今日だけでいろんなことが起こった。
今日、デパートに行ったら怪しげな連中に襲われ、白井が入院。
しかもその元凶はおそらく手を組んだであろう魔術師と科学者。
もはや、デパートで楽しんでいたことが数日前のような気さえした。
今、上条は帰路についていた。
現在、学生寮のボロいエレベーターの中だ。
「とうま、どうするの?」
「土御門に聞いてみる。あいつは、イギリス清教の人間だし学園都市のエージェントでもある。あいつ以上にこの状況にふさわしい奴はいない。あまり信用できる奴じゃないけどな。」
チーン、と到着音が鳴る。
話している内にエレベーターは到着したみたいだ。
土御門はすでに、上条の家の前で待っていた。
「やっと来たにゃー、カミやん。」
「土御門!?なんで!?もしかして、俺がお前のトコに行くのもうわかってたのか?」
「そういうことなんだぜい。もう何が起こっているかも把握済み。相手の目的はまったくわかんないけどにゃー。」
まあ…、と話をつないでエレベーターのほうに歩いていく。
手招きしながら。
「詳しいことは、ほかのメンバーと合流してから。今回は、カミやんにも
「行かなかったらまたお前は無理するんだろ?」
即答。
少しは躊躇ってのがないのかね。と、土御門は心の中で考えながら同時に感謝していた。言葉に出す男ではないのだが土御門元春はそういう人間なのだ。
スフィンクスを小萌先生に預け、現在三人が通っているのは暗い通路。
学園都市の住人である上条にもわからない通路だった。
ここが学園都市の端っこだということはわかる。
しかし、こんなところは表ざたにされていない。
「土御門。ここはどこだ?」
「カミやんが知らないのも無理ないぜい。いわゆる裏ルートだからにゃー。」
「はあ?裏ルート?」
「考えてもみろよカミやん。俺やステイルが学園都市を出入りをする際どうやって出入りするのか。いちいち、学園都市の警備網を突破するなんて面倒なことはしないだろう?」
考えてみればそうだ。
いつも、簡単に魔術師が侵入してくるからあまり思わなかったが、
敵対する魔術師ではなく味方についた魔術師(に限らないが)が秘密裏に入ってくるのに裏口は必要だ。
少なくとも、オルソラ=アクィナス捜索の際には利用していただろう。
ステイルが堂々とゲートをくぐっていたとは考えづらい。
そう話しているうちにドアが見えてきた。
そのドアを開けると、そこは学園都市の外。
学園都市の外は、ぐるりと道になっており見晴らしが良い。
また、道の反対側はホテルなどの宿泊施設などが多数建っている。
学園都市に入ることができる大覇星祭や一端覧祭などの行事の際に使われるものだ。
学園都市内に宿泊施設がほとんどないため、ここらのホテルはおかげで大繁盛らしい。
そんなホテル群を観ていてなんとなく後ろを振り返ってみると、思わずぎょっとした。
ドアは学園都市の壁と完全に同化しているため、どこがドアかまったくわからない。
「ここは出口専用だぜい。」
(ってことは、また別の入り口を帰ってから使うのか…。)
これが学園都市の厳重なセキュリティによるルートかと思いながら質問をした。
「ほかのメンバーって言ってたけど、イギリス清教のメンバーが来るのか?大覇星祭みたいにステイルとかアックアのときみたいに神裂と天草式とかが来るのか?」
「それは無理だにゃー、カミやん。今回はおおっぴらに戦闘はできないんだぜい。」
「どういうことだよ?」
「科学者と魔術師が手を組んだ。ってことはもう知ってるか?」
その口調は、いつもの
魔術師の口調へと切り替わっていた。
インデックスもこの話題に興味をもったのか、真剣に話を聞いている。
「ああ、俺が戦った奴が科学者で能力者、白井と戦った奴が魔術師らしいな。それがどうかしたのか?」
「科学と魔術はお互いの領分を侵してはいけない。互いの独占した技術が奪われないように。だが、それをお互いが侵し、しかもお互い手を組んでいる組織。さあ、どうやってこいつらを取り締まる?」
「どうやって、っていってもそりゃあ……あっ。」
「えーと、この場合の対処法は……あっ。」
「「!!そういうことか(なんだね)」」
上条とインデックスが同時に気づき声を上げる。つまり…、
「そういうことだ、魔術サイドは魔術サイドが科学サイドは科学サイドが取り締まる。しかし相手がお互いに手を組んでいては下手に取り締まると、魔術サイドを科学サイドが科学サイドを魔術サイドが取り締まることになる。情報漏洩ってとこだ。そうなれば、非難は集中する。お互いの情報が盗られるのはほかの組織も好まないからな。」
一息おいて上条が質問する。
「じゃあ、何しに行くんだ?」
「調査だぜい。」
「調査?」
確かに戦闘ができない以上、やれることは自然に限られてくる。
その中で選択したのが調査。
「さっきも言ったが奴らは何を目的にして何をしようとしているのかわからない。それを調べることが今回の目的だ。だから聖人でロンドン十指に入る魔術師であるねーちんや教皇クラスの魔術を使う天才魔術師といわれているステイルと一緒だと外部から調査だと思われない。天草式みたいに団体様を引っ張れば完全に戦闘態勢に見える。こっちが文句言われるようなことをすれば、ほかの組織がこの件をひっかきまわしてしまう。しかし、何か危険なものがあれば戦闘の大義名分(いいわけ)になる。それが霊装ならカミやんが壊して、何が危険なものか見極めるのが禁書目録ってことだ。」
