第1話:驚愕のバレンタイン
2月14日 バレンタイン
日本では、女の子が男の子にチョコレートを渡して、恋を確かめ合う日。
それは女尊男卑になってもいっしょだった。
だが、キラにとっては悲しい日だった。
『血のバレンタイン』
キラの世界で起きた事件である。
ブルーコスモスがコーディネーターの住むプラントに向けて、核ミサイルを撃ち込み大量虐殺した悲しい事件。
それが引き金になり、引くに引けない戦争の始まりだった。
キラもその戦争に巻き込まれ、大切な者を沢山失った。
「はあ・・・」
キラは教室の窓から見える景色を眺めながら、前世のことを思い出していた。
「キラ君、此処の数式を答えてください」
担任の教師に当てられて、キラは黒板に書いてある数式を答えた。
「・・・12です」
「はい、よく出来ました」ニコ
教師は答えたキラに対して笑顔で返した。
彼女は『香取』、中学1年の頃から3年間キラのいるクラスの担任をしていた教師だ。それでいてキラと同じ転生者である。
彼女はキラのことを知っている者の一人で、何時もキラのことを心配している。
そのため、今キラが何故空を見ていたのかも気付いていたのだ。
「キラ君、どうしたんですか?」
「すみません。色々考えていました」
「わかった! もうしかしてチョコもらえると思ってんだろ!?」
「な! そんなわけないだろ!?」
「まあキラってモテルもんな?」
「頭も良いし、運動神経抜群! おまけにプログラミングもできる!」
「しかも家にはメイドさんもいるしな!」
「もしかしたら、今日のIS適正も受かるんじゃねえか?」
「そしたらキラはハーレム学園に行くのか!」
「えええ! そしたらキラ君、私達と離れちゃうの!?」
「リア充爆発しろ!」
「だからそんなんじゃないって!」///
クラス中に言われてキラは顔を赤くしながら否定した。キラのいる教室の生徒達は、女尊男卑に染まった女子はいないのだ。
なのでキラは少し心も楽なのだ。
「はいはい、皆さんまだ授業中ですよ。チョコのことはまた後にしてくださいね♪」
「因みに先生はチョコあげる人とかいるんですか?」
「え、ええ!? そ、そんな人はいませんよ!」///
「あれ? でも放課後よくヤマトといるのを見かけるけど?」
「なに! もしや香取先生の彼氏は!」
「い、いや違うから! 確かに香取先生は綺麗で優しいし、抜け目がないけどそんなんじゃないから!」///
「き・・・キラ君!?」///
「それに、僕見たいな屑が香取先生となんて・・・」ボソ
「!!」
クラスの皆には聞こえない位のその呟きは、香取だけ聞こえたのだった。
キーンコーンカーンコーン
「あ! これにて、数学の授業は終わります。皆さんお昼休みの後はIS適正検査がありますから、準備しておいてくださいね」
『はーい!』
キラはお昼にしようとして屋上に行こうとした瞬間、香取に『個別指導室に来てください』と言われたので、キラは香取の待っている個別指導室に向かった。
コンコン
「失礼します」
「ええ、どうぞ」
ノックをして部屋の中から香取の声が聞こえた。キラは扉を開け、中に入った。
「それで、話ってなんですか?」
「・・・キラ君、また前世のことを思い出してたのね?」
「・・・はい」
香取の言葉にキラは、ただ静かに頷いた。
「・・・キラ君、あなたは屑じゃないわ」
「!?」
「何度も言っているけど、貴方がやってきたことは決して間違ってはいないわ。キラ君は悲しみを背負いながらも、大切な人達を守ってきた。それだけでも、普通では到底できないことよ」
彼女も前世、大切なものを守るために戦ってきたのだ。そしてこの世界でキラと出会い、キラがどれだけ『脆く弱い存在』かを知ってしまったのだ。だからこそ香取は、すこしでもキラの力になると決めたのだ。
