日本領海内 海中 天草式上下艦内
PM14:32
ピリピリした空気。
上条達5人はそれぞれ武器や霊装の調整に余念がない。
上条は準備運動をして筋肉をほぐしている。
土御門は折り紙や拳銃などのチェック。
インデックスは目をつぶり、彼らの魔術を頭の中で再生。
五和は
レッサーは鋼の手袋のカスタマイズ。
その中でも、目的地からの迎撃には細心の注意を払っている。
彼らの目的地『海上人工基地』はすでに捉えていた。
そのシルエットは、海上に出た円盤。
黒い金属の壁に包まれたドーム状の建物。
その大きさはドームと同じくらいで窓も地面も見当たらない。
見た目も機能も海上の要塞である。
学園都市外の技術では発見できないステルス性能。
完璧に施された隠密術式。
インデックスでさえ、基地そのものをサーチする魔術を組むのは至難の技だろう。
ただの魔術ならばインデックスの知識に並ぶ者はいない。
だが、使用されているのは科学サイドの影響を受けた魔術。
そして、インデックスは科学が苦手である。
科学サイドの技術で見つけることは学園都市以外不可能だろう。
そして、学園都市はその技術を都市外に持ち込むことはほとんどしない。
持ち込んだとしても、魔術というイレギュラーが存在している。
魔術を知らない科学者には大きな障害となるだろう。
閑話休題
デューイの性格上彼自身が囮となっている可能性もあったが、どうやら彼は基地にいることを選んだらしい。
その基地へと向かう上条たちの天草式上下艦隊。
海中を進む彼らは既に敵には見つかっているだろう。
準備を終え、警戒ラインに達しようとしていた。
「ここから先は迎撃予測エリアです。」
五和の警戒する声。
その声の直後。
一隻の上下艦が行動不能になった。
「『
土御門の声が艦内に響く。
次々と捕えられていく船。
放たれる魚雷群は正確に目標へと向かっていく。
五和、レッサーは無言で反応し、船の舵をとる。
たった二人ですべての船を操縦しているとは思えないほどの制度。
ロックオンされたのにもかかわらず、少なからず躱していく。
インデックスの補強も大きい。
船のスピード、耐久力、操作能力を大きく上げている。
だが、『
壊すのではなく捕える。
学園都市製のネットはジャンボジェットだろうがスペースシャトルだろうが捕えてしまう直径1㎝の化学繊維でできたネット。
網で乗り物を捕えられるのかどうかと疑問にも思うだろう。
だが、それは決して不可能ではない。
ただの蜘蛛の糸が鉛筆の太さになるだけで飛行機を捕えられる。
事実、可能となって実在しているのだから。
「何隻やられた!?」
「現在残っているのは12隻。23隻がやられました!!」
「レッサー!あとどれぐらい距離がある!?」
「最危険区域を突破しました!!」
「っ!?魔術が来るよ!術式は日本神道の捕縛系。数は3つ!」
「
「やめとけ、俺たちが乗っているのがこれだとばれる。あくまで最終手段だ!」
「一隻捕縛されました!残り11!」
「押し切れる!このまま突っ込むぞ!」
上条達、上下艦隊はすでに『海上人工基地』へと迫っている。
残りはさらに一隻捕まり、残り10隻。
だが、乗り込む準備は整った。
「“飛ぶぞ”!!」
土御門の声を合図に、すべての船が舞い上がる。
水柱が上がり、船を押し上げ金属製の基地へと着地する。
着地の衝撃で船がいくばくか砕ける。
が、すぐに和紙へと戻る。
それは上条たちの船も例外ではない。
船が溶けるように和紙へと変わる時、上条たちも姿を現した。
すでにここは敵陣。
無駄なことはせず、迅速に作業に取り掛かる。
「侵入経路はどこでしょうか……。」
「無理やり開けちゃいますかね?」
「まあ、既にばれているようだし、こそこそしても意味はねぇな。」
「私が貫通の術式を描くよ。」
「じゃあ、俺は見張りと行きますかにゃー。」
「必要には及びませんよ。」
「っ!?躱せええぇぇぇ!!」
土御門の大声でその場を動く5人。
5人がさっきまでいた位置に巨大な水流が襲いかかった。
(水の術式。ギリシャ神話をモチーフにした海流操作。それでこんな真似が出来るのは…………)
「よく躱しましたね。」
現れたのは金髪の少年。
貴族風で育ちのよさそうな美少年。
金色の矛を持ち、矛には海流が蛇のように海から巻きついている。
海水を自在に操る霊装『ポセイドンの矛』。
その持ち主、ルイ=ケース。
『海を守護する大樹』の中心メンバー。
「外で待ち伏せて正解ですね。僕の独壇場で最初に交戦できるんですから。」
『ポセイドンの矛』。
その効果は海水の制御にある。
本来、彼は陸地ではペットボトルに入れた海水を常備する魔術師だ。
が、ここは海上。
この上ない彼にとって最強の戦場だ。
「術式できた!!」
そこに割り込むインデックスの声。
今のごたごたの間に完成させた貫通の術式。
その手にある白いマジックペンは黒い金属壁に正確な効果を刻みこむ。
後は、魔力を流すだけである。
「えーと、日本のコミックでいい感じのセリフがあったんですよね。」
一歩近づくのはレッサー。
『鋼の手袋』を構え、上条たちの壁になるように前へと出る。
「ここは私に任せて先に行ってください!!」
その声に対して、反応が早かったのは五和だった。
最もチームプレイを得意としているからだろう。
彼女は素早く魔方陣へと駆け寄り、魔力を流す。
魔力を流され、効果を発揮した魔方陣はその強固な壁へと穴をあける。
その下は通路。
4人が先に行く準備は整った。
「まかせたかも。」
「頼むぜい。」
「お願いします。」
皆、素早く穴へと入る。
レッサーが構え、皆が基地へ侵入する中、上条だけはレッサーを見ていた。
「レッサー!!」
「…………なんですか?」
「絶対追いついてこいよ!!」
上条の激励。
それとも命令か。
厳しい注文を上条はする。
死ぬなでも、生きて帰れでも、後で会おうでもない。
追いついてこい、と。
「わかってますよ。」
その注文を、レッサーは了承した。
お互い、強大な相手であることも、とてつもなく不利な状況であることだとわかっていながら。
穴へ入り込もうとする上条に、視線を動かさずに告げる。
「知ってますか。死亡フラグって乱立させれば生存フラグなんですよ。」
海上の戦い
レッサーVSルイ=ケース