デパートの中にあるものとしては、かなり大きいゲームセンターでインデックスと対戦した上条はほぼ全勝。終盤でやり方を覚えたインデックスに一泡吹かされてしまったわけだが…。
そして現在、ランチバイキングにて絶賛食事中である。最後に上条に勝って気分を良くしたのか銀髪シスターの食欲に磨きがかかっている。ランチバイキングなので料理の種類は少ないが、あまり関係がないようである。
「おいしい!おいしいんだよ、とうま!ほんとにいくらでも食べていいの?」
「ああ、ランチバイキングだからな、食べ放題だぞ。」
「とうま、バイキングは日本以外じゃあまり通じないんだよ、もぐ。」
「えっ、そうなの?」
「もぐっ、ごっくん…うん、主にビッフェやビュッフェって呼ばれるの、バッフェっていうのも同じ意味なんだよ。バイキングじゃ海賊になっちゃうんだもん。」
へぇー、と素直に感心する上条。英語など、外国語はからっきしなのにもかかわらず頻繁に外国に行っている上条にとっては役に立つ豆情報である。外国についてはあまりいい思い出がないのだが…。
「当麻、この後どこ行くの?もがふぁ。」
「ああ、帰るのにも時間がかかるし、生活用品と食品を買っときたいけどインデックスも必要な物あるか?」
するとインデックスが。
「あ、ああ、確かに買いたいものあるかも…。」
なぜか顔を真っ赤にするインデックス。それに気づかない当麻は。
「ん、まあ、そりゃあるよな。じゃ、一緒に買いに行くか。」
「え、あ、うん…、当麻がお金持ってるし…。(ボッ)」
「?じゃあ、食い終わったら行くから買うものまとめとけよ。」
「うん………。(とうまの鈍感!)」
「?」
何か違和感を感じた上条だったが、インデックスの心中などわかるわけもなく店を出る二人なのだった。
(うーん、なるほどインデックスの様子がおかしかったのはそういうわけね。はいはい。)
現在、上条がいるのはセブンスミスト支店の下着売り場少し離れたベンチである。ここに着いた時、インデックスにお金を求められ、絶対に見ないでと念を押され、そういう上条はインデックスに噛みつかれたくないし、何より自分も下着売り場には入りづらいということもあるのでベンチで座って待っているわけである。
(うーん、インデックスのやつ大丈夫かな、お金って言っても女物の下着なんて値段知らないし、あの金額で大丈夫なのかな?まあ、買いすぎはしないだろうけど…。)
上条がそう考えているとき、同じ下着売り場から出てきたとある少女たちの声が聞こえてきた。
「うーいーはーる、アレはどうだったかな。スーパーブラック!」
「むりむりむり、ぜっっったいむりです!佐天さん、私の年齢を少しは考えてください!」
「えー、似合うと思うけどなー。」
「私にはまだ早いです。」
「………へーま、だ、ねー、じゃあいつかは穿くんだ。じゃあ今から戻って買いに行こう。」
「やめてください、絶対佐天さんは私に穿かせるつもりですし、もしいつか穿くにしてもサイズが合わなくなりますよ。」
「ちぇっ、ばれちゃったー。」
(なんかすごい話してるな。今の女の子はこんな話までしているのか?)
