東方高次元   作:セロリ

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93話 まあ、何とかなったかな……

後から急激に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…………戦う順番はどうしようか……?」

 

と、俺が周りに向かって言う。

 

勿論、周りにいるヒト達は幽香、紫、鉄木であり今回の腕相撲の参加者である。

 

一体この先どうなるのやらと思いつつ俺は彼女達に質問をしたのだ。どういった順番で戦えば彼ら鬼に勝つ事ができるのか。

 

今回、向こう側はどういった組み合わせで勝負を挑んでくるのかを開示してはいない。勿論、此方側も開示してはいないが。

 

殆ど運任せのような状況に、相手が力自慢ばかりだという要素まで加わってくると、負の要素に押しつぶされて負けになってしまいそうな気がしてならない。

 

ああめんどくせえ。なんて思いながら、彼らの反応を待つ。

 

すると、考える仕草をしていた紫が顔を上げて、俺の方をじっと見る。

 

そして、ニッコリと笑いながら手を上げて口を開き始める。

 

「耕也。一応此方の手段というか、相手の順番を予想しつつの順番を提案していくわ。良いかしら?」

 

「ん。じゃあ、お願いします」

 

と、俺が彼女の提案を許すと、頷きながら口を開き、言葉を口に出していく。

 

「正直なところ、これは殆ど憶測であり、適当な配置であるとは言い難いわ。なぜなら、彼ら鬼は純粋な力で言えば殆どの妖怪を凌駕するほどの力を持っている。耕也は知っているかもしれないけれども、黒谷ヤマメ。あの怪力を誇る土蜘蛛でさえ敵わないほど。つまりはこの順番決めも気休め程度にしかならないかもしれない。それでもいいかしら?」

 

そう言って、再び彼女は口を閉じて全員の顔を見渡す。

 

勿論そのような事になってしまうのは予想できているし、全員の頭の中でも同じ答えが出てきているだろう。

 

俺達にできて、鬼達にできない事。この腕相撲ではそのアドバンテージといったものが非常に少なく、此方が勝つ要素がガクンと下がってしまっているのだ。

 

そして、ソレを埋めるための一つの手段も完全に潰されてしまっていると言っても過言ではないだろう。

 

それは、紫の隙間での盗み見、盗み聞きである。

 

隙間を経由して彼ら鬼達の作戦を丸裸にしてしまうという事であるが、そんな事が分からないほど彼らが馬鹿であるわけが無いし、さらに言えばバレたら一大事である。

 

鬼達が最も嫌う「卑怯」な行為。こういった卑怯な行為が地上で為されたためがゆえに、地底にまで来たのにも拘らず、またもや人間、そして同類の妖怪にまでそこまでの事をされたら、もう勝負どころの話ではなくなるだろう。

 

俺の地位も、更に下の下まで落ちるだろうし、何より今回の勝負を嫌そうにしながら受けてくれたのは、少なからず「大正耕也」なら正々堂々とした勝負をしてくれるだろうと信じてくれているのだろうから。

 

だから、この提案は頭の中だけに留めておこう。そして、誰かが提案したらソレも止めるように意見しよう。

 

そう思いながら、紫の言葉に返事をする。

 

「うん、それでも大丈夫だよ。話しを続けて紫」

 

その言葉に、幽香と鉄木も頷きを返し、紫に話しの続きを促す。

 

紫は勿論肯定と受け取り、再び話をし始める。

 

「まず一つ。鬼達は、非常に厳しい縦社会。天狗よりも厳しい縦社会よ。四天王や鬼母神、その他大勢の鬼との地位の差には、流石の私でも吃驚するほどの。例外はいるかもしれないけれども。そこで、今回はこれを利用するわ。彼らは、弱いものから順に出してくる可能性が高いという事。縦社会と同じくね。もしこの予想が当たるのなら、それに沿った順番決めをしなくてはならないわ」

 

そう言って、紫は息を吐いて、また深く吸い話す。

 

「まず一番手、これは幽香。貴方が適任よ。最初に出てくる最弱を圧し折って相手の出鼻を挫いてもらうわ。そして、二番手は私。勝てるかは分からないけれども、何とかやってみるわ。三番手は鉄木、踏ん張りなさい。最後は耕也、相手が変則的な順番にしてきた時の最後の砦。頑張って頂戴。……以上よ。いい加減な決め方になってしまうけれども、これで何とか頑張ってくださいな。……良いですわね?」

 

この意見に対して何かしらの反論は無いかどうかを皆に確認していく紫。

 

紫が、皆の顔をぐるりと見渡したところで、スッと手が挙がった。鉄木である。

 

鉄木は何か思う所があるのか、少々困ったような、そして笑っているような顔を紫に向ける。

 

紫はその動作に素直に反応し、意見を述べるように促していく。

 

「どうぞ、鉄木」

 

すると、鉄木は

 

「紫さんの隙間とやらで、相手の動向を探る事はできないのですか……?」

 

………………うん。言うと思ってた。こいつなら俺の期待に応えてくれると思ってた。嬉しくて涙が出ちゃいそう。

 

………………うん、とりあえずそんな事をやったら激ヤバな事態になる事を少しぐらいは察しろよ。紫がその案を出さなかった事を考えろよ。この中でずば抜けて頭が切れる紫がそんな事を思い付かないわけが無いだろ? 御前さんは賭博経営してるからこういった出し抜くことが好きかも知れないが、相手は鬼だぞ?

