ファンタシースターオンライン2 「Reborn」EPISODE 4(休止中)   作:超天元突破メガネ

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……えー、その。

しばらく投稿が開いてしまい、申し訳ありませんでした。
ちょっと忙しくなった拍子に生活サイクルから執筆が外れてしまい、気が付けば御覧のとおりです。

今回からまたペースを戻せればと思っております。
それでは引き続き、いつの間にか完結して半年になってしまった、「再生」の物語をお楽しみください。


SB3-11「レイワイテロリズム」

A.P241:4/7 19:00

アークスシップ:艦橋

 

「それでねそれでね!大きな光の剣がどーーーーんって!!」

「なんですかそれぇぇぇ!!?」

オーバーに話すアルに、目を輝かせるシエラ。

ノリノリで話している二人を見て、ヒツギは大きなため息をついた。

 

「シエラさん…なんでそんな食いついてるんですか……」

「地球の文化を知るいい機会ですから!…というか、ヒツギさん男の子向けのアニメなんか見るんですね」

「あ、アルが話してるのは作業用ついでに流してただけで…」

もどかしそうに頭をかいて、ヒツギはシエラの後ろにあるウインドウを見た。

「こんなことしてる場合なの?まだベトールは見つからないのに……」

 

艦橋に漏れたため息は、今度は呆れではなく不安を帯びていた。

最初の爆発があってから、今日で丸二日。あれからも、東京では小規模な爆発事故が頻発していた。

そのたびに待機していたアークスが現場に急行したが、いたのは数体の幻創種。

ベトールと思しき反応は、一度も確認されなかった。

 

「だけど具現武装を使えば、すぐにわかるんでしょ?」

ヒツギは以前聞いていたことを思い返す。具現武装は反応が独特で、探知も容易なはずだ。

「それが具現武装…仕込まれた爆発物の反応が、エーテルインフラに紛れてしまっているようです……」

シエラが言うには、規模が小さい分、隠密性が高められているらしい。

設置さえ露呈しなければ、あとは好きなタイミングで起爆するだけ。遠隔からの起爆なら、オラクル側はまず捕捉できないのだ。

 

それを説明すると、シエラは思い出したように首を傾げた。

「ですが、なぜ見つかるリスクを冒してまで、こんなことを……?」

「え、今見つけられないって……?」

「事実はそうですが、そう想定するのは危険というものです。破壊が目的なら、短時間で一気に行うのが上策のはずです」

ヒツギは何とも言えずに、シエラを見た。

 

アメリアスにも言ったが、彼の目的はただの破壊活動ではない。

「でも、ベトールの目的は分かるわ」

「え?」

「多分……狙いはあたし。あいつ、言ってたでしょ」

最高の作品のための、最高のシチュエーションを用意する。

しかし何よりも作品に必要なのは、本物の演技(恐怖)を見せる主役(ヒロイン)に他ならない。

 

要は、ベトールはヒツギを挑発しているのだ。

「だったら……」

貴女が行くべきではない、と、

シエラが言い切る前に、ヒツギは首を横に振る。

「ううん。だからこそ、あたしが行かなきゃ…あたしが、ケリをつけなきゃならない」

これは、自分が蒔いた種なのだから、と。

ヒツギははっきりと、シエラに告げた。

 

「………」

何も言えずに、黙り込むシエラ。

「……お姉ちゃん」

代わって、アルが口を開く。

 

「ひとつだけ、約束してほしいの…」

「アル……」

「ぼく…お姉ちゃんに居なくなってほしくない…またひとりぼっちになんて、なりたくないよ……!」

震える声で呟いたアルを、ヒツギはそっと抱きしめる。

「何言ってんの。あたしはいなくなったりしないわよ」

「本当に…?」

ヒツギは頷いて、アルの頭をなでる。

 

「アメリアスも、リオもいる。あたしは、一人じゃないから」

「……うん」

アルは顔を上げて、ヒツギを見て笑った。

「…そういえば、アリスお姉ちゃんは?」

ふとシエラのほうを向き、尋ねるアル。

 

