おお、死んでしまうとは情けない! 作:団欒
適合試験だったかを終えた俺は指定された待機場所に向かっていた。
さまようこと2分、ようやくそれらしき場所を見つけた。
そこでは2人の男女が迎えてくれた。
「や、君も新人?俺もなんだ。よろしくな。っと、俺は藤木コウタ。コウタって呼んでくれ」
「お、おう。よろしくコウタ。俺は馬酔木トウヤ。そっちは?」
「神薙ユウ……ユウでいい……よろしく」
男、コウタは元気を擬人化、女、ユウは寡黙を擬人化したような人物だった。
あまりの落差に少したじろいでいると、2人が席を空けてくれたので、試験のせいでどうにも回らない頭でその席に座った直後、女性が近づいてきたのが見えた。
その女性のことをどこかで見たなと朧げに考えると、心当たりがあった。
「あ、女王様」
「誰が女王様だ、戯け」
「グフッ!?」
やべっ死にかけた!?
何この女王様、化け物か!?あ、だめ、マジで死にそう。
「これから訓練を行う、生き残りたければ私の命令にははいかイエスで答えろ。いいな」
「はい……」
「わ、わかりました……ってその前に、トウヤ。大丈夫か?」
「お、おう……だめみたい」
「ふざけてないで、たちあがれ。もう一度くらいたいのか?」
「り、了解です」
ふらふらする視界の中で、なんとか視線を上げる。どうやら俺は不幸らしい。元は身から出た錆だけれども……
「3人とも2分後にメディカルチェックをする。まずはお前だ馬酔木トウヤ。研究室に向かえ」
「わ、わかりました」
フラフラとエレベーターの場所まで行ってあらかじめ見ておいた地図を頼りに階を選択する。
いやはや、これから大丈夫かな……
○
「いやぁ。こう言うのはなんだけど、君、適合率がかなり低いね」
「そ、そうっすか」
いや、予想はしてたけど、真正面から言われるのは堪えるなぁ。なんて。
それはともかく、俺はもともとの不幸を加え、何事においても、才能がなかったりする。
それは今回も同じだったようで。
「しかし、低いけど、その代わり安定しているね。この安定度は流石の私も眼を見張るものがあるよ」
「逆を言えば、伸び代はそんなにないってことですね?」
「うん。そうだよ」
「ですよねー」
「おや?予測でもしてたのかい?」
「いや、俺って何をやっても上手くいかない体質でして……これって科学でなんとかなったりしないものですか?」
「うーむ。できないというわけではないのだろうが、難しいだろうね。まず原因がわからないことにはなんとも言えないよ」
「そうですか」
あんまり期待はしてなかったです。
あ、なんか眠い。
「少し眠くなるけど、目覚めたら自分の部屋だ。さぁ、ゆっくりとお休み」
直後、俺の意識は真っ黒になった。
○
訓練では常に新人3人の中で最下位を記録し続け、女王様……雨宮ツバキ教官からいつもどやされる。
そんな日々の中で、ようやくのことで実地訓練が行われるようになった。
というかよく俺に実地訓練を許したな、おい。
成績なんて散々だったし。
で、この前俺が3回オウガテイルに喰われた街。そこに俺は雨宮リンドウという人と来ていたりする。リンドウさんはこの前車に乗せてくれた人でもあるので、色々とご恩がある。
「ここだったな、お前さんとあったのは」
「そうですね、あの時は助かりました」
「さて、そろそろ行くか。その前に命令をしとかなきゃな」
「了解です。どんな命令でしょうか?」
「命令は3つ、死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ不意をついてぶっ殺せ!……あ、これじゃ四つか」
「了解しました。心がけます」
「おう、いい返事だ。ま、気楽にいこうや」
そう言うと、リンドウさんは高台から降りる、それに続いて俺も飛び降りる。
ちょっと高くて足が痺れたけど、問題はない。
しばらく歩いたところで、リンドウさんが身を隠すので俺もそれに習う。
リンドウさんの視線の先にいるのは一匹のオウガテイル。
それを目で指示される。
つまりは俺にやれと。
「わかりました」
手元の神機を構え、姿勢を低くして突貫する。
そして……普通に殺されました。
○
2回目、一撃与えて死亡。
3回目、ようやく倒すも、奇襲してきた2匹目に殺ろされた。
4回目、奇襲にも対応できた。
5回目、奇襲してきたやつも倒せた。
疲れた。体だけではなく、精神的にも疲れた。ベッドでゆっくりしたいけど、何せ落ちこぼれの身。もっと特訓しなくては。
○
リンドウは新たな逸材に笑みを浮かべた。
目の前で繰り広げられた戦いは、それほどまでに新人にしては異質だったのだ。
「ノーヒットで倒すとはな」
彼、馬酔木トウヤはまるで予測したかのようにオウガテイルの動きを読み、危なげなくオウガテイルを倒してしまった。
しかもその後に奇襲してきたオウガテイルもあらかじめ理解していたかのように、ブレード特有のインパルス・エッジで吹き飛ばした。
「信じられんな……あいつは成績は悪かったはずだが……」
「しかし姉上、俺は確かにこの目で見たんですって」
「姉上はやめろと言っているだろう。だが、確かに実戦でその実力を開花させる者もいるからな。しかし、これを見てみろ」
「ん?なんですかこれは……ってあいつの訓練記録?」
「そうだ、その中のものは全てお前と実地訓練をした後のものだ」
「うへぇ……なんとまぁ、酷い成績だことで……」
「だからこそ鍛え甲斐があるがな」
「また姉上の悪い癖が出たな。成績が悪いやつほど目をかける」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、ただ、あれだけの動きをしたやつが報われないなと言う事ですよ」
確かにな。とツバキは目をつむり、止まったエレベーターからロビーへと出る。
その先には、これからの未来を担う新人達がいた。
「実地訓練を始めるぞ集合!」