今回は鈴ちゃんの特訓回です。
え?一夏じゃないのかって?
そりゃああんなのがあればね?
そんなわけで、本編はじまります。
IS学園廊下
「はぁ・・・」
教室に繋がる廊下を歩きながら織斑千冬はため息を吐いた。
昨日たまたま真那と会い食堂に行こうとしていたら、キラが一夏を遣りに行こうとして冥琳達に止められている場面に遭遇したのだった。話を聞いて二人もキラを止めに入ったのだが、千冬や真那の攻撃を意図も簡単に避けるので、とりあえず3時間に渡って話し合いやっとのことで落ち着いたのだ。
「まったく一夏め、お前の所為で昨日は疲れたぞ」
千冬はまだなにも知らないと思う一夏に悪態をついた。
鈴から一夏とのことを聞いたキラがキレたと聞いて、千冬は驚いたと同時に厄介ごとが増えてため息を吐いた。
一夏の鈍感は最初から知っていたのだが、まさかそれでキラがあそこまでキレるとは思いもしなかったのだ。
雪蓮達から話を聞くと、キラは昔初恋の少女を傷つけてしまったことがあり、一夏をその時の自分と重ねてしまったらしいのだ。
「はぁ・・・」
本日何度目か解らないため息を吐きながら、千冬は自分の担当する教室のドアを開けた。
【BGM:タイガーマスク】
「これでどうだぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」
「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!」
「な・・・なんだこれはぁぁぁぁぁーーーーーー!!??」
ただいま千冬の目の前では、どこから持って来たのか青いマットの上で、キラにキャメルクラッチを食らわされている一夏の光景が写った。しかも周りでは1組の生徒どころか他の教室の生徒も見ていた。
『決まったーーー!!ヤマト選手のキャメルクラッチ!』
『がっちりと捕まえておりますわね。これは一夏さんも脱出不可能ですわ』
端の方を見ると、なにやら雪蓮とセシリアが司会を勤めていた。
「オルコット、雪蓮先生、何をやっているんだ!?」
「おはようございますわ、織斑先生」
「決まってるじゃない。一夏への報復よ?」
「いくらなんでもやり過ぎだ!?」
なんの躊躇もなく二人は千冬に挨拶した。
『おっと、ここでレフェリー入ります!!』
雪蓮の言葉でマットに入ったのは、レフェリーの格好をした雪泉だった。
雪泉は千冬に向かって「おはようございます」と言った後に、すぐさまキラと一夏に近づいた。
すると一夏がなにか言い出した。
「ギブ!」
ギブアップだった。
『ギブ?』
「ギブ!」
『ギブ?』
「ギブ!」
『ギブ?』
「ギブ!」
『ギブ?』
「ギブ!」
『ギブ?』
「ギブゥ!」
「どこの悪徳レフェリーだ!?」
一夏がなんどもギブアップをコールしいているにも関わらず、雪泉はまるで聞き取れなかったかのようになんども一夏にギブ?と返した。
「いい加減にしろ!!HRが始まらん!!」
『は~い!』
「織斑も起きろ!邪魔だ!!」
「俺、悪くないのに・・・」
八つ当たり気味で一夏を注意し、『ホーム・ルーム!(勉強小僧声)』が始まった。
放課後 第2アリーナ
「というわけで、今日から鈴を鍛えることになったキラだよ」
「セシリア・オルコットですわ」
第2アリーナの真ん中で、キラとセシリアは目の前にいる鈴に自己紹介した。
「二人共、本当に良いの?一夏じゃなくてわたしの方で?」
「一夏には痛い目にあってもらわないといけないし」
「そうですわ。人の心を大事にしない人なんて最低ですわ」
昨日、3時間の話し合いの末、キラとセシリアの二人で鈴を鍛えることにしたのだ。