「っていうか黒子。なんだったの、あの下着。」
「はぁ、私には普通の下着なのですが…。お姉さまの下着が子供っぽいのが、そう思う原因なのではありませんこと。」
「ってそんなの言わなくていいでしょ。大体、黒子に注意される理由なんてないわよ。アンタは、私の保護者じゃないんだから。」
「ほ、保護者!お姉さまの保護者!ああ、それも黒子はいいと思いま…」
「それ以上言うな!」
「あうぅっ!」
「し、白井さん大丈夫ですか?」
「御坂さんも、もうちょっと手加減しなくちゃだめですよ。いくら白井さんがタフだからって。」
「大丈夫、これくらい日常茶飯事だから。」
(………不幸だ……。)
その様子を見ていた上条はまずいと思った。できれば今すぐ逃げ出したいがこのままダッシュすると音でばれてしまうし、インデックスに、何で置いていったのか説明してほしいかも!ガブッ!ということになりかねない。いろいろ考えて上条は、気配を絶って立ち上がり自販機の陰に隠れようとグルっと向きを変えて歩きだした、………………が、焦っていたため、自動販売機の陰に隠れていた据え置き型の金属製のゴミ箱に盛大に足をぶつけてしまった。
ガッ!とかなり大きい音を出し、片足でぴょんぴょん飛び回る。
「いっ…………つぅ~……。」
「?何、今の音……って、アンタ何やってんの?」
「?御坂さんのお知り合いの方ですか?」
「お姉さま?どうされ………って、また殿方さんですの?」
「あれ、白井さんもお知り合いですか?私と初春はこの人は知りませんけど…。」
ズンズンと上条に近寄る御坂美琴。それに続く三人。
ものの見事に、見かけてから5秒でばれた上条さんなのだった。
「………不幸だ。」
「そーれーはー、私に会ったからなのかぁーこのバカァァーッ。」
ビリビリ、と電撃をわりと本気で撃ってきた。それを、足の痛みに耐えながら何とか右手を出して防ぐことができた。
「人が痛がっているときに電撃を撃ちますか?はい、あなたは鬼ですか?」
「どうせ効かないでしょうが!いっつも防いでいるあんたに言われる筋合いないわよ。」
そのやり取りを見ていた三人は、結構なショックを受けていた。佐天と初春は、上条の『幻想殺し』を知らないし、白井にしても御坂がこんな風に電撃を躊躇なく(効かないとはいえ)上条に撃つことまでは知らなかったのだから。
「えーと、御坂さん。とりあえず落ち着いてください。」
「初春の言う通りです。まず私たちにも状況を説明してください。」
「お姉さま…。いつもこんな感じでこの殿方に電撃をぶち込んでいるんですの?」
御坂が落ち着いたところで、自己紹介である。
「は、初めまして。初春飾利です。白井さんとは『風紀委員』の同寮で、御坂さんとはお友達です。」
「はじめましてー。佐天涙子でーす。初春とは親友で、そこから御坂さんや白井さんと友達になりました。」
「えーと、上条当麻です。まあ、ただの高校生です。」
「もしかして、噂のあのバカさんって上条さんのことですか?」
「………御坂。お前そういう風に言ってたのか?」
「なによ、別にいいでしょ。」
いや、結構覚えられ方に問題がある気がするのですが…。と思った上条だったが言うのはやめといた。また怒らせるのはあまり良くないだろう。
「そういえば!あの時御坂さんの電撃を打ち消したのってどんな能力なんですか?レベルはいくつですか?」
「さ、佐天さん失礼ですよ。」
「
「「「うそぉっ!」」」
二人だけでなく白井も驚いていた。能力(チカラ)があるのは知っているが『無能力者』だとは、白井も知らなかったのだ。
「アンタの能力、えーと…『幻想殺し』だっけ?何で、『無能力』になってんのよ?絶対何かあるでしょ。」
「『幻想殺し』…ですか?聞いたことない能力ですね。」
そしたらちょっと考えて佐天が。
「あーっ!もしかして、都市伝説の『どんな能力も効かない能力を持つ男』って上条さんのことだったんですか?…ってあれ?何で御坂さんはそのことを言わなかったんですか?」
「うっ、……え、えーと…。」
言葉が詰まる御坂。あまり言いたくはないだろう。ずっと追いかけて勝負を仕掛けておきながら、勝てないどころか全戦全敗だなんて。
「とうまー。買ってきたよ……って短髪!!何で短髪がいるの。あと何でこんなに女の子がいるのかな?とうま。」
レジで精算し終わったインデックスが帰ってきた。御坂にとってはいいタイミングだが、上条にしてみれば、なんかものすごい覇気を纏っているインデックスにびくびくしているのだ。
「え、えー、偶然出会っただけですし、この三人は御坂の友達みたいだから特に自分は関係ないのですが……。だから、噛みつきは勘弁してほしいのですが…。イ…インデックスサン?」
今にも噛みつきOKですと言わんばかりのこの状態。
一刻も早く抜け出したい上条に助け船がやって来た。
「初めまして、インデックスちゃん……でいいのかな?佐天涙子です。」
「初春飾利です。よろしくね、インデックスちゃん。」
「え、あっ、うん、初めまして、インデックスって言うんだよ。正式名称(フルネーム)は、Index-Librorum-Prohibitorum。でも呼び名は、インデックスがいいかも。」
