とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第4章 研究所 first_stage 4

「何か……、目的が判明する資料は………。」

上条と土御門は、次々と資料を調べていく。

たしかに彼らが何をやっているのかは判明した。

しかし、彼らの目的は一切不明。

この驚愕するような事実でさえ、手段と言えてしまうのだ。

いや、その可能性が高い。

撤退した研究施設で、目的を阻害されかねない情報は隠す。

すなわち、多量の資料を残しているこの研究に残されたこの説は、高確率で手段だろう。

 

(あれ?)

 

そこで感じていたのは違和感。

おかしいという点。

たしかに彼らは、撤退する際あまり情報になるようなものは残していない。

研究室の資料は膨大だったから残していたのであろう。

組織とはいえ、彼らは何百人を抱え込む大人数ではないのだから。

しかし、“こんなにはっきりとした研究内容記録”をなぜ残しているのだろう?

急いで周りを見る。

インデックスも既に気づいていたのか、焦っていた。

インデックスが見つけたもの。

ダンボールに入っていた小物。

多量のメモリースティック、実験に使われたであろう試験官、フラスコ等の実験器具、霊装のようなものもあるし、何に使っていたのかわからないものまである。

この部屋には情報が残されすぎている。

資料のファイル然り、メモリースティック然り。

これらを撤去する場合、大型機器のように物的破壊は効率が悪い。

普通の処理方法は持っていくこと。

これが挙げられるだろう。

つまり、それがされていないということは、

 

“この研究所は撤退仕切っていない”。

 

「っ!外に人がいるんだよ。」

インデックスが、嫌な予感的中とばかりに叫んでいた。

全員に緊張が走る。

この時点で、この任務は撤退後の研究施設における調査から研究所内の隠密戦闘へと移行。

全員頭を切り替える。

「インデックス!あいつらがこっちに気付いている可能性は!?」

インデックスが一足早く、気付いていたこと。

おそらく魔力の流れなどを感じていたのだろう。

つまり相手は、この研究所内で魔力が流れるようなことを行っている可能性がある。

それはこちらに対する戦闘準備なのか。

それとも、気づいていないだけで撤去作業に使っているのか。

「わかんない。たぶんこの魔力の流れは無生物。霊装を持っているのかも…。でも、少し数が多い。それに、とんでもない魔力を秘めた霊装まであるみたいなんだよ。その魔力が大きすぎて、霊装の詳しい数が判定できない。人の魔力が感じられないから、…魔術師は魔力を抑えていると思うけど。だから、人数も特定できないんだよ。」

「まずいにゃー。カミやんが魔力を消去しながら行動してたからそれが道標になってると思うぜい。」

「やはり、戦闘は避けられませんか…。」

「まあ、戦闘が避けられないなら戦闘すればいいんです。こっちとしても情報が欲しいですし。いざとなったら撤退戦で後退といったところでしょう。それに、ここは奴らの本拠地ではないですし。事と次第によっては奴らも退散するでしょう。」

五和は神裂の教えからやや気乗りしないようだ。

何をしているかわからない彼らには、悪である証拠はない。

現段階では、道を間違えているかもしれない彼らもまた“救われないもの”に入るのだろう。

たいして、好戦的なレッサーはやる気満々。

強大であろう相手にも自信ありといったところだ。

なおかつ、逃走の算段も付いている。

好戦的なのだが、現実的でもあるのだろう。

「とんでもない魔力を秘めた霊装か……。正直、そこが気になるにゃー。差し詰め、“専用に調整された霊装”ってとこか。」

土御門は留意するであろう点を述べる。

4人はそれに頷く、あらかじめ覚悟はしていたのであろう。

『海を守護する大樹』が、『能力術師(レベルマジック)』を連れている可能性を示唆していたのだから。

頷いた後、5人は出口へと素早く、静かに、無駄もなく移動する。

こちらのことがばれている可能性が高いとはいえ、姿が見えていないうちは隠密行動が原則だ。

 

