東方高次元   作:セロリ

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63話 また家探しか……

ヤマメごととか勘弁してくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ……起きてはいないか。さすがに私が早く起き過ぎたのかねぇ」

 

早朝に起きてしまった私が、まだ静まっている洞窟を見ながら言う。本来なら地下に朝も昼も夜も分かりっこないのだが、大体は感覚で判断する事ができる。

 

私は自分に掛かっている布を剥いで起き上がると、固まってしまっている身体を伸ばして解していく。

 

早朝の空気は非常に冷えており、妖怪の私ですら身震いしてしまうほどである。

 

「うぅ~~~~~っ、寒い。耕也は大丈夫かねえ。昨日は大丈夫だといって隅っこの方に行ったけど」

 

そう、耕也は私が布を貸すといってもそこまで迷惑は掛けられないと言って、断固として受け取らず、洞窟の奥の方へと歩いて行ったのだ。

 

確かに洞窟の奥は真ん中付近の此処と違ってマシであろうが、それでも微々たる差である。

 

風邪引いてないだろうな? と、病気を操る程度の能力を持つ私が言うのも変だが、一応は心配しておかなくては。

 

それにしても……調子を狂わされっぱなしだ。普通ならこんな人間なんて追い出すか邪魔ものとして排除してしまうというのに。

 

地上にいた頃なら疾うにその選択肢を選んでいただろう。仮にも伝承にすら載るほどの妖怪なのだから。

 

私を見ても恐れない人間に会うとは思ってもみなかった。それに、あんな一面を見せるとはね。

 

私は耕也と話していく内に礼儀正しい人間という印象はあったが、何だか嫌な予感がしてきたのだ。この地底に来る者達は心に大きな傷か怒り、闇を抱えている。

 

当然人間に対してちょっかいをかけてここに封印された者も大勢いるが、いきなり攻撃を受けてここに封印された者もいるのだ。

 

とりあえずそこら辺や人格を考えると、耕也は後者に当てはまるのではないかと思う。あの成りで人間に害を与えていたらそれはそれで凄まじいが。

 

とにかくその怒りか闇を抱えていてきたのであれば、それを吐き出そうとするであろう。そして自分を壊してしまう可能性もある。だから、早く帰って来たのだ。

 

妖怪がここまで人間に対して心配するのは、おかしい事なんだろうけどね……。

 

とりあえず耕也が風邪をひいていないかを見に行くとしよう。私はそう思いながら自分のすぐ横に鎮座している布を手に取る。

 

耕也が寒そうにしていたら布を掛けてやらなければならない。痩せ我慢せずに素直に受け取ればいいものを。これも人間の自尊心というやつなのかね…?

 

そう思いながら洞窟の奥へと、足を進めていく。

 

やはり、地下は空気の対流がそれほど激しくないためか、奥の方に行くほど温かく感じる。非常に弱くはあるが、地熱も関係しているのかもしれない。

 

下は灼熱なのだ。少しくらい温かくてもおかしくはない。……憶測ではあるが。

 

「おや? こんなに明るかったっけかなぁ……?」

 

何故かよく分からないが、奥に進んでいくとやけに明るくなっていくのが分かる。確かに発光性の苔類で僅かにではあるが周囲を照らす。

 

しかしそれは今のような明りではなく、もっとうす暗く緑色をしているのだ。だからこんな赤橙色の光ではないのだ。だとすれば、耕也が何かしているのだろうか?

 

もしかして……火でも炊いているのだろうか? いや、それにしては揺らめきが全くないというのもおかしい。

 

この洞窟は真っ直ぐではなく曲がっているため、その光源は分からない。一体耕也は何をしているのだろうと、思いながらその光源を視界に収めるためにさらに歩みを進めていく。

 

「耕也~? 何をしているん……だ…い?」

 

またもや口角が引きつるのが分かる。本当にこの人間は良く分からない。

 

いや、人間の認識を改めた方がいいのだろうか? どうも私の中にある人間像が崩れ去っていく気がする。そう思わせるモノが私の目の前にあるのだ。

 

昨夜、耕也は何も持っていなかったはずだというのに一体何でこんなモノがあるのだろうか? こんな大きいモノは箱のどこにもなかったし、人間が手軽に持てるものでもない。

 

耕也の背後には三つほど光を放つ円盤があり、ソレらは先ほど疑問に感じていた赤橙色の光を放ち、洞窟内部を反射光で照らしている。おまけにその一つから放たれる直射光が妙に温かい。

 

私はどうしようかと思いながらもその足を耕也の元へと進めていき、耕也のすぐそばに腰を下ろす。

 

化け物の腹の中といっても過言ではない場所でどうしてこんなにノンビリと寝ていられるのだろうか? 耕也の頭の中には食べられるという危険意識などといった物が無いのだろうか?

