とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第6章それぞれの戦いone_or_one 1

翌日 学園都市外周部 旅館 客室

AM7:32

「ん……。」

目が覚めた上条。

見上げているのは見慣れない天井。

なぜこの天井か少し考え、昨日の激戦を思い出した。

(昨日の朝は思ってもなかったよなー。まさか、こんな風に学園都市の外に出るなんて……。)

今回の敵は想像以上に強い。

『干渉術式』を使う、デューイ=奇水=ウルフィック。

『魔科学者』でありサヴァン症候群、仁大数樹。

完全武装(オールウエポン)』を持つ能力者、仁大由香里。

『ポセイドンの矛』を使う貴族、ルイ=ケース。

未知の杖を使う少女、デイジー=リムズ。

十字弓(クロスボウ)』を使う不自然に情報のない男、ジャック=リドル。

そんな彼らを相手に5人という少数のメンバーで行動しなければならない状況。

「やってやるさ……。」

何を目的としているかはわからない。

が、とりあえず白井を傷つけた分ぐらいは殴るつもりだ。

 

「ん…………。」

「…………ん?」

「…………すぅ、すぅ。」

「……んん?」

「…………んにゅぅ。」

 

おかしい。

たしか、男女はふすまで仕切られている。

こちら側には自分と土御門しかいないはず。

土御門がこんな声を出しているわけではない。

実際に窓際の布団でだらしなく寝ている最中なのだから。

まあ、何が言いたいのかというと…………。

 

インデックスが寝ぼけて布団に入ってきました。

 

(…………、よし、出よう。)

無駄に刺激して“不幸にも”インデックスが起きれば、頭皮に明日はないだろう。

そのため、さっさとこの部屋を出て朝風呂にでも行ったほうが賢明だ。

(インデックスさーん、起きないでくださいねー。)

心でつぶやきながら、布団から出ようとする上条。

「ぬっふっふ……。寝ぼけを装って布団へGO……、って、先を越された!?ちっ、出遅れました。」

「げっ!?レッサーっ!!」

「抜け駆けはナシですよ!!」

「五和っ!!」

「ならば、二人で突撃です!!」

「なんでっ!?」

「うるさいにゃー!!静かにしてくれー!!」

「ああもう……。」

「日本では、朝の男性にダイビングするそうですしね。」

「それは、お父さん相手に子供がやることなんですけど……。」

「お前ら………。」

「関係ありません!!飛び込みたいから飛び込むんです!!」

「まーた、カミジョー属性発動か。その能力俺にもよこせ!!カミやん病なら喜んでかかるぜい!!」

 

 

 

「インデックスが起きるだろがあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「……ん、とうま?」

「あっ。」

「………………。」

「………………。」

沈黙が客室を支配する。

上条以外のメンバーは、あー起こしちゃった、の状態だ。

当事者の二人。

上条はゆっくりとインデックスの前に正座する。

起き上がったインデックスはゆっくりと覚醒。

ぼんやりした目付きで上条を見てビクンッとした。

自分の状態を確認し、さっきまでの状況を思い返し、徐々に顔が沸騰してクラっとする。

キッ、と上条を(かわい)く睨み。

「……(ガチガチ)。」

「……(だらだら)。」

臨戦態勢に入る。

「とー、うー、まー!?」

「いや待てっ!!潜り込んできたのはインデックスの方で、俺は寝ていただけ!!何もしてないし何もなかった!!だから、この状態での噛み付きは不要であると上条さんは主張し――――」

「問答無用!!」

 

ガブリッ!!

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!不幸だぁああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

お約束である。

 

 

 

 

 

高速道路 車内

 

PM12:05

車の中はパーキングエリアの昼食の後で若干食べ物の匂いが残っている。

旅館での件(くだり)のあと、インデックスによって組み上げられたサーチの術式をレッサーが行使し、相手の本拠地が特定できた。

なぜ特定できたか。

確かに、デューイを特定できるとインデックスは言っていた。

しかし、彼の位置を特定できても、車などで移動はできる。

あくまで、デューイ=奇水=ウルフィックの現在位置が分かるだけである。

ただ、その位置にもよる。

例えば、険しい山の山中などで数十分から数時間の間で移動しなかった場合、その場所は秘密基地ではないかと考察することもできる。

もちろん、彼らの移動手段が多岐にわたった場合、その考察は限定できない。

科学、魔術を駆使すればその場からすぐさま移動できるため、そこが本拠地だとは断定できない。

ならばなぜ、『そこ』が本拠地、または一基地だと断定したか。

 

