東方高次元   作:セロリ

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これは、にじファン時代での、記念ssとなっております。
苦手な方も多いはずなので、ご注意を。


外伝ss……監禁

貴方は人であるからこそ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、マズいぞこれは……どうしよう」

 

俺は卓袱台の上に両肘を置きながら一人で唸っていた。

 

改めて顔を上げて目の前に手をかざして意識を集中させてみるが、何の変化も見られない。

 

自分でもどうしてこんな事になっているのか、皆目見当もつかない上に、未だにその障害が取り除かれるばかりか改善される様子も見られない。

 

このままでは自分の陰陽師の仕事としても、今後の生活、ひいては自分の命すら危ぶまれる状況になるのだ。

 

今はまだこの事に気が付いている者はいないが、いずれはこの情報が漏えいする可能性が高い。

 

人間に漏洩するのならまだしも、妖怪側に漏えいしたとなればもはやこれは襲撃を受けること間違いなしである。

 

今まで散々一方的に攻撃をし、退治をしてきたのだから、他の陰陽師以上の恨みや憎しみを買っていたとしてもおかしくない。

 

もしこの状況で襲撃を受けた場合、とてもではないが持ちこたえられない。攻撃を受けて一時間もしないうちに俺は身体を食い散らかされてしまう可能性が極めて高い。

 

そんな薄ら寒い状況を考えると、どうしてもその事が現実になりそうな予感がしてならず、身体が自然と震え始めてしまう。

 

俺は震え、自分の意志では抑えられなくなった身体を、何とか収めようと、自分の身体を掻き抱くように両腕を回していく。

 

しかし、それでも全く身体の震えは収まる事を知らず、さらに大きく震えだしていく。ガタガタガタガタと震えていくばかりであり、もうどうにも止まらない。

 

おまけに今の状況では、陰陽師からの評判が良くない俺は失脚するには格好の状態であり、助けてくれる陰陽師もほとんどいないであろう。

 

例え助けてくれる陰陽師がいたとしても、それはきっと大きな見返りを求めてくるに違いないのだから。そして今の俺には、もちろんそんな上等な見返りを捻出することなどできはしないし、何より今の状況を知らせるための連絡手段が無い。

 

都までの距離は長い上に、ジャンプも飛行も使用できないこの有り様で到底連絡などは不可能であるし、飛行などに頼り切っていたものだから馬もいない。

 

つまり今の俺は、陸の孤島に居るようなものであり、外に出れば間違いなく妖怪に襲われてしまうのだ。

 

…………せめて馬さえあればまだ何とかなったかもしれないというのに。

 

俺は自分の非常事態の想定が甘すぎた事に腹がたってくる。

 

俺は震える体を必死に抑えながら台所まで行き、蛇口を捻る。閉められていた蛇口は手によって伝えられるトルクによって容易に周りだし、その弁に掛かる内圧を解放していく。

 

しかし、解放された内圧は非常に小さく、全開にしても極少量の水滴しか出てこなかった。

 

その事を目にすると、思わず涙が出てきそうになるが、それを捨てて意識を集中させる。意識を集中させていくと、本当にわずかではあるが、水流を成す程度までになる。

 

俺はその事を目にすると、やはり改善されている気配はないと再認識し、心がさらに暗くなるのを感じながら居間まで戻り、崩れ落ちるように座る。

 

「本当にどうなってるんだ……?」

 

そんな情けない声も、今となってはただ自分の心を抉る刃物にしかならず、その言葉が頭の中でエコーが掛かる様になってくる。

 

俺はこの異常事態に手も足も出ず、ただただ流れる時間を過ごしていた。

 

一種の風邪のようなものだと俺は当初判断していたのだが、寝ても治らない上に、改善することもないから最早諦めかけてしまっている。

 

しかし、先ほどよりも意識をさらにさらに、限界まで集中させて、手を前にかざす。

 

そして目をきつく閉じ、先ほどよりは価値の低いモノを思い浮かべてみると、コトリという音がする。

 

俺はその音を聞いて、目を急いで開けてその成果を確認する。音の発生源には、小さな球体ガラスが鎮座しており、先ほどの創造が成功したという事を如実に示していた。

 

微かな喜びが湧きあがると同時に、また別の悲しみが襲ってくる。

 

それは、どんなに力を込めてもガラス球程度しか創造できないという事。そして自動的に供給されるはずの電力は消失し、出てくる水もスズメの涙ほどでしかない。

 

俺はそれを考えてくると、創造が何とか使えたという喜びよりも、なお厳しい現実を突きつけられたように感じ、絶望感が俺の心を蝕んでいく。

 

その中で俺は、一体どうしてこうなったのかを、もう一度脳内で反芻する事にした。

 

 

 

 

 

 

発端は一昨日の皿洗いであった。

 

俺はいつもどおりに夕食を終え、いつもどおりに皿洗いをしていた。

 

