「此処がIS学園か・・・」
「大きいですね」
IS学園の正門の前に、キラと真那は立っていた。あれから2ヶ月が経ち、キラはISの基礎や応用を勉強したのだ。最初は電話帳位あった参考書を1日で読み終え、さらには参考書にも書いていないようなこともパソコンなどで調べたりしたのだ。
「確か、総合受付の所で教師が待っているって高野さんが言ってましたね」
「そうですね・・・あの方でしょうか?」
キラ達の先にあるそうごう受付所の前に、黒いスーツを来た女性が立っていた。その姿はまさに美しいと言わざるお得ない程であった。
「お前がキラ・ヤマトだな?」
「は・・・はい」///
「そうか。私はお前のクラスの担任をする『織斑千冬』だ。宜しく頼む」
「宜しくお願いします」///
キラは彼女のことを知っているが、余りにも綺麗なので顔を赤くしてしまった。一応昨日の内にあの薬の効果を抑えたので大丈夫だった。
『織斑千冬』
ISの世界大会『モンドグロッソ』で『ブリュンヒルデ』と呼ばれた存在である。そして、ISが世に知れ渡る切欠となった『白騎士事件』の『白騎士』の操縦者でもある。
「む? どうした?」
「す、すみません! その・・・凄く綺麗な人だから、ちょっと顔を見れないというか・・・その」///
「!・・・ふっ、そうか。そうだな、お前も男だからな」
キラに綺麗と言われて千冬は少し驚いたが、顔を赤くしているキラを見て微笑んだ。
「それで、貴方が今日くる従業員の方ですか?」
「はい、月詠真那と申します」
「・・・・・・なるほど、貴方が『紅蓮の月』ですか」
千冬は真那の名前を聞いて、内心かなり驚いた。
「『紅蓮の月』、『月光閃舞』の異名を持つ航空自衛隊最強の兵士『月詠真那 1等空佐』、重火器は勿論、刀・・・それも短刀を持たせれば右に出る物はいないと言われた武術の達人・・・」
「昔の話です。今はキラ様に仕えるメイドでございます」
真那の事は、上の人間や一部の武道家の人間にしか知られていない。千冬も剣術を使う者なので、真那の異名は聞いていたのだ。
「と言うことは、貴方はキラの護衛役として此処に?」
「そうでございます」
「なるほど、防衛大臣から直々に連絡が来た時は驚いたが、まさかそういうことだったのか」
「迷惑をかけてすみません織斑先生」
「別にお前が謝ることはない。色々訳ありだと言うことが解ったしな」
因みに千冬は高野達から、キラの薬のことなども聞かされているのだ。
「おっと、そろそろ行かなくてはな。案内します」
「「はい」」
そして二人は千冬に付いて行くのだった。途中で真那とは別れ、キラは千冬の担当する1年1組にやってきた。
「ヤマト、私が呼ぶまで此処でまっていろ」
「解りました」
千冬に言われて、キラは教室の前で待っていた。
「・・・愛を下さい OH 愛を下さい ZOO~♪」
少し退屈なので、キラは辻○成のZOOを歌っていた。キラはたまに90、80年代の曲を聴いたりしているのだ。勿論最近の曲も好きである。
「クリスマスキャロルが 流れる頃には 君と僕の答えも きっと出ているだろう~♪」
ガラガラ
「ヤマト、はいr・・・何を歌っている?」
「え? クリスマスキャロルの頃にはですけど?」
「・・・お前何歳だ?」
「16です」
キラに即答されて、千冬は「・・・そうか」と言うしかなかった。
「とりあえず、ヤマト入れ」
「はい!」
キラは大きな声で返事をし、教室に入った。そして、キラは大型ディスプレイの前に立ち、自己紹介をしたのだった。
「初めまして、キラ・ヤマトです。好きな物は甘い物、特技はプログラミングです。2人目のIS適正者ですが、よろしくお願いします」
キラは表は平常心を保っているが、内心ではかなり焦っていた。
(ど・・・どうしよーーーーーーーー!!?? 女の子がいっぱいでどうすれば良いんだろう!? 一応あそこにもう一人の子がいるから良いけど、これは流石にきつい・・・。多分あの子もそう思っているんだろうな。・・・だって)
キラはもう一人の男であり、千冬の弟である『織斑一夏』を見た。
(ドラ○もんに再会した時のの○太みたいな表情でこっち見てるし)
もう一人男が来て嬉しかったのか、一夏はまさにそんな表情をしていた。
「き・・・」
「き?」
『きゃあああーーーーーーーー!!』///
「のわ!?」
突然の叫び声に、キラは躓いてしまった。
「男! 二人目の男よ!」
「可愛い顔をしていて尚且つ甘いものが大好きなんて!」
「最高にハイってやつだ!」
『ヒャッハー!!』
彼女達の目が余りにも獲物を見る様な瞳で、キラは少し恐怖した。
そんななか、
(・・・あれ?)
