とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第2章 集合する者たち battle_start 2

上条は走る。走っているところは、不良がいそうな路地裏だ。

狭く、走るのに向いているとは言い難いが少なくとも周りの人を巻き込む心配は少ない。

しかし、自ら囮になると言った上条だったが、正直、ただ走って様子を見ることしかできない。

自分を狙ったやつがどこで何をしてくるかなど、わかるわけもない。

しかも、撃たれたモノは曲がるモノ。

もしかしたら、ヒットアンドアウェイかもしれない。それでも、上条は走る。

 

「そこまでよ。」

 

突然、正面の曲がり角から出てきた女性が声を放った。

服装はシンプルなもの、ジーンズと濃い緑色の無地のインナーの上に白衣を着ているというよく見る研究者のような格好をしていた。

年齢は、24から27ぐらい。鋭い目つきをしており、美人でもありかっこいいとも言える外見だ。

「大人しくしてれば乱暴なことはしないのだけれど、言うことは聞くのかしら?」

それは、言うこと聞かなければ乱暴を働くと暗に言っていた。おおよそ、この女性が上条を狙ったのであろう。

「テメェ、いったい誰だ。何が目的で俺を狙った。あいにく俺にはそんな価値のないただの高校生なんでね。」

そこまで言った上条はハッと気づいた。

「…まさか……インデックスか!?」

正直、科学サイドが何を狙っているかわからない。しかし、上条の身近にある貴重な何か。

行き着く結果としては、禁書目録(インデックス)。科学サイドが魔術サイドの知識を知りたいとも、考えられなくもないだろう。

「違うわ。確かに禁書目録の知識は欲しいけど、そのためにイギリス清教に大義名分を与えたくないの。」

そう答えてから、一息ついて。

「いくつか質問に答えておくけど、私の名前は由香里。欲しいのは………あなたの、能力(チカラ)よ。ちょっと気絶してもらってるうちに回収したかったけど失敗しちゃったからここまで来たわけ。」

「は?何で『幻想殺し』を狙う。そんな大層なものか?」

「『幻想殺し』の力を利用したくてね。どうせ正面から頼んでも邪魔されるとわかっているしね。」

つまり、普通の人なら断るようなことをさせようとしているのだ。そこまで言い切ることができるのだから。

(ここは、路地裏。白井の能力で上から探すように言ったが、建物の陰で見つけるのは難しいな…。巻き込みたくはないが、頼りなるからな。)

「ああ、始めに言っておくけど、あなたのお仲間さんは私の仲間に会ったそうよ。たぶん今戦闘中ね。」

「何っ!」

そこまで考えが回らなかった。気づくべきだったのだ、相手が複数いる可能性があることに。

「じゃあ、さっさと済ませたいし……いくわよ。」

言葉と同時に、由香里と名乗った女性は構えた。

だれもが一度はやったことがある、手で銃の形を模した構え、『手銃』。

しかし、そこから弾が発射されることなど普通ないだろう。

 

しかも撃ちだされたのは透明な弾だった。

 

(!?この)

とっさに右手を出した。

すると右手にあたった透明な銃弾は消え去る。

この力は確実に能力。

だが、女性は学園都市の生徒ではない。

超能力は通常、『時間割り(カリキュラム)』を受けていない者が、振るえる力ではないのだ。

「てめぇ…何で能力を使える。生徒…じゃないよな、その様子じゃ。」

「ええ、でもね…科学者が自分の体を使うこともあるのよ。ほかのとこだとやってないけど、ね!」

今度は、両手で構えて撃ってきた。

何発も連射された透明な銃弾は右手一つじゃ対処できない。

そもそも銃弾の速度は人間の動体視力では、完全に見切ることなどできるわけがない。

撃たれる前に回避の態勢をとっていた上条は低く構え、右手を盾にしながらかわした。

かわすことはできた、しかし狭い路地裏では飛び道具相手には不利だ。

後ろにあった曲がり角に入りとにかく狙われないようにする。するとある点に気がついた。

(!?あの流れ弾にあたったゴミ箱に穴がない。当たって吹っ飛ばされてはいるが貫通していない。それにあの弾、透明だったが不自然に光が曲がっていたから軌道が目に見えた。)