 

という言葉が口から出てきそうだったが、グッと堪えて紫の反応を待つ。

 

が、紫もこの事については流石に予想外だったらしく、口をあんぐりと開けたまま俺の方を見てくる。

 

幽香は、最早鉄木の言葉に興味を失ったのか、煎餅を6枚重ねで食べられるかどうかに挑戦し始めている。

 

なんだろう、この気まずい空気は。物凄く罪悪感を感じるのは何故だろうか? この意見を言わせてしまった俺に罪があるかのようなこの空気に現実逃避をしたくなってきた。

 

どうすんべよまったく。

 

そう思っていると、紫が漸く我に返って鉄木の方を見ながら、口を開く。

 

「鉄木。貴方が鬼という妖怪をどれほど理解していないかが、良く分かったわ」

 

そう言って、息を大きく吸うと一気にまくしたて始めた。

 

「前も言ったように鬼というのは非常に嘘や卑怯といった行為を嫌うの。それはもう地上から地底に来る水準で嫌っている。にもかかわらず、彼らが会議している所に此方から仕掛けたなんてバレたら目も当てられない事態になるのは明白よ。そして、鬼達は此方の行動を察知できないほどお馬鹿じゃないのよ。お分かり頂けるかしら?」

 

と、かなりきつめの口調で鉄木に言う紫。

 

これには流石に鉄木も身に染みたのか、怯えた顔をしながら、黙って頷く。

 

紫はその反応に満足したのか、ふぅっと軽く息を吐きながら、此方へと顔を向けて再び話の続きを口にする。

 

「さて……この中で確実に勝てるのは……耕也……かしら?」

 

と、ちょっと自信なさそうにではあるが、聞いてくる。

 

聞かれた配位が、どう返したらいいのかちょっと悩んでしまう。

 

何せ、相手は異常な力を誇る鬼。さらに言えば、俺は最後であり、相手は最も力の強い鬼である可能性が非常に高いのだ。

 

それに対して、俺は人間であり、元々の地力は低いどころか、鬼の大将と比べたら無いに等しいのだろう。

 

ソレを解消するために、生活支援と領域が存在するのだが、これまたこいつらの特性が厄介なのである。

 

まず内部領域は、俺にとって害のある接触等が行われた場合に反応するのであり、相手がそこに至るまで力を解放しなければ、スル―してしまう。

 

逆に、生活支援はそこに至るまでの力に対して非常に有効である。そして、その後は領域にバトンタッチといったところであろう。

 

生活支援の場合、俺がこれぐらいで大丈夫だろう。この力は大き過ぎるから、此処まで軽減してほしいなあ、等といった認識をするという事が大前提になってくるのだ。

 

よって、鬼が領域の作動範囲外かつ生活支援の認識速度を上回る力を加えてしまった場合、確実に俺が負ける。

 

逆にいえば、そこの一点しか弱点が無いという事であり、相手が俺の力を試すように徐々に力を加えていくやり方、または一気に俺を潰そうとフルパワーで仕掛けてくる場合、それに準ずる行為をしてきた場合は、生活支援、領域の両方で対応可能なのである。

 

正直本音を言うと……力勝負は苦手だよまったく……。

 

今更ながら、依頼を受けなければ良かった何て思いながら、俺は紫に言葉を返す。

 

「まあ……行けるとは思うよ? 領域があるし」

 

その言葉と同時に、ツインチャージャーみたいな使い方だな俺の力って。と、そんな事を脳内に浮かべていた。

 

低回転ではスーパーチャージャーで過給を行いトルクを増大。高回転でターボチャージャーで過給を行う。

 

まさに生活支援と領域はそんな関係だなと。

 

まあ、力勝負、今回に限ってではあるが。

 

ふう、と溜息を吐いてから、どうなるんだろうなあと思いながら茶を啜っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪、特に鬼達は祭りごとやら宴会等、騒ぐ事が大好きなようで、高々鉄木一人の為の賭けごとであるにもかかわらず、商店街のど真ん中に大勢押しかけて来た。

 

そこで急遽場所を変更し、商店街と俺の家の丁度中間あたりに設けることとなった。

 