他の生徒達と違い、金髪の少女だけはこちらを睨んでいた。
「落ち着けバカども、それよりも授業を開始する! 時間はそんなにない!」
まるで軍の教官みたいな千冬に、キラは少し怖がったが、気を取り直して席に着いたのだった。
「よ! ヤマトだよな!」
「うん、君は確か織斑君だよね?」
「一夏でいいぜ」
「じゃあ僕もキラで良いよ」
「宜しくなキラ」
「宜しくね一夏」
2時間目の前の休み時間、キラと一夏はお互いに自己紹介した後握手をした。
「いや~俺以外に男がいて助かったよ」
「確かにね。これは僕もキツイよ」
「だよな!」
同じ気持ちのキラに一夏は凄く嬉しかったのだ。
「・・・少し良いか?」
「「ん?」」
声のした方に振り向くと、そこにはポニーテールの少女が立っていた。
「箒!」
「知り合い?」
「ああ、幼馴染だ」
「へ~」
「ヤマトだな? すまないが、一夏を貸して良いか?」
「別に良いよ。幼馴染なんでしょ?」
「ありがとう」
そう言って箒と言われた少女は、一夏を引っ張り教室を出て行った。
「ふぅ・・・」
取り合えず一息つきたいキラに、また一人近づく少女がいた。
「少しよろしくて?」
「ふえ?」
「・・・なんですのその可愛らしい声?」
「ああごめん」
突然呼ばれたキラは慌てて少女に謝った。
「えっと・・・ああ! 君ってイギリス代表候補の子だよね?」
「あら、ご存知でしたのね」
「たしか『セシリア・オルコット』さんだったっけ?」
「そうですわ! イギリス代表候補、セシリア・オルコットですわ!」
高らかに自己紹介したセシリアを見て、キラはいろんな意味で圧倒されていた。
「えっと、オルコットさんのことは高野さんから聞いているんだ」
「!! ・・・ミスタータカノを知っておりますの?」
「うん、色々とお世話になっているんだ。前にも『イギリスには色々と感謝している』って言ってたし」
「・・・そうですの」
キラの言葉を聞いたセシリアは、どこか荷が少し軽くなったような表情をしたのだった。
「・・・まああの方の知り合いみたいですし、お願いすれば色々と教えますわ」
「本当! ありがとうオルコットさん!」
キラの無邪気な笑顔を見たセシリアは、
(な・・・なんですのこの方は!? 今まで見てきた男たちとは違って、表裏がないですわ!)
内心焦っていた。
(・・・それにヤマトさん、どこかあの方々に似ている感覚がしますわ。そう・・・ミスタータカノやあの方みたいな、なにか悲しそうな・・・)
セシリアは他の女子生徒達よりも人を見る目はある。今までもずっと一人で財閥を守って来たので、その際に出会った人物たちがどんな人なのかを見ることができるのだ。そして目の前にいる自分と同じ歳の少年は、自分が出会った中でも信用できる男、高野五十六の様な自分に正直でどこか悲しそうな表情をしているのだ。
「どうしたのオルコットさん?」
「え? ああいえ、なんでもありませんわ。それでは」
「うん、ありがとう」
それからチャイムがなり、一夏と箒が帰って来て授業が開始された。
その際一夏は参考書を捨ててしまったらしく、千冬の出席簿を食らったのだ。
放課後
「ヤマト」
「織斑先生?」
教室に残っていたキラは、千冬に呼び止められた。よく見ると右手には鍵を持っていた。
「一応例の薬のことは聞いていたんだがな、急なことだったので女子と相部屋になってしまった」
「そうですか・・・」
「・・・お前は私のことを知っているのか?」
「・・・白騎士のことですか?」
「・・・ああ」
千冬の質問に、キラは静かに頷いた。
「篠ノ之束博士が『人間として』見ている人は、千冬さんと一夏、妹の箒さんだけです。当時白騎士事件を博士と一緒に起こせるのは、彼女と同じ歳の貴方ぐらいですよ」
「・・・そうだな」
その一言だけ言って二人は沈黙したのだった。
しばらく沈黙していると、口を開けたのは千冬だった。
「・・・すまなかったな、ヤマト」
「え?」
「私達の所為で、お前にとてつもない程大きな傷を負わせてしまったな」
「織斑先生・・・」
「あの時、束の口車に乗っていなければ、お前も、お前の両親も・・・」
「・・・大丈夫です織斑先生。確かに父さんと母さんが死んで悲しいですけど、高野さん達や真那さん達がいてくれるから、僕は大丈夫です」
「ヤマト・・・」
「それに、僕は織斑先生に博士、IS達を憎んではいません」
「それはなぜだ?」
束とISを憎んでいないと言ったキラに、千冬は理由を尋ねた。
「先生もあの人も、この世界に絶望してしまったからなんですよね?」
「・・・・・・」
キラの言っていることは、間違ってはいなかった。