上条が考えを張り巡らせていると。

「気づいたかしら?」

上条の様子を見た由香里が話しかけた。彼女の様子としては、余裕が感じられるが油断していないと隙がない。

「この能力は、『念動力(テレキネシス)』の一種なんだけど物体を持ち上げるより力を凝縮して放つ方に特化しているの。いわば、素手で銃を撃てる能力。現在の弾の威力はゴム弾程度。力が凝縮されているから、光なんかは勝手に動かされて弾は見えちゃうの。」

そのような力は上条も知っている。

大覇星祭の時、棒倒しで上条達が使った戦略で『念動力』の槍を使ったのだ。

しかし、光が曲がるほど力の凝縮されたものではなかったが…。

「これが私の能力『完全武装(オールウェポン)』。ちなみにこんなこともできるの。」

そう言って、おもむろに上条のいる角の前に何かを投げた。

その様子からして、銃を撃ったというより…。

(!やばい。)

 

とたんに、投げられたものが爆発した。

 

実際は、無理やり凝縮されていた力が一気に解放されたという方が正しいだろう。

(手榴弾まで使えるのかよ。)

何とか右手で防ぐことができた。

威力からして、当たっていたら一発KOだろう。

そして、わりとあっさりした様子で由香里は話す。

「一応言っとくけど、この能力は、大能力(レベル4)クラスだそうよ。当たればそれでけりがつくわ。」

ただし、上条の目の前で構えながら話している。

その手には能力を使った棒状のものを持ち、振りかぶっている。

その形は、刀を模していた。

(コイツ、俺に手榴弾が防がれることがわかってて)

ドッ!と上条が構えていた右手の下、鳩尾に由香里の一撃が決まった。

「ぐはっ。」

完全に決まった。

だがそれだけで、上条が切断されることはなかった。

そのまま吹っ飛ばされ、仰向けに倒れる。

しかし、いくら能力を使ったとしても女性研究者の腕力なので、上条が考えるだけの余裕はあった。

(切れていない?ってことは、たぶんそこまで鋭くすることはできない。生け捕りで鋭くしてないって可能性もあるけど………。でも、さっきの刀はもう消えている。あくまで力を放出しているだけって言ってたからきっとこの大きさだと長くは持たない。)

だが、威力は研いでいない刀で打ち込まれたというレベル、峰打ちだ。

何度もくらっていられるものではない。

(不用意に近づけば、刀の餌食。かといって距離を開ければ、銃弾の餌食。逃げようにも大通りに出れば他の関係ない人を巻き込む。くそっ!)

上条の出せる手はもう限られていた。しかし、もう選ぶ時間も余裕もなかった。

 

 

 

 

 

数分前

「いませんわね。」

『カメラも上条さんが路地裏に入ったので役に立ちません。路地裏では武装無能力集団(スキルアウト)がすぐ壊しちゃうからカメラが設置されてないんです。』

白井は、とあるビルの屋上にいた。

そこで初春と電話し情報を得ようとしたが、なにも出てこなかった。

なぜこのビルの屋上にいるのかというと、デパートの出入口のガラスの割れた場所の延長線上、つまり上条はここから狙われたのだ。

ただし、弾が曲がっていたことから別のとこだろうとも思うが、しかし、痕跡がある以上ここで確実だろう。

「こちらは、何かあると思いましたが無駄足だったようですの。」

『そうですか…。上条さんの様子はどうですか?』

「今のところ走り回って変化はありませんの。このまま探索を続けますからもう切りますわよ。」

そう言って携帯の通話を切った。

そのまま、上条の後を追いかけようとする。

 