とはいっても、集まるのは仕方が無いのかなとは思う。鉄木はともかく、同胞を見まもるために駆けつけるという事と、妖怪達に対して絶大な影響力を持つ紫。莫大な妖力を持ち、自他共に認める最上位とされている幽香がこのメンツにいるのだ。集まらないわけが無い。

 

そう思いながら、ヌボーッと幽香達と一緒に立っていると、どうしても俺の方にも視線が来るようで。

 

「大正耕也がいるぞ……」

 

「本当だ本当だ……力はどうなんだあいつは? 強いのか? 弱いのか?」

 

「いやぁ、わからんねえ。あやつは前回の決闘では純粋な力を見せてはいなかったからのう……」

 

と、色々と噂されている。

 

あれ、ひょっとして俺の方が注目されてるんじゃ……? と、思いながらも俺はヌボーッと立ち続ける。

 

そうして時間の経過を待っていると、後ろから大声が響き渡ってくる。

 

「来たぞ、栄香様だ! これなら絶対に負けないぞ!」

 

その大声を皮切りに、鬼達が一斉に歓喜の叫びを上げ始める。騒がしいのなんの。

 

紫と幽香、鉄木はすでに耳栓を実行しており、俺もそれに倣って耳栓をする。

 

そして数秒後、鬼の集団がまるでモーゼの奇跡のように、一気に左右へと別れていく。

 

そこを悠々と歩いてくるのは、鬼の大将であり、鬼子母神である栄香。後ろにいるのが才鬼と勇儀。そして最後に昨日酒場にいた鬼。

 

その姿を見た瞬間に、口が勝手に開いてしまった。勿論純粋な驚きという意味で。

 

おいおい、一個人の揉め事に四天王とボスまでチョッパって来るのかよ……。

 

そんな感想を頭の中で浮かべながら。

 

とはいえ、此方の陣営も散々なモノである。考えてみれば、幽香と紫を連れている時点で人の事を言えないのだ。

 

要は、どちらもぶっ飛んでいるという事であろう。

 

今更ながら、大事になってしまっている事実に気が付いた俺がいる。

 

いや、俺の予想では四天王なんて出すとは思っていなかったはずなんだ。

 

まあ、蓋を開けてみればこの通りではあるけれども。

 

そうズラズラと頭の中で考え事をしていると、栄香が此方へと近寄ってくる。

 

勿論その姿は非常に美しく、強く見え、思わずデジカメで撮ってしまいたくなるほどの絵だと思った。

 

まあ、こんな事を口に出したら先ず俺が不戦敗になりそうなので、口には出さない。

 

そして、ゆっくりと近づいてきた栄香が俺の方へと手を伸ばし一言。

 

「本来ならば人間と一戦交えるとは思わなんだが……まあ、宜しく頼む。当たるとは限らんがな」

 

と、一応の挨拶。

 

それに俺は握手で返し、また一言返す。

 

「まあ、何とか負けない様に頑張りますよ。栄香さん」

 

その言葉をいった瞬間に、開戦と捉えたのか、鬼達、外野が一斉に騒ぎだす。

 

中には、栄香様と呼べ! 等といったヤジも飛んでくるが、そんな事は気にしない。

 

というよりも、それ以外の声が煩過ぎて気にしているほどの余裕が無いのだ。

 

すると、もう十分だと思ったのか、栄香が左手をスッと上げて周りを落ち着かせる。

 

上げた途端に、何処の国の軍隊かと思う位に、ピッタリと音が止み、一気に静かになる。ああ、カリスマってのはこう言った事を指すんだろうなあという感想を持ちながら、握手している右手を離す。

 

そして、驚きの次に湧きでてくるのが、相手の出方であった。一体だれをどの順番で腕相撲へと投入してくるのか。

 

それが分からないと、不安で仕方が無い。少々心配性なのが仇となっているのか、心拍数がうなぎ上りである。

 

これでは出せる力も出せなくなると思い、俺は深呼吸をして落ち着かせようと試みる。

 

が、しかし

 

「だあめだこりゃ」

 

一向に心拍数が下がる事が無い。

 

どうしようかな本当にと思いながら、その後は水を飲んだり色々としてみたが、緊張しっぱなしであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一回戦。

 

勿論、此方側の一番手は鉄木であり、どう考えても黒星が入りそうな力の持ち主である。鬼と比べた場合ではあるが。

 

そして、向こう側は此方の予想通り、先日俺が会った鬼であった。

 

名は確か……威快といったか。なんだか鬼の名前っぽくは無いが、その鬼が今回の鉄木の相手なのである。

 

向かい合っている鉄木は……やる気満々ではあるが、少々腰が引き気味というか。ちょっと萎縮しているといった感じか。

 

何とも初っ端から負けそうな空気をぶちまけている鉄木だが、言葉だけは一丁前であった。

 

「御前のような雑魚にゃあ絶対に負けん! 速攻で片づけてやる!」

 

勿論、それは鬼にとっては挑発以外の何ものでもなく、少々怒りを買う事になった。

 