 

私は何故だか良く分からないが、身体を温めてくれる光に心地よさを感じながら耕也を凝視してしまう。一体どうしてあんなに暴れていたのだろうか? と。

 

食材を買ってすぐに戻ってきたら、耕也が箱に対して八つ当たりをしているのが目に入った。

 

その時に叫んでいた言葉。

 

「あんな奴ら……か」

 

今のお前とは大違いだったよ。耕也。

 

お前は一体何が原因でここに来なければならなかったのだろうか?

 

その呑気な寝顔を何がどうしてああも変貌させていたのだろうか?

 

お前がここに来る前に一体何があったのだろうか?

 

お前はどうして妖怪である私を恐れずに同種のように接する事ができるのだろうか?

 

お前はどうしてこんなにも他の人間とは違う人間なのだろうか?

 

あんな奴等とは、同じ人間なのだろうか? それとも妖怪なのだろうか?

 

様々な疑問が頭に浮かびあがり、埋め尽くしていく。

 

それと同時に思考がこの光によって鈍くなっていき、私は耕也の被っている温かそうな布団へと身体を自然と傾けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ヤ………ヤ…メさ……………ヤマメさん、ヤマメさん~……」

 

なんだいうるさいねぇ。ヒトがせっかく気持ちよく寝ているというのに……。

 

若干不機嫌になりながら私は目をうっすらと開けていく。すると、眩しい光が目に入ってきて思わず目を強く瞑ってしまう。

 

「だ……誰だい?」

 

「あの……耕也です。大正耕也です」

 

……耕也? 何で耕也がここ……―――――っ!?

 

私はその名前を聞いた瞬間に自分が意識を失う前の行動を思い出す。

 

そうだ、確か私は光の温かさで二度寝をしてしまったのだ。

 

その考えに辿りついた瞬間に、恥ずかしさで顔が一気に赤くなり、眩しさも構わず目を見開いてその場から急いで離れる。

 

耕也は私の行動に呆気にとられたようで、口を半開きにして此方を眺めている。

 

すでに耕也は自分の普段着に着替え終えたようで、昨日とはまた別の服を着ている。

 

私は一体その服はどこから出てきたんだという疑問すら思い付かず、ただ今の事に動揺したまま私は耕也に対して言い訳を述べてしまう。

 

「あ、いや、その……おはようっ! ……あ~、す、すまないねえ。ついこの光が温かいから気持ち良くってさ」

 

すると、耕也はこの良く分からないモノを指差して苦笑しながら言ってくる。

 

「いえ、これは自分もウトウトしてしまう事がよくあるので。これは光で身体を温めてくれるカラクリでして。寒い時はいつもこれを活用しているのですよ」

 

そう言って円盤のような部分をポンポンと叩く。この良く分からない長い首を持つカラクリは、局所的ではあるが光の当たった部分を温めてくれるらしい。

 

いつかこれについても教えてもらおう。と、私はそう思う。

 

そして私は耕也の説明を聞きながら、今日の予定を思い出していく。

 

今日は、耕也の本格的な住処と職関係について地底に決めに行くのだ。とすれば、出るのは早い方がいい。

 

と、そこで偶然にも耕也から私が思っている事と同じような事が声として出てくる。

 

「それとヤマメさん。一応朝食を作りましたので、召し上がってください。あと、今日の地底への補助の方をよろしくお願いします」

 

「ああ、ありがとう耕也。地底の方は任せときな。妖怪が襲ってきても何とか守ってやろう」

 

そういうと、耕也は

 

「ありがとうございます」

 

と、嬉しそうに返してくる。

 

…………守ってやるとは言ったものの、正直苦労するだろう。何せ私達の行く場所は地底。

 

