明石Lv1
金剛Lv1
「本当にっ、ごめんなさいなのです~!」
「気にするな。着替え程度持ってきてる……って、大丈夫かおい」
目の前でヘッドバンギングのように頭を上げ下げして謝る少女は電。やりすぎてだんだん血色がおかしくなってきているので浅宮は慌てて止める。
「と、とりあえず自己紹介ですね。私は工作艦明石。工敝班所属です。事務班には軽巡洋艦の大淀がいますけど、基本的に大本営所属で、繁忙期などにこちらに配属される形です」
「わ、私は駆逐艦電なのです。司令官さん、どうぞよろしくお願いします、なのです」
「浅宮弘也だ。階級は少佐。今日からこの鎮守府で指揮を執る。よろしく」
以上4名で横須賀攻略鎮守府全員である。
「とりあえず、人員不足が顕著過ぎるな」
明石と電を眺めつつ浅宮が零した。続いて「なのです」と電が苦笑いする。
「あ、それなら建造ですね」
「まあ、そうなるな。とりあえず荷物整理したら工敝ドックへ行くわ」
明石は「分かりました、準備をしておくので工敝ドックまで来てくださいね」と残して部屋を出る。
「司令官さん、お手伝いするのです」
「おお、ありがとな」
キャリーバッグを開けててきぱきと荷物の仕分けをする電。まだ来たばかりでここの内装やインテリアに明るくない浅宮は特に見られて困るものも無いため自分に出来ることをやる。
ふと気づくと、電が物珍しそうに呆けた顔でこちらを見ている。
「司令官さん、その腰のは……」
「やっぱり海軍士官が日本刀を差してるのは珍しいのか?」
「はい。海軍士官は基本的にマントに短刀ですから」
「ま、これから使うこともないだろうし、形見みたいなもんだな、これは」
浅宮は刀を外し、持ってきた刀立てを組み立てて、刀をそこに置く。
海軍士官の基本的な服装は白の軍服に短刀を所持したもの。若い士官の間ではマントを羽織るのが流行らしいが、浅宮はそういうことには疎いのだった。
「とりあえず、執務室に置いておく物は整理したのです。後は自室や司令仮眠室に」
「ありがとな」
ぽふぽふと電の頭を撫でる。直後は「はわわわっ」と驚いた電だったが、そのうち目を細めてされるがままになる。
(可愛いなおい)
心の中に感想を閉まって、「明石をあんまり待たせるのも行けないし、工敝に行くか」と執務室から出た。電もそれに続く。
レンガ造りの建物から徒歩数十秒。工敝ドックに到着した。コンクリート製&トタン屋根で如何にも重工業、という感じが醸し出されていた。
中には艤装を作成する作業台や、諸々の機械、そして完成した艤装を組み立てたりテストしたりする鎖が垂れ下がった区画や、建造の為のスペースなどがあった。
「えっと、艦娘が死体から建造される事は知っていますよね?」
寝袋らしきもので全身を包まれた何かを見て明石が言う。
艦娘は死亡した小学生~20代の女性を元に建造される。理由など士官の下っ端である浅宮は知る由もないが、戦場で嫌というほど死んだ仲間を見てきた浅宮にとっては日常そのものだった。
ちなみに、艦娘は死亡時の年齢に関わらず、成年扱いとされる。浅宮も叢雲と会った当初、酒飲める年齢なのか?と疑っていた時期がある。
「確か、これ相当揉めたんだっけな」
「ええ、主に人権問題で。でも、そんな悠長にしてたら日本が滅ぶって上の英断で艦娘が造られました」
現在工敝ドックがあるのは日本では呉、舞鶴、佐世保、そして横須賀など限られた地域のみ。泊地に工敝ドックを建てようという意見もあったようだが、今のところそれは行われていない。
「とりあえず、建造の準備は出来ているのでそこのパネルで投入資材を選択して建造開始すれば後は待つだけですね」
