ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

14 / 71
一章はここまでになります。


SB1-10「Children『Re』Code」

AP241:3/25 10:00

アークスシップ:艦橋

 

「⋯ 部分的なものですが、以上が、ヒツギさんの昨日の動向となります」

デスクチェアを振り向かせ、シエラは背後のアメリアスに告げた。

中央の大型ウインドウには、ベッドに入ったヒツギの姿が映っている。

 

昨晩、シエラの手によって、アメリアスと会った翌日から昨夜までの断片情報が解析され、閲覧できるようになった。

その頃にはアメリアスは寝ていたため、こうして今日、改めて確認に来たと言うわけだ。

 

「なるほど⋯ まあ、言いたい事は色々ありますが⋯ 」

スツールに座っていたアメリアスは、ひょいっと立ち上がって、

「ヒツギさん、変わったお友達を持ってるようで⋯ 」

「あー、あのコオリさんという方ですか⋯ 」

 

シエラは苦笑すると、ぱぱっとウインドウを切り替える。

「今回手に入った大きな情報は3つ⋯ 『エーテル』という通信技術がある事、『マザー・クラスタ』という組織の存在、そして⋯ 」

「こっちの世界を、ゲームの世界だと思い込んでいる⋯ うーん⋯ 」

 

少々苛ついた様子で、髪をかきむしるアメリアス。

「あ⋯ すいません、やっぱり時間が早かったですかね⋯ 」

「⋯ いや別に、眠くて苛立ってた訳では⋯ そうだ、あのアル君という子は?」

「今のところは、どちらの世界の人間なのか⋯ データが少なすぎて、不明です。直に会えば、わかるかもしれませんが⋯ 」

「さすがにそうはいきませんよね⋯ そうだ、シエラさん的には、この映像、どう思いましたか?」

 

アメリアスが切り返すと、シエラは少し考えて、

「⋯ 歪な、感じがします」

そう、答えた。

「いびつ⋯ ?」

「はい。向こうの情報通信技術は、間違いなくこちらに比類するレベル⋯ ですが、製造技術⋯ ハードが明らかに追いついていません」

アメリアスは、見て来た内容を思い返す。

考えても見れば、あの程度の処理能力のデバイスなら、オラクルだったら腕時計サイズにもならない。

 

「不自然というか⋯ 異常進化と言えます⋯ 何らかの、作為すら感じますね⋯ 」

そう言って、シエラは肩を落とす。

「⋯ 兎にも角にも情報不足です。流石に覗き見程度では、限界がありますね⋯ 情報部も動いてくれませんし⋯ 」

「⋯ あのメガネ、一回蹴り飛ばして来ましょうか?」

「色々と冗談で済まなくなるのでやめといて下さい」

 

シエラは丁寧に制止すると、ウインドウに向き直った。

「ともかく、こちらで集められる情報はここまで、と言わざるを得ません。得られた断片情報は順次解析しているので、またお呼びしますね」

「⋯ わかりました。じゃあ、私はこれで」

 

シエラに礼を言って、アメリアスが歩き出すと、

「はぁ⋯ いいなぁ⋯ 」

そんな独り言が、シエラの口から聞こえて来た。

「? シエラさん?」

「はいっ!? ⋯ き、聞いてました?」

 

縮こまって、ゆっくりと振り返るシエラ。

「はい⋯ なんか、『いいなぁ⋯ 』って。なにかあったんですか?」

「そういう訳では⋯ ただ⋯ 」

モゴモゴと、シエラは答える。

 

「ちょっぴり、ヒツギさんが、羨ましくて⋯ 」

「⋯ 羨ましい?」

「私⋯ 基本的にずっとここにいるので、実はアメリアスさんが来るまで、誰かと話したこともなくて⋯ 正直、寂しかったんです」

「⋯ 」

 

アメリアスは、黙り込んでしまった。

シエラは管理演算専用に、オラクルの管理者であるシャオに創られた存在⋯ だとしても、人格のベースがあのウルクなのだ。

ずっとここに独りというのは、寂しかった事だろう。

 