ヒツギも、今日は彼女が艦橋に顔を出していないことを思い出した。

「アメリアス、また地球調査?」

「いえ、昨日の夜から今日の昼まで、東京の待機班を指揮しまして」

シエラは言いながら、メールサーバーを開く。

「えっと…お昼に『シフト終わったので寝ます。起きれれば夜に伺います』と連絡が……」

「…来ると思う?」「ないですね」

 

その発言が、いわゆる『フラグ』というやつだったのかは、別として。

シエラが即答するのと、それはほとんど同時に起こった。

 

突然、けたたましいアラートが、艦橋に鳴り響いた。

「な、何!?」

「地球待機班からの緊急警報です!!」

シエラはコンソールへ駆け寄り、立ったまま指を走らせる。

「東京中央部、仕掛けてきた……っ、これって!?」

シエラの目の前で、ウインドウに映るアラートが、次々と増えていく。

「異常集積像、急激に増加!?」

すかさずコンソールを叩き、東京に仕掛けられた調査機の映像を拾い上げる。

追加されたウインドウに夜の街が映し出された、次の瞬間。

 

3人の目の前で、景色は爆炎に染まった。

 

「な……っ!!?」

ヒツギは、言葉を失った。

数刻凍り付いていたシエラは、弾かれるようにワークチェアに飛び込む。

「爆発、さらに広範囲に発生…さらに幻創種出現、多数…!!」

ウインドウには次々と、爆破されるビルの映像が映し出される。

「現在地球で待機中のアークス各員!領域隔離と同時に迎撃を!!守護輝士(ガーディアン)を出します!!」

矢継ぎ早に通達を出し、シエラはさらに通信をつなげる。

 

アドレスはアメリアス。表示された場所情報は、案の定自室。

シエラは恐らく2年の生涯で初めて、眉根を釣り上げた。

「起きてくださいアメリアスさ……!!」

強制的に回線を接続し、思いっきり怒鳴って、

『…了解』

「…ひいっ!!?」

帰ってきた氷点下の応答を聞いて、ぎょっとコンソールから飛びのいた。

 

「シエラ!?」『え、え?』

両側から困惑した声を掛けられ、シエラは我に返る。

「い、いえ…スペースゲートで合流を!」

『直行します。ヒツギさんもすぐに!!』

駆けだすような物音と同時に、通信が切れる。

「う、うん!じゃあ行ってくるね、アル!!」

「うんっ!!」

一度アルの肩に手をのせて、ヒツギは艦橋を飛び出した

 

AD2028:4/7 19:20

 

「出撃どうぞ!!」

「はいっ!行くよヒツギさん!!」「うんっ!!」

アメリアスはヒツギの手を取り、東京に着地する。

「……っ!何よ、これ…!!」

目の前に広がった景色を見て、二人は瞠目した。

 

東京が、炎上している。

いくつもの高層ビルが爆破され、燃え上がる街を幻創種が闊歩している。

「こんなの…ただのテロじゃない…!!」

ヒツギは唇を噛み締めた。

これが、あの男の望んだ景色なのか。

ただ己の欲求を満たすために日常を奪い去るのが、彼の騙る「本物の恐怖」だというのか……!

 

「…ヒツギさんッ!!」「え…きゃあっ!!」

突然アメリアスに突き飛ばされ、ヒツギは横合いへ転がる。

直後ヒツギがいたすぐ近くに、爆破されたビルのがれきが落下した。

「大丈夫!?気を抜かないで!!」

「う、うんっ……!」

伸ばされた手をつかみ、立ち上がる。

 

