東方高次元   作:セロリ

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62話 え~と、こんにちは……

いやもう、本当に失礼しました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何でここに人間が……?」

 

意味が分からない。と、箱を開けた瞬間に出てきた人間にそんな感想を抱いてしまった私がいる。

 

無理もない。ここまで厳重な封印を施してあるモノに一体何故何の変哲もない唯の人間がいるのだろうか?

 

こんな驚きというか、呆気にとられたのは長年生きている中でも地底に追いやられた事の次ぐらいに来るであろう驚きだ。

 

私は開けた蓋を持ちながら暫しそのままの格好で固まってしまい、再び身体が動き出すまでに時間がかかってしまった。

 

動きがぎこちない身体にため息を吐きながら、持っている蓋を地面に下ろす。

 

「ど、どうしようかこの人間……。人間なんて地底に来てから全くといっていいほど会ってないし、食ってもいない……」

 

自分の中の、好奇心と驚きが混ざり合ってしまい、普段の私らしからぬ口調で話してしまう。

 

蓋を下ろしてまたすぐに人間の入っている箱を上から見下ろし、中にいる人間の状態を見る。

 

霊力は砂粒ほども無く、また当然ながら人間なので妖力も神力も無い。ただ青い顔をしてぐったりと気絶しているだけである。

 

そして私の感覚からすれば、この服装は……何というか、色々とおかしい気がする。今時の上の人間はこんな服装をしているのだろうか?

 

なんだか良く分からない素材でできている青と白色で構成されている動きやすそうであり、保温性に優れていそうな上着。直垂とよく似ているが直垂ではなく、なんだか良く分からないいかにも丈夫そうな青い服。

 

そこから導き出される考えは……扱いにくい。

 

仮に起したとして、彼とどう接すればいいのか分からない。時々地上に出て帰ってくる妖怪から聞き、地面に絵を描きながら説明してくれる、陰陽師のような連中、又はこんな格好をしていない尤もらしい格好をした人間ならまだ接しやすいのだが……。

 

起すべきか、それとも封印された不運な人間としてこの場で殺してしまうか。

 

見ればこの人間は、昔見た人間と違って非常に美味そうという印象を受ける。

 

ほとんど人食いなどに興味が無くなってしまった私にですら欲を蘇らせてしまうほど。きっとこの人間は地上にいたころは物凄く苦労したのではないだろうかとという考えが頭に浮かぶ。

 

もしかしたら、この人間がこの地下に放りこまれた要因の一つに、妖怪からの目を背けさせる意味もあったのではないか?

 

この人間が重要な拠点、例えば都なんてところにいた場合、妖怪がその人間を目指して侵攻してくるからソレを防ぐためにこの人間を封印したのではないだろうか? と。

 

……自分で考えておきながらだが、何とも馬鹿げたモノである。

 

そんなことでここまでする必要はないか。縛って適当な森に放り込めばそれで済む話なのだから。

 

だとするとますます気になる。この人間が如何にしてこの地下へ辿りつくことになったのか。

 

私はそう考えると、この男を引き上げようと、手から糸を出して男の身体に巻きつけようと、男に向かって手をかざす。

 

「感謝しなよ人間」

 

そう言いながら糸を噴き出させ、上手く身体のスキマに糸を潜り込ませながら巻きつける。

 

「これで良し」

 

そして一気に引っ張りだそう力を込める。

 

「せ~のっ…………あれれっ?」

 

力を込めた瞬間に糸が解けてしまったのだ。いや、これは糸に込められた妖力が無くなってしまい、さらには糸の引張強度も無くなってしまったためといった方が良いのだろうか?

