東方高次元   作:セロリ

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8話 よし落ち着け。俺は何もしていない……

誤解ってホント怖いよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪子の神社で暮らしてから、はや200年。年をとらなくなってから月日がたつのが本当に早く感じる。

 

その間俺は惰眠をむさぼっていたのではなく、俺は自分の力にさらなる発展をさせてみた。

 

まずはジャンプ。自分の言った場所や視界の範囲内であれば、ビーム転送をして行き来できるようになった。

 

次に食糧を創造できるまでになった事がうれしい。ただし、前世界で自分の食べた物しか想像できないけど。

 

フォアグラやスッポン肉を創造しようとしてもできなかったし。さらには当然かもしれないが生命は創造できない。

 

機械類は創造できなくもないがジェット機やロケット等の高度な工業製品などは、今は無理らしい。キャンプセットは余裕なんだがな。

 

こういうのを把握してると案外化け物じみてるなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてある日、俺が自作した缶ココアを庭でのんびりと飲んでると、そこに諏訪子がやってきた。

 

何やらニヤニヤしている。なんなんだ?

 

そう思いながらも好奇心に素直に従い尋ねる。

 

「どうしたんだ?」

 

すると諏訪子がとんでもない事をのたまった。

 

「子供ができた。」

 

思わず俺は自作の缶ココアを地面に落してしまう。

 

え? なんだって? 子供?

 

きっと聞き違いに違いない。そうだ、聞き違いに決まってる。

 

「諏訪子、良く聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」

 

すると諏訪子はより一層ニヤニヤしながら

 

「だから、子供ができたんだよ。」

 

……何だと?嘘だろ?

 

真偽を確かめるために、さらに聞く。

 

「嘘だよな?」

 

「だから、嘘じゃないって。」

 

いやいやいやいや。待ってくれ。意味が分からん。

 

「お前誰とこさえたんだ!? いつ、どこで、誰と!? まさかのまさかの俺!?」

 

すると諏訪子が爆笑しながら

 

「アハハハハハハハハ!! だれともしてないよ!」

 

という。

 

意味が分からない。キリスト教じゃないんだぞ? んなアホな。

 

そう俺が頭を抱えてると、諏訪子は俺が混乱しているのをさとったのか、理由を話し始めた。

 

「実はね。これは皆の信仰のおかげなのさ。ほら、お前がここに来てから生贄をやめただろ? 産めよ増やせよってね。それのおかげで今までよりも信仰が格段に増えた。

そこでさらに、身近にいて民を守る存在が必要だと考えたのさ。その結論が神の子ってわけさ。だから増えた分の信仰を使って子を成したってわけ。」

 

そう、なぜか諏訪子は俺が神社に住み始めてから一切人間の生贄を拒否したのだ。その代わりにひと月に一頭の割合で、鹿や猪の生贄を捧げるように命令した。

 

これには住民も願ってもない事であり、満場一致の喝采で迎えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、生命を自力でか……本当に不思議な世界だ。恐れ入るよ全く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして諏訪子は無事元気な女子を出産し、里の長の養子になった。

 

出産の際はどうしたかというと、俺は「男なんぞに任せられるか!」と、外に追い出されミジャグジがお産婆役をやった。

 

まあ、俺が手伝えることなんてたかが知れていたし、やった事といえば汗を拭くタオルと、ぬるま湯の入ったプラスチックの大きな桶、お産セット等々を用意するだけであった。

 

哺乳瓶や粉ミルクも用意した方がいいだろうか? なんて思ったが杞憂だったようで、諏訪子はしっかりと世話をする事ができた。

 

そして養子になる日は、生贄をささげる日に長に対して諏訪子自身が直接頼み込んだ。

 

別れた後は諏訪子が大泣きしてしまい、慰める羽目になってしまったが。俺だって泣いていたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は人々の笑いや、神である諏訪子の表情の豊かさを見ながら思う。

 

この光景が崩れることなく、ずっと続いてほしい。と。

 

しかし、俺には分かっている。いつか八坂神奈子の所属する大和と、洩矢諏訪子の治める諏訪がぶつかりあう事を。

 

さて、次は戦争だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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