「明日はどうしようか……。最近は陰陽師の仕事もめっきり来なくなったし、自分から村の警戒にでも出かけようか?」

 

と、そんな呑気な事を言いながら、目の前にある泡だらけの食器を水で流していく。

 

蛇口を捻れば勢いよく飛び出してくる水は、この時代にはあり得ないものであり、この日ノ本の中で最も進んだ家具であると言えよう。

 

俺はこの便利さに感謝しながら、泡残しが無いように落としていく。

 

しばらく食器を洗っていると、突然異変が起こり始めたのだ。

 

蛇口も何も捻っていないにも拘わらず、目の前で排出されている水が一気にその勢いを無くしていってしまったのだ。

 

俺はその事に良く分からない焦りを感じ、蛇口を閉めたり開けたりして水の排出量を回復させようとする。

 

しかし、限界まで弁を開けても少量の水しか出てこなくなり、その少量の水で皿を全て洗う事になったのだ。

 

「おっかしいな~……何が問題なんだ?」

 

と、そう呟きながら、水道の止水栓を緩めに掛かる。

 

おそらく何らかの拍子で止水栓というバルブがしまってしまったのだろうと、当初は予想していた。

 

俺はその考えによって、シンクの下の扉を開けて、バルブの位置を確認する。

 

止水栓は目に留まりやすい位置にあり、すぐにその作業に取り掛かる事が可能になっていた。

 

「あ、このバルブはハンドル式じゃなくてドライバー式か。面倒くさいなあ」

 

そう思いながらマイナスドライバーを創造し、作業に取り掛かかろうとした時に、その異変に俺は気付いた。

 

「あ……れ? ドライバーが出てこない……?」

 

いつもならほとんど意識しなくても容易に創造できるドライバーが、手の中に全く現れてこないのだ。

 

俺はその事に、先ほどよりも大きな焦りを感じ、集中力を高めて創造しにかかる。

 

しかし、その成果は全く現れてこない。一瞬で現れるはずのドライバーが、今この場にないという事は失敗したということに他ならない。

 

「え? え? ちょ、ちょっと待った!」

 

俺はそう言いながら焦りに焦って、水道の事など放ったらかしにして、一晩中創造などの能力回復に努めた。

 

しかし、その努力もむなしく、夜が明けても事態は改善するばかりか、より一層混迷を極めた。

 

創造が殆ど使えなくなった上に、電力も喪失して部屋は真っ暗になり、何とかその場にあった蝋燭の光でやり過ごす羽目になったのだ。

 

 

 

 

 

そしてその翌日、俺はまた別の懸念事項が頭に浮かんできてしまったのだ。領域やジャンプ、飛行等は使えるのだろうか? と。

 

そんな考えが浮かんできてしまったものだから、一気に緊張感が増してきて、気道が締め付けられるような感覚に陥ってしまった。

 

もしこれらが使えなくなったらどうなってしまうのだろうか? 俺はこの先どう生活していけばいいのだろうか? と。

 

俺は使えない場合の事を考えると、どうしてもその検証をするという事に忌避感を感じてしまう。だが、同時に何故かその事を確かめてしまいたいという気持ちが存在してもいた。

 

その確かめたいという気持ちは、おそらくこの嫌な緊張感から逃れたいという逃避も手伝っていたのだろう。

 

時間が経つごとにその確かめてみたいという気持ちが先行し始め、ついに俺は一つ一つを検証する事にした。

 

まず一つ目にジャンプを検証してみた。

 

これは距離の長短に関わらず検証可能なので、室内での検証とした。

 

いつもなら部屋の端から端まではスムーズに一瞬で移動し、何事もなくその行為は終わる。

 

俺はいつもどおりに終わる事を願いながら、いつも以上に意識を高めて敢行する。

 

しかし、ただ頭に血が上っただけであり、状況に全く変化が無い。

 

「おいおい」

 

と、冗談で済む事を祈りながら回数を重ねていく。しかし、状況は先ほどと全く変わらず、むなしく時間が過ぎていくだけであった。

 

「…………はぁ、何が起きてんだもう……」

 

と、俺は気落ちしながら次の作業に移行していく。

 

次は飛行である。これも少々地面から浮けば全く問題ないので、室内での検証が可能となり、これも室内で行う事にした。

 

「これくらいは……できてくれよ!?」

 

そう言いながらまた意識を集中させていくのだが、これも前のジャンプと同様にむなしく時間が過ぎていくだけであった。

 

焦りはさらにさらに増していき、もはや口に出しておかなければ此方の身が持たないほどのモノとなってくる。

 

それは席を切ったように俺の口から飛び出ていく。

 

「ああヤバいヤバいどうしよう!! これじゃあ都にすらいけなくなる……!! 真面目にヤバい!!」

 

と、俺は大声を出しながら、目の前の現実を突きつけられ、否が応でも次の検証に入らなくてはならなくなる。

 

