とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第2章 集合する者たち battle_start 3

「今のところ、動きはないそうです。様子見といったところでしょうか。」

ここは、デパートのコンピュータールーム。

現在『風紀委員』の権限で、この部屋を特別に使っていた。

中にいるのはコンピューターを使う初春飾利、そこで待つ御坂美琴、インデックス、佐天涙子の4人だ。

「そう、わかった。情報が出たら教えてね。」

御坂はそう言って壁に寄り掛かった。

佐天とインデックスは1つの長椅子に腰かけている。

「…とうま、大丈夫だよね…。」

「大丈夫だよ、なんたってあの白井さんがついてくれているんだから大丈夫に決まってるよ。」

そういうが、佐天も内心あの少年を心配していた。だがそれ以上に、自分の仲間を信頼しているのだ。

(わたしは…この状況じゃ待つことしかできないけど………。でも、きっと大丈夫。)

そう思っている佐天の横で、御坂もあの少年と後輩の心配をしていた。

(アイツ、またこんなトラブルに巻き込まれるなんてねー。黒子も気合出しちゃってさ。何もなければいいけど…。あーあ、なんか散々な買い物になっちゃったなー。)

その表情にあるのは、不安。本当は今飛び出していきたいが、『残骸(レムナント)』事件の後で入院していた黒子の言葉を思い出すとその気も失せた。

黒子の覚悟に水を差すのも駄目だろう。

あの少年の思いにも。

それは自分への言い訳、助けに行きたい自分の心を抑える砦。

御坂美琴もまた、待つという選択肢を取った。

 

だが、この少女だけは違った。

 

(とうまはいつも、いつも!いっつも!!心配させるんだから。……少しは残される人のこと考えてほしいかも。…………たしかに、超能力のことだと自分は役に立ちそうにないけど………けど………でも!)

少女は立つ。

今まで守られてきた少年のもとへと向かうために。

今まで助けてくれた、その少年の助けになるために。

(じっと待ってるなんて、もう嫌だもん。)

インデックスは既に、残されるというこの自分に限界だったのだ。

ただ、ずっと思っていたこと。

彼が記憶を失う前から彼女が思っていたこと。

彼に傷ついて欲しくない。彼を助けたい。

そんな感情が、彼女を行動に移した。

「ちょ、どこ行くのよ!」

口ではそう言った御坂だった……。

が、さっきの思っていた自分への言い訳もこの少女の行動で、心の天秤が傾いてしまった。

(…………わかってる、アイツや黒子が、どんな思いでいるかぐらい……。

……でも、私にとっては、アンタ達のプライドよりアンタ達の安全の方が重い!!)

そのまま、あの二人のもとへと行くことを心の中で決めた。

御坂美琴も走りだす。

インデックスに続く。

後輩やあの少年の思いもわかるが、それ以上に力になりたいという思いの方が強かったのだ。

そして、あの少女と同じ道を選んだ。

待つよりも、助けに向かうという選択肢を。

後ろでは、佐天や初春が二人を止める言葉を発していた。

だが、彼女たちを止めるには不十分だった。

 

 

 

 

 

男は走る。

通常ではありえない速度で。

少女は飛ぶ。

『空間移動』という能力を使って。

男は地上を移動し、白井は空中で狙う。

だが男が速すぎて白井の金属矢ではなかなか狙えない。

男は白井に向かって大気圧の砲撃を放つ。

それを避けながら、白井は考えを張り巡らせる。

(あの能力はかなり『超能力者』に近い『大能力者』だと思いますが………。使えるのが大気圧だけだと思わない方がいいでしょう。移動手段がわかりません、しっ!っと、しかし、いくらなんでも速すぎません!?)

白井は地上に『空間移動』し、ビルの屋上の古くなった石の床板を男の進行方向へと飛ばす。

しかし、男は回避。

なおかつ、白井へ素早く砲撃を放つ。

白井はそれをかわして男の後ろへ『空間移動』し、接近戦へ持ち込む。

(この、ですわ。)

