艦これ~横須賀攻略鎮守府日誌~   作:春宮 祭典

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最終話という名のプロローグ。


終話~金剛、回想す~

この話の登場人物

金剛(Lv150)

比叡(Lv118)

榛名(Lv129)

霧島(Lv121)

浅宮提督

 

 

 

横須賀攻略鎮守府。数年前深海棲艦の大侵攻により壊滅したその土地に建てられた本土最前線であり、日本艦隊の主力が集まった、いや、集まっていた。

 

今や深海棲艦はほとんど駆逐され、一部の深海棲艦とは和解したり、降伏を受け入れたりしている。ここだけでなく、各地の鎮守府でも艦隊解散の動きが進んでいる。

 

かつてこの鎮守府で、旗艦として第一線で戦っていた戦艦金剛、今となっては元金剛も大きめのキャリーバッグを引いて海を眺めていた。

 

「ようやく、ようやくデース。この海にも平和が戻りましたネ。でも、少し寂しい気もしマース」

「お姉さまー!」

「おおう?この声は……」

 

手を振りながらこちらへ駆けてくる艦娘。金剛から受け継いだ主兵装、35.6cm連装砲改四を構えた艤装をつけ走ってくるは、戦艦比叡。金剛の妹艦である。

 

「比叡。見送りに来てくれたんデスか?」

「はい!お姉さまの門出とあらば、私はすぐに駆けつけます!」

「比叡は……ここに残りマスか?」

「……はい。私は横須賀に残って近海に出没する深海棲艦の掃討に向かいます。お姉さまは、もう艤装解体したんですね」

 

比叡の言葉に金剛は穏やかに頷く。艤装を解体すれば、軍属ではなくなり、相応の理由がない限りもう鎮守府に来ることは出来ないのだ。

 

「またすぐに会えマスよ。なんたって、ワタシはテートクの妻なんデスから」

「ああ、そう言えばそうでしたね」

「榛名と霧島はどうするんデスか?」

 

榛名と霧島も金剛の妹艦であり、比叡を含めて四人で金剛四姉妹と呼ばれることが多い。

 

「榛名と霧島は……っと、噂をすれば、ですね」

「「金剛お姉さま!」」

 

榛名は比叡と同じく艤装をつけているが、霧島は金剛と同じく私服姿でキャリーバッグを引いている。

 

「榛名と霧島はこの後どうしマスか?」

「榛名は、AL海域に行きます。反攻作戦が起こるとしたら、ALか西方か、ですから」

「私は、艤装を解体してきました。これから士官学校へ行って、提督を目指そうかと」

「榛名と霧島とは長い別れになりそうですデスネ……」

 

士官学校は通常4年で卒業、ALの掃討作戦もいつ終わるかは分からない。艦娘ではない金剛四姉妹が揃うのはまだまだ先になりそうだ。

 

この他にも横須賀攻略鎮守府に所属していたメンバーのほとんどが艤装を解体して、普通の生活に戻っている。

 

「そう言えば、提督も……」

「そうネ。提督もあと何年かで辞めるそうデース。そうなったら、みんなとは会えなくなりそうデスネ……」

 

寂しそうな表情をする金剛。

 

「大丈夫です!何があっても、必ず私はお姉さまの元へ会いに行きます!だって、私はお姉さまの妹ですから!」

「例え、離れ離れになる時間が長くても、榛名は大丈夫です!」

「私も、出来るだけ早く士官になって鎮守府に戻って来ます。そのための準備は怠りません。備えあれば憂いなしですね」

 

「比叡……榛名……霧島……みんな、みんな大好きデースッ!」

 

ギューッと力一杯妹たちを抱きしめる金剛。どれほどそうしていたかは分からないが、やがて離れて、

 

「それでは私は出撃の時間なので、ここでお別れです。絶対に私は沈みませんからね!気合い!入れて!行きます!」

 

猛然とダッシュしていく比叡の視線の先には艤装を解体せず、鎮守府に残ることを決意した仲間達がいた。

 

「……それでは榛名も、行きますね。また会いましょう、お姉さま!」

 

涙でぐちゃぐちゃになった表情を無理に笑わせて立ち去る榛名。もう1度会う、その決意をもって榛名は1度も振り返ることは無かった。

 

「じゃあ、私も。そろそろ迎えの車が来るので」

「いってらっしゃいデース。霧島」

「金剛お姉さまも、お幸せに」

 