インデックスは、佐天と初春と自己紹介して落ち着いたようだ、とにかく噛みついてくる心配が無くなった上条は言う。そろそろ、食料を調達しておかないと帰りに時間がかかってインデックスに、おなかすいたーと噛みつかれること請け合いなのだ。
「っと、そろそろ食材を買わねーと。行くぞ、インデックス。じゃあ、また今度。」
「あ、はい。さようなら。」
「また今度。インデックスちゃんもまたねー。」
「あ、うん。バイバイ。って、待ってよー、とうまー。」
そのまま別れて、その場を離れた二人だった。
そのまま二人と別れ、しばらくすると一気に質問攻めにされた御坂だった。
「上条さんとはどういった関係なんですかー?そこんとこ詳しく。」
「佐天さん、ストレートすぎます。もう少し別の言い方があるんじゃないですか?」
「お姉さま、いったいどんな経緯でお知り合いになられたんですの?そこんところ、詳しくお聞かせ願います。」
「え、ちょっ、そんなにいっぺんに聞かないでよー!」
顔を真っ赤にして、声を上げる御坂だったがそのあとも質問タイムはたっぷりと続くのであった。
「うーん。本日の夕食は何にしようか?豆腐ってのもありか?」
「ひややっこー、にするのとうま?それも食べてみたいかも。」
現在、デパートの食品売り場で食料調達に来ている二人だったが上条さんちのお財布事情はあまり芳しくなかった。この状態では、うまく買い物をしないとその後が持たないのだ。
「豆腐もいいが、大量に買った方が結果的に安上がりなんだよなー。豆腐の足は早いけど、ちょっとづつ使っていけばいいんだし…。………ちょっとで済めばいいけど。」
「あっ、試食こーなーだ。いってきまーす。」
「…ほどほどにしろよー。」
正直、試食の食べすぎでブラックリストに載るってことは避けたい。そんな事を考え、頭をかきながらカートを押して行った。すると、
バリン、と出入口あたりからガラスが割れる音がしてそのまま上条の頭に何かが飛んできた。
出入口から離れた食品売り場。そこに届くような変則の曲ってきた何か。しかし上条が頭をかいていた手は右手。
バギン、と何か異能の力を壊した音がした。
(!…何かされた…、いや…、されそうだった。でも何で?)
考えるが、答えは出ない。しかし考えることはやめない。最良の選択肢を取るために。
(今回、狙われたのは俺。ってことなら。)
上条は走る。店の外へと向かって。店の中は突然、ガラスが割れた音に困惑している。当然、それが事件性のあるものだとあまり考えてはいない。
(ここじゃあ、ほかの人が巻き込まれるかもしれない。逃げるにしろ、戦うにしろ、ここから離れた方がいい。)
「とうま!」
先ほど行ったはずのインデックスに呼び止められた。
その表情は、いつも見せている表情ではなく魔術師の表情(かお)。禁書目録としての表情だった。
「とうまは、またそうやって突っ走っていくんだから。今日こそは私も行くんだよ。」
「ダメだ。いや、インデックスさっきのは魔術か超能力かわかるか?」
「たぶん、超能力で間違いないと思う。魔術や魔力の痕跡が周りに全く残ってないもん。」
「じゃあ、インデックスはここで待て。俺は、様子を見ながらどうするか判断する。」
だめなんだよ。と言いだしそうになったインデックスだったが、突然二人は止められた。
「勝手に、行動しては困りますの。ここは、わたくしの出番ですのよ。」
ガラスが割れた場所とは別の出入口近くで立ちふさがったのは、白井だった。
「アンタ、またトラブルに巻き込まれているわけ?」
御坂もいた。その後ろには先ほどの二人、初春と佐天が心配な表情で、また、真剣な表情で立っていた。
「わたくしは、『
その眼に映るのは誇り、そして信念。以前の借りを返すというのも受け取れるだろう。これを邪魔するのは、あまりにも無粋。
「わかった。御坂、インデックスを頼む。」
「ちょ、アンタはどうすんのよ!」
しかし上条は向かう。出口へと、自分を狙う者のところへと。
「白井、お前に頼みがある。」
「何ですの?」
「俺が囮になる。その間に、上から探して見つけ出してくれ。」
そしてそのまま、白井が止める間もなく行ってしまった。危険が待ち受けるところへ、白井を信用しているからこそとでも言うように。
「……はぁ~。ですからあなたは、怪我が多いんですのよ。…今回はそれをさせないようにするのがわたくしの役目といったところでしょうか。」
一呼吸置いてからその場の仲間たちに言う。言葉を交わさずとも、思いは同じだ。
「お姉さまと佐天さんは、その子を見ててくださいな。初春は監視カメラからわたくしをサポート、デパートにパソコンを貸してもらえば問題ないでしょう。いいですね?」
「は、はいっ。」
「ちょ、黒子。わたしは、」
「お姉さま。」
御坂が言う前に、白井が遮った。ここは自分の出番だというように。
「これはわたくしの使命です。」
それ以上、御坂は問い詰めることができなかった。白井が能力(チカラ)をつかい、虚空に消えたからだ。
平和な日常が戦場へと変わる。そして、戦いは始まる。とある者たちの戦いが……。