ここには獰猛な妖怪ももちろんいる。それに加えて人間を食いたくて食いたくて仕方が無い奴もいるのだ。ずっと我慢して。

 

そして耕也は人間である。おまけに他の人間とは一線を画して美味そうに見えるのだ。どう考えても地底での暮しはきついモノがあるだろう。

 

おまけに職も妖怪が経営していたり、依頼が妖怪なので耕也には危険すぎる。例え耕也が妖力を消す事ができても妖怪の戦闘力に敵う訳が無い。

 

それに、あまり気は進まないが古明地の館に挨拶ぐらいは行かなければならないだろうし……。考えただけでも頭が痛くなる。

 

言ってしまったものは仕方が無いからやるけどさ。眼の前で殺されたら寝覚めが悪くなるしね

 

ただ、失敗したとしても耕也をここにずっと住まわせてやるという事もできないし、自分の事は自分で解決してもらいたい。それが耕也の為でもあるし、なによりお互いに気まずくならないだろう。

 

まあ、ここは耕也の手腕に掛かってくるだろうね。

 

そこまで考えた所で、耕也への返事をする。

 

「いいよいいよ。さあ、遅くならないうちに出ようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地底まで来たのいいのだけれども、パルスィがいつもなら橋の上にいて出迎えてくれるのに、今日に限っていない。偶にいない時があるから今回もソレかもしれないのだろうが、何とも間の悪い。

 

今回は耕也の事もあるから色々と相談もしたかったというのに……。

 

思わぬ計画のズレに私は顔を険しくしてしまう。できる事なら一緒に護衛もしてほしかったのだ。私一人でも守る事は可能かもしれないが、パルスィもいた方がずっと行動しやすい。

 

そう考えながら私達は橋を渡っていく。耕也が飛べた事については私の中でも驚きの一つだったが、これについても後々話してくれるとのこと。

 

ただ、今の現状を見ると、空を飛べるという事なんて気休めの一つにもならない。橋を越えた瞬間から様々な視線が突き刺さるように私達、いや、耕也に注がれていた。

 

おそらく気付き始めたのだろう。耕也が妖怪ではなく、人間だという事に。

 

しかし、対する耕也は妖怪の抉るような視線などどこ吹く風で飄々と受け流している。此方の気も知らずに……。

 

「ヤマメさん。地底とはいえ、結構賑やかですねえ。」

 

「あ、ああ……そうだね」

 

耕也がここに来て初めて私に声をかけてくる。その声を皮切りに殺気が跳ね上がる。いくら私でも、ここまで多くの妖怪からの殺気が当たってくると厳しい。

 

私に対しての殺気もいくらか含まれているのが分かる。これは人肉に固執している輩からだろうが理由は極めて簡単。耕也に付き添っているからだろう。ひょっとしたら私も攻撃される可能性もある。

 

私のように、人間の肉に固執しないモノも多いが、肉に固執している者も少数ながらいる。時が経てば私達のような物が大多数になるかもしれないが、今は時機が悪い。

 

周りに、特に耕也に気づかれないように歯ぎしりをして不快感を押し殺す。

 

このまま襲って来なければいいが……。

 

私が周りの視線を気にしながらゆっくりと、しかし確実に耕也の斜め前方を歩いていた。

 

と、私が周囲を警戒していると、耕也が近寄って小声で私に話しかけてくる。

 

「ヤマメさん、ご迷惑をおかけしてすみません。大方予想はできていたのですが、ここまで露骨だとは思いませんでした」

 

殺気に気付いていなかっただけではく、気付いていながら受け流していたのか……。本当によく分からない人間だ。

 

「なんだ、気付いていたのかい?」

 

「ええ、――――っですから!?」

 

突然鋭く叫んだ耕也が、私を強く横に突き飛ばす。当然私は何の受け身の姿勢も取れなかったため、突き飛ばされた後は地面を転がる。

 

受け身ができなかった私は衝撃をもろに食らったために激しい痛みが襲ってくる

 

「いっつつ……一体なにすんっ!?」

 

耕也に対して怒りの言葉を言おうとした時に、何故耕也が私を突き飛ばしたのかを理解した。

 