それは、その場所が『海上』だからである。

 

海の上を移動できる乗り物、魔術は多い。

アドリア海の女王しかり天草式の木製潜水艇なり。

科学側の船、潜水艦も考えられる。

が、今もレッサーによってサーチが断続的に続けられている中、“一度もその場から動かない場合”を考えると、自然と思いつくだろう。

 

海上秘密基地と。

 

「動きはあるかにゃー?レッサー。」

「未だ動きません。こちらのサーチに気づいているかもしれませんが、それでも動く気配はありません。」

「移動しないっていうより、移動できないって考えたほうがいいかもな。」

「ええ、船や潜水艦の類、術式ではないでしょう。」

「しかし、どのような方法で会場にとどまっているんでしょう?」

「『干渉術式』で地盤に干渉して、島でも作ったんじゃねえか?」

「それはないと思うぜい、カミやん。んなことになったら、世間は領土ができたと大騒ぎになっちまうだろうからにゃー。」

「っていうか、干渉術式でそんなこと可能なんですかね……。」

「可能だよ。あくまでその現象に干渉するだけ。干渉する対象が大きくても小さくても、関係ないんだよ。」

「…………人体の霊装化。そこまで効力が高いとは予想外です。」

「うん。五和の言うことも最もだけど、決して万能ではないと思うよ。確かに、人の枠組みを超えることで、強大な力を扱っているけど、それでも神様が行うような真似事はできないと思う。」

「天体に干渉して星を作ったり、天候に干渉して天変地異を起こすなんて真似はできないってことか。」

「そういうことなんだよ。島を作るのは、確かに神様がするようなことだけど人間だってそのくらいのことはやってる…………んだよね?」

「……成長したな……インデックス……。」

「まさか、科学オンチなインデックスの口から、人工島なんて言葉が出るなんてにゃー。」

「ふふん、私だって成長しているんだから。」

「じゃあインデックス、パックのご飯を電子レンジで温めたい場合、何ワットぐらいで何分温めればいいでしょう?」

「…………わっと、って何?」

 

「頼むからせめて自分でご飯を食べるスキルぐらい身につけてくれよ!?」

 

「わっ、いきなり何なのとうま!?」

「カミやんの中の何かが爆発したと見たぜい。」

「……いつわ!あとどれくらいで着くのかな!?」

「話をそらすなよっ!?」

「えーっと、もう直に料金所に着きますが……。」

「うるさいぞカミやん。こっちのほうが重要な話だぜい」

「こっちも割と重要な話だよ、お前もウチの状態は知ってるだろ!?」

「まあ、確かにカミやんの所は実に面白……、もとい大変そうだからにゃー。」

「面白いって言ったな、今面白いって言ったな!?」

「カミやんの所は面白い。」

「言い切った!?」

 

 

 

 

 

日本 太平洋側海岸

 

車をしまった五和が取り出しているのは和紙。

船は木から作られ、木から紙が作られる。

それを利用した天草式の上下艦。

お札状の大きさの本来無地の和紙は、インデックスにより複雑な線が描かれている。

あっという間に強化された一隻の上下艦ができる。

「何隻用意しますか?」

「出来るだけたくさん欲しいかにゃー。」

「うん、科学サイドのれーだーはよくわからないけど、魔力のサーチは対策をしておいたほうがいいよ。魔術の生命力サーチは私がダミーの術式を組む。レッサー、お願いできるよね。」

「構いませんよ、魔力を流すだけでいいんですよね?」

「うん。」

「一応、学園都市製携帯ジャミング装置でも付けとくかにゃー。」

「あいつらも学園都市出身だから気休めにしかならなそうだな。」

「出来ることはやっといたほうがいいもんだぜい。」

次々と出来ていく上下艦、付加されていく魔術。

やがて、その船の団体は完成する。

そしてその一つの船に、上条たちは乗り込んでいく。

「到着は目的地の距離からおよそ1時間後です」

五和の一言を出発の合図にして。

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