かしらの応答を示さなければならないので、霊力がこれっぽっちも無い事を伝える。

 

「いや、あの……才鬼さん。……非常に申し上げにくい事なのですが、実を言うと俺は陰陽師でも霊力はこれっぽっちもないのですけど……」

 

その瞬間時間が止まったかのようにその場が、応援席が静まり返る。そして何よりあれほど放出されていた妖力を収め、口を呆けたように開けている才鬼の姿があった。

 

そして、すぐに口を元に戻して話しかけてくる。

 

「……もう一回言ってくれない? ……霊力が無いだって? 陰陽師なのに?」

 

と、才鬼はすごく不思議そうな顔で尋ねてくる。まるで今の言葉が聞き間違いか、又は幻聴だったかのような

 

この静まり返った会場で言うのは少々恥ずかしいのだが、仕方がなしに言う。

 

「え~っと、……はい、俺には霊力という物がこれっぽっちもないのですが……」

 

すると、また口をぽか~んと開けてしまう才鬼。

 

あ~これはマズイかもしれない。

 

そんな事を考えながら応援席側の部下達を見やる。

 

案の定あちらも口をあんぐりと開けて固まっている。驚きのあまり声も出ないらしい。そりゃそうだ。上司が自分よりも霊力が無いだなんて普通は考えられない。

 

そしてどれほどの時間がたったのか把握できないが、非常に長くとも短くとも感じるような間の後、才鬼と応援席が爆笑の渦に巻き込まれた。

 

仕方が無いじゃないか。霊力無いんだからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁ~~っはっはっはっはっはっはっはっ! ひぃ~~っ! 駄目だ、お腹痛い。……ぷはっ、くぅ~~~ふっふっふっふっ。萃香、これは期待外れどころかとんだゴミが来ちまったようだねえ~~~っ!」

 

そう言うと、萃香は腹を抱えながら私に答える。

 

「……ふっ……ふふっ…………。こ、こいつはひどいねえ~。酷過ぎるねぇ。……なあ、あんたたちもそう思うだろう?」

 

萃香はそう言うと、耕也の部下たちの方を見やる。

 

彼らにとってもこれは予想外の事であったようで、放心状態となっており、失望感が滲み出ている。

 

だが、腕利きの陰陽師を寄越せといったのにも関わらず、こんな食わせ者を寄越すとは、本当にゴミなのはあの実朝なのかもしれないねぇ。

 

これは少々幕府の奴らにお灸を据えねばならないなぁ。はは、鬼を騙したことを後悔してもらおう。

 

そう思いながら再び耕也達の戦いを見る。おそらくすぐにでも才鬼が耕也を八つ裂きにして水元等に代わってしまうだろう。

 

ただ、萃香の言っていた事が少々気にはなっていたが、この状況を鑑みるに大した事のない小物だという事に違いない。

 

なにせ、古今東西霊力の無い陰陽師なんて聞いたことが無い。最強という噂もただのでっち上げだったという事だろう。

 

そう考えると、耕也は相当な嘘つきだという事が予想できる。一体どれだけの嘘と、金をつぎ込んで今の地位にいるのだろうか?

 

先ほどは有名とのあまりの落差に笑いしか出てこなかったが、よくよく考えるとふつふつと怒りが湧いてくるのが分かる。

 

本当にここまでの屑がいるとは。

 

自分の考えに何ら疑問を持つこともないまま耕也に対しての怒りを私は募らせていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、私のその考えは脆くも崩れ去った。突如繰り広げられた目の前の光景によって。

 

そう、今まで長い人生の中でとびっきりの驚愕だろう。

 

これは私ではなく、萃香も栄香様ですらも腰を抜かすほどの光景だっただろう。

 

なにせ、あの才鬼の保有する火を操る程度の能力が、まるで児戯に等しい扱いを受けているというだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとしきり才鬼は俺の事を笑った後、それまでの表情とは一変して冷たい眼で俺を見る。

 

おそらく霊力のない俺に対して興味を無くしたのだろう。もうお前には用は無いという言葉を今にも言いそうだ。

 

そして俺の予想通りの言葉を才鬼は言う。

 

「はぁ……。もういいや、死んじゃっておくれよ。怪炎――」

 

彼女が言葉を呟くと、面倒くさそうに指先から俺の身長を超す巨大な火球を放ってくる。

 

それはいとも簡単に俺を捉え、瞬時に膨大な熱を放ちながら爆発する。

 

普通の陰陽師ならばこれで骨も残らず蒸発だっただろう。そう、普通の陰陽師ならば。

 

しばらくの間、俺を焼きつくそうと必死になっていた爆炎は、やがて力尽き空中に霧散していく。

 

ご苦労なこった。

 

そんな感想を持ちながら炎を放った彼女を見てみる。

 

俺が生きている事にどうも疑問を持ったようで、しきりに俺の顔と炎を放った自分の手を交互に見ている。

 

そして少々戸惑いながらも再び俺に対して指を向け、炎を飛ばしてくる。

 

「鬼炎!」

 

その言葉と共に放たれた炎はさらに大きく、再び俺を包み込む。が、結局俺には届かずその場で霧散していく。

 

俺は、自分の攻撃が効かない事で慌てている才鬼に対して一言言う。

 

「えっと……才鬼さん?」

 

すると、才鬼は腕をブンブン振りながら地団太を踏む。

 

そしてウンウン唸った後、俺に指を指して怒鳴る。

 

「な、なんで私の攻撃が効かないんだっ!? なんで、どうして!」

 

そんなの答えられるわけないんでしょうに。どこの馬鹿が自分の力を晒すというのだろうか?