 

結局は同じだが、妖力が無くなってしまった事が気になる。

 

「……なんなんだいこれは? 全くもって意味が分からない……面倒くさいねえ」

 

仕方なしに、糸で引き上げるのを諦め、箱を倒して引きずり出すことにする。

 

「悪く思わないでおくれよ?」

 

そう言いながら箱をゆっくりと横に倒していく。人間は私達妖怪と違って脆いのだ。壊れ物のように扱わなくてはすぐに駄目になってしまう。

 

だから慎重に扱うのだ。……今回だけだが。

 

ゴトリという鈍い音がして箱が横に倒されると同時に、男の足が出口に向かって投げだされる。

 

私はそれを確認すると、男の両足を掴んでズルズルと箱から引きずり出していく。しかし、引きずり出す際に妙な違和感を覚える。

 

やけに重いな。と。

 

私は力がなさそうに見えるが、妖怪の中ではかなりの力を持つ方だ。鬼にはさすがに負けるが、それでも上位には入るであろう力を持つ。

 

そんな私が何故重いと感じるのか? ……全く理解できない。

 

試しに男が入っていたこの男より重いであろう木の箱を持ちあげてみる。

 

「……簡単に持ちあがる。……一体何故なんだい?」

 

独り言を言っても解決しないという事は分かる。だが、自然と口から言葉が出てしまう。

 

不気味な男だと思いながら、男の姿を改めて見やる。気絶しながら術式を構築したなんて無いだろうし、さらには霊力も無いのに私の糸をボロボロにしたり、妖怪の力を弱めたりと。

 

そうしてみているうちに、自分の立っている糸で構成された足場に違和感を感じる。……妖力が無くなっている。

 

妖力が通ってなくても糸は崩れはしないが、今この足場を先ほどのように男によって崩されると、修復が非常に面倒となる。

 

「ああもう~、厄介なモノを拾ったもんだよまったくっ!」

 

やり場のない怒りを言葉にして排出しながら、未だに気絶している男を抱きかかえて、巣と繋がっている洞窟へと運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男を運び終わり、私は、再度糸に妖力を通して補強を開始していく。

 

「しっかし、これまた酷くやられたねえ……妖力が完全に無くなっているじゃないか。……助けるんじゃなかったよ」

 

そう文句を垂れながら糸に大量の妖力を流し込んでいく。流し込まれた糸はみるみるうちに艶がでて、男が降ってくる前と何ら遜色のない、むしろ状態が良くなるほどにまで回復していく。

 

私はそれを見届けて、安堵のため息を吐き、洞窟の方を少し睨む。……まだ起きないか。

 

仕方ない、無理矢理にでも起してみようか。

 

そう思い、私は糸を後にして洞窟内部へと再び入っていく。ついでに邪魔なので、箱も蓋ごと持って行く。

 

発見した時よりは顔色も随分ましになってきてはいるが、目を覚ます気配はない。

 

ただ規則的な呼吸をしているので、臓器などに異変が起きているわけではないようだ。

 

冷静に男の身体を見ながら分析していく中で、私は男の身体に手を触れて揺り動かしていく。

 

「…………っ!? ……ほら、あ~名前は分からないが人間、起きな。」

 

触れた瞬間に、身体の中にあった妖力が消失していくという奇怪な現象に驚きつつも、起さなくては話が始まらないと思い、我慢しながら揺すっていく。

 

「こら、起きろ~……。この黒谷ヤマメが起しているんだ。起きるってもんが男だろう? …………風邪引かせるよ?」

 

そう言いながら揺すっていくと、男は少しだけうめき声を上げながら左手をピクリと動かす。おそらくもう少しすれば起きるだろう。

 

「起きろ起きろ起きろ~…………。人間よ、起きなければ食べてしまうぞ~?」

 

最後に言った言葉が効いたのか、男は反射的に身体をガバリと起き上がらせる。

 

「うぉわっ! 起きるならもっとゆっくり起きておくれよ。びっくりするじゃないか」

 

男に不満を言うと、男は寝惚けたような眼で一言言う。

 

「紫……、その菓子は俺のだから食べないでくれ……え、あれっ?」

 

私の方を見ながら妙な事をのたまう男。

 

なんだか物凄い脱力感が私を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べてしまうと言われたものだから、うっかり紫が俺の菓子を横取りするかと思ってついいつもの癖で言ってしまった。

 

俺は段々とぼやけている頭が覚醒してくると、自分の置かれている立場を思い出し始める。

 

…………ああ、俺封印されたんだっけ? それに、吐き気がしていたのに、今では良くなっている。時間が結構たったせいなのだろうか?

