ナツノウタ   作:夏草

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こうして毎日書いてみると分かる大変さ。連日更新をしている人やブログを書いている人は本当にすごいと思う今日この頃です。



始まりはある春の日に 7

それはある春の昼下がり。

 

午前中の授業を終え、昼休みに入り、職員室で弁当をパクついていた時の事だった。あぁ、ちなみにこの弁当と言うのは一人暮らしの男性諸君が大変お世話になっているコンビニ弁当ではない。俺の手作り弁当だ。意外と思うかも知れないが俺はこう見えても料理は結構得意だ。高校時代から自分の飯は自分で作って来たし、バイト先も飲食店だった。社会人になった今でも極力自分で作る様にしている。理由は単純にして明快。

 

自分で作った方が安上がりだからだ。

 

安さは正義。

 

新米教師の安月給じゃ外食ばかりだと直ぐに無くなってしまう。そんなわけで別に栄養の偏りやら、ビタミンやら鉄分やらそんな健康に気を使っている訳ではないが、なるべく自炊しているということだ。

 

「何だ今日も自家製弁当か……」

 

横のデスクである滝本先生が俺が取り出した弁当箱を見ながらそう呟く。

 

そんな滝本先生の手にはよく見るコンビニ弁当と赤いマグカップ。マグカップの中には茶色液体が入っている。滝本先生オリジナルブレンドコーヒー、通称「タキちゃんスペシャル」だ。ちなみに味の方はコーヒーの風味も何もがぶっ飛んだただの甘い液体。ブラックコーヒー一党の俺にしてみれば考えられないほどの甘さ。あれでは砂糖とミルクを入れた液体と何も変わらない様な気がしてならない。

 

「まぁ、自家製の方が安く上がりますからね……。それよりも、滝本先生は今日もコンビニ弁当ですか?」

 

俺の言葉を受け、滝本先生は一瞬、手元のコンビニ弁当を見つめると、

 

「まぁな。昔は自分で作っていたんだが、どうにも面倒くさくなってな……。それに、コンビニ弁当と言っても最近のコンビニ弁当は種類も豊富だし、意外に美味いぞ」

 

そう言うとマグカップに入っているコーヒーもどきを一啜り。

 

別に滝本先生は料理が出来ない訳ではない。その見た目に似合わず、めちゃくちゃ料理が美味い。何でも昔、料理人を目指そうかと迷ったらしい。たまに作ってくる弁当も彩から味まで見事の三文字だ。

 

「そういうもんですか?」

 

「あぁ、そういうもんだ。それよりも、あのお前が朝、起きて弁当まで作る様になるとはなぁ……」

 

滝本先生はしみじみとそう呟く。それに関していえば俺自身でも驚いている。学生時代、特に高校時代からは考えられない進歩だ。

 

「確かにそれを言われてしまえばその通りです。自分でもびっくりしてますよ」

 

「私もびっくりしているよ、まさかあのおとのさ――」

 

滝本先生がここまで発した時だった。

 

ツーツーツーと何処か雑音に聞こえる音が職員室の壁上に取り付けられているスピーカーより響いた。

 

「――ん? 放送か?」

 

この音は放送のマイクが入った時の音だ。

 

「放送ですね……放送部ですかね?」

 

この時間に放送となると、放送部か、教員かの二択になる。放送部なら何かの宣伝やらが多いし、教員なら今の時間なら呼び出しが多い。放送できる設備は職員室と放送室、それと生徒会室にある。教員の放送なら職員室から行うのがほとんどなのだが、今見たところ誰も放送機器には触っていない。となれば後は放送部と言うことになる。

 

しかし、俺の予想は外れることになる。

 

『ブー! ですわっ!』

 

……ん? これは誰の声だ?

 

スピーカーから漏れるのは、女性の声。いや、まぁ女子高なんだから女子の割合が九割以上を占めるからそれ問題ないが、聞き覚えのない声。。

 

「ん? この声は黒澤か……。あいつ何を……」

 

横を見れば弁当を突いている滝本先生。

 

「黒澤って生徒会長のですか?」

 

黒澤 ダイヤ。

 

この浦の星の生徒会長であり、文武両道の秀才。俺も他の教員の方々から聞いた話なので詳しくはよく分からないのだが、成績もよく運動もでき、それでいて生徒会長として学校の皆を引っ張てれている存在らしい。生憎黒澤のクラスの授業は受け持っていないのだが、周りから聞くだけでも十分に優秀な生徒と言うことが分かる。あぁ、ちなみに名字で分かったと思うが、黒澤ルビィの姉だ。

 

しかし、まぁ生徒会顧問の滝本先生が言うにはどこか抜けている存在らしい。

 

「そうだ。その黒澤だ。まぁ黒澤の事だから変なことじゃあないと思うが……でもアイツは熱くなると周りが見えなくなることがあるからなぁ……」

 

俺と滝本先生のそんな会話を他所に、

 

『全く貴方はμ’sのファンと言いながら何にも分かっていないではないですか! 正解は僕らのLIVE君とのLIFE、通称ボララですわ!』

 

『……い、いやぁ』

 

もう一人別の声が聞こえてくる。

 

――この声は高海か……?

 

『それでは次の問題ですわ! 第二回ラブライブ予選でμ’sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は?』

 

『ステージ……?』

 

『ブッブー! ですわっ! 正解はUTX屋上! あの伝説言われるA-RISEとの予選……』

 

『では次、ラブライブ第二回決勝、μ’sがアンコールで歌った『あっ、それなら分かる! 僕らは今のなかで!』 ですが、その曲の冒頭でスキップしている四名は、誰?』

 

『えーっ!』

 

『ブッブッブーッ! ですわっ! 綾瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫――』

 

――あぁここまで来れば誰だって分かる。

 

事故だ、間違いなく、明らかに、どうしようもなく事故だ。

 

恐らく喋っている本人もこれが放送で校舎全部に筒抜けだと言うことに気付いていないはずだ。

 

「……はぁ」

 

滝本先生がマグカップに入ったコーヒーを飲み干すと深い深いため息を落とす。弁当はいつの間にか空になっていた。

 

「全く、黒澤のやつは何をやってるんだ……。ちょっと説教に行ってくるとするか……」

 

そう言うと滝本先生は立ち上がり、そして椅子の背もたれに掛けてあった白衣を羽織る。

 

職員室を出るときに笑みを浮かべながら、

 

「そう言えば、お前はあの二問分かったか?」

 

「さぁ、どうでしょう?」

 

「あっはっはっは。そうかそうか」

 

昔の事なんて忘れてしまった。

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