上条と土御門は体術を駆使し、デューイに迫っていた。
この陣形は、上条が盾で土御門が矛。
土御門は常に上条の後ろへ回っていた。
それというのも、デューイが遠距離での攻撃を主体としていたからである。
次々と放たれる、大気圧の大砲。
所々に発動する高重力空間。
それを上条が防ぎ、後ろから跳び出す土御門が拳を振るう。
しかし、それも異常な跳躍力と移動能力で軽々と躱される。
学園都市での逃走時の跳躍ではなく、より鋭い動きをしている。
何度目か、土御門の拳を躱したデューイはそのまま着地……“しなかった”。
「「!?」」
そのまま地面へ溶け込まれるように、消えていった。
土御門は訝しげに見ながら、それでも上条の後ろへ回り、この陣形を崩さなかった。
「なんだよこりゃっ!」
上条が苛立ちを隠せずにいると、後ろからゴキッ、と、嫌な音が聞こえた。
急いで後ろを振り返る。
そこには、顎をアッパーで打ち抜かれた……、土御門が崩れていく光景だった。
「土御門っ!」
上条が叫ぶが反応はない。
いや、時折、あがぁ、などうめき声をあげている。
意識を失ってはいないようだが、完全に顎に攻撃が決まり、脳が揺さぶられている。
戦線復帰は時間がかかるだろう。
そしておそらくそれは、この戦闘が終わる内ではない。
戦闘開始からそれほど立っていない。
それにもかかわらず、土御門が早々と戦闘不能にされてしまった。
土御門に非はないだろう。
事実、デューイはもともとこの一撃を決めることに専念していたのだから。
もともと、肉体を鍛え、咄嗟のダメージの軽減まで心得ているはずの土御門を沈められるよう計算されていた一撃なのである。
魔術使用に制限があるとはいえ戦闘のプロである土御門をあっさりと片付けるその様。
異常なほどの戦闘力を上条は感じていた。
これで1対1とも言いたげに、上条を一瞥するデューイ。
まだまだ余裕といったところ。
実際、彼は息切れ一つ、汗ひとつとして出していない。
「次は君か……、悪いが決めさせてもらうぜ。」
そう宣言したデューイは、一度合わせた手の平を斜めに広げるように何かを出した。
その見た目、緑色の霧。
しかし、徐々に濃度が増し、形を作り、不安定な剣となった。
「そらよっ!」
その剣、いや鞭だろうか。
上条は覚えていないだろうが、どこか御坂美琴の操る砂鉄の剣に似ている。
それは、上条に蛇のように襲いかかる。
それを上条は、右手を突き出し、受ける。
「!?」
だが、それは消せきれない。
見た目の大きさに反し、圧倒的な物量だった。
(これが、地球上の現象の利用だって!?ふざけてる!こんなのがホイホイ起こってたまるかよ!)
上条の心の叫びが効いたのか、その物量も次第に弱まり一応消せ切ることができた。
だが、デューイの手にはまだ、その剣が形を保っている。
またもや、デューイは形をもたない剣を振るう。
今度は、ヒドラのごとく枝分かれし、3頭の龍が上条を襲った。
「おらぁ!」
今度は一番大きな龍を右手で掴んだ。
上条の『
そしてそれを利用し、ほかの龍にぶつけながら躱す。
デューイはすぐさま左手に剣を作り、今度は枝分かれしない集中した一撃を上条に向ける。
それさえも、上条は掴んでいた龍を離し、新たな剣をいなす。
二つの剣は、デューイの意思で霧散し、その手には一つの剣が残った。
彼の扱う強力な魔術に、上条は考察を始める。
(魔力で何かを作ってるのか?それにしても、全部が異能の力でできているにしては強力すぎる。インデックスたちが反応していた、異常な魔力が関係してるのか?それに……、どうやら、扱いきれてもないみたいだな。俺の後ろにあの剣がまわっても、後ろから攻撃することはできなかった。)
上条の、後者の予想は当たっていた。
そもそも、彼の扱う力の系統が違うのだ。
扱えるだけでも異常だろう。
そのことは、本人が一番自覚していた。
レッサーの『鋼の手袋』、五和の『
3対1のこの状態。
3人による飽和攻撃は、いかに組織のナンバー2でも受けきれないのか、時折攻撃がヒットしている。
レッサーがその『手袋』の怪力で攻撃し、五和の補助が生かされ、インデックスの『
飛び交う魔術、強制詠唱、振るわれる霊装。
しかし、まるで不死身のようで、何度でも立ち上がり、まるで攻撃が効いていないかのような
彼が振るう木刀は、神木の刀。
太陽の恵みを受けた神木から、太陽の熱で炎を放つ。
本来、その霊装が発揮されるのは太陽の出る昼。
しかし現在は太陽のない夜である。
それにもかかわらず、その霊装は、高威力の炎を何度も出していた。
その大きさ、まるで大木。
高い攻撃力を持つ炎の威力。
インデックスの『
しかし、いくらインデックスが炎を曲げようとも、炎の発する高い魔力を持つ熱は3人の体力、思考能力を奪っていく。
だからと言って、大きなダメージを負っているのは明らかに、―――夜宮なのである。
そのはずだが、彼はその傷と汚れがかすり傷であるかのように振る舞い、今も余裕とも言いたげにパンパンと埃を払っている。
「何なんですか………あいつもおかしければ、コイツもですか。」
「何か……、何か秘密があるはずです。」
「…………。」
二人が、話している中、インデックスだけは解析を続けていた。
明らかにおかしい夜宮の耐久力。
何かしらの術式が、夜宮の体に刻まれているであろうことは見抜いていた。
だが、それ以上が掴み切れない。
夜宮の耐久力は外側からの防御術式ではなく、内側からの生命能力強化。インデックスでさえも、その術式は未知。
未知のその術式は、科学側からのアプローチを受けた新型術式なのかとも予想した。
しかし、それも考えられない。
彼の魔術には、そのような異なる考え方とでもいう異物が混入していないのだ。
インデックスの出した結果は、純粋な魔術隠蔽。
天草式十字凄教と同様の、隠れた術式。
しかし、天草式が日常動作の中に術式を隠すのに対し、表面上から見破る相手に対して徹底的に表の術式を消し、身体の中に隠す。
同じような本質で違う方法を取ったのだろう。
その中で、インデックスは術式の隠された裏側へと解析を迫らせていた。
今までの、…………神の右席などの未知の術式を知る前のインデックスなら、そこまでは成せなかっただろう。
しかし、彼女は現在、成長していた。
実際、『
しかも、今回はデューイという“あり得ない人物”も見ている。
それも含めて、“普通ではあり得ない魔術”をも選択肢の中に入れた。
そのおかげか、彼女が術式の完全解析を終えるのは、もうすぐだった。