本気で何とかしなければならないと思いながら、最重要の能力である領域の発動の検証をしに掛かる。

 

もはや、これは現時点で発動していないのが分かるため、これも望みは薄いのだが、ある事を試してそれが本当に発動しないのかを検証してみる。

 

俺はドッカリと座っていた重い腰を上げて、気分が暗いまま、脇にある箪笥の引き出しを開けて、裁縫箱を取り出し、卓袱台に置く。

 

「これで発動しなかったらもう終わりだ……」

 

俺はあまりの緊張に吐きそうになりながら、震える手で裁縫箱をガチャガチャと開けていく。

 

しかし、手の位置が痙攣で定まらないせいか、箱のロックを上手く外す事ができず、その場でオタオタしてしまう。

 

「焦っているせいだな……」

 

と、自分の事をそう評価し、苦笑しながら左手の震えを右手で抑えながら、何とか開けていく。

 

この黒いプラスチック製の裁縫箱のを開けていくと、すぐに目的の道具が目に入ってくる。

 

「このまち針で何とかできるはず……」

 

そう独り言をつぶやきながら、確かめるように針刺しから抜いていく。

 

もしこのまち針が俺の手に傷をつけられずに折れたのならば、それは領域が発動して身を守ってくれたという事。そして手に刺さった場合は、領域すらも完全に消失してしまったという事。

 

領域が完全に消失したとなれば、俺は最早この世界で生き延びることは不可能に近い。俺がその状況を創りだしてしまったのだから、もはや望みはないと言えるだろう。

 

と、そこまで考えた時に唐突に脳裏に走った内容があった。

 

「ああ、消毒用に火が必要……か」

 

もしまち針を刺した時、領域が作動しなかった場合はそのまま針が皮膚を傷つけることになる。もしその時針に危険な細菌が付着していた場合は非常に危険なため、消毒が必要なのだ。

 

危険な細菌がついてなくても、それのせいで化膿する可能性があるため、いずれにせよ消毒が必要である。

 

俺は先ほど裁縫箱をとった箪笥に近寄り、最上段からチャッカマンを取り出し、ロックを外して点火して針を炙る。

 

数秒ほど炙った後に針を火から遠ざけ、少々室温で冷ました後に掌の上にセットする。

 

「嫌だなぁ…………これで…頼むっ!」

 

自分を奮起させるためか、それとも領域の存在を確約してほしかったのか、それとも掌に刺さっても痛くないように念じたのか?

 

どれともつかない短い願いを言って、素早く針を下ろす。

 

「つっ――――!!」

 

だが、もはやこれは確定したのか、それほどまでに鮮やかに針が皮膚を貫いた。

 

鋭く短く走る痛みに、思わず両瞼を閉じて声を上げ、手に持っていた針を放りだす。

 

そして痛みが引くと同時に目を開け

 

「くそっ――――!」

 

その声と共に裁縫箱を右手で薙ぎ払って卓袱台から払い落とす。

 

金属のぶつかり合う甲高い音と、プラスチックの箱が破砕する音の両方が室内に鳴り響き、鼓膜を激しく叩く。

 

それを見届けると、次には目頭が猛烈に熱くなり、次には大粒の涙がボロボロと溢れてくる。

 

果たしてその涙は、一体何の理由から溢れてきたのか。自分の望みが全て断たれてしまったからか。それとも刺し傷が再びジンジンと痛みだしてきたからか。もしくは、裁縫箱を薙ぎ払った右手の甲が痛みだしたためか。

 

いや、俺は望みが断たれたのだという事を思い知らされたために、涙を流しているのだと自ら判断し、その場で静かに泣き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は発端について考え、やはり力を失う原因がどこにも見当たらない事を確認すると、僅かに残っていた水を口に流し込み、渇いたのどを潤す。

 

「これからどうするか……」

 

突然力を失った俺は、孤立無援の状態からどのように生きて行くか。それが頭の中に浮かんだままで沈まない。

 

もしこのまま俺がダラダラと過ごしていたら、骨になるだけである。あらかじめ創造して保管しておいた食料もいずれは尽きるし、何より此処は以前まで妖怪が頻繁に居た場所なのだ。時が経てば俺の活動変化を怪しんで襲撃してくるに違いない。

 

その対策を何とか立てたいのだが、あいにく都までは直線距離にして30km以上は離れている上に、俺は体力がそこまである方ではない。どちらかというと一般人よりも少し低めなのだ。

 

俺はどうしようもない現実に、ため息を吐きながら立ちあがって心細い量しかない食料を消費しようと席を立つ。

 

すると、次の瞬間に家中に鋭く甲高い電子音が鳴り響いた。

 

「まさか……もう?」

 

その音に弾かれるように身体が身構え、音源の方向を見据えてしまった。

 

