とある覚悟の魔術結社(マジックキャバル)   作:赤川島起

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第2章 集合する者たち battle_start 4

路地裏の入り口で、二人の少女が入ろうとしていた。

御坂美琴とインデックスだ。

だが、途中で二つに音源があることに気づき、どちらに向かうか迷っている。

(敵は二人いたっての?たぶんどちらかがアイツでどちらかが黒子。音が両方ともしてるってことは二人とも闘ってるのよね。)

(とうまとあの人。どちらも心配だけど…。)

冷静に考え、思い出すことに集中していたなら分かるだろう。

上条は白井に上を頼むと言っていたのだ。

御坂はまだしも、完全記憶能力者であるインデックスはすぐに分かるはずなのだ。

だが、それさえも失念している。

それだけ、冷静でいられていないということなのだろう。

上条に危険が及び、なおかつ慣れていない能力者の事件なのだから。

だが、答えが出ないことは動かないことにはならない。

「短髪はあっちをお願い。私はこっちに行くから。」

御坂美琴はインデックスのチカラを知らない。

少なくとも、自分より大きな力を持つとは思っていないだろう。

事実、今の状態では大きな力など出せない。

あくまで非力な少女。

一瞬迷ったが、それでも行きたいという思い。

インデックスのその思いを、御坂は信じた。

「わかったわ。そっちは頼んだわよ。」

わかってるんだよ、と返事をし、二手に分かれ、二人の少女は向かう。

闘っているあの二人を守るために。

 

 

 

 

 

上条は、走っていた。

この状況で上条の出した答えは、路地裏から出ずに逃げ続けチャンスをうかがうというものだ。

通常、飛び道具をもった相手に距離をあけるというのはかなり不利になる。

自分はその距離で攻撃できず、一方的に蹂躙されるのだから。

しかし、それは普通の銃弾ならという話だ。

素手で銃弾を撃てる能力というのならば、逆にいえば銃弾を撃つために能力を使う必要があるということである。

追いかけて走り続ける中で狙い、なおかつその銃弾を撃つために演算する必要があるのだ。

一定の距離を離れれば撃たれる可能性はガクンと減る。

(この道は、長い直線だがこの距離じゃ撃たれる心配はそうそうないな。)

その状況に由香里は片膝を地面につけ、右腕を突き出し左手でそれを補助していた。

右腕の握りこぶしの先に透明な弾がセットされる。

その様子からみた武器、その正体は…。

(!まさか、また。)

ただ聴いただけならば派手な発射音ではないが、その静けさに不気味な感触を上条は覚えた。

 

弾は上条のすぐ後ろで爆発した。

その様子はどう見ても、バズーカを発射したようだった。

 

危険を感じた上条はとっさに右手を突き出し、なんとか爆風から身を守ることができた。

しかし状況はよくない。

距離を開けても相手にバズーカを撃たせる余裕を与えてしまうのだから。

バズーカはほかの武器より射程距離が長く、爆風に巻き込まれてしまうため、ただ距離をあけるだけではだめなのだ。

(くそっ!八方塞がりか。どうすれば。)

長い直線の先の曲がり角に入った上条は少ししかない時間の中、この状況で選択した手段は…。

「うおおおおぉぉ!!」

(!離れるより突っ込むことを選んだのね。)

上条は曲がった角から飛び出し、右手を構え突撃の態勢をとる。

しかし。

(でも。)

今度は由香里の両手に力が集まった。

今度の武器はグローブだ。

「立ち向かう勇気は認めるけど…、その右手で攻撃はできても防御はできるの?」

その言葉をそのまま行動に移した由香里は上条のボディに一撃を決める。

『幻想殺し』は、武器や防具(のうりょく)を貫いて攻撃できるが、防御に使うにしては有効範囲が狭すぎるのだ。

そういう特性のため、彼の防御に相性がいいのは大きい一塊の攻撃。

弾幕を張るタイプや、一点集中の小さい一撃には相性が悪い。

ましてや、接近戦で狙われやすく反応速度が求められる状況で扱うことは難しいのだ。

繰り出され、完全に決まったその一撃は能力によって手を痛めないことを前提に放たれていたため、結構な威力を持っていた。

上条も攻撃はしたのだがその攻撃は読まれていたのか、いなされてしまっていた。

上条は倒れることこそはしなかったが、ドムッ、という鈍い音を出し、かなりダメージを負う。

「が、は…。」

由香里は反撃されないように距離をあける。

無駄に追撃し隙を作ることがなかった。

相手に余裕を与えて、女性研究者のか弱い体に攻撃を当てられることのないようにしている。

さらに、超能力を使っているが精度が普通の生徒とは格が違う。

もともと、超能力を熟知している研究者がその力をふるっているのだ。

上条もどうにか攻略しようとするが…考える時間は与えられなかった。

 

今度の構えは左手を突き出し、右手で支え、左の手首はだらりと下がり、腕につけるタイプの銃を撃つようだった。

 

弾の数が尋常ではなかったが…。

 

(今度は機関銃!?くそっ!)

