とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第4章 研究所 first_stage 3

 18:32

足音が続く。

廊下に響くほど。

彼らは沈黙を続けている。

それぞれ思考しているから。

『彼らが何を目的としているのか?』と。

その手段の一つはあまりにも、巨大な力の入手。

それが、できているのか、もうすぐできるのか。

まだまだ時間がかかるというのはないだろう。

でなければ、表舞台へ出やしない。

魔術の使える超能力者。創られる人間。

上条は思う。

妹達(シスターズ)』のように、創られる人間は、どんな心情をしているのだろう。

妹達(シスターズ)』は、自分達を実験動物と言っていた。

しかし、もう、そのようなことは言わない。

自分が死ぬと悲しむ人がいると知ったから。

自分たちはもう死んでなんかやらないと思っているから。

皆、精一杯今を生きている。

それぞれ個性が少しずつ出てきたと、カエル顔の医者も言っていた。

どこか嬉しそうな表情で。

でも、親のいない状況、少ない隣人、クローン人間で公にできない素性。

そんな、まだまだ厳しい境遇だ。

それでさえ、上条当麻と御坂美琴が実験から救い出し、一方通行(アクセラレータ)も加えてその後を守っている、その状況下で成せていることだ。

もし、彼らが既に人造人間を創り出しているならば、それはどんな境遇なのだろう。

その人間は何を想っているのだろう。

想うことすらできないということも有り得る。

そして………、今回もまた、そんな人間が生まれてしまうのだろうか。

それとも、既に生まれているのか。

上条は、そんな心配をしていた。

 

 

 

 

 

『第1実験室』

それが、現在の調査場所である。

大きな部屋だ。

5人とも、先ほどの仮説を頭の中で反芻しながらだったので、廊下での口数は無かった。

しかし、この場所に入った瞬間、全員が息をのんだ。

「これって………。」

最も大きな反応を示した上条がその一言を漏らす。

科学に疎い五和やレッサーも。

少々見慣れてしまった土御門も。

偏った知識のインデックスでさえ。

“それ”が何であるかは解ってしまった。

“それ”は、上条にも見覚えがある。

見たのは病院。入っていたのは治療中の御坂妹。

だが、それは治療用だった。“それ”は、明らかに目的の違うもの。

 

“それ”は、大きな……、とても大きな、………人間サイズの培養器。

 

先程の仮説を立てたばかりの5人は大きく揺さぶられた。

「まさか…、本当に、創ってるんですか?」

余りにも大きな衝撃に、全員が固まってしまっている。

そんな中、上条はその培養器のある部屋の中心へと向かっていく。

(……埃?)

その培養器には埃がたまっていた。

中だけでなく、外のコントロールパネルにも。

どうやらこの部屋は、使用されなくなってから数カ月は放置されているようだ。

撤退の跡であろう、埃の溜まった床にいくつか足跡ができている。

この部屋は科学的な機械が多く、純粋な魔術サイドの3人は、いまだに圧倒されている。

いや、雰囲気はとうに変わっていた。

既に頭の中で構想しているらしい。

そうした後、それぞれ部屋を歩き見ている。

3人の目は真剣で、魔術的な視点からこの部屋を見回っているようだ。

インデックスも、「……この部屋の陣形……」だとか「……魔力の注入……」など、ぶつぶつと言葉をこぼしながら熟考している。

土御門は、壁側の精密機器を見ているようで、機器の蓋を開き、中を見ている。

そのスピードは速く、次々と素早く確認していく。

「……ここも、……ここもか。」

何かを確認した土御門は、中央の培養器を調べていた上条へと寄る。

「カミやん、一つ報告がある。」

「何だ、いったい。」

「ここの精密機器はすべて処理されているようですたい。重要な回路は全部溶けてやがる。どうやら、ここの技術は学園都市外の科学者なんかに漏らさないようにしっかりしている様だぜい。ホント、しっかりしている事で…。こりゃ、後の技術回収が必要なくなったかもにゃー。」