立ち去る霧島を見送りながら、金剛は左手を上げる。その薬指には、二つの指輪。一つは、ケッコンカッコカリ、そして、もう一つは━━━

 

「金剛!すまない遅れた!」

「もう!テートク遅いデース!まあ、最後にお別れ出来たのでそれは良かったデスけど」

 

金剛が振り返ると白い軍服に、海軍士官として異質な日本刀を携えた、金剛の元提督である浅宮弘也がそこに居た。先日、婚姻届を金剛と共に提出して、本当の夫婦となった男。

 

「そうか。もう金剛じゃないんだな。なら、俺もテートクじゃなくて名前で呼んでくれよ」

「それもそうデスネ。なら……浅宮サン」

「お前も同じ苗字になるだけどな」

「そ、そうデシター!」

 

仕切り直し。だが、よくよく考えてみると、今までテートクとばかり呼んでいた為か、いざ名前を言うとなると気恥しい。

 

「じゃ、じゃあ、エート……こ、弘也、サン……」

 

顔を真っ赤に、視線を泳がせながら自分の名前を呼ばれた浅宮は、その場で硬直した。

 

(うちの嫁、可愛すぎるッ!?)

 

その後も金剛がテレテレして、浅宮が硬直するを繰り返した為、しばらく話が前に進まない。

 

「……とりあえず、帰るか」

「エ?お仕事はどうするんデスか?」

「終わらせてきた」

「さ、流石デース」

 

相変わらず仕事の出来る浅宮に畏敬の念を抱く金剛。

 

「そう言えば、他のみんな……特に初期メンバーはどうしてマスか?」

「ああ。確か初期メンバーで現役続行は川内と比叡と利根だな。他の……電、夕立なんかは艤装解体して普通の生活に戻ってるよ」

 

川内は榛名と共にAL方面へ出発。過去の因縁に決着をつけておきたいのだろうか。そんな考えが浅宮によぎった。利根は大本営が編成中の残党殲滅空母機動部隊に組み込まれる予定。比叡は先ほど聞いてのとおりだ。

 

電は艤装解体後、養子に入って中学に進学し、現在は普通の生活を送っている。

夕立は各鎮守府から異動の誘いが来たがそれを断って時雨と共に暮らしているという。

 

「雪風は中国に支援に行って、ヴェールヌイ……響はロシアへ。海外艦もほとんどが帰国して復興支援に当たっているらしい」

「そうなんデースか。ワタシも艤装解体して普通の女の子になれたんデスネー。やっと本当のワタシになれた気がしマース」

「少なくとも、艦娘として建造された時点で普通じゃないけどな」

 

艦娘は主に死体から建造される。その際、体の構成物質に燃料や鋼材などの資材が入る為か、普通の人間よりも老いにくく、死ににくい体になっているのだ。

 

「それは弘也サンも同じデース」

「そうだな」

 

浅宮も死んでこそいないものの、艦娘と似たような物質構成になる施術を受けているので、やはり、老いにくく、死ににくい体なのだ。

 

「弘也サンと長く一緒にいれるのは嬉しいデスが、やっぱり、子供が出来ないのは少し残念デース」

「まあな。だが、普通に子供を作れるようになる技術が大本営の方で発表されたんだと。開発者はまあ、予想は出来ると思うが、ウチの明石だ」

「まあ、今現役の提督はほとんどが弘也サンみたいな体デスカラネー」

 

かつて艦娘が前線に立つ前、浅宮の他に総合で1000人近くいた海岸防衛部隊。今となっては訓練生も含め生き残りは僅か14人。その多くが退役していた人だが、現役で生き残った浅宮を含めた数人は深海棲艦の事をよく知っているとして士官学校に行かせられ、低い階級で提督になった。

 

「でも、その技術を使っても、生まれてくる子はワタシ達と同じような体なんデスよね。そう考えると……」

「とりあえず戦争は終わってるんだし、駆り出されるようなことは早々ないだろ。それに、子供の事はゆっくり考えよう。焦ることは無いさ」

「弘也サン……」

 

浅宮を見つめる金剛に笑いかけてから浅宮は空を見上げる。

 

「あれから、2年か」

「そうデスネ。弘也サンが鎮守府に着任してから、2年デース」

「今となっては全部、昨日のことのように思い出せるよ。全部、な」

 

2人が見上げる空はどこまでも青く澄みきっていた。

快晴。瑞雲が飛んでいる。

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