「言ったなお前……。鬼に嘘を吐くなよ?」

 

なんだろうか。数日前に負けたくせにもう同じ相手に勝てると思っているのか。いや、それか俺達が取り返してくれるという事を前提に話しているのか。

 

なんだかよく分からない自信の表れに、紫が大きく溜息を吐いた。

 

俺は頭が痛い。

 

別の競技にしておけば負けずとも済んだかもしれないというのに……。

 

と、後悔してもそれは遅く、すでに両者は大きな大理石でできた一枚テーブルにお互いの右手をセットしていた。

 

ここでも仕切りたがるのは鬼の性分らしく、栄香が誰にも断りを入れずに審判をし始めている。

 

まあ選手が審判をするというのもおかしい事ではあるが、実際にこの中で審判をできそうなのは栄香と紫ぐらいだし、それは仕方が無いのかなと思ってしまう。紫は特に異論も無く、勝負の行く末を見届けようとジッと鉄木達を見つめている。

 

幽香はすでに勝負が見えているのか、少々癖のある髪をいじくっている。

 

そして

 

「両者ともに全力を尽くして戦うが良い! はじめぃ!」

 

その言葉と共に鉄木、威快が腕に力を込めて勝敗を決しにかかる。

 

が、面白いほどにに両者の様子は対照的であった。

 

鉄木は目を血走らせながら、腕を小刻みに震えさせ、筋肉を隆起させている。

 

「こ……の…………!」

 

その姿は、最早自身の限界を越えた力を投入しているかのように思え、彼の腕が破壊されてしまうのではないかと思えるほどの物であった。

 

しかし、威快はソレをまるで力が加えられていないかのように涼しい顔で対応している。

 

そして、先ほど挑発された事への仕返しか、鉄木へと挑発の言葉を繰り返していく。

 

「おらおら、さっきの威勢は何処へ行ったんだ? もっと力込めねえと負けちまうぞ?」

 

と、明らかに勝てない勝負に必死こいている鉄木を笑っているのだ。

 

勿論、それが商店街の住人、鬼達の笑いを誘ったのか、2人の周りを笑い声が取り囲んでいく。

 

その声は妖怪さながらの大きさで、うるさいったらありゃしない。

 

流石に、此処まで晒し物にされるのは可哀そうだと思ったのか、栄香が周りの連中を叱りつける。

 

「真剣勝負の最中だ! ヤジを入れるな!」

 

と。

 

すると、やはりその握力に押されたのか、皆一斉に黙りこくる。

 

が、時すでに遅しといったところだろうか?

 

飽きてしまったのか、威快が力を増大させ、硬直状態から1秒も経過させずに腕を机に押し付けてしまった。

 

栄香は少々気まずそうな顔をしながら

 

「そこまで! 勝者、威快!」

 

と、宣言した。

 

まあ、この場にいる誰もがこの結末を予想していたし、確実になるだろうと自信を持っていただろう。

 

商店街の連中は、ああやっぱり。そんなもんだよな鬼と力勝負したら。といった感じである。

 

逆に鬼は勝った事が非常に嬉しいのか、大歓声。これまた耳が痛くなるほどの大歓声。お前ら少しは声落とせよと言いたくなるほどの大歓声。

 

結局のところ、相手がどのような強さ、弱さであれ、そこに正々堂々とした争いが生じれば、彼らとしては大満足なのかもしれない。

 

そう思ったところで、2番手である紫がゆっくりとテーブルの前に着く。

 

紫の表情は、あくまでも冷静さを十分に持った微笑。誰をも魅了する微笑である。

 

彼女の口から勝てないといった言葉を聞いてはいたが、それでも彼女は彼女なりの作戦を考え、この勝負に臨むのだから、俺がどうこう言う資格など無いし、感謝しかする事ができない。俺の頼みでこの勝負に参加してくれたのだから。

 

だから、俺は残念そうな顔をしている鉄木に、良く頑張ったと言ってから、紫に向かって一言。

 

「頑張れ!」

 

その言葉に、一瞬驚くように目を大きくする紫だが、すぐに目を戻し、今度は花のような笑顔を向けてくる。

 

「頑張ってくるわ」

 

だが、俺達の予想していた相手は、試合直前に予想していた者とは違っていた。

 

そう、登場の際に面子が割れた瞬間に、俺と紫達は一斉に意見を一致させたのだ。

 

最初から威快、才鬼、勇儀、栄香の順番で来るはずだと。

 

彼女達の習性からして確実にこの順番で来るはずであると。だが、予想は違っていた。

 

勇儀。

 

2番手に勇儀が来たのである。

 

勿論、勇儀は鬼の四天王の一人。確実に才鬼よりは地位も高いし、力もある。だが、現実では勇儀が2番手である。

 

恐らく幽香、紫も俺と同じことを思っただろう。これは確実に俺が勝たなくてはならないという事である。

 