機関銃のように数が多いものには相性が悪い上条は何とか避けようとするが、一発の銃弾が肩に当たってしまった。

「ぐっ。」

ズキズキと痛む肩を押さえ、危なげに立つ上条に対して由香里は言い放つ。

「そろそろ終わらせるわよ。……あまり時間もないからね………。」

そう言って右腕を出し、上条に対して指をさした。

出すのは細い銃弾、レーザー。

上条の足、肩を狙う。

しかし、その様子にひるまず上条は突っ込み、それをかわす。

それに対して武器を変え、手に再びグローブを持ち今度は上条の外顎に対して放つ。

上条はそれをかわし拳を突き出す。

だが、それをも予測していた由香里はギリギリの態勢でかわす。

 

しかし…、

 

(左腕!?しまった!次の防御が!)

 

上条は自分の力を理解しているからこそ、その力による攻撃パターン、ハッタリを駆使する。

しかし、由香里は『幻想殺し』については聞いたぐらいでしかなかった。

このことを、上条と戦ったことどころか会ったこともない人間が知る由もない。

右腕の一撃をかわしていればいいと思っていた由香里には、次の一撃をかわすだけの余裕はなかった。

 

(でも!)

 

それに対し由香里は、自分の目の前に手榴弾を発生させる。

それはすぐ起爆し、腕をクロスして防御の姿勢を取っていた由香里を爆風が突き飛ばした。

上条は右手を突き出していたため無傷。

結果的に由香里は攻撃をかわした。

しかし、とっさに手榴弾を出したため威力を傷つけない程度にする余裕がなく、防御していたとはいえ由香里は大きいダメージを負っていた。

しかし、あそこでかわしていなければ確実に由香里は攻撃を受け、気絶していただろう。

(あの場面でかわすのか!?普通の能力者じゃ、あの場面で能力も使えないのに。)

かわすことができただけでもこの研究者の能力を扱う技術は高かった。

そう言えるだろう。

だが、流れは上条に移った。

一度戦いの中で移った流れはそう簡単には変えられない。

 

「もういい、由香里。タイムオーバーだ。」

 

「デューイ。」

いきなり屋上から飛び降り、現れたのは男性。

黒目黒髪の男、デューイだった。

「ごめん、もうそんなに時間かけちゃったのね。」

「ああ、『幻想殺し』は諦めよう。もう余裕も時間もない。」

そう言って戦闘態勢を解く。

その様子を見て上条は言う。

とあることに気づいて。

「おい…、もう一人の仲間だよな…。まさか、白井に会ったってのは…。」

 

「ああ、あのお嬢ちゃんなら優しく沈めといた。」

 

その言葉を聞き、上条は愕然となる。

「まあ、死んじゃいないさ。そういうのは嫌いなんでね。ただ、噛みついてきたからね、気絶してると思うから早めに向かった方がいいんじゃないか?」

デューイはそう答え、由香里の手を取り上条から離れるようにジャンプする。

それは高く、路地裏の外の道路を飛び越えて道路の向こうの建物の屋上まで飛ぶ。

その様子には、速さというより柔らかさがあり、まるで重力を無視しているかのようだ。

そして、そのまま去ってしまった。

 

「ちょっと、アンタ!」

そう声をかけられ振り返ると御坂美琴がこちらに向けて走って来た。

「御坂!?何でここに?」

「あの子と一緒に来たのよ。そしたら、二つの方向から音が聞こえてきたから別れて向かうことにしたのよ。」

「ああ、そうか二人とも心配してくれたんだな。」

「ま、まあね、アンタはともかく、黒子が心配だからね。」

(な、何で素直になれないのよ、わたしー。)

そういうことを言われ、上条は少しショックを受ける。

なんて話を切り出していいかわからないからだ。

もちろん、白井について…。

「御坂…、白井が…やられたらしい。」

「え……、ちょ、ちょっとそれ本当なの!?」

「ああ、とにかくあいつのことが心配だ、インデックスはあいつらに出会ってなかったと思う。話に上がってこなかったからな。」

「あの子は、黒子のとこに向かってったからね。どっちがどっちかわかんなかったし。」

「とにかく行こう。白井が心配だ。」

 

 

 

 

 

二人は走る。階段を走るのはかなりきついがエレベーターは無い。

むしろ使っている余裕はない。

「ここなのか、御坂?」

「ここの屋上で間違いないわ。初春さんのパソコンにここの位置が映ってたし、音が激しくなっていたのもここ。アンタが狙われてた位置を二人は調べてたらしいから。」

「それがここの屋上か。」

そう話しながら走っているうちに屋上のドアについた。

そしてドアを勢いよく開ける。

 

そこには白井に寄り添っているインデックスの姿があった。

 

とうま!とインデックスはこちらに向かって叫び、しかし、白井のそばは離れなかった。

インデックスは携帯電話の使い方を知らなかったので連絡ができなかったからか、その表情にあるのは焦り。

自分に何かできないかという、焦り。

「と、とにかく救急車。御坂、俺は電話で救急車を呼ぶから白井を頼む。」

「う、うん、わかった。」

白井黒子はボロボロだった。

傷どころか焦げているところさえある。

自らの信念を突き進んでいた少女に、圧倒的な力はそんな人間でさえも、飲み込んでしまった。

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