俺は今までの心境から、可能性の低い事柄ですらも過大に評価してしまい、もう妖怪等が襲ってきたのだと思ってそのままの態勢で玄関まで忍び足で行く。

 

廊下を歩いて玄関まで行くと、俺に先ほどとは真逆の安堵感が湧きでてくる。

 

玄関の磨りガラスの先には、緑色のショートヘアが見えたのだ。

 

間違いなく幽香である。

 

そう判断した俺は、あまりにも安心したために、幽香であるかどうかも確かめもせず、玄関のドアを開けた。

 

「はい」

 

そう言いながら俺は玄関を勢い良く開け、外の人物を出迎える。

 

ただ、今回は運が良かったためか目の前の人物は、俺の予想したとおりであった。

 

「耕也。こんにちは」

 

俺の予想した通りの人物である幽香がいた。

 

幽香は頬笑みを浮かべながら此方をジッと見つめてくる。

 

「いらっしゃい。……良かった。…………本当に……良かった…どうしようかと」

 

その顔を見ていると、先ほどよりもさらに安心感が湧いてきて、嬉しさとごちゃ混ぜになって心を支配していく。

 

そしてそれが瞬時に決壊し、また涙がボロボロと出て来てしまう。

 

「ちょ、ちょっと耕也!? 何で泣くのよ!?」

 

と、幽香は言ってくるが、それでも俺の涙は止まらずただただ流れていくだけであった。

 

「まったく……仕方が無いわね」

 

そう言いながら泣いている俺を抱きしめ、その温かい胸の中へと入れてくれた。

 

「好きなだけ泣きなさいな……事情は後で聞いてあげる」

 

俺はその言葉に、今までの感情が流れ出し、声を上げて泣いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ……そういう事だったの」

 

と、目の前に座っている幽香は俺にそう呟く。

 

俺は幽香に、俺の身に何が起こったのかを事細かに話し、先ほど泣いた理由を理解してもらったのだ。

 

すると、幽香は意外にも素直に納得し、俺の事を全面的に支持してくれる。

 

「確かにきついわねそれは。…………だから変だったのね?」

 

と、幽香は自問自答するように、小さく疑問の言葉を言う。その表情は、妙に納得がいった満足げな顔であり、周囲を見渡して、静かに何度も頷く。

 

俺はその妙に意味ありげな表情に疑問を覚え、小声で幽香に聞く。

 

「あの、幽香さん。変だったとは一体……?」

 

すると、此方を見て微笑みながら幽香は俺の質問に答える。

 

「私の家の水道や電気が機能しなくなった事よ」

 

俺はその事を瞬時に理解し、申し訳ない気持ちになった。

 

確かに今回の異常事態は、俺のせいではないという事は確かだが、だからと言って幽香に迷惑をかけたという事が無くなるという訳ではない。

 

俺の能力の喪失により、幽香も不自由したには違いないのだから。

 

「あの、すみませんでした」

 

俺が、頭を下げて言うと、幽香はあからさまにため息をしてくる。

 

やはり呆れられたかな? と思って顔を上げると、目の前にはデコピンをすでにスタンバイ済みの右手があった。

 

そして親指に抑えられていた中指は、親指からの解放によって速度が爆発的に増加し、俺の額に炸裂する。

 

幽香ほどの妖怪が持つ力は人間を遥かに凌駕している。それに伴ったデコピンは、それ相応の強さを持っており、普段なら領域で弾かれるのだが、今の俺に領域はない。

 

よってその衝撃は何の障害もなく俺に到達するのだ。

 

つまりは

 

「あ…………?」

 

あまりの衝撃に脳が揺らされ、俺は痛みよりも身体に力が入らなくなり、座ったまま後ろに倒れてしまう。

 

俺は両手両足を投げ出した状態で、視界が歪んだまま何が起こったか正確に把握できずにそのまま仰向けに倒れてしまっていた。

 

そしてそこに幽香が四つん這いで近づいてきて、俺に覆いかぶさってくる。

 

「耕也……。気にしないの。……分かった?」

 

それに俺はそれに感謝して、返事をする。

 

「はい」

 

段々視界が元に戻り、覆いかぶさって来た幽香の顔が正確に分かるようになってくる。

 

その顔は悲しみとも、喜びともとれるような複雑な表情をしており、幽香はその表情のまま俺を抱きしめてくる。

 

その瞬間に幽香から酷く甘ったるい匂いが漂ってきて、それを俺は思いっきり吸い込んでしまった。

 

匂いにクラクラしながら幽香を抱きしめ返すと、幽香は安心したような呼吸をして、顔を上げて俺を見下ろす。

 

その顔は慈愛に満ちた顔になっており、一体どれほど俺の事を思ってくれているのかがよく分かった。

 

「耕也。私の家に来ない?」

 

と、幽香は俺の保護を申し出てきた。

 

俺にとっては願ってもない事であり、またその言葉を聞いただけでも涙が溢れそうになってくる。

 