「シエラ!ベトールの座標は…!!」

『反応解析…掴まえた!ビーコン出します!』

レーダーに、ビーコンが輝く。

シエラの能力の結晶たる光を見て、アメリアスはふっと顔を綻ばせた。

「ありがとう、シエラ…ヒツギさん!」

蒼光を迸らせ、アメリアスの魔装脚が地を蹴る。

「ええ…『天羽々斬』!!」

次いで走り出したヒツギの右手で、エーテルが太刀の形を成す。

 

「エネミーが…っ、多い…!」

『ダッシュパネルを展開します!強行突破を!!』

躊躇なくフォトンリングに飛び込み、幻創種の群れへ突進する。

「やあああああっ!!」

スライディングで幻創種を蹴散らし、そのまま燃える街を駆け抜ける。

 

雑魚の相手をする必要はない。

「危っ…!!」

落下する瓦礫。燃え盛る町は、さらに被害を広げていく。

とにかく早くベトールを見つけ、この凶行を止めさせなければ…!

 

『対象座標に、多数の幻創種を捕捉!!』

「ヒツギさん、突っ込むよ!」

「上等!!」

ダッシュパネルで再び加速し、スクランブル交差点に滑り込む。

幻創種の群れを吹き飛ばし、二人はすぐに得物を構えた。

 

「ざっと…20体くらい?」

「天羽々斬」を握った手が、わずかに震える。

「行ける?」

「……大丈夫」

ヒツギは答えて、アメリアスの背に立つ。

「あたしのことは気にせずに、思いっきりやって!」

「…じゃあ、そうさせてもらおうかな!!」

二人の足が、反対方向に路地を蹴った。

 

レイJブーツが翠緑に煌めき、アメリアスの周囲に風が舞う。

「サ・ザン!」

大気制御によって生み出された旋風が、幻創種を巻き上げる。

もう、こうなってしまえば敵ではない。

「モーメントゲイルっ!!」

左右に蹴り抜け、霧散する光の中を着地する。

 

「こいつも!」

残ったゾンビを巻き込んで、奥のT-REXにイル・ザンが疾走(はし)る。

「もってけ!!」

かき集められた幻創種もろとも、ヴィントジーカーの衝撃波が吹き飛ばした。

「でぇいっ!!」

着地したアメリアスの髪を、コンバットフィニッシュの衝撃波がなびかせる。

 

直後アメリアスの隣に、納刀したヒツギが滑り込んだ。

「はあっ、はあっ……!」

息を切らすヒツギの前で、青い燐光が消える。

(なっ…向こうにいた幻創種、こんなに早く…!?)

 

碧眼を見開き、アメリアスはヒツギを見つめた。

「…って、大丈夫?」

「う、うん…ふぅ」

立ち上がり、汗をぬぐうヒツギ。

「ていうか、ここがベトールがいる位置なのよね!?」

「そ、そうだ……!」

 

アメリアスは慌てて、レーダーを開く。

「し、シエラ!とりあえず再解析を…!」

シエラへ通信を入れようとした、その矢先。

レーダーにノイズが入り、突然すべての反応が掻き消えた。

 

「え……!?」

再展開しても、現れるのは地形データと「jamming」の文字のみ。

「アメリアス!?」

「なんで、ジャミングなんて……」

当惑していたアメリアスは、はっとレーダーから顔を上げた。

 

本来フォトン解析によって機能するそれが、今は何を頼りに動いているのか。

そして、それを事実上支配しているのは誰なのか。

空を仰ぎ、さらに気づく。

今までずっと鳴り響いていた爆発音が、嘘のように止んでいる。

「まさか……!!」

アメリアスが呟いた、その時。

 

静まり返った街に、乾いた拍手(クラップ)の音が響いた。

「「……っ!!」」

二人は同時に、拍手のしたほうを見た。

 

「HAHA!!グッドだガールズ!!想像以上の演技だぜ!!」

高架の上から、投げかけられる嘲笑。

この災禍の全てを引き起こした男が、そこにいた。

 

 

 

 

 




「レイワイテロリズム」

正当な罪は、未来を見出す。
それが無価値と断じられた、夢徒歩な男の賭け札だった。

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