「でも、最近は貴女が来てくれるおかげで、とても楽しくて⋯ あのー、アメリアスさん? 」

「あっ⋯ すいません、また考え込んじゃって⋯ 」

こちらを覗き込むシエラに、アメリアスははっとして、作り笑いを浮かべた。

 

「そうですね⋯ じゃあ」

アメリアスはそう言うと、シエラの側に歩み寄った。

「もう少し、付き合ってもらえますか? 聞きたいこともあるので⋯ 」

突然の、そんな申し出。

「⋯ あ、はい! 是非!!」

シエラは笑顔で、頷いた。

 

AP241:3/25 11:30

アークスシップ:アメリアスのマイルーム

 

ガールズトーク(?)にも花が咲き、 私が艦橋から戻った時には、昼前になっていた。

「ただいまー⋯ あれ?」

「お帰り。お邪魔してるぞ、アメリアス」

入って左、掲示板が取り付けられた壁の側には、車椅子の少女⋯ レイツェルの姿。

 

「あれ? レイ入れたの?」

「ああ、リオに顔見せたら開けてくれた」

レイツェルはそう言って、つつっとこちらに寄って来る。

「そういえば、2年前そんな車椅子だったっけ?」

「いや、君が寝てから使ってるものだ⋯ 前の車椅子、使い過ぎて所々逝ってしまってな⋯ 」

「そうなんだ⋯ あ、ここじゃあれだから、こっち来て?」

 

レイツェルを連れ、隣の小部屋⋯ 私の寝室に移動する。

「お帰り⋯ マスター⋯」

「ん。ありがとね、レイ入れてくれて」

リオに声を掛けつつ、ドアの方を振り向く。

「あれ⋯ レイ?」

ドアは開いてるのに、入ってこない。

「す、すまない、引っかかった⋯ 」

⋯ どうやら車椅子が、閉まりかけたドアに引っかかった様だ。

 

「⋯ 手、かざしてみ」

「わ、わかった⋯ 」

自動ドアを開け直し、そそくさと入って来るレイツェル。

「まったく。段差を気にしなくていいのはありがたいが、大きいのも困りものだな」

「まあ、おいおい改良されるでしょ。あ、その辺にいて?」

声をかけて、私はベッドに座った。

「じゃあ、今日わざわざレイに来てもらった理由なんだけど⋯ 」

 

そう言って、再生用ディスプレイを用意する。

「これ見て。さっき連絡した時に言った、映像化した断片情報」

少し小さい画面に、数時間前に艦橋で見たものと全く同じ映像が映される。

「⋯ わざわざ服にカメラ仕込んで、隠し撮ったのか⋯ ?」

「だって、データくださいなんて言えないじゃん⋯ 調査用だから、画質はそれなりだと思う」

 

それから30分程、ヒツギさんの昨日の動向を、2人で眺めた。

「⋯ 以上、かな」

再生を止め、レイツェルの方を見る。

「成る程⋯ これは⋯ 」

しばらく目を閉じていたレイツェルは、はっと顔を上げ、言った。

 

「⋯ おそらく彼女は今日、仕掛けてくる」

「また、こっちに来るって事?」

レイツェルは頷いて、言葉を続ける。

「彼女は、椅子に座っている時に、必ず何かを弄っている⋯ 正確には、手元に何かある時に」

「それが?」

 

こちらに目を向けるレイツェル。

「現状に不満を持っているという事だ⋯ 貧乏ゆすりと同じだな。まあ、私は出来ないが。それと⋯ 」

レイツェルは小さく笑顔を見せて、

「彼女はきっと、取り敢えず行動するタイプだ。大方、向こうでログインしたくてうずうずしているだろうさ」

「脳筋ってこと?」

「それは君だ」

「なんだとぉ!!」

 

意地悪な笑みを浮かべたレイツェルは、ディスプレイに目を戻した。

「ここからは、君の領分だ⋯ そうだな、ネットワーク管理室に協力を仰いだらどうだ? 臨戦区域の監視、あそこでしているんだろう?」

「確かに⋯ ヨハン脅せば、いけるか⋯ ?」

「⋯ なぜとりあえず荒っぽい方面から行こうとするんだ、君は」

 