この先、どう頑張っても引き分けにしか持ち込めないのだ。鉄木、紫が負けて幽香が才鬼に勝ち、俺が栄香に勝つ。

 

それしか活路を見出せないのだ。そして、引き分けに持ち込んだ後、何とかして財産をもぎ取るように、俺が空気を変えていかなければならない。

 

俺が再戦して、勝つか。悪くて引き分けなのだから、交渉の場に引きずり出して財産をなるべく取らなくてはならない。

 

そこまでする意味がひょっとしてあるのかどうかは分からないが、とにかく色々と手を考えなくてはならないだろう。

 

そうこうしているうちに、栄香が声を張り上げる。

 

「はじめい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全くもって厄介な相手に当たったものだわ。

 

と、脳内で呟きながら、私は力が込められる手を眺める。

 

相手が、四天王だからか能力も効きづらい上に、力を常に掛けられているから、碌に集中できない。

 

しかも相手は此方の力がどのような水準かを確かめるかのように、常に力を増大させている。

 

正直なところ、私の妖怪としての純粋な筋力による力はとっくに超えていて、すでに妖力による水増しの領域に入っている。

 

一言でいえば、勝てる見込みなど無いに等しい。ただただ、己の強大な妖力をその身体強化につぎ込み、無駄に消費していくだけ。

 

耕也の良く口にしていた言葉で何と言っていただろうか?

 

……ああ、そうだ。燃費が劣悪で馬力の無いアメ車といった感じか? 良く分からないが、こう言った感じの事を言うらしい。

 

要は絶対に勝つことのできない者が、負けるまでの時間を必死に、無様に引き延ばしているだけにすぎないのだ。

 

元々、そんなに格闘が得意な訳でもなく、力よりも能力と頭で全てをこなしていた私に、この状況は非常にきつい。

 

耕也に自信ありげに頑張るといったは良いが、結局はこの様。恥ずかしいったらない。幽香に後で笑われるかもしれない。

 

そんな事を考えているうちに、更に相手の力が強くなる。

 

それに対抗するために、更に大きな妖力を全身に巡らせて身体能力を水増ししていく。

 

「中々やるねえ、賢者。私の力に此処まで耐えるとは正直思っていなかったよ」

 

と、勇儀は私の力が意外に強かったという感想を持ったようだ。

 

更にぐぐっと増してくる力に、腹に力を込めながら対抗しつつ口を開いて勇儀の言葉に返す。

 

「ふふふ、私は普段頭で物事を解決しておりますので、これは少々きついと思っております。ですが……簡単に負けてしまうのも興が冷めてしまいますので、精一杯頑張らせていただきますわ」

 

そう言って、今度は私から力を込める。注ぎ込む妖力は二倍に。

 

燃費は更に劣悪となり、凄まじい勢いで身体から妖力が消費されていくのが分かる。

 

が、一瞬たりとも供給を止めることはできない。一秒間に、雑魚妖怪の持つ全妖力を軽く使い果たしているのではないだろうか?

 

それほどの勢いで消費しているのだ。一体どれほどの妖力を継ぎ足せば、この勇儀の力に勝つ事ができるのだろうか?

 

そんな疑問が頭の中を過る。

 

自力からして圧倒的に勝る勇儀が妖力を使用して水増しし始めたら、もう私に勝ち目はないだろう。だからこそ。

 

(勇儀が妖力を込めるまでの時間差を利用して、一気に叩く……)

 

それしか方法は無い。こんな悠長に水増しを続けていたら、それこそ確実にジリ貧であり、相手が付け入る隙を与えてしまう。

 

それだけは、流石に此方の自尊心が許さない。

 

だからこそ

 

(今の100倍で……)

 

そう思って、一気に力を増幅させていく。

 

内在する妖力を、一気に解放するために、自身の境界を少々弄って力を出しやすくしていく。

 

弁が一気に全開する様な想像を脳内に浮かべ、ソレを身体に染み込ませるように描く。

 

ただただ、目の前の鬼に力で勝つために。純然たる力、筋力という物理的な力を増し、相手の腕を屈服させるために、一気に妖力を己の身に浸透させていく。

 

段々と、臀部より内側が熱くなり、そして腹、腿、胸、首、膝、頭といった身体の主な器官に熱が浸透していく。

 

そして、最終的には手の先まで。

 

熱くなっている部分とそうでない部分に妙な違和感を感じつつも、同時に全身が熱くなっていく事に不思議とした満足感を得る。

 

だが、このような荒技を試行するのは初めてであり、この設計も何もない無秩序な行為が終わった瞬間にどのような副作用が身体に出るのかも考慮していない。

 

それでも、力で鬼に勝つのも悪くは無いのではないだろうか? 耕也に負ける姿を見せたくないというのも、またこの乱暴な行為を行うだけの理由になるのではないだろうか?

