「ふー。…………いい湯だ。」
「だにゃー。」
現在、学園都市周りにある、旅館内の露天風呂。
年に数回、学園都市に来る客、保護者のために、学園都市周辺の宿の温泉に限っては学園都市の技術がいくつか使用されている。
とは言っても、実際に入ってみれば、草津温泉、下呂温泉などと書かれているだけ。
学園都市の技術によって完全再現された温泉を提供されているのだ。
これでは調べようにも、ただ各地の温泉と同じ成分であることしかわからないので、企業スパイもお手上げだ。
「しっかし、あいつ自身が霊装ねぇ……。」
「確かに信じがたい。だが、もう今までに何度も常識なんてものは捨ててきた。今更って感じもするにゃー。」
そうだな。
と、相槌をうち、空を見上げた上条。
学園都市の開発支援によって作られた
その空が、上条の疲労を少し癒してくれた気がした。
「まあ、小難しい話は部屋に戻ってから……ってことで。」
女湯
「むむぅ……。」
この時期に学園都市付近の旅館に泊まる人物は少ない。
学園都市のイベント以外で泊まる主な客は、学園都市製の温泉目当ての旅行者だが、まだ時期は早い。
そんな中、インデックスは温泉でもなく、だからと言って星空を見ているわけでもなく―――――仲間二人の体の一部分をしっかりと凝視していた。
――そりゃあもう、思いっきりジト目のガン見で。
「あー。極楽、極楽。さっすが温泉大国日本ですねぇ。」
「ここの温泉は天然ではなくて人工なんですけど……。」
「どっちにしたっていいじゃないですか。結局おんなじ成分なんですから。」
巨乳の五和と、そこそこ出ているレッサー。
当の本人たちは気づいていない様子。
レッサーのエセ温泉知識を五和が弱々しく訂正していく。
ふと、隣から声が聞こえてきた。
『あー、ところでカミやん。』
『ん?なんだ?』
『隣の3人の……誰が好みなんだにゃー?』
「「「!?」」」
反応した隣の3人。
誰が言われるのかビクビクしたり、興味津々に耳を澄ませたり、自分を想像して真っ赤になったりしていた。
『いや、そう言われても……反応に困る。』
『じゃあタイプ。』
『それなら言ったことあるだろ?』
『どうでもよかったから忘れたにゃー。』
『ひでぇな、オイ。まあ、いいけど。俺のタイプは……。』
その声がした瞬間すぐさま意識が隣へ行く。
微動だにせず――いや、若干柵に近づきながら耳を傾ける。
『年上の気配り管理人さんタイプ、代理も可。』
インデックス→年下
レッサー→年下
五和→年上
ガチガチ。←
ザバァ。←温泉にずっこける音
グッ。←ガッツポーズ
(私だって、…………成長促進系魔術は…………魔力がないから代用は…………霊装だと…………5歳くらいで…………。)
(たーしーかー、彼の周りには小さい娘が多いはずですけどねぇ。こりゃあ、アプローチ変えたほうがいいですかねぇ。……それとも、趣味を変えてしまいましょうか?)
(炊事、洗濯、掃除はできます。
三者三様。
そんな中、行動に移しちゃった人がいたり、いなかったり―――。
「(カミやん。)」
小さく、聞こえるかどうかギリギリな声で土御門が相談してきた。
すっごい、
「(覗かないか?)」
「ブッ。」
これだけで済んだ上条はよく堪えたほうだろう。
思いっきり取り乱しながら、会話に戻る。
「(あほう!万年不幸な上条さんがそんな地雷イベント目前にアクセル踏むバカに見えんのか!?)」
「(何を言うにゃー。俺たち5人以外に客はいない。お隣には、大、中、小がそろい踏み。覗かない方が失礼だにゃー。)」
「(お前、シスコンでロリコンじゃなかったのかよ!?)」
そして、何が、大、中、小か突っ込まない上条。
「(覗きにそんな小さいこと関係ないにゃー。ロリコンだけに。)」
「(別に上手くねぇよ。)」
「(お前のオスは死んだのか!?寝てんなら起こせ!!すぐそこにある
「(すげぇ熱く言ってるけど俺は騙されんぞ!!興味はあるが経験と不幸体質が警鐘を鳴らしてんだ。覗きに行って、柵を超えたところで、キャー、エッチー、で桶を投げ込まれる代わりに殲滅魔術がやってきて、インデックスに頭を
「(それを乗り越えてこそ価値がある!!)」
「(乗り越えられない壁ってもんがあるんだよ!!)」
「(そうか……そんなもので諦めてしまうんだにゃー?)」
「(うっ……、そうだよ……。)」
「(じゃあ、俺一人で
「(なっ!?)」
「(おーっと、
「(……待ちな。)」
「(なんだ?不能でホモなカミやん君?)」
「(……行って……やろうじゃねぇか……。)」
「(ん-?なんだって?)」