まっ、有能な技術の回収もできなくなったがな。

と、土御門はつぶやいていた。

おそらく、ここの技術はそれだけたくさんの情報を持っていたのであろう。

機器そのものを壊し、データの復元までできないようにしてあるようだ。

土御門個人としては、今後に有効活用できないか、と考えを巡らせていた。

が、そう言う訳にもいかないようだった。

「そっか。他には何かない……か………な…。」

相槌を打っていたところで…、ふと、上条の目に入った。

言葉に詰まった上条がゆっくりと、その壁に向かう。

いや、向かっていたのは壁に埋まった戸棚。

木の本棚を使っていないのは研究所の隠密術式を乱さないためだろう。

少し収納が雑なのか紙がはみ出していた。

本当に少ししか紙は出ていなかった。

なぜ上条にそれが読めたかは、彼自身もわかってない。

本当にただ目に入っただけ。

そこに書かれていたのは、

 

『魔術と能力の……』

 

すぐさま戸を開く。

その中にあったのは多量のファイル。

その中で、少しはみ出していたファイルを乱暴に取り出す。

その勢いで隣り合った他のファイルも床に落ちるがそのようなことは気にしていられない。

すぐさま中に目を通す。

その様子の中、4人も集まってきた。

険しい顔をしながら、何か重要な手掛かりだと皆予想して。

そのファイルの表紙にはこう書かれていた。

『魔術と能力の同時使用とその方法について』

5人とも、浮かべていた表情は複雑。

予想通り、嫌な予感、物的証拠、中身次第。

少しばかり焦っていたしていた上条も、周りの様子が分かっているのか。

皆に聴かせるため、5人の予想を記す資料を音読した。

「魔術の行使による脳の影響下について。通常、能力開発を受けた人間は魔術を行使する場合、脳の回路が違うため、使用は可能だが肉体が破壊されるものと言われている。それを調べるため、魔術使用中の脳のスキャンを行なった。その際、不可思議なエネルギー体(以下それを魔力と称す)が脳を駆け巡っていることが判明した。仮説だが、魔力が脳を流れる時、その魔力が開発された回路に入り込むことで、その能力者の『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が特定の暴走を行い自らの肉体を傷つけるものと考えられる。なぜ、その暴走が肉体を傷つけるもの限定なのかは説明出来ないが、能力の暴走である可能性は高いものと考えられる。魔力などの暴走の場合、魔術の行使そのものが不可能だという考えからである。また、魔術の種類によってその回路への魔力の流入の回避を予想した。が、脳における魔力は流れる魔力が多ければ多いほど脳を使用する。強力な魔術ほど回避は不可能。また、非常に簡単な下級魔術においても、やはり回避は通常の脳の場合不可能だと結論づけた。」

その内容は予想通りのもの。

能力者の魔術行使。

多少冷静に4人はなっていたが、上条当麻の声は次の内容を読む際に、動揺の色を放つ。

しかし、と、そう続けた。

「魔術行使時の脳スキャン実験の結果、魔力の通過経路の法則を発見。通常、魔力が通ることのない脳の一部があったため。そこを能力の使用に適したものに変更、もしくは、回路への魔力流入をしても能力の傷害暴走を避ける事のできるものへと変更することで魔術の行使は可能であると言う仮説ができた。以上の仮説を詳しく実証し、コンピューターなどで、シュミレーターした結果を以下に示す。」

一拍。

いや、もっと長かったかもしれない。

それとも、聞き漏らさないようにと強く思って短い時間が長く感じたか。

緊張で時間の感覚がおかしくなっていた。

そして、結論がでる。

 

「………………“魔術の行使可能な能力者の発現は、脳を構築しその脳へと合わせた専用術式が最も効果的である。”………………っ。」

 

これ以上のものはないだろう。

先の仮説を実証した書類。

そして、決定的なその証拠。

それが、上条たちの目の前にある。

その、ファイルを落とし、次のファイルへ、また次のファイルへ目を通す。

「DNAによる器官構築……、『多重能力者(デュアルスキル)』の可能性……、特定調節魔術の開発……、……使用可能な霊装の制作、………………脳の制作成功の報告書。」

次々と合っていく辻褄。

今ここに判明した事実。

魔術の行使できる能力者は存在できる、と。

それはいとも簡単に、半信半疑だった5人のそれまでの常識をぶち壊してしまった。

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