 

私は賢者の前に、女なのだ。

 

そう思ったところで、指先まで熱くなってくる。

 

漸く全身に妖力が回ったのだ。今なら、行ける。相手はまだ気が付いていない。外に漏らさず、内で溜め込んでいる妖力を全筋力に注いでいるのだ。相手に感知させず、自分の力のみを相手にぶつけるため。

 

ふっ、と短く息を吐いて力を腕に込めていく。

 

徐々にではなく、一気に。

 

「うあっ!?」

 

勇儀が驚愕の声を上げ、一瞬にして私の腕が勇儀の腕を大理石の上に叩きつけようとする。

 

このままだ。このまま一気に行けば私の……。

 

が、現実はそう上手く行くものでもなく。

 

「あ……っぶない……じゃないか!」

 

と、後5分の1ほどのところで一気に速度が小さくなり、ピタリと止まってしまう。

 

そして

 

「本当に……驚きだよまったく!」

 

私よりも圧倒的に劣る妖力を纏わせ、そして私よりも圧倒的に勝る地力を腕にまとわせてきた。

 

「あっく……!」

 

更に妖力を込めようとしたが、すでに時遅し。

 

「あああああっ!」

 

鼓膜が破れるかと思うほどの怒号と共に、勇儀の腕に圧倒的な力が発揮され、一気に私は自陣へと手の甲を叩きつけられた。

 

「ぐっ……」

 

そして、その痛みを実感するか、しないか微妙な時間の状態で

 

「勝者、勇儀!」

 

敗北を宣言されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

これで二勝二敗の引き分けにしか持っていけなくなってしまった。

 

まあ、紫自身もそう思っていただろうし、耕也もそう思っていただろうから。

 

いや、耕也の事だから、全部自分で解決しようと背負いこもうと考えているのかもしれない。

 

こんなクズの為に力を使うことすらアホらしいというのに、耕也は本当にお人よしだと。そう思う。

 

とはいえ、私の相手は才鬼とやら。力では勇儀に劣るが、四天王である伊吹萃香を上回る力を持っていると噂されている。

 

実際に戦ってみないと、どの程度の力なのか、私でも勝てる力なのかが分からない。

 

私も力には自信がある。それが鬼達に勝る力の持ち主だという自負もある。だが、四天王にまで届くかどうかは分からない。

 

紫も勇儀もやったであろう、力の水増しがあれば何とかなるのかも知れない。

 

そんな事を考えながら、私は苦笑いを浮かべている紫の肩に手をおいて、そのまま通り過ぎていく。

 

一瞬ビクリと紫の肩が震えたような気がしたが、私はそんな事を気にするほどの余裕はなく。

 

ただただ、目の前の鬼に対して勝ってしまわなければならないという強迫観念がこの頭に渦巻いてくる

 

自分が負ければ、耕也が今後どんなに頑張ったとしても、負けは確定してしまう。

 

だから、私は目の前の鬼に勝たなくてはならないのだ。

 

「さあて、私と勝負しようじゃないか? 花妖怪」

 

ニヤニヤとした目で、此方を見てくる才鬼とやら。

 

自分の力に対して絶対の自信があるのか、私の視線を受けても全く動じることなく、そのニヤニヤした顔を止める事が無い。

 

まあ、此方を舐めているのか、それとも唯単に素の性格なのか。

 

どちらでもいいが、この自信満々な鬼の鼻を圧し折ってやりたいのは私だけではあるまい。

 

だからこそ私は

 

「潰してあげるわ」

 

そう言って、力強く相手の手を握って、勝負の時に備える。

 

才鬼も此方の本気を知ったのか、此方の手を握り締め、そのまま圧壊させるのではないかというほどの握力を掛けてくる。

 

が、この程度の握力で私の手が潰れることなど無い。

 

ただ、この力強さは相手の本気度も十分に伝わってくるという物であった。

 

鬼に限ってふざけてやるという事は無いだろう。途中まで手加減するという相手の力を計る事はするかもしれないが。

 

そして、双方の気持ちが高まった事を確認したのか、栄香が満足げな笑みを浮かべながら大声で

 

「では……始めっ!」

 

先ほどとあまり変わらない、つまらない掛け声を放った。

 

その瞬間に、一気に私の腕への負荷が増大する。

 

が、此方も負けることはできないので、一気に力を入れ、妖力を最大、限界にまで高めて一気に勝負を仕掛けていく。

 

すると

 

「へ……?」

 

という何とも言えないアホ面を晒しながら、私の力の強さに驚愕していた才鬼がいた。

 

あまりにも突然の強大な力。鬼の想定の範囲外だったのだろう。

 

当然だ。今の私は全力を出しているのだから。

 

最初に力を計ろうとした愚かなお前とは全く違うのだ。私は御前達鬼と同じく負けず嫌い。そして何より、私は耕也の為に戦うのだ。鉄木の為ではない。

 