ズドオォォォォン。

 

その音が“後ろから”響くと、出口付近にいた5人は急ぎ振り返る。

そこにいたのは人だった。

大型の培養機が粉々に砕け潰れており、その様は、小さなはずの人間が大型機械を踏みつぶしたかのような惨状だ。

片膝立ちだったその人間はゆっくりと立ち上がる。

表情は険しい。

しかし、その険しい表情でも美しい顔を持つ美少年。

あまり長くない黒髪に上条よりやや低いであろう身長。

資料の写真で見た顔。

 

組織のナンバー2の実力者。夜宮神也(よるみやしんや)

 

手には木刀を持ちこちらに対し素早く構える。

それに対し、上条は拳を構え、インデックスは解析を始め、土御門は折り紙を取り出し、五和は『海軍用船上槍(フリウリスピア)』を組み立て、レッサーは鋼の手袋で空気を掴む。

そんな中、夜宮の後方に続々と人が降りてくる。

降りてきたのは夜宮を含め、全部で7人。

研究者の白衣を着た20代の男女。

 

仁代夫婦。

 

うち一人はあの仁代由香里。

もう一人は写真で見た男。

おそらく彼が、学園都市の隠れた天才科学者である仁代数樹なのだろう。

由香里は手銃の構えを取り、数樹は白衣のポケットの中で何かを持っている。

 

四人目は英国風の黒髪ショートカットの少女。

 

その手には指揮棒程度の大きさである杖を構えている。

おそらく木でできているのだろう。

イメージしやすい魔法使いの杖だ。

また、見ただけでは他に装備はない。

可愛い女の子なのだろう。

だが、今の彼女を見ればその顔に似つかわしくない戦いの表情をしている。

 

五人目は背の高い英国人の銀髪青年。

 

構えているのはボウガンだ。

しかしそれを構えているのは右手だけ。

しかも、もともと彼の使用しているボウガンは片手で使用するものではないと思える。

事実、彼のボウガンには矢が装填されていない。

そんな状態では魔術の矢でさえ当たりそうにないが、そのようなことは考えにくいだろう。

引き締まったその腕はかなり筋肉質だ。

軽々とそのボウガンを扱う。

左手には生徒手帳サイズのメモ帳を保持している。

これもまた、彼の魔術に必要なのだろう。

 

六人目は金髪の目立つ貴族風の少年。

 

17才ぐらいだろうか。

そこまで身長が高くなさそうで実年齢よりも下に見えそうだ。

彼が構えるのは三又の両手槍。

手入れされているであろうその刃は、金メッキが施されておりどこかまた品格を持つ。

しかし、その優雅さの中に隠されている切れ味を無視してはならない。

 

そして、七人目。

 

夜宮の前に降り立つは、上条が遭遇したもう一人の人物。ほかの六人をも圧倒するようなトップたるその風格。

そこそこ高い身長に細身ながら筋肉の付いた引き締まった体。

黒目黒髪で多少褐色の肌。

どこか英国風の25から30才であろうその男。

 

『海を守護する大樹』のリーダー、デューイ=奇水=ウルフィック。

 

「なんでここにいる?っと聞くのは野暮か………。大方、隠しまくってたオレらの情報を探りに来たってとこか。」

余裕を持った軽い口調。

それでさえ、彼の覇気を隠しきれていない。

前回の遭遇よりも、一段それが増している。

何も分からない人でも、たとえ闇の世界の住人でも、ひとたび彼の前に立てば、力の差による恐怖を感じられずにはいられないだろう。

そんな中、インデックスの調子がおかしい。

震えており、あっ…、あっ……と、口をぱくぱくさせて後ずさる。

まるで、何かあってはいけないものに遭遇したかのように。

なんで、と震えた声を発したインデックスは、次の瞬間には叫んでいた。

 

「なんで!あなたはそんな魔力をしているの!?」

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