日本 『海を守護する大樹』海上基地
『
それが閃光を起こした少年、
彼の能力は、触れた音や熱などのエネルギーを光エネルギーへと変える力である。
ただ、衝撃をすべて光へと変えきれないので、防御力には期待できない。
だが、攻撃する、もしくはされるたびにフラッシュが起こる。
攻撃時に目をつぶるわけにもいかないので、接近戦には非常に有利だ。
もちろん、遠距離での支援も得意である。
「ぐっ……。」
「み、みえない……。」
「あっ!?」ガタッ!!
事実、その攻撃によって、とっさに気付いた上条以外のメンバーは目を封じられてしまった。
「みん――。」
「はああぁぁっ!!」
上条が皆に気を取られている間、その隙を逃すはずもなく、年上であろう少年が攻撃に出る。
ただ、その距離は遠かったが。
ボゴッ!!
「うがっ!?」
殴られた上条。
距離があるはずだが、“少年があの位置で上条を殴った”のである。
『
それが
人体拡張というが、実際に体がどこかのゴム人間のごとく伸びるわけではない。
伸びるのは、“彼が触れられるリーチ”だけである。
ゆえに、距離があったとしても彼の攻撃範囲は非常に広い。
もちろん、ただ広いだけではない。
もし、長い棒を振り回した場合、その先端は非常に大きな遠心力が働く。
そして、伸びるのはリーチだけで、彼に振り回す負担はかからない。
そのような状態で回し蹴りをしたら、どうなるだろうか。
「っ!!」
バギンッ!!
間一髪、
狭い通路ゆえに、コンパクトな蹴りだったが上条の反応が上回った。
「寝ていろ、素人が!!」
工島の後ろで、土御門が攻勢に出ていた。
別に土御門が驚異的な回復力で戦線に復帰したわけではない。
そもそも、サングラスをしている土御門はやられた演技をしていただけである。
その土御門は魔法名の通り、後ろからの攻撃を行う。
ボゥ!!と、土御門の突きが炸裂する。
が、それを受けているのは少年ではなく、少女だった。
『
それが少女、
彼女は別に肉体そのものを強化しているわけではない。
ただ、彼女が負うはずの怪我を無効化させてしまうだけである。
怪我の無効化。
それは外傷だけに止まらず、内部の傷にも適用される。
つまり、彼女は“いくら筋肉の出力をあげても怪我をすることはない”のである。
人の筋肉の平均出力は約3割。
しかし、彼女にその制限は、無い。
「沈めえええええぇぇぇぇぇぇ!!」
解放された筋力は容赦なく土御門に襲いかかる。
バキンッ!!
間一髪、夢夏のパンチは上条の右手に防がれた。
「♪~♪~♪♪~。」
聞こえてくるのはインデックスの歌声。
彼女は、能力者相手に直接的な攻撃力、防御力にならない。
だが、魔術の使える人間と組めば話は変わる。
彼女は今、五和の口として呪歌を紡ぐ。
そして五和もまた、歌を歌う。
彼女たちの歌を聴き、一人、また一人と“眠っていく”。
敵味方問わず。
バギンッ!!
