とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第5章 休息の宿 half_time 2

学園都市外周部 旅館 客室内

 

「むしゃむしゃ、むしゃむしゃ………………ゴックン。」

「ちょっと待て、噛みつき、咀嚼(そしゃく)を通り越して嚥下(えんげ)が始まってるぞ!!ってか、何を飲んだインデックスゥゥゥゥウウウウウウ!?」

「どういうことなんですかねぇ?なんで、あの穴を使ってたんですかねぇ?ってか、アンタにまで見せる気はなかったんですよ!!」

「穴を作ったのは、そっちだにゃー!!原因なんだから自業自得だにゃー!!」

「あははハはHA…………見られた……………………見ちゃった♪」

現在、混沌(カオス)な客室内。予算があるのだが、女子3名の希望の下、大部屋にて5人で部屋を取るという形になった。

インデックスにとっては、当麻といっしょの部屋が普通で。

五和にとっては、ここで距離を縮めようという思惑の中で。

レッサーにとっては、上条当麻を篭絡しようという目的で。

「見られちゃった見られちゃった見られちゃった見られちゃった見られちゃった見られちゃった見られちゃった見られちゃった見ちゃった見られちゃった見られちゃった見られちゃった見ちゃった見ちゃった見られちゃった見ちゃった見られちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃった……。」

「いつわ!?いつわ、戻ってくるんだよ!!」

「あは♪」

「いつわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「あははははー♪」

「………………あっちは大丈夫なのかにゃー?」

「イテテ……、俺、戻しに行ったほうがいいか?」

「いや、カミやんが行ったところで逆効果だと思うぜい。」

「ちょっと!?まだ話は終わっていませんよ!!」

 

十分経過

 

「コホンッ。……では、本日の成果を確認します。」

正気に戻った五和が仕切り、情報の整理にあたる面々。

「目的不明のため、私たちの行動は調査のまま続行です。ですが、敵対の意思を確認できたため、ある程度の先制攻撃は容認されると思います。」

「確認できた情報は、“科学者”仁代数樹がサヴァン症候群であることと、それを持って魔術を研究したこと。リーダー、デューイ=奇水=ウルフィックが自身を霊装化させたこと。幾人かの敵魔術師の確認。報告書から、能力術師(レベルマジック)の脳が開発済みであること、……ですね。」

「いざ並べてみると、前代未聞のオンパレードだにゃー。」

「これだけの情報……、彼らを捕らえた後にしっかり扱っておかないと互いのサイドが確実に混乱しますね。」

「すでに、能力術師(レベルマジック)なんて、どっちで扱えばいいか判らんにゃー。」

目的こそ不明だが、調査1日目にして多量の情報を得ることができた。

彼らの任務は調査、情報の収集こそが目的だ。

 

「さて、という訳で新たに出てきた敵の情報確認と行きますかにゃー。」

「インデックス、アイツ等の魔術を詳しく説明してくれないか?」

「うん。まず、あのリーダーの魔術なんだけど、おそらく干渉する術式だと思う。」

「干渉する術式ですか。一体どんな感じで行われているんで?」

「彼自身が霊装であることに意味があるの。あの魔術はすごく曖昧な術式でできている。」

「曖昧なって……、そんなんじゃ魔術なんて使えないだろ?」

「言い方が少し違っていたかも。術式の魔術の意味を曖昧にしているの。」

「言っちまえば、出力の部分を曖昧にしている。扇風機なのかクーラーなのか、それとも電子レンジなのか、って感じだにゃー。出口は曖昧だが電力ってのは変わらないんだぜい。」

「曖昧だからこそ、『干渉』するのに対象を絞る必要性がないの。それに、一見曖昧な術式だけど、複数の術式が複雑に絡み合って曖昧な部分を補強しているの。」

重力に干渉しての驚異的なジャンプ力。

透過性へと干渉して壁や床をすり抜け。

大気圧に干渉して攻撃する空気の大砲。

干渉するものが曖昧。

それは、何にでも干渉できると示唆している。

「弱点は何があるんでしょう?」

スケールの大きい魔術だからこそ、そこへ質問するのは当然のことだ。

対して、インデックスの答えは一言で済んだ。

「副作用。」

「副作用……、ですか?」

「うん。それだけ曖昧な術式や人間の霊装化には絶対に体への負担がかかるはずなの。うまく抑えても、その綻びだけは押さえきれないはずだよ。」

「諸刃の剣ってことだにゃー。」

「『干渉術式』……。」

デューイの魔術、干渉術式。

万物に干渉する対象の曖昧な魔術。

リーダーが扱う、組織最強の魔術。

「ほかにもメンバーが出てきたみたいだけどさ、そいつらについてわかることってあるか?」

「あっ、はい、そちらについてもご説明します。」

 

五和が配布する顔写真付きの書類。

数時間前に見た顔ぶれが揃っていた。

おそらく、旅館についてすぐに調達していたのだろう。

土御門が渡していたのか、科学サイドの二人もいる。

そして新たに、3人の資料が追加されていた。

「まず、『海を守護する大樹』のメンバー、ルイ=ケースです。」

写真にあるのは貴族風の金髪のあどけない少年。

同じく載っているのは金メッキを施された三又の槍。

書かれている経歴の数々。

「彼の実家は本物の貴族です。代々魔術を受け継ぐ家系で、彼の霊装も彼の家の家宝。霊装の名前は『ポセイドンの矛』。」

「ポセイドン……。」

上条も名前だけは聞いたことがある。

海神ポセイドン。

ギリシャ神話で海を司る神であり、オリンポス十二神の一角(いっかく)

