現在調査中。
上条と土御門は本棚の科学資料を次々と閲覧し、インデックス、五和、レッサーは三人で魔術に関する資料を読んでいる。
それぞれ、発見もあったようだ。
「これも……、これも……、これもか。脳に関する資料が多いな。それに、DNAに、能力の資料。こうなると…。」
「機械や、薬品よりも、能力開発に関係がありそうだにゃー。」
「でも、何ができるんだよ。魔術と能力って交わらないだろ。」
20年前にも科学と魔術が手を結ぼうという動きがあった。
だが、そこで血の惨劇があって以来、新たな術者を生み出そうという動きはなくなっていた。
いや、できなくなったのだ。
「確かに何もできない。だが、少なくとも俺達は『超能力者は魔術を使えば肉体が破壊される』ということしかわかっていない。二つの力が交わると何ができず、何ができるのか、考えることを20年前にやめてしまったからにゃー。」
「それを研究してたって言うことか?」
「それはない。わかることだけでいいなら、こそこそ隠れているだけでいい。まあ、それでも
「インデックス、そっちはどうだ。」
「世界各地の、術式、霊装、伝承、宗派。あまり知られていないものから、ポピュラーなものまで多くの資料が入り混じってる。これだけだと資料の幅が広すぎて予想するのは難しいけど……。」
「けど?」
「この資料、よくつなげてみると、伝承、霊装、宗派が“あるもの”と深くかかわっているの。」
「そうなんですか?」
「私は、気づきませんでしたけど…。」
「無理もないよ。多分、大きな情報を持つ資料は持ち去られてると思うから。ほんのわずかに関わっているしか情報が残されていないの。この資料だけじゃ、知らない人の方が多いくらいだもん。知ってても、ひとつやふたつだけ。それに気づいたとしても、偶然にしか思わないから。」
「何なんだよ、その“あるもの”って。」
「
「「「「!!」」」」
バッ、と五和、レッサーは手元の資料を急いで確認する。
そして理解した。
「確かにその通りです。ほんとにわずかですけど、確かにそんな資料が多いです。」
「メインは、おそらく
そのような発見の中、上条当麻は思考していた。
今までの情報を頭の中で確認しながら。
狭い範囲内でこそ、彼の思考能力は発揮されるから。
「…脳、DNA、能力に関する資料。…20年前。…魔術と科学。『能力者に魔術は使えな…。っ!?」
「どうした、カミやん。」
「あいつら………、魔術を使える能力者を創るつもりなんじゃ………。」
「「「!?」」」
「なんで……、そう思う………?」
「超能力者が魔術を使えないのは、脳の回路が違うから。だったら使えるようにするには……。」
「!?っ。脳の回路を………、変える。いや……、この資料だと…。」
手元にあったDNAの資料。
その内容を確認する土御門。
「もともと、回路の違う………、魔術と能力を使える脳を『創る』。」
「いや、だめか……。脳だけを新しく創るなんて。」
「そうでもないぜい、学園都市外部でさえ人の指を生やすことに成功しているらしい。DNAはすべての人体の構成情報を持っている。その設計図を利用して体のパーツを作るという技術だ。それを応用し、人体を部分的に造り、内臓なんかの移植手術に活用しようとしている動きもある。それを考えれば不可能では無い。いや、学園都市屈指の科学者がいれば可能性は大きい。」
『人造人間』、そんな言葉が頭をよぎる。
学園都市では既に、クローン人間も
そして今回もまた、とんでもない人間が創られようとしている。
とんでもないことだ。
それが、学園都市総動員の技術でなく、学園都市の少数の人間が成している事実。
この事実だけでも、彼らの科学者は天才だという情報を疑う余地がない。
「いや、でもそれだけじゃ人間という定義が異なってしまいます。そうなれば、普通の術式は使用できなくなる。だから、魔術は使えなくなって……。」
「それも、解決できるかも。」
魔術サイドであるレッサーからの意見。
術式行使の不可能。
しかし、インデックスの一言で妨げられる。
「おそらく『神の右席』と同じ、普通の術式を使わないで専用に調整された術式を用意すればいい。それだったら、魔術の行使も可能だよ。『神の右席』は天使の術式だった。そしてこの場合、多分だけど術式のモチーフは………