「・・・香取先生」
ギュ
「ですから大丈夫、貴方は絶対に屑じゃないわ。例えあなたを屑と言う人達がいたら、私がそれを否定してあげます」
「香取さん・・・」
香取は優しくキラを抱きしめ、キラは声を殺しながら泣いていたのだった。
「・・・ありがとうございます」///
「うふふ、良いのよキラ君。なんでしたら、今日そっちに行って『あれ』をするのも良いですよ♪」
「そそそそそそそそそれは!!」///
香取はキラの事を知ってからは、時たまキラの家に来てはキラとS○Xをやっているのだ。色々と理由はあるが、それはまた別の機会に。
「ぼ、僕昼食を取ってきます!」///
キラは顔を赤くしながら脱兎のごとく個別指導室から出て行ったのだ。
「・・・大丈夫よキラ君。貴方には、私だけじゃなく色んな人が守っていますよ」
そう呟いた香取も、個別指導室から出ていった。
(はあ・・・早く帰りたい)
ただ今キラは、体育館でIS適正検査を取るために並んでいたのだ。正直なところ、キラはやりたくなかったのだが、香取から『1回ISに触るだけよ。終わったらもう帰っていいわ』と言われたので、キラは受けることにしたのだ。
「ぬおおぉぉぉぉぉーーーーー!!」
「何故だあああぁぁぁぁぁーーーーー!!??」
「俺たちの夏、終わったな」
(今は冬だよ)
「もう・・・燃え尽きたぜ」
(どこのボクサー?)
なにやら前では男たちの悲鳴がするが、キラは別段気にすることはなかった。
「うっさいわよ!」
「もうこれだから男は!」
「なんでこんなこと・・・」
担当の女性達は、どうやら女尊男卑の風潮に染まった女性たちのようだ。キラはさらに居心地が悪く思ったが、香取に迷惑を掛けたくないので我慢した。
「ホラ次」
「・・・はい」
担当の女性に言われたキラは、鎮座してあるISの前に立った。
するとキラはとあることを考えだしたのだ。
(・・・篠ノ之博士は、一体どんな思いをしていたんだろう? ・・・あの人みたいに、絶望したのかな?)
キラは前世で最後に戦った男『ラウ・ル・クルーゼ』と篠ノ之束を重ねた。クルーゼはクローンとして生まれたのだが、生まれつきテロメアが短く失敗作の印を押されたのだ。そして彼はあの世界に絶望して、全てを滅ぼそうとしたのだ。
(・・・IS達も、悲しんでいるのかな? 本当は宇宙に行くために生まれたのに、違う扱いをされて・・・無理やり男を見下す道具にさせられて・・・)
ISには意思がある、少し前にテレビで聞いたキラは、あることを試そうと思いISに触れた。
(・・・僕の声が聞こえますか?)
それは、ISに触れながら念じて見ることだった。普通に喋るのも良いのだが、担当の女性たちに何を言われるかわからないので、とりあえず念じてみることにした。あくまで試すだけだし、言いたいこともあるのでやってみることにしたのだ。
(・・・まずはごめんなさい。僕達の所為で、こんなことになっちゃって。あなた達がどう思っているのか解らないけど、宇宙に行くための翼をもぎ取ってしまったのは僕達人間の所為なんだよね? 本当に、本当にごめんね・・・)
キラはただひたすら謝った。たとえ違うとしても、自分たちの勝手な都合でIS達を兵器にしてしまった。許されるとは思っていない。それでもキラは謝罪したいのだ。
そして、
《ありがとう・・・》
「え?」
気が付けば、キラは鎮座していたはずのISを纏っていたのだった。
その光景を、体育館から少し離れた電柱の上で、キラを見ていた『白い忍』は確認していた。
「あの子が、キラ・ヤマトさんなのですね・・・」
今、小さな歯車が動き出したのだった。
最近夜に眠れなくてきつい・・・。