ガールズ&パンツァー Each of the everyday 作:メトロポリスパパ
学園長には内緒にしていたのだが・・・。
とある夜中のひと気の無い倉庫街。
その倉庫の一つだけシャッターが開かれ明かりが漏れていた。
中では純白のテスタロッサと白いツナギの男が一人・・・。
そこへタクシーが一台シャッターの前に停車し、後部座席から男が一人降りる。
「こんばんは、北見さん。テスタ、引き取りに来ました」
「ああ、待ってたぜ。即全開くれてもかまわないぜイシダ」
「そうですか・・・ありがとうございます。これ、約束の・・・」
イシダはスーツの内ポケットから封筒を出し、北見に渡す。
北見はそれを受け取り、中身を確かめず懐に仕舞った。
「イシダ・・・お嬢ちゃん達の車も、もう出来上がったみたいだぜ」
「そのようですね・・・」
「明日・・・行くのか?」
「・・・はい」
「ククク・・・そうか・・・なら、とっとと持って行きな。俺の仕事はここまでだ」
北見は急かすようにイシダにキーを渡した。
「は・・・はい、ありがとうございます」
イシダはキーを受け取ると、テスタロッサに乗り込みエンジンをかける。
鎖を解かれた180度V12の甲高いエキゾーストノートが工場に響き渡る。
ゾクゾク・・・・。
イシダの頭にあのzとのバトルの記憶がフラッシュバックする・・・。
「これだ・・・この音だ・・・」
イシダは運転席の窓越しに北見に会釈をし、テスタロッサと共に工場を出て行った。
土曜日23時過ぎ、黒森峰学園艦RSFactory
自動車部の4人は準備を終え、リカコからチェイスカーのランサーを借り、これからアウトバーンへ向かおうとしていた。
「みんな!準備は良い?咽頭マイクは大丈夫?」
「バッチリだよ!」
ソアラとランサーには無線を搭載したようである。
「リカコさん・・・それじゃ、行ってきます!今日、会えるような気がするんですよ、ポルシェに」
「そう・・・会えると良いね・・・」
二台はゆっくりと店を出て行った。
二台を見送ったリカコは携帯電話を取り出し、電話を掛けた。
トゥルルル♪ トゥルルル♪
「・・・はい」
「・・・今・・・出たよ・・・」
「分かりました・・・ありがとうございます」
「まあ・・・それだけだよ・・・じゃ」
「はい・・・では」
たがいに電話を切り、リカコは夜空を見上げる。
「走るのも自由・・・降りるのも自由・・・ルールなんか何もない・・・か」
黒森峰アウトバーン
自動車部のソアラとランサーはランデブーしながら夜のアウトバーンを駆け抜ける。
ランサーの助手席に乗っている鈴木が咽頭マイクを握る。
「ねえ中嶋、もう一度聞くけど・・・学園長に黙って来たけど・・・ほんとにいいの?」
「多分、止められちゃうからね・・・そんな気がしたから・・・」
「・・・そか・・・そうだね・・・」
「あんまり心配かけたくないしさ・・・学園長には」
その時、土屋は細い目を更に細めて、何かを確認するように遠くにいる車を見ていた。
「中嶋先輩、テスタロッサが居るよ」
「ほんとだ、白いテスタなんて珍しいね~・・・・んん?」
徐々にテスタロッサとの距離が詰まる。
じーっとテスタロッサを眺める土屋と中嶋であったが。
「先輩あれ!大洗の校章じゃないですか?」
純白のテスタロッサの右テールライトの上に大洗の青い校章が貼ってあるのを確認した中嶋。
「ほんとだ!・・・まさか・・・」
鈴木からも無線が入る。
「中嶋!あのテスタ、学園長じゃない?!」
「そうかも・・・しれないね」
自動車部の2台がゆっくりとテスタロッサの横に並ぶ。
ドライバーを確認すると、やはりイシダ学園長であった。
中嶋は。
「白いテスタロッサ・・・あんなの持ってたんだ・・・見たことないや」
土屋は頷き
「うん、初めて見る」
鈴木からも
「あれが前に言ってた”本妻”なんじゃないかな?」
星野は
「と、いう事は・・・多分、あれが学園長の本気仕様という訳か・・・」
中嶋とイシダの目が合う・・・。
イシダは軽く微笑みながらデジカメをソアラに向けてシャッターを切る・・・。
「速そうなソアラだな、後ろのランサーはチェイスカーか・・・それが子猫ちゃん達の本物の”竜”なんだな・・・だが・・・」
イシダは一速シフトダウンする。
「その”竜”をちゃんと・・・自分のモノにできているか!!」
テスタロッサは甲高いエキゾーストノートを響かせ猛烈に加速を始めた。
ソアラ、ランサーもシフトダウンし加速する!