「耕也、貴方の危機に私が助けなくてどうするのよ……」

 

そう言ってさらに強く抱きしめてくる。

 

その力は妙に強く、こちらの息が苦しくなってしまうほどであった。

 

そしてそのまま顔を上げたかと思うと、顔を一気に近づけ、唇を重ねてくる。

 

「耕也ぁ……ん…ちゅぷ…あむ……れるれるれるれる……にゅる…れろぁ…」

 

いつまで続くか分からないような濃厚なキスは、俺の脳を完全に蕩けさせ、そのまま脱力してしまう。

 

幽香は俺が脱力した後も、執拗に下を絡めて唾液を俺に飲ませ、舌を絡めて吸い、転がし、犯しつくす。

 

やがて何分もそうしていたのか、時間の流れが曖昧になって来た頃に、幽香は漸く俺から離れ、上気した赤い顔で立ちあがり、此方を見下ろす。

 

そして屈んで俺の手を掴んで抱き起し、耳元で一言言う。

 

「さあ、私の家に行きましょう?」

 

俺はまだ快感が身体を支配しながらも、その彼女の言った言葉に再度聞く。

 

「でも……穀潰しが増えるだけに――――」

 

だが、その先は彼女の掌が口を覆ったために話す事ができなかった。

 

見れば、彼女は微笑みながら俺に向かって首を横に振っている。

 

「耕也、貴方は今私の家に来るべきなの。今のあなたは力が殆ど無いと言っても過言ではないわ。だから身の安全が確保されるまでは私の家に居る事。いいわね?」

 

俺はその言葉に素直に甘えることにし、幽香に了解の返事をする。

 

「よろしくお願いします」

 

すると、幽香は俺に手を差し伸べて言った。

 

「さあ、私が飛ばしてあげる。一緒に飛びましょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり幽香の家はいつ来ても綺麗だなあ……」

 

俺が幽香の家に来て、まず一つそう呟いた。幽香の家は、薔薇模様の壁紙や、クリーム色の薄いカーテン等の目に優しい配色がなされており、心が安らぐ素となっている。

 

俺の呟きを聞いたのか、幽香は微笑みながら、俺に応えてくる。

 

「耕也、貴方の家は古過ぎるのよ。もう少し新しくしてみなさいな」

 

「まあ、そうだけども、俺は今能力は使えないし」

 

そういうと、少し目を見開いて口に手を当て、驚いたように此方に話してくる。

 

「ああ、そうだったわね。ごめんなさい」

 

俺としても、彼女に余計な気を使わせてしまったと考え、フォローする。

 

「いや、此方こそごめん。余計な事を言ってしまったね」

 

俺がそう言って幽香に謝ると、幽香は微笑みながら手をヒラヒラさせながら言ってくる。

 

「ふふふ、大丈夫よ。謝ることじゃあないわ。これからじっくりと直していけばいいのだから……」

 

と、言いながら幽香はクルリと俺に背を向けて、階段を上がっていく。

 

数段彼女が上がっていくと、此方を振り向いて見下ろし、言葉を放つ。

 

「ほら耕也、いらっしゃいな。貴方の泊るところを案内してあげるから」

 

俺はその言葉に何の疑問を持たずに、階段を上って幽香の後についていった。

 

階段を上っていくと、現れてくるのが非常に広いと思える廊下。ピンクに近いじゅうたんが敷かれ、足裏を温めてくれる。

 

これなら寒い冬もマシになるなと一人考えながら幽香の入ったドアへと入っていく。

 

「耕也の部屋は此処よ。どうかしら?」

 

まるでその部屋は、いつ俺が来ても良いように整備されていたかのように思えるほど整えられていたのだ。

 

俺は、幽香のあまりの手際の良さに少々驚きながら、幽香に対して返答していく。

 

「いや、これは本当にすごいね。前々から準備してくれていたように思えるよ」

 

と、当たり障りのないように言葉を選んで言う。

 

幽香は俺の言った言葉が気に入ったのか、微笑みながら俺に返答してくる。

 

「ええ、当たり前じゃない。ずっと住むのだから整えておかなきゃ」

 

俺は幽香の言った言葉に違和感を覚え、尋ねようとする。

 

「ああ、幽「耕也、下で紅茶でも飲みましょう? クッキーもあるわ。貴方が前に教えてくれた。」……はい」

 

俺は幽香の言葉に質問を遮られてしまったが、まあ、それほど気にする事でもないだろうし、おそらく俺の聞き間違いか、解釈をし損ねたのだと判断して、幽香の後についていった。

 

階段を下りて、幽香に促されるままに椅子に座っていると、幽香が非常に爽やかな笑顔で、此方に紅茶を載せたトレーを持ってくる。

 

「どうぞ」

 