 

でもまあ、誰だって最初は驚くわな。自分の持っている自慢の能力が効かないとなると。

 

「いや、何ででしょうね?」

 

と、適当に答えておく。

 

実際の所、彼女に体力を費やすべきではないのだ。なるべく。

 

俺が才鬼を倒した後には萃香と勇儀が待ち構えている。確かに彼女の妖力は凄まじい。

 

だが、先ほどの萃香と勇儀と対峙した時に感じた妖力は才鬼を遥かに上回るものだった。

 

おそらくここで体力を消耗してしまうと、後々の戦いでかなりのハンデを強いられることになるだろう。

 

唯でさえ体力の消耗が大きいジャンプを多用すると……考えたくない。

 

「ああ、もういいっ! 直にぶっ潰してやるっ!」

 

後の戦いに関して考えていると、才鬼は自分を馬鹿にされたと思って怒ったのか、もう能力が効かないと悟ったのか、とんでもない速度で走ってきて接近戦を挑んでくる。

 

「せいやっさ、ほいっ!」

 

妙な声と共に振り上げた拳を俺に振り下ろす。

 

「あっぶな!」

 

俺は反射的に上空へジャンプして退避。やっちまったと思いながら才鬼の方を見る。

 

するととんでもない光景が目に飛び込んでくる。

 

「クレーターができてるじゃねえか……。」

 

規模としては小さいものの、確実にクレーターができていた。

 

あんなもん食らったら俺はともかく部下達はペシャンコだぞ…。

 

だが俺に呆気にとられている暇は無い。

 

すかさず直径5mの鉄球を創造し、300km/hで発射する。

 

才鬼はまだ拳を振り下ろした状態で静止しており、地面からくる反作用に痺れているかのようにも見える。

 

これが直撃したら鬼といえど唯では済まないだろう。

 

そんな事を思って当たる事を願っていたのだが、そうは問屋がおろさず。

 

一瞬にして才鬼はこちらを振り向き、地面から拳を引き抜いて迫りくる金属球に振りぬく。

 

「うおりゃあっ!」

 

短い金属の重低音が鳴り響く。

 

その音が鳴ると同時に鉄球が少したわみ、次には本来の役目を果たさずに俺に対して牙をむく。おまけに放った速度よりも若干大きく。

 

「おいおいおいおい!! そりゃ反則だろっ!」

 

そう叫んで鉄球を消す。

 

(この化け物め……。野球じゃねえんだぞ……)

 

内心呟きながら、今度は無誘導爆弾Mk82を1発創造し、高速で叩きこむ。

 

単に相手を殺すつもりはないので直撃はさせない。20m程離れた所へと落下させる。

 

落下後、爆弾は素直に起爆。周囲に爆炎と衝撃波を振りまき、才鬼に牙をむく。

 

才鬼は次の攻撃までの時間差があまり無く、爆弾から離れる事ができなかったために、咄嗟に顔を腕で庇う。

 

だが衝撃波には勝てず、木の葉のように吹き飛ばされ地面を転がる。

 

「この、化け物め!」

 

そう言って立ち上がり、よろめきながら咄嗟に顔をカバーしたであろう擦り傷だらけの腕を下ろす。

 

才鬼はそのまま闘志をさらに燃やしながら空中にいる俺に向かって飛んでくる。

 

「随分と痛い事をしてくれるじゃないか!? ええ!?」

 

そう言って俺に再び高速で拳を繰り出す。

 

当然その拳は俺が避けることすら叶わずに顎に当たる。拳の軌道からしてアッパーなのだろう。

 

誰しもが想像するのが、俺の顔が吹き飛び、血の花を空中に咲かせる事だ。

 

鬼の力で殴られれば、人間は耐えることすら叶わない。

 

だが短く重く、潰れ、へし折れる音が空中に木霊する。

 

「な…………」

 

そう呟いたのは才鬼。そして俺も同時に殴られた方向を見やる。

 

そこには握った拳の第二中手が親指を除いて圧し折れ、無残な姿となっていた。

 

「へ? ……え?…………あぐっ!」

 

才鬼は痛みのあまり顔をしかめる。そして痛みが大きすぎたのか耐えきれなくなり

 

「うあああああああああ!」

 

悲鳴を上げる。

 

