『海を守護する大樹』海上基地 中央部
部屋の中央には巨大なビーカー。
上条達が潜入した研究所と同じようなもの。
液体が満たされたビーカーの中にいるのは能力者でありながら魔術師。
しかし『彼女』の意識はない。
いまだ眠り続けている。
だが、『彼女』が覚醒するのもそう先のことではない。
それを見ているのは『海を守護する大樹』のリーダー、デューイ=奇水=ウルフィック。
「そろそろ行くか……。」
ここは重要な部屋。
万が一にも傷がついてはならない。
ここが計画の要で最大手段。
戦場は別に用意した。
自分は『彼女』が目覚めるまでの時間稼ぎ。
自分たちは誰一人として欠けず、目的を達成する。
そのために、自分が奮闘する。
自分の魔法名に刻んだ意味を突き通す。
彼、デューイ=奇水=ウルフィックの魔法名は『culmen305』。
単語の意味は『
海上人工基地 通路
「………………。」
「………………。」
上条とインデックスは無言。
走る、走る、走る。
すでに彼らにとっては中央への進行が最優先。
中心メンバーは中央に侵入されることを防いでいる。
外周部を守るルイ=ケース。
中央への道のりを守るデイジー=リムズとジャック=リドル。
上条達にとって、中央で行われている“何か”は『海を守護する大樹』の心臓部だとほぼ確信している。
確信しているし、事実でもある。
ゆえに急ぎ、走る。
すでに決まった状況と行動の中、上条とインデックスの間に言葉はいらない。
伊達に今まで一緒に過ごしてきたわけではない。
言葉が不要となった二人は、一切の無駄をなくして行動する。
二人は魔術や能力は使えない。
正確に言えば、上条は異能の力にしか対応できず、インデックスは他人や魔力が必要である。
そのため、彼らの敷いた通路を通る以外にできることはない。
二人は異能の力によるゴリ押しなどできないのだから。
海上人工基地 とある扉の前
二人がたどりついた部屋の前。
中央へと続く扉が、威圧感を纏い待っていた。
確実に待ち伏せ。
だが、中央へと続く扉はここ以外には用意されていない。
もともとそういう造りなのか、それとも侵入者用に造り替えたのか。
ならば進もう。
道がそれしかないのなら、蛇でも鬼でも押し通ろう。
今の上条は
今のインデックスは戦うヒロインなのだから。
ガチャ。
開けた扉の向こう。
そこには何もかもが入りそうで、何もない広い部屋。
明らかに基地の部屋のバランスを崩している。
おそらくは魔術。
『アドリア海の女王』の本船の部屋、『刻限のロザリオ』のあった部屋と同じ理屈だろう。
魔術によってゆがめられた部屋。
その核が解らない以上、この部屋の広さは変わらない。
探すことはできなさそうだし、探すつもりもない。
目指すは部屋の出口の二つの扉。
だが、“彼ら”がそんな時間をくれないだろう。
部屋にいるのは二人の男女。
町の中、私服でいるのを見かけたなら恋人だと思うだろう
実際は違い、すでに結婚している夫婦なのだが。
その男性、『魔科学者』仁大数樹。
その女性、『
研究者の二人は互いに白衣のペアルック。
彼らの視線は終始、険しいまま。
「………………。」
「………………。」
こちらを凝視。
気を抜く気などさらさらない。
「そこ、通してもらうぞ。」
上条の声に、二人は無反応――――ではなかった。
「通す気はない。」
男性にしてはやや高い声。
高い声に威圧感がある。
ドスが聞いてるわけでも、特別声が大きいわけでもない。
直接的な戦闘は少ないはずの科学者が、放つ威圧感。
「こちらも、あなたたちに言うわ。…………捕まって。」
威圧感はなく、淡々と語る口調。
感情のこもらない、いや、こめない声。
彼女が感情に乏しいわけでも、表情がないわけでもない。
無駄を省いた情報を伝達するだけの言葉。
その二人の言葉に、上条とインデックスは従わない。
「無理だ。」
「無理だよ。」
「こっちもだ。」
「こっちもよ。」
上条が対峙するのは由香里。
科学サイド同士。
インデックスが対峙するのは数樹。
互いに魔術師同士。
ふと、数樹が呟いた。
しょうがない、と。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
『!?』
警戒する上条とインデックス。
だが、二人は警戒しかできなかった。
床から壁が盛り上がり、二人を引き離すように部屋が二つに隔てられた。
「とうま!!」
「インデックス!!」
個別となった二つの部屋で、対峙するのは男女となった。
研究所と戦いとは違い、完全な一対一。
幸いなのは、男同士、女同士で隔たれなかったことだろう。
上条はともかく、インデックスは
インデックスは、無宗教に対応できない。
それが狙いの作戦だったのだろう。
だが、そうはならなかった。
二人の嗅覚が、戦うべき相手を無意識に感じ取った。
ここまで来たのだ。
ならば相手の希望に沿うのもいいだろう。
ここで戦ってみせて――――。
「いいぜ、てめぇがここを通さねぇつもりなら……」
「あなたが何をしようとも、私の武器に……」
「魔術師のルールに
「それに応え、僕の魔法名も名乗ろう。」
そして戦いは始まる。
学園都市のリベンジマッチと魔術サイドの頭脳戦が。
「その幻想をぶち殺す!!」
「死角はない!!」
「
「
海上人工基地、中央付近の戦い。
上条当麻VS仁大由香里
インデックスVS仁大数樹
それぞれが、1対1を繰り広げる。
その中で発覚した、彼らの実力。
そして、彼らが生み出したものとは。
次章『第7章 強化された敵 power_up』
科学と魔術が交わるとき、物語は始まる。