「そうか。なら……」
迷いなくパネルを操作し、建造開始のボタンをタップする。
「資材はどのくらい入れたのです?」
「ほれ」
電に着脱式のパネルを見せた。内容は燃料400、鋼材600、弾薬100、ボーキサイト30。つまりは戦艦が出やすいレシピである。
「はわわっ!?」
「最初から戦艦レシピを回すなんて……」
明石がそう零すのも無理はない。そもそも、資材が3000ずつしか備蓄されていない稼働初期の鎮守府で戦艦レシピを回すなど自殺行為に等しいのだ。
さらに、確実に戦艦が出る訳では無い。重巡などが出ることもあり、戦艦を狙うのはハイリスクなのだ。
(作者注※決して、重巡がハズレという訳では無いのだが、戦艦レシピを回して戦艦が出なかった時の精神的、資材的ダメージは言葉では言い表せない程でかい。主に資材的ダメージ)
「建造が開始したらパネルに時間が表示されます。艦種や艦娘によって時間が変動するのでここである程度の予想が建てられますね」
「ええっと、待ち時間は……あっ」
「ん?どうした?」
固まった電を見て浅宮も少なからず不安になる。平然と大胆な行動に出た浅宮だったが、やはり不安はあるのだ。電に続き明石も
「むむむ……提督さん運がいいですね。この待ち時間……確実に戦艦が出ますよ」
「本当か、すげえな」
「すごいのです……」
ほわー、とした顔でパネルを見つめる2人をよそに浅宮は消火器のような何か(高速建造剤)を取り出す。それを見て明石は首を横にひねる。
「……あれ?高速建造剤は私が管理してたはずですけど……」
「あー、大丈夫大丈夫。これ大本営の備蓄庫からくすねてきたやつだから」
平然と言い放つ浅宮だが、現場の空気は凍りつく。
「………イヤイヤイヤ、何やってんですか!?」
「どっ、ドロボウ、泥棒がここにいるのですっ!?」
「なんだよ人聞き悪いな。大丈夫だって。横須賀大侵攻の時、上のヤツらに一生かかっても返せないような借りを作っといたからさ。ちょっと頼み込んだら直ぐに渡してくれたぜ?」
「きょ、恐喝なのです……」
「さて、艦娘とご対面だな」
まだ人聞きの悪いことを言っている電を華麗にスルーし、高速建造剤をその寝袋らしきものにぶっかける。
「……やってから言うのもアレだがこの方法であってるよな?」
「……一応」
「なら良かった。これであいつらにもう1本頼むこともない訳だ」
「失敗してたらまだやってたのです!?」
パネルの残り時間がみるみる減少し、遂に0になる。が、未だに寝袋らしきものに動きはない。
「これって自分で開けて出てくるのか?」
「その筈ですが……」
その時、ジーッとチャックの開く音が静かな工撇へ響く。そして、全里のわずか3分の1程度の所で、
「引っかかってますね」
「引っかかってるな」
「引っかかってるのです」
寝袋らしきものの中からは「あ、あれ?急に開かなく……」などと随分と不安な言葉が発せられている。が、しばらくしてそれが完全に開き、人影が立ち上がる。
「………」
「司令官さん?どうしたのです?」
「……お前……金剛か?」
くるりと振り向いたその人影。特殊な髪型に随分と露出の多いハッピのようにも見える和装。浅宮の記憶に未だ残る巡洋戦艦金剛型一番艦、金剛の姿だった。
金剛と呼ばれた彼女は向日葵の様な大輪の笑顔を咲かせる。
「私の名前……知っているんデスカ?……ふふっ、テートクぅー!」
「……えっ?」
かくして、浅宮の初建造は戦艦金剛の建造、そして、その金剛からボディプレスかと思う程のジャンピングホールドをくらい、顔をそのたわわな胸に埋め尽くされながらコンクリートの床に後頭部を強かに打ち付け、気絶するという幕引きとなった。