来週にクラス対抗戦があり、1組の生徒が2組の生徒を鍛えるというのはいかがなものかと思うだろう。
しかも、セシリアはイギリスの代表候補、鈴は中国代表候補で、本来ならば技術を見せ合うみたいなものなの。だが、あの状況では仕方なかったので今回は多めに見ているのだ。
「その代わりと言ってはなんだけど、優勝したらデザートフリーパス、僕達も一緒にお願いね」
「キラって結構甘党なの?」
「うん!!」
優勝したクラスはなんと、デザートフリーパスがもらえるのだ。
そしてキラは大の甘い物好きなのだ。
どのくらい大好きなのかと言うと、中学1年の頃二つ上の学年で夜が大好きな先輩に、朝から並んで買ったチョコレートケーキを食べられて、その仕返しに先輩の恥ずかしい写真をツイッターなどに流して世界中にばら撒いたほどなのだ。
もはや一夏をこてんぱんにするので、鈴のいる2組に勝ってもらって自分たちも入れてもらうことにしたのだ。
「それじゃあまずは、鈴の専用機を見せて?」
「わかったわ。行くわよ『甲龍』!」
鈴は掛け声とともに、紫に近いピンクと黒の機体を纏った。
「それが鈴さんのISですの?」
「そうよ!名前は『甲龍(こうりゅう)』、本来はシェンロンって言う名前なんだけど、それだとあっちの方と似ちゃうし」
「確かにね。このままずっとシェンロンって言い続けたら、偉い人のハチャメチャが押し寄せて来て、最悪スタッフが土下座する羽目に・・・」
「恐ろしいですわね」
「いや、そこまでじゃないから!」
キラとセシリアの言葉に鈴は突っ込みを入れた。
「それじゃあ先ず、僕と鈴が戦って、鈴がどのくらいできるか確かめるね」
そう言ってキラはラファールをバーグラリーで纏った。
「ってラファールじゃない!?そんなんで私に敵うの?」
「・・・鈴さん、あれをただの量産機と思わないで下さいまし」
「え?どういうこと?」
真剣な顔で忠告してきたセシリアに疑問を浮かべながら、鈴はキラとの模擬戦を開始した。
数分後
「そ・・・そんな・・・」
「こんな感じかな」
結果的に言えばキラが『圧勝』した。それも完膚なきまでにだ。
だが、驚くのはそこではなかった。
「ちょっとセシリア!キラってなんなのよ!?初見で見えないはずの龍砲の衝撃波を斬るってどういうことよ!?頭可笑しいんじゃないの!?」
「鈴さん失礼ですわ!そこはキ○ガイと言って下さいまし!!」
「そっちの方が危ないわよ!!」
セシリアが放送禁止用語を言ったので鈴は突っ込んだが、実は鈴だけでなくセシリアも驚いていたのだ。
最初セシリアは、鈴の左右に浮いている第3世代機『龍砲』から一瞬光を発したのを見ていた。だが次の瞬間、キラがシールドに付いてるレーザーブレードを縦に振ると、後の二箇所に爆発が起きたのだった。
「それだけじゃないわ!1年どころか、2・3年でも出来る人が少ない『短距離瞬時加速《ショートイグニッションブースト》』に、モンドグロッソに出る人でもできるか解らない上級加速技の『瞬間加速《クイックブースト》』を使うなんて、あんた初心者って嘘でしょ!?」
「正直なところ私も初心者と言うのは嘘に思えて来ましたわ」
「そんなことないよ?最初に触れたのだって中3の最後の冬だし」
「それであんな加速技ができるとか、あんたどんだけ化け物なのよ!?」
「・・・よく、言われるよ」
「ぁっ・・・」
鈴からの化け物発言にキラは少し傷ついた。
その表情を見た鈴は(しまった!)と思いキラに謝罪した。
「ごめんキラ!」
「大丈夫だよ。化け物って言われるのは、慣れてるから・・・」
かなり精神的にダメージがあったらしく、大丈夫とは言うがかなり辛そうな表情だった。