 

そんな事を考えて俺を起してくれた人物の方を見やる。

 

そして俺に声を掛けてくれたであろう人物は、夢の中でなければ見た限りまぎれもなく黒谷ヤマメ。つまり俺は崖からではなく、穴から落とされたのか。この地底に。……つまりこの上に幻想郷が成り立つという訳か…………。

 

とりあえず俺は今考えている事を封じ、俺の寝惚けて言った言葉に呆れてしまっているヤマメに対して謝罪と感謝を伝える。

 

「も、申し訳ありません。意味の分からない事を口走ってしまって。私は人間の大正耕也と申します。…そして、助けて下さりありがとうございます」

 

とりあえずそう言っておく。おそらくあのネットに引っ掛かった感触というのは、ヤマメの巣に箱ごと直撃したからだろう。

 

ゲームの中でこそあんなに陽気であったが、今は鎌倉時代。まだ人間に恨みがあり、気性が荒い可能性もあるのだ。だからここは慎重にいかなければならない。

 

俺がヤマメの反応を待っていると、ヤマメも呆れたような顔から、微笑を浮かべ俺に対して右手をヒラヒラと振りながら答えてくれる。

 

「私は黒谷ヤマメ……土蜘蛛の妖怪だよ。……いや~、第一印象で不気味で変な奴だなと思ったけど、なんだ、結構真面目じゃないか」

 

と、自分の思い違いだったよと言ってくる。…………うん、不気味って言われたのは初めてだ。

 

「ははは、ありがとうございます。……所で、不気味と一体何の事でしょうか?」

 

俺が彼女に対して先ほど言われた事に対する疑問を言うと、彼女は右眼を閉じながら左手を腰に当て、人差し指を立てた右手をフリフリさせながら、嬉しそうに言う。

 

「お、よく聞いてくれたね。お姉さんうれしいよ」

 

そういったかと思うと、今度は一気に顔を険しくして、俺に詰め寄る。

 

「……その不気味という所はね、耕也の身体に触れたら何故か私の妖力が封じ込められたのさ。御蔭で私の糸がボロボロになるし。……それに、妖怪の私を見ても怖がり一つしないのは…………一体何故だい?」

 

そうきたか……俺としてはあまり触れて欲しくない部分である。実際の所、俺が気を失わなければこんな事にはならなかったというのが俺の素直な考えである。

 

俺は常套句である、秘密というのは当然納得しないだろうし、なにより妖怪を見て怖がらなかったという部分が痛い。ここは素直に陰陽師だと答えておくか?

 

いや、陰陽師だと答えた場合、より一層怒りを買う気がしてくる。唯でさえ人間を恨んでいる可能性があるというのに、封じた同職の陰陽師ともなれば怒りも増すというモノである。

 

もう本当にどうしよう。言い訳なんてろくに考えていない。考えられるわけがない。ついさっきまで気絶していたのだから。

 

…………この際言ってしまおう。陰陽師だという事を。俺はそう結論を出し、ヤマメに向かって口を開こうとする。

 

しかし、ヤマメの言った言葉で、この言葉も言う事ができなくなってしまった。

 

「ああ、そうだ。さらに言えば、何で霊力の欠片も無い人間がこんな厳重な封印を施されていたんだい? おまけに欠陥があるときた。」

 

少しは遠慮を知ってほしいと思うのは俺の我儘だろうか?