「(覗きに行ってやろうじゃねぇか!!)」
「(ははっ。やっと起きたのかにゃー、カミやん。)」
「(ああ!一緒にいこうぜ、
「(チョロイもんだぜい。)」ボソッ。
「(何か言ったか?)」(どうせチョロイと思ってるんだろ。)
「(いや、なんでもない。)」
「(よし。じゃあ行くか!!)」
「(
「(
この2人、――――変態《バカ》である。
「ねえ。お二人さん。」
「何?」
「なんですか?」
「……覗きませんか?」
「「ブッ!?」」
「シー!!大きな声は出さないでください!」
「な、なんでとうまたちを覗かなきゃいけないのか説明して欲しいかも!?」
「わ、私も同意見です!?」
「なんでって、ニッポンの温泉では覗かなきゃ隣の人に失礼と聞きましたよ?」
「そ、それは違うかも!?」
「そ、そうです!!そんなマナーは、まっ――――たくありません!」
「そんなことどうでもいいんです。」
「あっさり、前言撤回なの!?」
「私はただ、男湯が覗きたいんです!!」
「なんですか!?その宣言!」
「お二人は行かないんですか?」
「行く、行かない、の問題じゃないかも!!」
「そうです、そうです。覗かないのが普通なんです。」
「私は覗きに行きますよ。覗かないんでしたら、お二人はここで待っててくださいね。」
「「へっ?」」
「じゃあ、いってきまーす。」
「まっ、待つんだよ!!」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」
「なんですか?」
「うー………………。」
「むぅ………………。」
「………………。(スッ)」
「わ、私は行きます!!」
「あー!?私も行くっ!!」
ニヤリ。(仲間ゲーット)
「じゃあ、行きますか、
「で、どうやって見る。柵でも乗り越えんのか?」
「いやー、それはまずいにゃー。上から見るのはバレバレで、しかも見えにくいから旨みがない。」
「じゃあ、どっから見るんだよ?」
「事前調査は大切だぜい、カミやん。」
「?」
「覗き穴が“ある”んだぜい。おそらく、他にも俺たちと同じ考えの
「そんな都合がいいものがあるのか!?」
「だから誘ったんだぜい。じゃなきゃ、こんな公衆浴場で誘いはしないのにゃー。」
「穴の大きさは?」
「3人は同時に見れるくらいで、そこの柵の隅に用意されている。」
「おおー!!」
「とにかく。そこからのアングルはバッチリ。理想郷《ユートピア》はすぐそこだにゃー。」
「いざ、理想郷《ユートピア》へ!!」
くり返し言うが、この2人――――馬鹿《へんたい》である。
「……それで、どこから見るんですか?」
「割と興味津々なんですね。まあ、いいです。こういうのは、事前準備が大切なんですよ。」
「じぜんじゅんび?」
「覗き穴を“開けて”おきました。科学的なセキュリティーは結構しっかりしてたようですが、魔術的セキュリティーはおろそかですからね。簡単に仕掛けられました。」
「「おおぉー!!」」
「アングルは完璧。同時に3人は覗くことが可能。しかもバレにくいという三拍子揃った完璧な布陣です。」
「「おおぉーーーー!!」」
(この2人…………ノリノリですね……。)
(そうだよ、そうだ、そうなんだよ!!とうまには、いつも、いつも、いっつも見られてるんだもん!!今度は私が覗いてやるんだもん!!)
(ポー……………………………………………………ポッ。)
「ここです、ここです。さーて、ここの覗き穴を開け…………」
ガタンッ。
「「「へ?」」」
「おー、ここから見れるんだな、つちみか…………」
「ああ、そうだにゃー、カミや…………」
「「あり?」」
「「「「「………………………………。」」」」」
「みきゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」←インデックス
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」←上条
「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」←五和
「うひゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」←レッサー
「にゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」←土御門
このあとの展開は、皆さんのご想像にお任せする。
あと奇跡的に、その叫び声が従業員さんの耳に届くことはなかったと、ここに追記しておく。