覚悟が違うのだ。御前達とは。

 

だからこそ私は、そのままの勢いで、彼女の腕を、手を、肘を潰す勢いで叩きつけた。

 

「があっ……!」

 

骨は折れてはいないだろう。だがしかし、それでも衝撃は強く、彼女の腕に激痛をもたらしたようだ。

 

当然だろう。耕也によって強化された大理石に罅が入り、火薬でも爆発したのではないかというほどの強烈な音が、周囲に響き渡ったのだ。鬼といえど、無事に済むわけが無い。

 

「そこまでっ! 勝者、幽香!」

 

漸く、漸く一勝である。

 

この勝負が決着するまで、3秒とかからなかったであろうが、莫大な妖力を使用し、極限まで緊張、集中していたせいか、非常に長く感じてしまった。

 

長針が短針を三回程追い抜くほど長く。

 

 

 

 

 

 

 

鬼達は落胆を。俺達は歓声を上げつつ幽香を迎える。

 

商店街の妖怪達も、此方の勝利を快く思っているのか、一応拍手はしてくれている。

 

やっと掴んだ一勝なのだ。此処からが正念場と言っても過言ではない。俺が負けるか勝つか。これによって勝敗が決まってしまうのだ。

 

すでに鬼側は負ける事が無い戦なので、気分としては余裕であろう。此方は緊張と焦りで、不安が増すばかりだが。

 

そんな事を思っていると、紫と幽香、鉄木が此方の方に顔を向けて、それぞれ応援の言葉をかけてくれる。

 

「じゃあ、耕也頑張ってきなさい」

 

「私が掴んだ一勝を無駄にするんじゃないわよ?」

 

「宜しくお願いします。耕也さん」

 

何とも嬉しい声である。

 

勿論、俺はそれに応えるように言葉を選んでいく。

 

「じゃあ、勝ってくるよ」

 

そう言って俺は目の前の大理石に腰を掛け、自信満々な笑顔を浮かべている栄香の元へと近づいて行く。

 

勝てるかどうか? と言われれば、殆ど勝てるといったところだろうか?

 

今の俺の気持ちはそれである。しかし、それでも負けてしまう可能性が無いわけではないのだから、多少なりとも……いや、かなり緊張してしまう。

 

ソレを相手に悟られないように、懸命に顔を無表情に近くなるように努力をし、ゆっくりとした足取りになるように心掛ける。

 

今回の腕相撲は、領域が反応しにくい面倒な勝負事。相手が過剰な力を掛けてくる事を期待する。いや、確実にかけてくるだろう。

 

過去の決闘をその目に焼きつけているのだ。俺が力の弱い唯の人間だとは思ってはいまい。

 

だからこそ、このパッシブだらけな能力を全開にして戦うのだ。

 

科学兵器で引きつけた相手の懸念を逆手に取り、此方の能力を最大限に発揮できる環境を作るのだ。

 

確かにこれは偶然の産物と言っても過言ではないのかもしれない。だが、これも実力の一つであろう。運も実力の一つ。

 

そんな事を考えながら、俺は漸く栄香の目の前に立ち、彼女を正面から見据える。

 

まあ、人間の視線を受けた所で、鬼にとっては屁でもないのだろうが、一応此方の戦うという意志をアピールしておく。

 

ジッと、無表情で。

 

すると栄香は、俺が栄香の威圧に反応を見せないのが面白くないのか、俺の無表情が面白くないのかは分からないが、フンッと鼻を鳴らして、銀色の長い髪の毛を手で撫でつける。

 

そして

 

「さて、決着をつけようぞ耕也……。御主が負けるか、それともここで勝ち引き分けに持ち込むか……」

 

「引き分けに持ち込むしか方法はないからね……負けない様に頑張らせてもらうさ栄香」

 

と、栄香に自分が負ける意志は無いという事を示し、修復した大理石の上に、肘を着く。

 

栄香も、俺が勝負を早くしてしまいたいという事を理解したのか、すぐに腰を上げて俺と同じように肘を着き、俺の手をガッシリと握る。

 

「じゃあ、紫。審判お願い」

 

そう言うと紫は、ええ、と答えて俺と栄香の真横に立ち、そしてすぐに合図を初めて行く。

 

「鬼の賢者、栄香。陰陽師、耕也。用意は良いかしら?」

 

「ああ!」

 

「大丈夫」

 

陰陽師ではなく、元陰陽師だろうという突っ込みはしなかった。しても仕方ないし。

 

そして、紫は俺達の声を聞いた瞬間、満足そうな顔を浮かべ、扇子を横一線。

 

「では始め」

 

 

 

 

 

 

 

 

紫の声が聞こえた瞬間、俺の腕に物凄い力がかかる。だが、この力は俺に対して害を及ぼすわけでもなく、相手も害を及ぼそうとしているわけでもない、真剣勝負なので内部領域が干渉しに来ない。