一夏が幼い頃、二人は両親に捨てられてしまい、千冬はこの世界に絶望してしまったのだ。
束もまた、宇宙に行きたいが為に作ったISを上の連中(高野や大高のいる紺碧会は含まれていない)が子供の発想だと否定されたのだ。
「織斑先生は僕に謝罪してくれた、それだけでも僕は十分ですよ。ありがとうございます」
その言葉を聞いた千冬もまた、少しキラに救われた。
自分たちの犯した過ちの所為で、目の前の少年は
「それと多分篠ノ之博士は、きっと今も泣いています。こんなふざけた世界になってしまったことに、篠ノ之博士はきっと泣いていますよ」
「束が?」
「博士だけじゃありません。IS達も、今みたいな使われ方に悲しんでいると思います。僕はISに触れた時、僕達の所為でごめんなさいって謝罪しました。そしたら、『ありがとう』って聞こえたんです」
「・・・そうか・・・」
千冬はどうしてキラがISに乗れたのかが解った気がした。キラはISに対して自分から語りかけた。実際はキラは関係ないはずなのに、それでも自分たちの所為だと思いISに謝罪したのだ。
「お前は優しいな? ISをそこまで思ってくれる奴なんて、滅多にいないぞ」
「僕はそんなに優しくないですよ」
ただ、とキラは呟いて少し悲しそうな表情になった。
「今まで沢山理不尽な事を見てきたから、目の前でなんの罪も無い人が傷つくのが嫌なだけの偽善者です」
「(そういうところが優しいのだがな)・・・とりあえずこれが寮の鍵だ」
「ありがとうございます、それじゃあ僕はこれで」
「ああ」
そう言ってキラは、IS学園の寮に向かって去って行った。
「・・・ありがとう、ヤマト」
去っていくキラの背中を見て、千冬は微笑みながらそう呟いた。
IS学園 寮
「えっと・・・確か・・・・・・ああここだ!」
キラは自分に当てられた部屋にやってきた。
コンコン
『はい』
キラがノックすると、中にいる生徒がこちらに向かっている音がした。
ガチャ
「お待たせいたし・・・な!?」
「君は、オルコットさん?」
扉が開き中から出てきたのは、先ほどであったセシリアであった。
「な、何故貴方がここに?」
「何故って、織斑先生から此処に住めって」
「な!?」
セシリアは自分のルームメイトが、まさか男だとは思いもしなかった。
「えっと、とりあえず入って良いかな?」
「・・・わかりましたわ」
セシリアの許可も貰い、キラは部屋の中に入ったのだった。
「うわぁ・・・凄い豪華だね」
「私みたいなお嬢様もいらっしゃいますし、このくらいは当然ですわ」
「そうなんだ・・・」
キラは気を取り直して、端にあった自分の荷物を開けて、中身を確認した。
「・・・何を持って来たのですか?」
「パソコンだよ」
「・・・ディスプレイ3つも必要なのですか?」
「まあね」
キラはディスプレイ×3、キーボード×2、マウスにケーブル類に少し大きめのCPを取り出した。
「見かけないコンピュータですわね?」
「手作りだよ、市販のじゃ追いつかないからね」
「追いつかないって、最近のはISのこともありかなりスペックはあるはずですわよ?」
「そうなんだけどね。いろいろ作業しなくちゃいけないから、同時並行でする為にも容量とか必要なんだよ」
「・・・因みに容量はどのくらいなのですか?」
「400Pだよ」
「充分過ぎですわよ!?」
まさか手作りでテラを超えてペタも入るパソコンがあるとは、夢にも思わなかったセシリアだった。
「よくそのようなコンピュータで、そこまでの容量が入りましたわね?」
「葛飾区にいる知り合いに色々頼んで貰ったんだ。中にある部品はほぼ最新機だよ」
「そうなのですか」
キラは机の上にディスプレイとCPを乗せて、ケーブルを繋げた後に起動ボタンを押した。
「それじゃあ改めて、ルームメイトになったキラ・ヤマトです。宜しくね」
「・・・セシリア・オルコットですわ」
「・・・ごめんね。こんな男と一緒で嫌だよね?」
「・・・もう良いですわ」
セシリアは半分キラの言うとおり嫌だったのだが、キラに謝られて少し罪悪感がでてきたのだ。
(まあ良いですわ。少しすれば部屋変えされると思いますし、それまでは我慢ですわ)
そう思いながらも、セシリアはIS関連の資料書を読んだのだった。
だがこの時セシリアは思いもしなかった。
キラがどれほど優しく、どれほど悲しい罪と呪いを背負っているかを・・・。
これから先、キラとキラを愛する者達と一緒に『化け物達』と戦うことになることを・・・。
そして、
同じ仲間と一緒に、キラを生涯支えていくことになるとは・・・。
ACのOPに出てくるアセンブルとか、バーグラリードッグの装備が大好きです。