「鈴さん。キラさんは小学生の頃から、キラさんを良く思っていない方々から化け物と呼ばれておりましたの・・・」
「え?」
それを聞いた瞬間、鈴はだんだんと罪悪感などがこみ上げて来た。
「ご、ごめん!!そんなことがあったなんてしらなかったから・・・」
「大丈夫だよ鈴。少し、驚いただけだから」
「本当にごめんなさい」
何度も謝ってくる鈴にキラは(鈴は箒と違って素直で良い子だね)と思った。
箒の場合、俗に言うツンデレというものなのだが、少し険悪感にも似た感情があった。一夏に対する好意は見れば解るのだが、一夏を問答無用で体罰を行ったり、キラと二人でいると何故か睨んでくるし、自分は姉と関係ないと言っておきながら、最初に特訓しようとした時も他の生徒に『自分は、篠ノ之束の姉ですから』と矛盾したことを言っており、彼女は一体なにがしたいのか解らなかったのだ。
それに比べて鈴は素直で良い子だった。
先ほどみたいに自分が悪いと思ったことはちゃんと謝罪もするし、人懐っこい性格でとにかく明るい。
だからこそ、こんな素直で良い子を傷つけた一夏が許せなかった。
「よし鈴!そしてセシリア!僕はあんまり教えることが苦手だけど、僕のできる限りのことで二人を強くするよ!」
「あ・・・ありがとうキラ」
「私まで・・・ありがとうございますわ!!」
いきなりやる気になったキラを見て、鈴は少し動揺して、逆にセシリアは自分も鍛えてくれると言って嬉しくなった。
「先ず二人は、瞬時加速が出来ないらしいね?」
「う・・・」
「ええ・・・」
セシリアは前に聞いたからわかるとして、鈴が出来ないを解ったのは先ほどの模擬戦である。
キラは確認の為に瞬時加速でなら避けられる攻撃を何度もアプローチしたのだが、鈴は持っていた双天牙月で防ぐことしかできなかったのだ。
それはつまり、鈴は瞬時加速ができないということである。
「だから僕は二人が、簡単に瞬時加速できるように教えるよ」
「そんなことできるの?」
「要はイメージだよ。PICと同じで、加速技もイメージすればできるんだよ」
「そうなのですか!?」
キラの説明に驚いたのはセシリアだった。
「セシリアは理論は知ってるけどあくまで理論だけで、イメージや想像力が足りないんだ」
「イメージですか・・・」
「なんか後半どっかで聞いたことある台詞ね?」
鈴はそんなことを言いながらも、キラの言ったことに理解した。
「じゃあキラがさっき使った、短距離瞬時加速と瞬間加速もイメージすればできるの?」
「短距離瞬時加速はそれなりに難しいけど、瞬間加速は結構簡単だよ」
「そうなのですか!?」
「教えて!」
上級加速技である瞬間加速が簡単だと聞いて鈴とセシリアは食いついた。
「イメージするのは『霧吹き』だよ」
「霧吹き・・・ですか?」
「うん。一度ISをまとって、霧吹きをシュッって出すイメージでやってみて」
「解りましたわ」
「やってみる」
キラの言ったとおりに二人は、霧吹きを一回出すイメージをしながら加速してみた。
すると、
バシュン
「え!」
「まあ!」
バシュン
「出来た!」
「本当ですわ!」
なんと見事に瞬間加速が出来た。
何度もやってみるが、物の見事に習得してしまったのだ。
「短距離瞬時加速や瞬間加速は、普通に瞬時加速をするよりも燃費が良いし、回避に使ったりフェイントに使ったりと応用が利くから試合には結構使えるよ」
「確かにどっちも短いしね」
「さらに応用すれば、瞬時加速を使いながら瞬間加速を連続で行う『稲妻加速《ライトニングブースト》』とかもできるよ」
「それって確か、千冬さんがやってた二重瞬時加速と同じ位難しい、上級加速技よね?まだ代表候補生の私なんかが出来るの?」