そう言って、つつっと出口に向かうレイツェル。

「あれ、もう帰んの?」

「要件はこれで済んだのだろう? あいにく、私も微妙に忙しい身でな」

ため息をつくレイツェル。

市街地エリアの管理というのも、なかなか大変な仕事の様だ。

 

「そっか⋯ 頑張ってね、レイツェル」

「無論だ。私は私の最善を尽くす⋯ 君がそうしてきた様に」

「ありがと。それじゃ!」

出口前のレイツェルに、笑顔で手を振る。

手を振り返して、レイツェルが部屋から出て行⋯

「あっ⋯」

閉まりかけた自動ドアに、つっかかってしまった。

 

A.D2028:3/25 12:30

地球:天星学院高校

 

「はぁぁぁぁ⋯ アルくん可愛いよぉ⋯ ! とってもとってもめんこいよぉ⋯ !!」

生徒会室のパソコンの前で、コオリはにへらと笑っていた。

「またこの前服買った時の写真見てるの? コオリ⋯ そういう趣味だったのね⋯ 」

反対側でパソコンを操作していたヒツギは、呆れた口調で尋ねる。

 

「ちがうよちがうよ、可愛いもの見れば、誰だってこうなるんだよ!」

じーっと、ヒツギを見つめるコオリ。

「そういうヒツギちゃんだって、そんな可愛いアルくんと、寝食を共にしてるんでしょ⋯ いいないいなぁ!」

コオリの視線が、羨望の眼差しに変わる。

「なんかないのー? 襲ったり⋯ 襲われたりとかぁ⋯ !」

「⋯ あんたの本性を垣間見れただけで、アルが来てくれた意味があった気がするわ」

 

呆れを通り越して、信じたくないといった程のヒツギ。

「でもヒツギちゃん、アルくんを親族って事にして、同居を誤魔化すなんて⋯ 出来るの?」

天星学院高校の寮は、親族の宿泊が認められている。

ヒツギはアルを自身の弟という事にして、春休みの間誤魔化すつもりだ。

 

「まあ、姉弟に見るには無理があるかもしれないけど⋯ 最悪生徒会⋯ マザー・クラスタの権限で、煙に巻けると思う」

「ふふっ⋯ マザー様様だね⋯ 」

無茶な様だが、実現性は高いと、コオリは納得した。

 

「あぁ⋯ ほんとに可愛い⋯ ! PSO2の中にいたヒツギちゃんが、私に会いに出てきてくれた感じ⋯ !!」

「あんた⋯ 今すっごく際どい発言してる事に気づいてる⋯ ? まあ、いいけどさ」

ヒツギはパソコンに向き直った。

「ほらコオリ。写真愛でるのは後回しにして、PSO2について調べてよね」

 

ヒツギのパソコンの画面に出ているのは、PSO2のプレイヤーズサイトや、様々な関連するホームページ。

「もちろん、ちゃんとやってるよー。でも、ヒツギちゃんが集めていた情報と同じじゃないかなぁ⋯ 」

コオリの方も、芳しくない様だ。

 

「はい、メールにして送ったよ」

コオリから送られてきたメールを、パソコンと照らし合わせつつ読んでいく。

「2016年⋯ 12年前に発見された、媒介を必要とせずに、一切の遅延なく情報伝達ができる素子、『エーテル』⋯ これを用いたエーテルインフラは、世界中の情報通信に革命を起こした⋯ そして」

「次世代クラウド型OS『esc-a』が作成され、各国の協力のもと、各地に『エスカ・タワー』が建設⋯ 世界中にエーテル通信が広がり、情報技術環境が、横並びになった⋯ 」

 