足払いで男のバランスを崩そうとしたが、男も人間離れした反射神経でそれをかわす。

お互い向き合って組み手のような状態になるが、男の不自然なほど速い掌底が白井の鳩尾に決まる。

そのまま後ろへ2,3メートル吹っ飛び仰向けに倒れた。

「ぐ、……かは、ごほっ、ごほっ。」

強い攻撃により息ができなくなり、はぁ、はぁ、と息切れし、不規則な呼吸になる。

しかし、白井は立ち上がり攻撃の態勢をとる。

「まだやるのか。今ので気絶してくれればよかったのに。女性は特に傷つけたくないんだよ。英国紳士だからね。」

その調子のままだった。

ものすごい速さで駆け巡っていたのにもかかわらず(いくら1発も食らってないからと言って)その表情に疲れはなかった。

それに比べて、『空間移動』を使い続け散々動き回り、急所にダメージを負った白井は満身創痍だった。

しかし、白井はその状態にもかかわらずその様子に疑問を持つ。

(?おかしいですの。あの殿方には疲れや怪我などがなく、あの調子のままだというのに……なんで、顔色が悪いんですの?)

よく見なければわからないほどだったが、確かに男の顔色は不自然に白かった(色黒だが)。

青くはなかったが白かったのだ。調子を崩した病弱な人間のように。

「あなたが英国紳士だろうと日本男子だろうと興味はありませんの。」

「そうかい。まあ、女性を傷つけてるから、英国紳士としては失格だろうしね。そういう君はもう余裕がないみたいだけど?」

「わたくしの力は、一撃必殺ですの。一撃でも決まればけりがつきますわ。時間はまだまだありますのよ。」

「そうかい。…それは楽しみだ。」

男の姿がぶれる。白井の方へ突っ込み自ら接近戦を仕掛けてきた。

「この状態で演算できるのかな?」

(くっ!)

この状態、頭を使う演算をしながら接近戦で組み合うのは能力者にとって絶望的だった。

しかも、白井の『空間移動』は特に複雑な演算が必要になる。

男は手刀で白井の肩を狙ってきた。

しかし不自然な速さも事前に読んでいた白井はかわすことに成功した。

しかし、その次の演算までは思考が追い付かない。

 

そう、白井が普通の能力者なら…。

 

「なめるな、ですの!!」

 

白井の手が男の肩にふれ、男を『空間移動』する。

 

男はそのままビルの屋上の床に埋まりコンクリートの縄で絞められているような状態だった。

しかも、屋上の床は何層にもなっていて、縄の数は多い。

男の体がコンクリートを押しのけて転移したため、締め付けられることはなかったが身動きができる状態ではなかった。

柱や壁に埋もれていたら、重さで潰れていたであろうが、屋上のこの床ではその限りではないようだ。

「わたくしこれでも学園都市の中で千人ほどしかいない『大能力者』で常磐台に所属していますの。『風紀委員』の訓練で複雑な演算を戦闘中にこなすこともやってますのよ。まあ、今のはひやひやしましたのですが結果は結果ですので。」

「やるなあ、お嬢ちゃん。『超能力者』も狙えるんじゃねえのか。」

男の調子は変わらなかった。

そこにあるのは素直な称賛だけだった。

「そのためにここまで努力してきたので。わたくしは甘くないんですのよ。」

「まあ、正直ここまでできるとは思わなかったぜ。お嬢ちゃんも殺さないように努めてたところも流石だと思うよ。だけどさ…。」

 

バチィ!と音がして白井の体から感覚が抜け、その場に倒れこむ。

 

男はそのまま、コンクリートをプールから出るように砕き、自分の腕力で這い出てきた。

その体に怪我はない。

コンクリートの摩擦があったというのにだ。

「まだまだ、経験が足りないな。空気を使っているんだと思ったら空気摩擦によって静電気が作れることぐらい気がつかなきゃ駄目だぜ。そのまま痺れててくれ。」

「がっ…、……う。」

「ここまでやれた、お嬢ちゃんにサービスだ。自分の名前を教えよう。」

白井の意識はギリギリだ、もはや聞くことで精一杯。

だが、聞くことに集中する。

手掛かりとなるなら何でも聞く。

白井黒子は『風紀委員(ジャッジメント)』だから。

 

「俺の名前は、デューイ=奇水=ウルフィック。」

 

ゴト、と白井の態勢が完全に崩れた。

名前を聞いたから、手掛かりをつかめたから、気が少し抜けたからだろう。

完全な気絶。

男はそれを見たが、構わず続ける。

 

「魔法名、culmen305だ。」

 

デューイと名乗った男はその場を去った。

結果は、白井黒子の完敗だった。

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