鈴は同じ位と言っているが、実際は二重瞬時加速よりも難しいのだ。二重瞬時加速は、瞬時加速中にさらに瞬時加速をするという上級加速技なのだが、稲妻加速は瞬時加速中に瞬間加速を連続で行い、何度も方向転換して相手の攻撃をかわしながら油断させて奇襲するという、まさに予測不可能な稲妻を描くような加速技なのだ。しかも射撃にも格闘にも使えるので万能である。ただし、受けるGは半端な物ではなく、失敗すれば軽装甲なら絶対防御があろうと大怪我は免れないのだ。
しかも、変幻自在な加速技のため、相当な体力と的確な処理能力、さらに精神の負担にも関わる。そしてなによりもエネルギーを大幅に消費するため、使いどころを誤ればいくら燃費の良い甲龍でも振りになるのだ。
「それこそ鈴の頑張り次第だよ。稲妻加速は鈴が言った通り上級加速技。かなり難しいけど、使えるようになればこの先有利になるし、なによりもさっきの二つの加速技も含めて一夏を倒すための切り札にもなるんだ」
「そうですわ。私も未熟者ですが、鈴さんを手伝うために来ましたのですから」
「キラ・・・セシリア」
「僕やセシリアだけじゃないよ?雪蓮先生に冥琳先生に雪泉さん、真那さんに織斑先生も応援してるんだ」
「千冬さんと真那さんも?」
「うん」
「お二人とも、鈴さんのことを心配しておられましたわ」
鈴の疑問にキラは首を縦に振り、セシリアが二人も心配していたと伝えた。
アリーナに来る前、キラとセシリアは千冬から『今回は私もカチンと来たからな。鳳を強くしてやってくれ』と、真那からは『鈴様のこと、宜しくお願いいたします。今回は同じ女性として、許せる行為ではありませんので』と言われていたのだ。
真那のことは昨日紹介し、鈴は真那がキラのメイドだと聞いてかなり驚いた。
因みに、今挙げた5人だけでなく、ブルーティアーズに高野たち紺碧会も鈴のことを心配していたのだ。
ブルーティアーズは言わずもながら、実は昨日夜遅く、キラとセシリアは高野達に連絡をして、鈴と一夏のことを話したのだ。その際高野は『なんということだ・・・同じ男として許せん行為だ!』と、一夏に怒り心頭に発した。
「ぁ・・・」
二人の言葉を聞いて、突如鈴の瞳から涙が溢れでてきたのだ。
「どうしたの!?」
「大丈夫ですか!?」
「ご・・・ごめん・・・・・あ・・あたし・・・いろんな人から・・応援されて・・・・・凄く・恵まれてるって思ったら・・・涙がでてきて・・・」
鈴と箒の違いはここにもある。今の箒は姉や家族、一夏と剣のことしか考えていない。だが鈴は一夏のこともあるが、今どれだけの人が・・・それも男の人が酷い目に遭っているのかも知っているし、女性権利団体のことも知っている。
だからこそ、今どれだけ自分が恵まれているのかが解ってしまい、涙が溢れ出てきてしまったのだ。
「大丈夫だよ鈴。僕もセシリアも、君の味方だから」
「ですから安心してください鈴さん」
「うん・・・うん・・・!」
少しの間、鈴はキラとセシリア、他にも自分を応援してくれる人達に感謝しながら泣いていた。
「鈴・・・頑張りなさい」
「私達は、お前を見守っている」
その光景を遠くから、二人の女性が心配しながら見ていた・・・。
・・・・・・・一つ言っておきますが、鈴ちゃんはキラのヒロインにはなりません。
だけど魔改造はします。
もうキラ君が色々キレておりますゆえ。
因みに、前から言われている加速技というのは、瞬時加速などの様な特殊な加速のことを表しています。
それぞれ、初級、中級、上級、究極があり、究極はまだ誰も到達していない領域です。
詳しい内容はまた今度に。
それでは。