後ろから襲いかかる妖怪の攻撃の巻き添えを防ぐためだったのだろう。私が耕也を再び見たときには大きな鉄管を手を使わずに空中で振りまわし、文字通り飛んで襲いかかって来た妖怪を薙ぎ飛ばした姿だった。

 

私はこの時本気で驚き、また思った。一体こいつは何者だろうか? と。

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマメさん、ご迷惑をおかけしてすみません。大方予想はできていたのですが、ここまで露骨だとは思いませんでした」

 

そう言って俺は、ヤマメの取っている警戒行動に対して感謝と謝罪をする。

 

たかが俺を地霊殿まで案内するのに彼女に心労を掛けさせているのだ。感謝しない方がおかしい。それにしても本当に顕著なものだ。商店街に入った瞬間に視線の増大と殺気の跳ね上がり。本当に凄まじい。

 

いくら陰陽師をやっていても注がれる殺気にはなれない。おまけにこの尋常じゃない量。まあ当然か、妖怪によっては云百年も人肉の摂取を抑制されている者もいるのだ。食人の衝動に駆られるのは無理もない。

 

つまり今の俺の現状は、両手を縛った羊が腹を空かせた狼の群れに放り込まれたような状態か。……いや、この場合は頑丈な檻に入れられた羊を入れるようなものといった方が正しいのか。

 

俺はそんな感想を持ちながらもゆっくりとヤマメの歩きに合わせていく。

 

それにしてもこんな赤の他人の俺にここまでの事をしてくれるヤマメには感謝してもしきれない。これが彼女の人気である所以でもあり、優しさなのだろう。

 

俺は心の中で必ずお礼をすると誓いながら、先ほどから気になっていた後ろの方を見る。

 

数名の妖怪が店の陰から涎を垂らしながら此方を血走った眼で睨みつけている。このまま何もしてこないのならばひとまず安心だが、これはどう見ても襲ってきそうな雰囲気である。

 

熊の妖怪なのだろうか? 正確には分からないが、それらがいるのだ。まだ死角にいる可能性もあるから分からないが、現状では三名しか見えない。

 

俺はいつでも迎撃可能なように心の中で準備をし、後ろの警戒を続けていく。

 

後方とは違い、前方は特に険しい眼で見てくるだけで行動に移そうとしている妖怪は見当たらない。

 

さらに言えば、ヤマメが前方を特に警戒してくれているので相手もおいそれとは出てこれないのだろう。

 

と、そこでヤマメが俺に対して先ほど言った言葉について返答してくる。

 

「なんだ、気付いていたのかい?」

 

俺はその言葉に素直に答えていこうとする。

 

「ええ、――――っですから!?」

 

しかし、それは中途半端に終わることとなった。なぜなら俺が警戒していた妖怪達の1妖が、俺達が会話しているのを好機と判断したのか、猛烈な勢いで飛び掛かって来たのだ。

 

俺は返答を切り、心の中で謝りながらヤマメを横に思い切り突き飛ばす。

 

そして突き飛ばしたと同時に適当な大きさと長さの鉄管を空中に創造し、プロバッターも唖然とするであろう速度で横に一閃する。

 

空気を切り裂きながら振られる鉄管は、空気抵抗によって妙な異音を立てながら向かってきた妖怪を殴り飛ばす。

 

殴り飛ばされた妖怪は、首を変な方向に曲げ、口と鼻から大量の血を噴き出させ、石でできた塀にぶち当たり磔にされ、ズルズルと血糊を塗りつけながら地面に伏す。

 

当然鉄管はねじ曲がり、使い物にならなくなってしまった。俺はそれを見届けると鉄管を消去し、また別の鉄管を創造し、いつでも攻撃に対応できるようにする。

 

正直なところ、剣術の達人が来たら切り結ぶ自信は全くない。だからこの場に刀技の達人はいて欲しくない。いや……とはいっても基本的に殺傷性のある攻撃はこれっぽっちも食らわないのだが……。おまけに鉄管で刀を圧し折ることも可能だし。

 

俺が先ほどの妖怪達の方を見ながら呑気な事を考えていると、妖怪達がゾロゾロと姿を表す。その数5人。全員ヤマメよりも力量は劣るだろうが、純粋な力でいえば人間を凌駕するのは間違いないだろう。

 

「お前……大正耕也だな?」

 

と、妖怪の一人が答える。もしかしたらとは思っていたが、知っている妖怪はいるのか。

 

