英国 聖ジョージ大聖堂
「間違いありませんか、シェリー?」
「ああ、間違いはない。『この事件』の資料だけが意図的に排除されている。」
「でも、これ、そんなに重要な事件ってわけじゃありませんよね?」
「アニェーゼと同意見です。それに、『この事件』の通りなら“彼ら”がやっていることは復讐……、いえ、八つ当たりでしかありません。」
「違いますよ、ルチア。それでは『この事件』がイギリス清教によってこの場からもみ消される理由がありません。もみ消した理由が何かあるはずです。」
「もみ消すことにより、イギリス清教の誰かがメリットを得る場合。……もしくはデメリットを回避できる場合。大別すればこの二つの理由に分かれるのだろう。」
「ステイルの言うとおりです。『この事件』の関係者を洗いざらい調べてください。イギリス清教の面々を重点的に、ここ数年離れたものも含めて全員です。」
『はい。』
彼らが集り、離れたテーブルには、一つの新聞記事が広がっていた。
別に特別なものではない一般向けの普通の新聞記事。
イギリス清教から消えていた、一般の人に知られた事件。
事故ではなく、事件。
そこには、こう書かれていた。
『バスで起こった爆弾テロ。死傷者は数十名。容疑者逮捕、――――――エレン=奇水=ウルフィック。』
『海を守護する大樹』海上基地
レッサーと五和が足止めし、基地の中心へと向かっていく。
コンテナルームを過ぎたころから、魔術師や
おそらく、上条たちの実力から彼らでは実力不足と判断したのだろう。
五和やレッサーはまだ追いかけてこない。
戦闘が終わらない。
これは、『海を守護する大樹』の中心メンバーは実力的に拮抗するということだろう。
そうなれば、次に立てる対策は予想がつく。
トレーニングルーム
そこは大きな空間だった。
広い部屋以外何もない。
障害物のない開かれた空間で、立っているのは一人の青年。
背が高く、さわやかな銀の短髪。
細く引き締まった体についている筋肉はアスリートの証。
右手にあるのは
左手で持つのはメモ帳。
不自然に情報を消された男、ジャック=リドル。
彼に相対する上条たち。
予想通り、彼らは“最も優れたメンバーで上条たちを排除する”方針らしい。
ジャックがメモ帳を開く。
そこにはどのページにも魔方陣が描かれていた。
そのひとつのページを選び、左手を振るう。
途端に、幾枚もの白い紙が宙を舞った。
数は多く、数千枚に至るだろう。
舞う紙はまるで竜巻。
ジャックの左手を中心に、操られ、こちらへ向かってくる。
上条達三人は左右によけた。
上条とインデックスは右へ。
土御門は左へと。
紙の竜巻が通った後。
その床は切り傷が無数についていた。
紙で手を切った経験は誰にでもあるだろう。
紙は木でできている。
ティッシュでできたサッカーゴールがあるように、2500枚ほどのティッシュで拳銃を止められるように、紙はもともと強い素材だ。
それを後押しするだけでいい。
紙でできたメモ帳に記載された、紙を使った魔術。
それがジャック=リドルの“魔方陣による魔術”である。
「カミやん、突破するぞ!!」
土御門の号令で一直線に迫る。
が、上条には相性の悪い魔術。
紙をすべて触れるか、あのメモ帳に触れない限り、すべてを防ぐことはできない。
そこに、土御門がとある瓶を投げる。
紙により瓶が切り裂かれ、その中の液体が飛び散る。
ボォウ!!と、炎が燃え上がった。
土御門が投げたのは特殊な液体。
簡単に気化し、空気に触れることで燃え上がる可燃性の液体だ。
紙を燃やす。
それによって、ジャックの手札を奪う作戦らしい。
が、途端にすべての紙が静止した。
止まった紙は全く動かず、反応せず、燃えず。
液体が燃えきった後には、きれいな紙だけがそこに残された。
燃え尽きた液体。
それを確認し、再び紙は動きだす。
だが、ジャックの目の前にいたのは土御門一人だった。
「本当に
「敵をだますのも、味方をだますのも得意技だぜい。」
「まあいいさ、“計画通り”だ。」
「じゃなかったらあの二人を素通ししてくれなかっただろうしにゃー。」
「わかってて、乗ったということだな。」
「あの二人に賭ける。それが今回の選択肢で最も成功率が高そうだからにゃー。」
「ずいぶん上条当麻を信頼しているようだな。」
「それがカミやんだから、だ。」
「ならば、私は私の仲間を信頼しよう。」
「知ってるか、俺って
トレーニングルームの戦い。
土御門元春VSジャック=リドル