と、上機嫌な声で紅茶を置き、テーブルの中央にクッキーの大皿を置く。そして幽香は大皿を置くと、俺と対面して座り、紅茶を啜り始める。

 

一口、また一口と紅茶を飲んでいき、カップをカチャリと置き陶器同士が発する接触音を出すと、微笑みながら口を開く。

 

「耕也、これからどうするか話し合いましょう?」

 

これは俺にとっても一番望んでいた事であり、早急にこれを解決したい事でもあった。

 

今はまだいいかもしれないが、もしこの状況が続くとなると、さすがにお互い気まずくなることもあるだろうし、さらには俺の力の回復手段も手に入れたい。

 

もしこのまま回復しなければ、俺としても陰陽師の仕事ができなくなるのは必至であり、非常に望ましくない。

 

だから、俺は積極的に幽香と話しあう事にした。

 

「幽香、願ってもない事だよ。力の回復はまず第一目標だと思うのだけれども」

 

そういうと、幽香は、ニッコリとしてゆっくりと頷き、答える。

 

「ええ、確かにそうね。でも耕也、それよりもここでの生活についても話さなきゃ」

 

確かに幽香の言う事も、最もである。此処で生活するに当たっては、彼女なりのルールというモノがあるだろうし、もしかしたら仕事を与えられる可能性もあるのだ。

 

働かぬものは食うべからず。まさにこの言葉が今の俺に当てはまるのだ。

 

「ああ、うん。そうだね、何でも言ってくれ。仕事でも何でもするから」

 

そういうと、先の笑みよりもずっと強くしながら、ゆっくりと頷く。

 

「嬉しいわ耕也。でも耕也、例えば貴方に仕事を頼んだとするわ。そうすると、貴方は外で仕事をしなければならなくなる。なぜなら私の頼む仕事は花達への水やりだから。もう分かるわよね?」

 

確かにそれは厳しいだろう。体力的にかなり厳しい。しかし、宿や飯まで提供してもらっているのにも拘らず、仕事をしないというのは流石に容認できない。

 

俺はそれについても彼女に話していった。

 

「な、なら部屋の掃除や食器洗いとかは……?」

 

しかし、幽香は首を横に振ってソレを否定してくる。

 

「駄目よ。この家の使い勝手は、誰よりもこの私が分かっているから効率的に考えても一人でやった方がいいわ」

 

そして幽香は、俺の方を見ながらさらに話していく。

 

「…………耕也、外は貴方にとって危険がいっぱいなの。お分かり頂けるかしら? そうね、……今後の事を私が言ってあげましょうか。貴方は外に出れば妖怪に殺されるのは確実。私は最近此処に来る輩を追い返したり、花の世話をしなくちゃならないから、貴方につきっきりでいるわけにもいかない。だから」

 

そういうと、幽香は先ほどとはまるで別人のような黒い眼をして脅すように言ってくる。

 

「この家から出ちゃダメよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「え? あの、出たらダメって……いや、その……」

 

俺は幽香の言った言葉が理解できず、ドモりながら聞き返す。

 

すると、幽香は、その泥沼のように濁ってしまった目を隠さずに、さらに深い笑みを浮かべて答える。

 

「やっと見せてくれた……。……だから、貴方はこの家から出ては駄目。外は危険なのよ? 貴方は力が使えないのだから、ずっとここに居るしかないの…………」

 

俺はその幽香の言葉を理解し、思わず椅子から立ち上がってしまう。

 

しかし、なおも幽香は俺から目を話さずに話し続ける。

 

「私は貴方がいなければ駄目なのよ……。……ずっと思ってたの。貴方を手に入れたい。モノにしたい。永遠に交わっていたい……フフ」

 

そう言いながら立ち上がり、俺の方に近づこうとしてくる。

 

怖い、本当に怖い。恐怖で身体が硬直して動かない…………。領域を失ってから初めて分かる。妖怪として発する自然な恐怖と、独占欲からくる恐怖が複雑に絡み合ってくるのだ。

 

「いや……だ……」

 

幽香がゆっくり、ゆっくりと歩みを進めてくる。

 

「さあ、耕也……もう此処から出ちゃダメよ?」

 

その声に俺は何かが切れたのか、身体の硬直が解け、弾かれるように玄関のドアに向かって走り出す。

 

自分でも、どこに向かえばいいのか分からないまま、ノブを回して蹴り破るような勢いで外へと飛び出す。

 

目の前に広がるのは、いつもと同じ光景である黄色い絨毯。一面の向日葵畑。

 

だが、そんな景色を楽しむ間もなく、俺は何とかしてこの恐怖を鎮めたくて向日葵畑を駆け抜けて行く。

 

……一体どうしてこんな事に…。

 

走っている間にそんな考えが浮かび、思わず涙が出てきそうになる。

 

しかし、それも一瞬で思考を改めなくてはならなくなってしまった。

 

「うわっ――――!」

 