 

まあ、それは此方の予想範囲内であるし、瞬間的に生活支援によるトルクの増大と、相手のトルクの減少を仕掛けていく。

 

だが、栄香の力はだてに頭を張っている訳ではなく、異常な速度で力が増大していく。

 

此方の生活支援の速度が間に合わないかと思うほど。

 

だが、それでも何とか耐えて、栄香の力を削いでいく。

 

「中々やるではないか、人間、耕也。……正直力まで此方に対抗してくるとは流石に思わなんだ。ふふ、では更に行くぞ!」

 

その言葉を言った瞬間、桁違いの負荷が腕に掛かってくる。もちろん、生活支援で対抗していこうとするが、そのままゆっくりと自陣へと腕が倒れ込んでいく。

 

此処までの力が掛けられても、悪意などが込められていないのと、未だ腕に対して害などが無いことから未だに領域の干渉が無い。

 

まだ、この時点では駄目か……。

 

遊びに近いレベルの競技なので仕方が無いと言えば、仕方が無いが、もう少し、感度を上げた方が良さそうな気がしてきた。少し気分が暗くなる。

 

が、それでも負けるわけにはいかないので、生活支援の力を借りて更に対抗していく。

 

栄香も、此方が此処まで粘るとは思っていなかったのか、驚きに満ちた目を一瞬浮かべ、そしてすぐに獰猛な笑みを浮かべ始める。

 

それはまるで、ようやく面白い事になってきた。これからが本番だとでも言うかのような笑み。

 

事実

 

「さて、そろそろ本気を出してみるかな……?」

 

と、俺に向かって言ってきたのだ。

 

流石にこれ以上の速度で力を増大させられてしまったら、此方の能力が追い付かないばかりか、腕が持たない。

 

だが、それが此方の勝利につながるのだ。

 

そんな事を思いながら、彼女が力を増し続けるのをひたすら耐える。

 

額からは汗が滴り、身体の各所から熱が生じ始める。

 

熱い。

 

すると、漸く彼女が口を開く。

 

「では本気を出そう……。……ふっ!」

 

その瞬間、生活支援が何の意味も持たなくなったのを感じた。

 

圧倒的な力。鬼の真の力とでも言うべきだろうか? とにかく、妖力による水増しと自力がとんでもない。

 

だが……。

 

笑いがこみあげてくる。

 

あんまりにも上手く行った事に、自分でも驚きである。

 

大凡鬼はこういった作戦には気がつきにくいだろうとは思ってはいたが、まさか生活支援を使い続けているだけで、こんなにもあっさりと勝つ事ができるとは思わなかった。

 

「んな……っ!」

 

と、栄香が先ほどとはまた違った驚きの顔をし、声を上げる。

 

そりゃあそうだ。領域が完全に干渉をして、栄香の力が一切効かなくなっているのだから。

 

笑いがどうしても止まらない。それは先ほどまでの焦りからは全く想像もできないであろう笑みを顔に出していた。

 

「な、何がおかしいっ!?」

 

栄香が焦り、怒りと困惑の混ざった表情を浮かべつつ俺に叫ぶ。

 

「いやね、俺もそろそろ本気を出そうと思ってね……」

 

あんまりにも嬉しくて、ついつい言葉が飛び出していく。

 

「力が……簡単に押し返される……。」

 

彼女は力を入れているのに、押し返されていると言った。だが、それは間違いなのだ。彼女の力が人間以下に下がってしまっているのだ。俺のこの時点で絶対に害を及ぼさないレベルにまで下がっている。

 

そして、領域で強化された腕を徐々に大理石に対して垂直に戻し、彼女に向かって口を開く。

 

「こう言う後々強烈な力を発揮する事をね、俺のところではどうどう言うかっていうと……」

 

そして、そのテンションを抑えきれぬまま、思いっきり。最高に

 

「どっかんターボってんだよっ!!」

 

格好悪く、言った後後悔する決め台詞と共に、俺は栄香の腕を大理石に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後何とか、交渉に持ち込み、再戦等を要求したのだが、それは却下されてしまい、結局折衷案を飲まざるを得なかった。

 

それは、鉄木の財産の半分を鬼が貰い、残り半分を返還するという物であった。

 

流石にこれ以上の要求は無理だと思ったのか、鉄木は沈んだ顔で了承した。

 

勿論、報酬は俺達の所に来た。とはいっても、額は少なくなってしまってはいたが。

 

そして俺はというと、何故あそこで「どっかんターボ」等と言ってしまったのか一日中悩んだ。

 

紫曰く

 

「何処の所の言葉か物凄く知りたいわ? 貴方の故郷かしら?」

 

出自に関係していると思っているらしい。

 

まあ、関係していると言えばしているが。

 

 

 

 

 

はいはいどっかんたーぼどっかんたーぼ

 

 

 

 


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