 

そんな考えをつい浮かべてしまう。すべて計算しつくした結果なのか分からないが、俺の逃げ道を確実に封じてきている。

 

……仕方が無い、正直に断ろう。

 

「いやもう、それについては恥ずかしながら、一身上の都合で詳しく話せないというものでして。一応、自分の身体には相手の力を封じる効果があるという事だけしかお教えする事ができないのです。大変申し訳ありません」

 

いや、何で俺は謝っているのだろう? なんかつい謝ってしまうんだよなあ……。これも日本人の性質ってやつかねえ?

 

そんな俺の言い分に、ヤマメはフンと鼻を鳴らし、一言言う。

 

「まあ、本当は物凄く知りたいのだけれどもねえ……。妖力を使えなくとも、妖怪にとっては人間を殺すなんて御茶の子さいさいなのさ。だから、無理矢理聞くことも可能。分かるね?」

 

「はい、良く分かります。ですが、今は少しお話しする事ができません。……もう少し自分に整理がついたらお話ししていくという事で如何でしょうか?」

 

すると、ヤマメは少し考えるふりをして、唸り始める。俺の話を飲むか飲まないかを決めているのだろう。

 

これで断られたら、正直あとがきつい。俺はそんな事を思いながらヤマメの顔をジッと見つめる。

 

ヤマメは俺の視線に気づいたのか、チラチラ俺の方を見ながらさらに考え始める。

 

そして答えが出たのか、考える姿勢を止めて俺に結論を言い始める。

 

「まあ理由はどうであれ、お前さんは地下に追いやられたんだ。ここには話したくない過去を持つ奴は大勢いる。話す覚悟ができたら話してくれればいいさね。……どうだい?」

 

俺はその言葉にホッとし、頭を下げて礼を言う。

 

「ありがとうございます。いずれ私の事は話していきますので、どうか今後もよろしくお願いします」

 

そう言って自然と俺は握手を求めていた。

 

ヤマメは驚いたようにこちらを見ていたが、少し気恥ずかしそうに頬を掻きながら手をスッと差し出し、俺の手を握ってくる。

 

「まあ、よろしく」

 

「よろしくお願いします」

 

そしてここまで言い終わったときに、ヤマメがふと思い出すように言った。

 

「……ああ、そうだ。耕也、お前さんはこれからどうする? 封印されたばかりだから行くあてもないだろうし……そうだね、一晩だけ泊っていくかい? 明日になったら地底の方へ行って何かしらの生計を立てていけばいいと思うが」

 

俺としては願っても無い事であり、申し訳なさいっぱいの気持ちで頼み込む。

 

「ぜひお願いします。ありがとうございます。助かります」

 

すると、ヤマメは手をヒラヒラさせながら

 

「いいっていいって」

 

そう俺を気遣ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ヤマメは夕飯の買い出しに行ってくるとのことで、さらに下層へと降りて行った。

 

俺は、ヤマメが降りて行ったあと、紫や藍、幽香に対してどのように伝えていこうかと迷っていた。

 

今地上に出ていったらかなり大騒ぎになるだろうな……。幽香の所に直接ジャンプするという手もあるが、万が一という事もある。

 

そう簡単に済むことじゃあないか……。第一、まだ幽香達が気付いていない可能性というのもある。昨日の今日だ。さすがにまだ気付いてはいないだろう。

 

そう言いながら座る姿勢を変えると、ポケットに何か固いモノがあるという事に気付く。俺はその感触に疑問を持ちながら引っ張り出して自分の視界まで持ってくる。

 

「…………これは……そうだ、幽香の奴櫛忘れていたんじゃないかっ! という事は、すでに幽香が俺の家まで来ている可能性もあるという事かっ!? マズイ、マズイぞこれは……暴れてなければいいのだけれど」

 

俺が封印されているという事を知ったら幽香が暴れる可能性もある。……おまけに紫達も知ったら…………考えたくもない。

 

今日はもう遅いから無理だとして、明日あたりにでも行きたいのだが……行ける…か?