「竜の術式ですか………。でも、………できるのでしょうか?」
「たしかに、竜の術式は不明な点が多いですからね。」
「それこそ、10万3000冊の魔導書の知識がないと出来ないんじゃないかにゃー?」
「問題ないよ。普通の人には使えない専用の術式を使えば、ここの資料だけでも竜の術式の行使は十分可能だよ、多少劣化するけど。」
才能のある人間には使えないといわれる魔術。
才能のない人間が才能のある人間と同じことがしたいという理由でつくられた魔術。
ならば、もし…、『才能のある人間がさらに上を目指そうとしてつくられた専用魔術』ならば………。そう…、解釈できるだろう。
言ってしまえば、その『人間』が、異常なほどの『才能』を持ち、その才能を強化するように並外れた『技術』を利用する。
これだけ聞いても、今回の事件の大きさがわかるだろう。
その中で、上条当麻は思考する。まだ埋まっていない溝を埋める。
「まだ問題はある。そもそも学園都市の能力開発は100%じゃない。」
「どういうことですか?」
科学に疎い五和がそう質問するのも必然だろう。
五和だけでなくレッサーとインデックスも疑問に思ったようで首をかしげている。
「学園都市の6割はレベル0……無能力者だ。」
「正確には、全く能力が使えないわけじゃないんだにゃー。たとえば俺なんかは、『
「その程度の能力が発現する確率が6割もあるんだ。最高レベルの『超能力者(レベル5)』のクローン人間でさえ2~3レベルの発現。しかも大きな研究所を必要“だと言われている”のに、優秀な人材があるとはいえ遺伝子組み換えの人造人間を大きくない施設で何人も生み出すのは難しいと思う。」
『
学園都市の欠点。
学園都市の能力者と魔術師が戦争を行ったところで、勝負は目に見えているだろう。
それは人数の違いにある。
学園都市の人口、約230万人。8割の学生。
レベル0が6割、戦略的に有効なといわれるレベル4が1000人、軍隊と戦闘可能なレベル5が7人、残りが生活に便利なレベル1~3、そしてその能力者のほとんどは正真正銘ただの学生なのだ。
能力開発の年齢制限が、学生の多い主な理由だ。
学園都市の戦闘力において重要なのはそこでは無い。
非常に桁外れな科学技術を独占することで科学と魔術のバランスが保たれている。
つまるところ、能力開発の中で才能が大きなファクターとなる以上、“学園都市の能力開発は意外と大したことがない”のだ。
無論、例外(アクセラレータなど)を除くのだが。
「いや、何人も生み出す必要はないと思うぜい。それは、人間の脳での能力発現のことだからにゃー。」
「っ!そうか…。そもそも、普通と違う脳をつくるから開発に合わせた脳をつくるってこともあるのか。」
「いや、そこまでする必要もないぜい、その可能性もあるがな…。カミやん。『
「『
「そう。詳しいことは、今は省く。その理論で言うとな、“たとえ無能力者でも演算能力と同系統の能力者の思考パターンさえあれば、擬似的な能力の強化が可能”って結論が導き出せるんだぜい。」
「…………ってことは。」
「そう、通常の人間よりも並はずれた演算能力を持つ脳を作り上げ、『学習装置(テスタメント)』により、同系統の能力者の思考パターンを入力すれば………。これだけで、高レベルの能力者の『確実な発現』ができてしまう。」
「…………。」
「能力の使える魔術師、『
土御門の言葉を皮きりに沈黙が続く。
科学に関しても、魔術に関しても辻妻が合った。
合ってしまった。
前提条件であり目的のひとつ。
科学と魔術が交わること。
これで、彼らの意図が少しながらも視えたと言っていいだろう。
この仮定が正しければ、二大勢力でバランスのとれた世界を大きく揺らすことになる。
一つの強大な勢力が誕生し、世界は三大勢力となる。
しかし、大きすぎるその新勢力は、他を追い抜き三大勢力から一強勢力になる。
そうなれば、そのような勢力が作れれば、この世界で好き放題できるだろう。
それだけ強大で……、危険な力。
ふと、上条当麻は思った。
彼らが、その大きな力を何に使うのか。
それは、いまだにわからない。
そう。彼らの目的は何なのだろう……。