まあ、当然だわな。ヤマメは地下に長く居たせいか、俺の事を知らなかったみたいだが、最近地底に来たものは知っている可能性はあるという事か。

 

良くも悪くも有名という事なのだろうか? いや、俺は人妖共に恨まれている可能性が高いから悪い方で有名なのだろうな。

 

俺は隠しても仕方が無いので素直に言う。

 

「ああ……それで?」

 

すると質問をしてきた妖怪は、血まみれの仲間の安否を気にせず腹を抱えて爆笑し始める。

 

「ぷっ…………あっはっはっはっはっはっはあははははあははは。……腹いてぇ~。まさか、まさかの本人か? お、お前が? 最強の陰陽師だったお前が? はははははははあっはははは! ざまぁねえな~。妖怪に恨まれ、人間に嫌われてここまで御越しとは恐れ入るぜぇっ!」

 

と、熊が2足歩行しただけのような容姿をした妖怪が俺に対して悪態の限りを吐いてくる。

 

そしてその妖怪の笑いにつられたのか、取り巻きばかりではなく、やじ馬ですらも笑い始める。

 

俺はヤマメの方を見る事ができず、そのままその妖怪の言葉を聞いて腕をブルブルと痙攣させる。昨日の今日であり、そしてあまりの言われようにさすがに俺も怒りを隠せなくなってくる。

 

俺は殆どヤケクソ気味に妖怪達を挑発する。

 

「四の五の言わずに掛かってこいよ屑ども。俺を殺そうとしているのだから……俺も殺すぞ?」

 

そういうと、周りの妖怪達は先ほどの笑いを静め、急に黙り込む。

 

だが、目の前の妖怪はさらに嘲りの表情を浮かべ、俺に罵りの言葉を吐く。

 

「はっ…………封印されるような間抜けに俺がやられるとでも……思ってんのかぁっ!?」

 

そう叫ぶと、鋭く尖った爪を大きく伸ばしながら高速で迫ってくる。

 

俺はその様を見ながら、本当に雑魚で馬鹿なんだなと思いながら対応していく。

 

妖怪が俺の5m付近に近づいた瞬間に鉄柱を奴の真下から急速に創造して突きあげる。

 

もちろん突然の攻撃に対応できるはずもなく、無様に顎をカチ上げられ、砕かれながら空中で逆回転を始める。

 

「ゴボッ…………カブビャ……」

 

言葉にならない悲鳴を上げながら。

 

そしてすかさずその回転する頭と腹に向かって、今度は上から鉄柱を2本創造して突き落とす。

 

数百kgもある鉄柱が当たれば、もちろん耐えられるはずもなく、地面に轟音を立てながらめり込んで血と肉片を撒き散らす。

 

ソレを見届けると取り巻きたちに向かって口を開く。

 

「お前らもこうなりたいか?」

 

そういうと妖怪達は首を大きく横に振って一目散に逃げ出していった。

 

おそらく先ほどの怒りがまだ続いているのだろう。これを見ても吐き気などが湧いて来ない。冷静になったら吐きそうな気がするが。

 

そして俺は非常に気が引けながらもヤマメの方をゆっくりと見やる。

 

意外にもヤマメは俺に対して怯えたような表情を見せておらず、むしろ極めて冷静なオーラをだしてこちらを見てくる。

 

俺はどうにもやりづらいなと思いながらも鉄柱を消してヤマメに言う。

 

「その、申し訳ないです。突き飛ばしたり、迷惑をかけてしまって」

 

「いや、良いよ。お前さんは降りかかる火の粉を振り払っただけだしね」

 

「いえ、ですが……ヤマメさんの立場がで……」

 

そういうと、怒ったように

 

「しつこいよ。私の心配はいらないよ。何せ私は地底の人気者だからね?…フフフ」

 

と、説教気味に言いながらカラカラと笑う。

 

そしてヤマメの態度を見ながら改めて思う。本当に優しいな。と。

 

俺の事を心配して言ってくれるヤマメに礼を言おうとすると、突然背後から声がかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死体の気配がしたもんだから急いできてみれば何ともまあ……。お? そこのお兄さんは人間だね? ついでにお兄さんの死体も運ばせちゃあくれないかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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