 

仮に俺がいったとして、うっかり見つかったら今度は俺ばかりでなく幽香達も攻撃される可能性もある。……相手が現代の軍隊じゃあないからそう簡単にはやられないとは思うが……何とも厳しい。

 

くそっ、確かに妖怪と密通していた俺も悪いが、お前ら陰陽師は俺に対してでっち上げまでやったじゃないか。おまけに人質まで使いやがってっ!

 

今頃になって俺を嵌めた陰陽師達への怒りが再燃してきたようだ。確かに彼らの理由も一部は正当であろう。しかし、それでも再燃してきた怒りへの消火剤にはならなかった。

 

くそ、あの生活がベストだったというのにっ! あのままなら安定していたというのにっ!?

 

俺は捌け口の見つからない怒りをどうするか迷うように、視線を洞窟に這わす。

 

すると、俺をここまでぶち込んでいた大きな木製の箱があるのが分かる。おそらくヤマメが回収してくれたのだろう。御丁寧に札の類まである。

 

だが、俺はヤマメの気遣いに感謝すると同時に、さらに大きな怒りが沸々と沸いてくる。

 

俺はその良く分からない大きな怒りに突き動かされるままに、立ち上がり、大股でその箱まで近づいていく。

 

「―――――っ!! こんなモノがっ!」

 

その声とともに足を大きく後ろに引き、全力を込めて箱を蹴り砕いていく。箱は生活支援と領域によって守られた足により、まるで障子を破くかのように簡単に破片を撒き散らせていく。

 

「くそったれ!? あんな、あんな奴らのせいでっ! あんな奴らのせいでっ!」

 

破片が洞窟内に散らばる事を無視して、衝動に任せるままに砕き、原形をとどめていない箱を札と共にさらに足で踏み潰していく。

 

洞窟内には、木の欠ける乾いた音、圧し折れる軋んだ音、砕けた破片が洞窟内の石に当たって出る高い音が木霊する。

 

時間にしては約1分半程だろうか? それほど箱とに八つ当たりをしていた。

 

散々八つ当たりをした後、俺はその場にストンと腰を下ろし、独り言を言い始めてしまう。

 

「あぁ~だめだ……情けなさすぎる。……クッ、こうなる事は分かっていたけど……いざ離れ離れになるときついなぁ……」

 

俺は幽香達の事を考えると、地下に来て一日も経っていないというのに、無性に地上へと帰りたくなってくる。そしてついには目頭が熱くなり、涙があふれ出てくる。

 

……はぁ、駄目だ…止まらない。

 

「うぅ……くそっ…………悔しいなあ……自分の不甲斐なさも、情けなさにも……怒りが湧いてくる。…………うっく」

 

人に嵌められるのは、キツイモノがある。やはり精神的に弱いんだな俺は。

 

そう思うと、色々と訳の分からない感情が湧いてきて、さらに大粒の涙を流させる。

 

「……くぅっ……あ~……はぁ……」

 

なるべく声を出さないように俺は涙を流していく。これぐらいは許してほしい。おそらくヤマメはまだまだ帰ってこないだろうから。

 

しかし、俺が静かに泣いていると、突然背中に小さな衝撃を感じる。いや、抱きしめられたといった方が正しいか。

 

「まったく……うるさい音がすると思って来てみれば……やっぱりこうなっていたか。随分と散らかしちゃって」

 

「………………ヤマメさん……どう…してここに?」

 

「なに、女の勘ってやつだよ。……まぁ、深くは聞かないけどね。…………ほら、好きなだけ泣きな。こんな時に散らかしたぐらいで怒るほど狭量じゃあないよ? 私は」

 

そう言ってさらに強く抱きしめられる。俺はそれが元となって大きな安心感が心に生まれ、再び涙を流し始める

 

「ありがとう……ありがとう…ございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマメの優しさを背中に感じながら。

 

 

 

 

 


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