その音か、またはその効果か。
上条はその音と共に意識が浮上し、目を覚ました。
「ん。」
不思議と寝起き特有の気だるさはない。
むしろ完全に覚醒した状況に戻っている。
そういったほうが適切であろう。
まぶたの上に感じる体温。
それにつられ、目を開ける上条。
目の前には、上条の“右手”を持ったインデックスがこちらをうかがっていた。
「とうま、起きた?」
「イン…デックス?」
ガバッ!!と、起きる上条。
きょろきょろと周りを見渡す。
敵基地の中、自分はなぜか眠っていたらしい。
「インデックス、俺はどのくらい寝てた?」
「1分も過ぎてないよ。私たちの歌声でみんな眠らせたの。」
インデックスと五和が歌っていたのは子守歌。
その名の通り、歌による睡眠の術式だ。
上条が眠ったのは耳で聞き、脳へと魔術が作用したからだろう。
右手を経由していないゆえに効いた。
実際に触れればその限りではなくなったが。
周りを見れば土御門、大樹聖夜、工島希望、渚夢夏が眠っている。
どうやら非常に強力な魔術だったらしい。
それぞれ深い眠りについている。
「私たち歌う側は眠らないけど、とうま達の聴く側は眠る。でも、とうまの右手ですぐに起こせるから。」
「そっか。」
この術式のキモ、『歌う側』が『聴く側』を眠らせる。
魔術に多少詳しければとっさに歌い、防ぐことはできる。
だが、相手は魔術に詳しくない能力者。
そうなれば、防がれる可能性はガクンと下がる。
「早く土御門さんを起こしたほうがいいと思いますよ。たぶん気づいていたけど、相手に知られないようにわざと眠ったと思いますから。」
「おおっと、忘れてた。早くしないと。」
「いや~まるで寝ていたとは思えない体調だにゃー。カミやんの右手を使った大胆な作戦だぜい。」
「ああ、びっくりするくらいだ。別に体力が回復したわけではないけどな。」
「もっと時間をかけて寝ていればそうなるかも。この術式は親が子供を眠らせる、休ませることをもととした術式だから一番休める睡眠ができる。魔術で回復するわけじゃないから、とうまにも有効だよ。」
「そうさせてあげたいんですが、今は時間がありませんからね。」
「まあな。でも、この事件が終わったらそれで休みたいなあ。」
「え、えっと……。そうしたいなら、歌いに行きますけど……。」
「おっ、ホントか?いやー楽しみだな~。」
五和の
まあ、人生そんなうまくいくわけではない。
「いつわ!!」
「は、はい!?」
「その時は“私”も一緒だからね!!」
「は、はい……。」
「インデックスも一緒か。効果が高まりそうだな。」
もちろん、魔術的な意味である。
通路をしばらく行き、内側への扉を発見する。
あれから何度か3人の連絡を受けた能力者や魔術師が上条達に戦闘を挑んだが、何とか撃退できている。
どの能力者や魔術師も、平均どころを上回る実力の持ち主ばかりだった。
その中に、ピックアップした中心メンバーはいない。
『海を守護する大樹』に幹部はいない。
だが、力の優劣は存在する。
それにより、ピックアップした面々は幹部というより要注意人物ということになるが。
彼らの力は、平均を超える面々の中でも一線を博す。
そこに魔術師が多いのは、実戦経験の差だろう。
そして、上条達は“二人目”に遭遇した。
入った先はコンテナの並ぶ広い倉庫。
コンテナは人間の大きさを上回る程度あり、個々の間隔も広い。
その中で、中心に立つのは黒髪の少女。
カチューシャをした、美人よりカワイイが似合う容貌。
指揮棒程度の木の杖の形をした霊装。
『海を守護する大樹』の中心メンバー、デイジー=リムズ。
「………………。」
必要がないのか、彼女は何も言わず、持つ杖をふるう。
杖の放つ光を浴びる。
それだけで、真横のコンテナが“溶けた”。
「熱っ!?」
溶けた金属の超高温により部屋の空気が熱せられる。
溶けたコンテナはただ溶けたのではなく、熱により溶けたらしい。
木と熱。
夜宮の術式と同じようなものかと連想される。
「ふっ!!」
前に出たのは五和。
「――――――。」
「――――――。」
「――――――。」
だが、その氷はデイジーの霊装により、すぐさま溶け、熱湯へと変わる。
次第に水蒸気となり、飽和した空気が霧を作り出した。
どうやら夜宮の術式とはまた違った術式らしい。
杖が放つ光は氷による乱反射はせず、その氷を溶かしつくした。
それも、五和の計算通りだったが。
「……残ったのね。」
「ええ。」
すでに上条達三人の姿はない。
五和の目くらましでこの場を過ぎ去り、先へと進んだ。
これは五和の言い出したことだ。
中心メンバーは強い。
が、いちいち全員を倒す必要はない。
できることならこちらはとっとと目的を達成し、逃げてもいいのだ。
優先したのは各個撃破ではなく、目的達成。
少数で最大の結果を出す。
それが得意な五和の意見を上条達が無視するわけがない。
そして最後の上条のセリフ。
五和のやる気は五割増しである。
「……あなたを倒して、彼らを追う。」
「あなたを倒して、彼らに追いつきます。」
コンテナルームの戦い。
五和VSデイジー=リムズ。