突然の衝撃に声が出てくる。そして次の瞬間に、右足が何かに強く引っ張られるような感覚がし、バランスを崩した身体はそのまま強い運動エネルギーを持ったまま、地面に強く叩きつけられる。

 

叩きつけられた際に腹部を強打したのか、喘息のように咳がでて、呼吸がしばらくできなくなる。

 

「な、何……が………?」

 

かすれた声でそう呟くと、掴まれた感覚のした右足へと視線を移す。

 

「マ……ジか…よ…ゲホッガホッ」

 

俺の視線の先には、右足に何かの植物のツルが巻きついていたのだ。

 

そのツルは、太いわけではなく、普通のナイフでもあればすぐに切れそうなほどである。

 

「ケホケホ……ナイフだ…」

 

俺はナイフが創造できないかを試していく。もうこれができなければ、俺は幽香に捕まり、一生外に出ることができなくなるであろう。

 

頼むからこれだけは…………っ!!

 

そう思いながら目を閉じ、意識を一瞬だけ強く強く集中させる。すると、不思議な事に何故か一瞬だけ意識が軽くなり、掌にズシリとした重みが来る。

 

急いで目を開けると、そこには綺麗なナイフがあったのだ。

 

「これで……」

 

俺は今ある力をナイフに全て込め、巻きついている蔓に向かって振り下ろす。

 

何度も何度も振り下ろす。やがて、ツルが根負けして切れてしまう。

 

「やった……」

 

そう力無く呟いた俺は、再び足に力を込めて走り出す。

 

……しかし、それはむなしくも叶う事は無かった。

 

先ほどよりも太いツルが、目の前の道を、布を縫うように複雑に縦横に絡み合って頑丈な壁を形成してしまったのだ。しかもその壁は、俺のきた道の横壁まで形成してしまったから、向日葵畑を突っ切る事ができない。

 

「…………何……で」

 

俺は蔓に近寄り、急いで叩き始め、さらには先ほどのナイフを突き立て始める。

 

しかし、先ほどの蔓よりも遥かに強度のある蔓は、ナイフの攻撃など歯牙にもかけぬほどであり、文字通り、全く歯が立たない。

 

俺はそれでも背後からくる恐怖から逃れたいがために、必死に素手で叩き始める

 

「頼むから……頼むから……」

 

そんな事を呟きながら叩いていく。無駄な事だと分かっていても、俺は逃れたいがために叩いていく。

 

だが、その悪あがきも後ろから聞こえてくる声によって中断せざるを得なくなってしまった。

 

「こ~う~や~…………?」

 

俺はその声のもとに身体を向け、蔓の壁に背を預けるようにして後ろを振り返る。

 

「ひっ……!」

 

すでに幽香は2m程まで近づいており、もはやそれがチェックメイトであるという事を如実に表していた。

 

「さあ、家に入りましょう? 耕也。…………もう出ちゃダメよ?」

 

そう言いながら俺にゆっくりと近づいて、ゆっくりと、されどしっかりと抱きしめてくる。

 

そして幽香はおもむろに俺の肩にまで顔を移動させる。俺が、何をやるのだろうという疑問を抱いた瞬間に、肩に鋭い痛みが走った。

 

「いっつっ――――!!」

 

そして離れた彼女の顔を見てみると、彼女の口元が赤く染まっていた。ソレを見た俺は、瞬時に理解し、さらに恐怖を増長させる羽目になってしまった。

 

それは誰が見ても明らかであるように、彼女の行った行為は勿論、俺の肩の肉を抉ったのだという事だった。

 

幽香は、歪んだ笑みを浮かべながら、顔をうっとりとさせて呟く。

 

「耕也の血って……あまぁ~い。……とってもおいしいわぁ~……」

 

そう呟きながら、流れ出す肩の血を舌で舐めとっていく。

 

その流れ出す血を舐めとっていかれる感触が妙に俺の心をざわつかせ、さらには恐怖感も伴わせるため、自然と目から涙があふれてしまっていた。

 

そして幽香は、ひとしきり血を舐めとった後、とても満足そうな顔をして俺に笑いかけながら喋る。

 

「ねえ耕也。……これでわかったでしょう? 貴方はこんなにも簡単な攻撃に対処する事ができないの。対処することすらできないの……分かるかしら?」

 

そういうと、スッと顔をよせて強く強く抱きしめてくる。

 

そして口を耳元にまで寄せて呟いてくる。

 

「だからあなたは私の保護が必要なの……ずっとずっと……永遠にね」

 

その言葉を聞いた瞬間に、首にチクリと何かが刺され、ゆっくりと意識が薄れていった。

 

「愛してるわ……耕也」

 

 

 

 

 

 

 

 

私にとって、耕也の存在は大きかった。とてつもなく大きかった。自分で制御できないほどの大きな存在だった。

 