二人は、うなずき自分の役割を定め確認する。
「つまり、潜入ってことだな。」
「まあ、そういうことになるな。」
互いの領分を侵してしまった組織の取り締まり。
それが今回の目的であると確認した。
たしかに、魔術サイドであるイギリス清教は情報や技術が欲しいのだろう。
しかし、そのような行為に走ればローマ成教やロシア正教も黙ってはいないだろう。
大した情報でないならまだいい。
だが、イギリス清教が危険な霊装や術式を保持しようとしているのなら話は全く変わってくる。
だからこそ上条当麻を起用した。
跡形もなく壊してしまえばいいのだから。
上条としても、この組織の影響で不幸になる人がいると目の前で痛感した。
そんな人を減らせるのなら、願ってもないことだ。
そこで上条が気付いた。
「そういや、科学側の危険なものだったらどうするんだ?たとえば兵器とか。」
もちろんそのパターンもある。それが物とするなら、インデックスが反応しない物。なおかつ上条や土御門には危険だとわかる物の場合『幻想殺し』では対処できないであろう。
科学の異能の力は超能力。そのため、物に異能の力が組み込まれている可能性は低い。だが、土御門は躊躇なく答える。
「簡単だ。物理的にぶっ壊せばいい。」
簡単に言ってのけた。
「もともと、科学者が作る危険なものは機械か能力者、または薬品などだ。機械ならぶっ壊す。薬品なら使用不可にして、能力者が脅されている場合なら保護。非協力的なら連行する。ってとこだ。まあ、奴らが無害なら厳重注意で済むが……カミやんを襲ったとこでその可能性がガクッと減ったからな、あまり温厚に進むとは考えられんな。」
確かに上条を襲う計画をして、それを実行した。
ただ、上条には少し気がかりな点があった。
理論的ではなくあくまで感覚的にだが。
「で、合流って言ってたけど、どこでするんだよ。」
「ん?ここだぜい。」
「え?は?ああ、あっちから来てくれるってことか。そういうこと。」
「?何か来たかも。」
(噂をすれば影。だっけ?)
そう考えながら聞いてみると確かに音がする。
エンジン音から(上条はあまりエンジンに詳しくないが)たぶん車だろうと予想した。
その予想は正解で徐々にこちらへ近づいてきた。
色は黒、どこにでもありそうな5人乗りの車だ。
目立たず、どこにでもありそうな車。となると中で運転しているのは。
「えっと、こ、こんにちは。」
「ああ、五和だったんだな今回来るメンバーって。」
天草式十字凄教所属である魔術師、五和。
二重まぶたの特徴的な少女で、丁寧でおとなしいく、少々奥手な女の子である。
ちなみに、隠れ巨乳らしい。
今回の五和は、水色のジャケットに細いボーダーラインの入ったインナー。
学園都市製を意識した透明な布地を所々使い雷のようなダメージのあるジーンズ。
学園都市付近の服装としてはかなり一般的だ。
目立たず、周囲に溶け込む服装、移動方法のチョイスは天草式ならではだろう。
ほかの魔術師だと、なんかすごい移動方法を想像してしまった上条だった。
実際、上条の知らないところでは、空飛ぶ箒とかあったりするわけだが。
確かに、天草式という団体ではなく五和という個人が調査するのに問題はない。
それどころか適役だと言えるだろう。
周囲に溶け込む力は潜入に必須だからだ。
なお、上条が知る由もないことだが、天草式十字凄教の全メンバー(神裂を除く)の推薦で五和に決まったというのが事実だった。
「こっちも忘れてもらっちゃ困りますよ。」
運転席の後ろから聞こえてきたどこかで聞いたことのある声の主。
青っぽい色のミニスカートに、野暮ったいジャケットのファスナーを首まで上げた格好。
ミニスカートから伸びる、小悪魔のような尻尾型霊装。
「レッサー!?」
レッサー、イギリスの結社予備軍「新たなる光」のメンバーであり、優秀な魔術師である。
イギリスでの行動時には、ごたごたしていたがイギリスの味方であると言っているため今回の作戦には仲間としてカウントできるのだろうが。
「お前、イギリス清教じゃないだろ。何で今回、こっちに来てんだよ。」
「まあ、作戦外での目的にも、い・ろ・い・ろあるわけですが。」
熱い視線と艶やかな口調を上条に向ける。
上条籠絡作戦続行中だ。
一瞬、約3名の殺気を感じた。
約1名は自分に対するものではなかったが。
彼女は、上条当麻をイギリスの国益になると評価している。
そのため、彼を確保しておきたいという私的な考えを持っている。
そのための発言なのだろうが………、少しの惨劇の予感である。
「今回かかわっている彼らの情報はイギリスにも有益でしょうし、個人的にも彼らの情報は調べたいので今回は一魔術師として志願したということですね。」
「彼ら?」
「とりあえず、皆さん乗ってください。車内で説明します。」
五和の言うとおり、上条、インデックス、土御門は車内に乗り込み。
車は目的地に出発した。