コオリはデバイスを見ながら、立ち上がる。

「『esc-a』には、エーテルの導入や普及に伴うソフトがインストールされていて、『PSO2』も、その1つ⋯ ここまでが、表向きの話」

ヒツギは頷いて、口を開いた。

「でも、エーテル技術は発展途上⋯ 『esc-a』の中にもバグが潜んでいると、マザーは言った⋯ だから、私達の様な選ばれた人々⋯

『マザー・クラスタ』の所属者が、エーテルインフラに⋯ PSO2に『潜入』し、その調査を行っている⋯」

「⋯ これが、裏の話⋯ マザー・クラスタ以外には、秘密のお話だね」

 

ヒツギはぐったりと、うなだれた。

「だめだぁ⋯ 普通のことしか書いてない⋯ 私みたいな体験をした人いないの?」

むくっと起き上がり、キーボードを叩く。

「NPCが出てきた様に思えた⋯ って、去年のファンフェスの話か⋯ これは、この前のPSO2 プレイヤーの失踪事件⋯ うーん、これも違う⋯ 」

 

朝からずっと漁っているが、やはりめぼしい情報は見つからない。

と、その時、

「あ⋯ そうだ! いっちばん簡単な方法があるよ! 全部まとめて解決する方法が!」

突然閃いた様に、コオリが叫んだ。

 

「え⋯ !?」

「マザーに直接聞けば良いんだよ! マザーはなんでも知ってるもん!」

そう言って、デバイスに指を走らせるコオリ。

 

⋯ 確かに、それが一番良い方法だろう。

「待ってね、すぐ連絡してみるから⋯ 」

⋯ しかし

 

「⋯ ! 待って、コオリ!!」

気づけば、ヒツギはコオリを引き止めていた。

「⋯ ? ヒツギちゃん? なんで止めるの?」

「⋯ 」

理由。

理由は⋯ 無かった。

殆ど本能的に、ヒツギはコオリを引き止めていた。

 

「マザーに聞けば、きっと解決するよ? それに『esc-a』の調査はマザーから依頼されたものだし、報告は必要だと思うけど⋯ 」

「分かってる⋯ けどごめん、もう少し待って」

俯いて、答えるヒツギ。

 

理由はわからない。

しかし⋯ 嫌な予感が収まらない。

「ほ、報告は、きちんとしたいの⋯ アルのことも、PSO2の事も⋯ 自分でちゃんと調べて、報告したい」

とっさに出た言い訳。

直感だけで、取り繕う。

「春休み明けには、きちんと報告するから⋯ それまで、待って?」

 

コオリは少し、ヒツギの顔を見ると、

「⋯ うん。わかった。ヒツギちゃんがそう言うんなら、それが合ってるはずだから」

そう、笑顔で答えた。

「⋯ もちろん」

短く答えて、椅子に座りなおす。

「うわあ忘れてた、生徒会の仕事もしなきゃ⋯ !」

 

戸棚へ歩くコオリの後ろで⋯ ヒツギは、体を抱えてうずくまった。

(次世代クラウド型OS『esc-a』に、標準インストールされたゲーム『PSO2』。そこに存在する人々は、AIとは思えないほど精緻な動きをする⋯ )

「ヒツギちゃん?」

「あ、大丈夫、なんでもないよ」

 

コオリに声をかけられ、慌てて姿勢を直す。

(その詳細を調べるために、私達マザー・クラスタが、エーテルに入って調査をする⋯ それは、バグかもしれないから⋯ 『esc-a』を脅かすかもしれないから⋯ )

 

ヒツギは辺りを見回した。

パソコンをいじるコオリの姿。

壁に貼られた、「マザー・クラスタ」のエンブレム。

そして外には、天に伸びるエスカ・タワー。

 

(マザーが、そう言っていたから⋯ )

 

ヒツギは思い出した。

PSO2 で、自分を捕らえようとした黒い影。

それを助けてくれた、あの少女。

そして⋯ PSO2から現れた少年、アル。

「自分で進まないと、何も見えない⋯ 何も知り得ない⋯ 何も解らない」

ならば、為すべきことは1つ。

「⋯ もう一度、行ってみるしかない、か」

 

 

I believed it until now.

Is the world full of lies?

 

To be continue...




「チルドレンレコード」
「子供達」の作戦が、始まる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。