地下水や泉の支配者とも言われている。

「ただ、情報と実際の彼と少し異なっている点があります。」

「なんなんですか?その異なっている点ってのは……。」

「彼の矛は家宝ではあるのですが、もともと“霊装ではなかった”んです。」

そう、彼の家の家宝『ポセイドンの矛』は歴史的にも金額的にも価値のある品ではある。

が、あくまで貴重なものであって、魔術的な意味のある霊装ではなかった。

偶像崇拝の理論で若干の力はあるにしても、専用にカスタマイズされたものではない。

「ってことはだ、自分の家の家宝を霊装にしたってことかにゃー?」

「はい、おそらくは……。」

 

その後、ある程度の備考を話し終え、次のメンバーに移る。

 

「次です。こちらも『海を守護する大樹』の女性メンバー、デイジー=リムズ。」

写真に乗っているのは黒髪のかわいい少女。

それと、指揮棒程度の長さの木製の杖。

まるで魔法使いの持つような杖だ。

「彼女の持つ霊装については情報が得られませんでした。あの霊装を確認したのは今回が初めてです。」

「そいつは完全に不明だにゃー。」

「何かわからなかったか、インデックス?」

「あの霊装も、太陽の恵みを放出するタイプの霊装だと思う。でも、解るのはそれだけ。」

「それだけ、なのか?」

確かに、ここにきてかなりレベルアップしたインデックスが解らないと言っている。

かつて話だけで『トラウィスカルパンテクゥトリの槍』を当てた彼女がだ。

「あの(ひと)だけじゃない、彼らみんなの霊装が普通の霊装と根本から異なっているの。作り方や構成がまるで常識外れなんだよ。使っているところを見れば解析はできるけど……。」

「見ただけじゃ何の効果を出すか想像がつかない……か。」

「それ以外に特筆すべき情報もないみたいだにゃー。それも、不自然なくらいに、な。」

「どこか、天草式(わたしたち)みたいです。」

 

そして、次の資料へと移る。

 

「『海を守護する大樹』のメンバー、ジャック=リドル。」

写真に写るは背の高い銀髪の青年。

引き締まった体はアスリートを彷彿とさせる。

使用する武器として、ボウガン――『十字弓(クロスボウ)』が載っている。

ちなみに、ボウガンというのは日本の和製英語。

日本でしか通用はしないらしい。

そして、その高すぎる威力から“十字教では禁じられた武器”である。

「もともとは一般人の競技クロスボウの選手です。魔術とも、関わり合いはありませんでした。一般人として、リーダーのデューイと友人関係だったそうです。」

「なんでかかわるようになったかわかりましたか?」

「いえ……。」

『?』

 

「彼と組織との関係は全く情報が得られませんでした。」

 

「はぁ!?イギリス清教が総力を挙げて捜査したんだろ!?ホントに“全く”なのか?」

「はい。不自然なくらいに。」

『…………。』

「きな臭く、なってきたにゃー。」

 

土御門の言う通り、不自然な彼らの情報。

どこか消化不良のまま、もやもやした何かを残して。

本日の会議は終了した。

 

 

 

 

 

「そういやさ、あいつらが動いているってのに、俺たちがこんなにのんびりしていていいのか?」

「今は動いても意味はない、それ以上に動けないってところかにゃー。」

「?」

「脳こそ開発済みだが、それが人の形までなったかどうかはわからない。出来ているか、出来ていないか、一日二日じゃ変わらない。それに、休息は必須。カミやんはまだ大丈夫だが、俺たちは回復魔術を使っても全快するのは明日だ。」

回復魔術が効かないカミやんが軽傷でよかったけどな。と、軽口を言う土御門。

事実、彼らは本日の戦闘でボロボロ。

なおかつ、上条は隠密に慣れていない。

その状態で、徹夜の行動は意味がないだろう。

「あと、結局逃げられたけど、あいつらの場所の手掛かりとかないのか?」

「それなら問題ないかも。」

代わりに答えたのはインデックス。

彼女の持つ、10万3000冊の知識を発揮する。

「あのリーダーの魔力はちゃんと記憶した。あの魔力を魔術でサーチすれば、まず見つかると思う。普通、霊装は魔力を流されていないとサーチの対象にはならないけど、彼自身が霊装なら、常に生命力が流れている。つまり、すいっちをおふには出来ないんだよ。だから、位置は私がいる限り見逃さないよ。」

私がその術式を構築するから、と、インデックスは言う。

彼女は魔力が無い。

が、その知識を使って魔方陣を書くくらいのことはできる。

それを、五和かレッサーか土御門にやってもらうのだろう。

 

「まあ、というわけで……」

数泊の間を置く。

 

「明日からは、本番だ。」

 

土御門の宣言。

今日のことから、彼らが自らの目的を残すような真似はしないという判断からの決定。

実行するのは潜入調査。

彼らの本拠地への侵入。

行われるのは強制捜査。

上条達5人もまた、明日(あす)の決戦を予見していた。

それは、現実のものとなる。

想像を(ぜっ)する激戦となって。




激戦から一夜明け、上条たちは『海を守護する大樹』のアジトへと向かう。
そこで待っていたのは、彼らによる想像を絶する反撃だった。

次章『第6章それぞれの戦いone_or_one』

科学と魔術が交わるとき、物語は始まる。
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