とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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プロローグ 組織はゆっくりと動き出す stand_up _silent

 8月末 某日 英国

 

 二人の男は向かい合っていた、真剣で重々しくて覚悟を決めた表情で。

「本当にいいのか?」

「構わない。」

 その言葉は、迫力が………覚悟があった。そしてなおかつ、強い言葉だった。

「お前が言うならいいが、責任は取らないぞ。」

「ああ、覚悟の上だ。だが嫌な役をやらせたな。」

「いいさ、目的を果たすためなら。………じゃあ、いくぞ!」

 言葉の後一拍置き、覚悟を決めた男に触れる。

 

 そして、触れられた男が光りだす。

 

 光っている男は苦しんでいた。光そのものが苦しめているように。

 光を与えた男は、吹き飛ばされる。その光が、まるで暴風のように。

 

 

 

 

 

「……ぐはぁ。っか………はぁ……はぁ…。」

 男は吐血、いや、喀血していた。あまり大丈夫とは言えない出血量だ。

 

 ……だが、男の表情には、……笑みが浮かんでいた。

 

「くっ…、言わんこっちゃない…と言いたいところだが……、成功だ。しかし、……すさまじいな。」

「………いや、お前もよくやってくれたな。短い期間で、もう魔術を使いこなしている。科学者だというのに。」

 この男たち、世界の禁忌(タブー)をさらりと言い放っていた。互いの魔術 科学サイドはお互いの領分を侵さない決まりだというのに。

 それを超えた男は言う。

「まあ、科学者独特の知識欲というものかな。…っと、そろそろ帰るよ。」

「もうそんな時間か、ゆっくりできねえな、お前は。」

「個人的な友人に会うだけだからな仕事をずっと休めはしないよ。」

「じゃあな、気をつけて行けよ。」

 その言葉は、重い口調だ。あたかも、この時間が密会のように。

「学園都市の飛行機は別格だよ。ちぃとばかし速すぎるけどね。」

 そして、男たちはそれぞれの世界に帰る。決して交わることのない二つの世界へ。

 そして、物語は始まる。科学と魔術が交わった物語が。

 

 

 

 

 

夏休みも終わりかけの8月末。

だがこれは不幸な少年が記憶を無くす年ではない。

彼らは動く、ゆっくりと。

慎重であり、堅実的に動き、それが最速だと確信して。

 

一人の男はただ愚直に組織を動かす。

 

一人の男はただ真剣に研究を進める。

 

一人の女はただ懸命に彼らを支える。

 

それは彼らの望む未来を取り戻すため。

かつての記憶を再現するためだけを想い。

そのためには力が必要だ。

仲間、知識、知恵、そして運。

どれが欠けても成功はしない。

彼らの『敵』は強大なのだから。

 

この数ヶ月後、とある魔術結社(マジックキャバル)が姿をくらませた。

その心の中に、覚悟を決めて。

たった一つの『目的』を達成するために。




それぞれ過ごしていた安息の日。
それを見つめる不穏な影。

次章『第1章 始まりの休日break_holiday』

科学と魔術が交わるとき、物語は始まる。
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