才鬼は悲鳴を上げながら今度は回し蹴りを放つ。

 

「あああっ!」

 

だが、それすらも領域に阻まれ足の骨が折れる音がする。

 

「ぐがぁっ!」

 

そして短く悲鳴を上げてそのまま片足を垂らし、拳を無事な手でおさえながら俺から高速で離れていく。

 

だが、彼女は戦意を喪失したという訳ではなく、先ほどよりも戦意を高揚させ目をさらに血走らせる。

 

「うっく……! この……!」

 

そう言って才鬼は無事な片手を上げて再び炎を作りだす。

 

だが、今まで俺に放ってきた炎とは大きく違い、禍々しく、そして直径30mはあろうかという巨大な紫色をしたものであった。

 

それを空中に浮かべ痛みからくるであろう必死の形相をしながら俺に話しかける。

 

「大正耕也っ! 確かにお前は強い。霊力が無いからといって侮っていたよ。そしてこれから放つ私の持つ最大の攻撃が効かないという事も容易に想像できる。だが……」

 

そこで才鬼は一息置き、今度は何もかもが吹っ切れたようなさっぱりした表情で大声で叫ぶ。

 

「鬼はっ! 決して相手を恐れはしないっ!」

 

そう言いながら腕を振り下ろし、巨大な炎の玉を放つ。その炎は才鬼の意志の塊とも言うべき輝きを持ち、かつ鬼とはこんなに凄いものなんだと言わんばかりの勢いを持っている。

 

だが俺はこれに負けるつもりなど毛頭ない。例えこれで才鬼が再起不能となろうと俺は勝たなければならないのだ。

 

勝たなければ、部下が、幕府が、民草の命が脅かされる。どちらが天秤にかけて重いのかは一目瞭然、単純明快である。

 

だからこそ俺は

 

「人間にもけっして譲れぬ意地という物があるのだっ! 鬼よっ!」

 

そう言い放って全速力で飛び、炎の中へ突っ込み火球を突き抜ける。

 

見ただけで予想できる圧倒的な温度。才鬼の全身全霊を込めた技だというのがありありと分かる。

 

俺は炎をやすやすと潜り抜け、その先に見える諦めたかのような才鬼の苦笑いした顔の前で停止する。

 

そして

 

「まだ、続けるかい?」

 

そう言って彼女に戦闘はこれ以上続けても俺の勝ちは変わらないという事を暗に告げる。

 

それを悟ったのか、はたまたもう分かっていたのか、才鬼は顔を横に振り口を開く。

 

「もう無理だね、勝てないよ。ほら、手も足もこの通り、ボロボロだよ。はは、恐れないって言ったけど、お前さんが迫ってきた時はちょっと怖かったよ」

 

そして俺と才鬼は地上へと降り、片足立ちのまま才鬼が敗北を宣言する。

 

「私の負けを認める。大正耕也よ。強き人間よ。戦えた事に誇りを持つよ」

 

そう言って両足で結界の方へと歩いて行く。結界からは歓声が才鬼と俺に向けられており、ちょっと嬉しくなってしまう。

 

……ん?両足? もう骨がつながったのか?

 

「おいおい、足は平気なのか?」

 

それを聞いた才鬼は振り返りながら

 

「大丈夫。折れ方が綺麗だったからね。これくらいだったら普通に歩くくらいまでは回復する。完全回復まではもうしばらくかかるだろうけどね。……じゃ、次も頑張りな。後に控えているのは私とはケタが違うのだから。でもまあ、お前さんの反則的な防御があれば勝てるかもね。能力も完全に遮断するようだし。……ああ、まいったまいった」

 

そう言って才鬼は、応援席の結界から出てきた萃香とハイタッチをして交代する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萃香は先ほどの戦いを見たせいか、殺気と戦意が凄まじく、表情は不敵な笑みを浮かべている。

 

そして、俺の前に立ち、両の拳を胸の前で突き合わせる。その衝撃で周囲に衝撃波が走り、風が生まれる。

 

「さて、大正耕太だっけ? よろしく頼むよ」

 

俺は間髪いれずに

 

「大正耕也です……。…………それと萃香さん。少々休憩をはさみませんか?」

 

と言ってみる。

 

だが、萃香は

 

「な~にを言ってるんだい。そんな事をしたら楽しむ時間がどんどん減っていくじゃないか。だからさっさと始めようじゃないか。さっきの戦いを見てウズウズしているんだ。私の攻撃は通るかなってね。この四天王の力がね……。ははは」

 

といって聞かない。

 

もういいや、どうにでもな……ってはいけないな。勝たなければな。

 

だったら

 

「なら、さっさと始めましょう。萃香さん」

 

「いいねえ、そうこなくっちゃ」

 

そう言って俺たちは互いに距離をとって臨戦態勢になる。

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大正耕也。お前の弱点は体力だね?」

 

 

 

 

 

 

なぜばれたし。

 

 

 

 

 


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