今回の耕也の事情を知ると、自然と耕也を自分のモノにして、一生世話をしてやりたくなってしまったのだ。

 

だから、耕也のあの顔を見たときには、あまりの興奮に秘所から濃厚な汁が溢れてきてしまったほどであった。

 

私という妖怪を前にして恐怖の色を一つ見せなかった耕也。

 

それが今日、初めてその恐怖の色を私に見せたのだ。本当に愛しい顔であったのだ。

 

私がゆっくりと耕也に近づいて、抱きしめてあげようとすると、恐怖の顔を浮かべて逃げてしまう。

 

本来なら少し悲しい事だが、これも耕也がこの家で永遠に暮らすためだと考えると、全く悲しくならない。

 

だが、あの言葉は実に良く、私の心に潤いを与えてくれた。

 

「いや……だ…」

 

その言葉とともに耕也が逃げ出していく。

 

耕也が走る姿は、いつもと違って恐怖が滲み出ており、私にとってはこの上ないほど美しい走り方であった。

 

最早それは芸術の類であり、私はその芸術品を一刻も早く確保しなければという気持ちになってしまうのだ。

 

だから、少しずつ離れていく芸術品であり、私のすべてである耕也を手に入れるべく、耕也を転ばせてしまった。

 

転んだ耕也は非常に苦しそうな顔をしており、私の心が少し痛んでしまった。だが、これは仕方が無い事なのだ。耕也と永遠に暮らすためには決して外せない事なのである。

 

傷ついた芸術品は、価値が下がるという。しかし、それは世間一般の価値であり、見るモノにとってはそれは国宝を軽く凌ぐ宝にすらなるのだ。

 

そう、耕也はまさにその水準にある。私だけが耕也の価値を分かる事ができるのだ。そして私だけが所有していい芸術品であるのだ。

 

そして目を向けてみれば、転んだ耕也が蔓を解き、必死に逃げだそうとしている。でもここまでは全て計算通り。

 

私は能力を使用し、蔓で作った檻を形成して、耕也を閉じ込める。

 

無駄にあがく姿を眺めているのも非常に満足のいく良い光景ではあるが、やはり直に触れて愛でてやりたい。

 

私はゆっくりと耕也のすぐ後ろまで移動し、声をかける。

 

「こ~う~や~…………?」

 

すると、耕也は面白いように身体を反応させ、まるで壊れかけのカラクリ人形みたいな動きで此方を見てくる。

 

その表情は恐怖の色が色濃く滲んでおり、私は思わず叫び出して思いっきり抱きついてしまいたい衝動に駆られる。

 

それほど耕也の表情に愛しさを感じてしまったのだ。

 

だが、彼を手に入れる前に、一つだけしなければならない事がある。それは妖怪なら一部を除いて誰しもがしたくなる行為。

 

私は彼にそっと抱きついてやり、肩の肉をほんの少し抉ってやる。

 

「いっつっ――――!!」

 

そんな声が聞こえてくるが、私は彼の血と僅かな肉に酔ってしまったのだ。初めて口にした人間の血と肉。耕也は特別な人間であるからさぞかしうまいのだろうと思った時期もあったが、それは正しかった。

 

美味しい。あまりにも美味し過ぎる。さらに、秘所から高い粘度を持つ蜜が大量に溢れて、股を伝って地面へと流れていく。

 

私は耕也の血肉を味わった後、最後の作業に掛かる。

 

私が改良に改良を重ねた特殊な植物から抽出した特殊な効能を持つ薬種。

 

種の先端が尖っており、人間の首筋などに刺して種の部分を押してやると、中の薬液が侵入するというモノである。

 

効能は、一時の気絶の後、目を覚ました瞬間に強烈な媚薬効果と筋弛緩効果をもたらす凶悪なモノである。

 

これは、彼を私のモノにするには必要不可欠なモノ。

 

だから私は耕也に

 

「あなたは私の保護が必要なの……ずっとずっと……永遠にね」

 

そう言って注射をした。

 

「愛してるわ……耕也」

 

永遠に。永遠に。未来永劫この魂が砕け散ろうとも貴方を愛し続ける。私、風見幽香は大正耕也を、貴方を一生愛します。一生愛します。

 

永久に。永久に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷には、綺麗な黄色の絨毯があると言います。

 

そこは一面が向日葵畑であり、管理人は優しい優しい妖怪である風見幽香。

 

彼女は困っている人間を助け、また積極的に人里の防衛や交流をします。

 

あまり彼女を知らない人は、よくこう言うそうです。

 

なぜ妖怪なのに人間を助けるのか? と。

 

ソレを聞く度に、風見幽香をよく知る人間は決まってこう口を開きます。

 

彼女を永久に愛する人間と、その彼を永久に愛する妖怪がいるからだ。と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、まさに風見優香と、風見耕也という夫婦が幻想郷に居るからこそ、人里と太陽の畑には活気と幸せがあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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