だが、後ろに現れた人物に気がつき振り返った。

 

「お嬢ちゃん、あの少年のお友達かい?囮作戦はいいが、それは相手の数がはっきりしてないと駄目だぜ。もうじき、こっちの仲間が少年に接触するそうでね。」

少し砕けた口調をしていた。

それを、白井は子供扱いされたと思ったようで少しイラッとする。

だが、その男から見れば白井はまだまだ子供だろう。

現れたのは、男性。年は25から30程度。

身長はそこそこ高く、細身ながら筋肉はしっかり付いている。

下はジーンズで上はTシャツの上にジャケット。

黒目で黒の短髪だが、顔立ちは少し高い鼻など日本人以外のが混ざっている。

若干、肌も黒い。ハーフだろうか、と白井は適当に予想する。

「ではあの殿方を狙ったのは、あなたたちというわけですわね?」

「まあそうなるな。正確には、『幻想殺し』の力を借りようと思ってね。」

つまり、上条当麻を連れていくということだ。無理やりにでも。

だからこそ、あの少年を助けるためここで止めなければならない。

「そうですか。では、風紀委員として暴行未遂と誘拐未遂の現行犯で拘束します。」

「やれるかな?」

それを合図に、白井の姿が虚空に消え、男の攻撃は消えてしまった場所に入る。

攻撃の入った場所にあった、砂、コンクリートの破片、などがまとめて吹き飛ばされる。

上空に『空間移動(テレポート)』していた白井はその攻撃に疑問を思う。

(?風力系の能力者ですの?見た目では、能力開発を受けた感じがしませんが…。ただの『空力使い(エアロハンド)』でもなさそうですね。)

そして手元にある金属矢を男の肩、足、手に向けて撃つ。

 

しかし男はすでに移動していた。通常ではありえないスピードで、白井の後ろへ。

 

「!?なっ。」

「遅い。」

とたんに、白井が消えた。だが、能力を使ったわけではなく、単純に吹っ飛ばされたのだ。

(風?いや、違う。)

15メートルほどやや斜めに上がっていくような軌道で飛ばされた白井が食らった攻撃について考察する。

(風にとばされたというより、とても柔らかい巨大な壁にぶつけられたという感じ…。いや、自分ごと流され、押されるこの現象。)

風に似ている力。そこから導き出した答えは。

「わかりましたわ。あなたの振るう力の正体は、“大気圧”でしょう?」

空中から『空間移動』して着地した白井が言う。

「ほぉ~、もうわかったのか。数回しか使っていないのにな。」

関心した男は素直に称賛する。

このあたり余裕が感じられるため、少しむっとした白井だったが話を続ける。

「あなたは周りの大気圧を操作して攻撃、移動を行っていますのね。攻撃を受けた時、強烈に押された感じがしましたの。その精度ではもはや『空力支配(エアロマスター)』とでも言った方がいいかもしれませんわね。」

何気に生活しているが、本来地球上では大気による気圧で押されている。

その力は、tの位まで到達する。

人間は内側から押すことで気圧の力と釣り合っているが、中を真空にしたドラム缶がつぶれるように、もともと気圧はすさまじい威力を持っている。

しかし。

「残念。」

「何ですって?」

「大気圧は使っているが操作はしてないし、移動には使っていない。押された感じだって本来の形ではない、なぜなら…」

男の顔には笑みがある。

相手を見下した醜いものではなく、自分の実力を信じているという自信の笑み。

 

「手加減してたからな。」

 

そのことを聞いて、白井の頭に少し血が上った。

闘っている相手に手加減されたことなど初めてなのだ。

「そこまで言うなんて、余裕ですのね。」

「俺さ、人殺すの嫌いなんだよ。そうゆうことだから優しく潰すぜ、お嬢ちゃん。」

男の姿がぶれる。白井の姿が虚空に消える。速すぎるその攻防は行われる。

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