「つっ!!・・・速い!」
「学園長もポルシェを追う気なんだ!なら!引くわけにはいかない!」
「星野!」
「大丈夫!ついていける!」
テスタロッサはA1をクルーズする車を右へ左へパスしていく。
ソアラとランサーはテスタロッサが描いたラインをトレースしながら追い上げる。
イシダはバックミラーをチラッと見る。
「へぇ~、ちゃんとついて来るね~、だけど・・・それじゃ駄目だ」
土屋はイシダのペースに飲まれ、後ろを付いて行くのがやっとのようである。
中嶋はノートPCを見ながら。
「土屋!踏み方がラフだよ!」
「う、うん、わかってる!」
にしても・・・あのテスタ、今まで学園長が乗ってた他の車とは次元が違う。
ずっとこういう場所を走っていた車なのだろう。
学園長もそうだ・・・あの走り・・・恐らく”湾岸”をテリトリーにしていた?!
なら・・・もしかしたら、ブラックバードや、悪魔のZとも・・・。
星野と鈴木も感嘆の声をあげていた。
「学園長・・・爪を隠していたな!」
「そうだね・・・あれが本来の学園長なんだよ!こういうステージをあのテスタロッサで走っていたんだよきっと!」
「流石・・・本妻だな・・・」
そこで前方がクリアになり3台がアクセルを開ける。
270、280、290と加速していく!
ソアラはテスタロッサの後方にピタリとスリップに入るが、ランサーは徐々に離れていく。
300キロを超えた所でソアラが右からパスにかかるがA2への折り返しが近い。
横並びになった所で2台は同時にブレーキングし、そののまま折り返しコーナーに入って行った。
イン側にソアラ、中央車線にテスタロッサ。
有利なイン側のソアラであるがテスタロッサがじわりじわりと前に出て行く。
露骨に閉められている訳ではないがテスタロッサに軽く鼻先を入れられ、プレッシャーを掛けられるソアラはアクセルを開ける事が出来ないでいた。
「土屋!」
「うん」
土屋はあえて引き、トラクションの掛かる姿勢にしてテスタロッサ後方に張り付く。
中嶋が吠える
「やるね~!学園長はやっぱ本気みたいだよ!」
「う・・・うん・・・」
折り返しコーナーを立ち上がるテスタロッサとソアラ。
多少離れ込んだがその後をランサーが付いて行く。
そこでチェックゲートまで5kmの看板が現れ、3台はクーリングに入る。
ほんの少しの間、一息つける時間である。
中嶋はPCを見ながら土屋に言う。
「水温、油温、油圧OK、ブーストのオーバーシュートも無し・・・ねえ土屋・・・大丈夫?」
イマイチ乗り切れていない土屋を気遣う中嶋。
「大丈夫・・・ソアラは最高・・・ただ・・・学園長の走りが・・・」
「うん、すごいね学園長・・・隙が無いというか・・・」
土屋は首を軽く横に振る。
「いえ、そうじゃなくて・・・なんかこう・・・伝えようとしているような・・・」
土屋は違和感を感じているようだ。
傍から見れば違いなんて分からない。
だが、今一緒に走っている当人同士にははっきりとわかる。
学園長は何かを伝えようとしている事を・・・。
「だったら・・・それがわかるまで付いて行くしかないね!」
まだ、バトルは始まったばかり、それにまだ役者が揃っていない・・・。
「土屋の奴・・・乗り切れていないな・・・」
鈴木は頷き
「そうだね星野・・・完全に学園長のペースだね、今のままじゃ前には出られないよ」
イシダは、額に汗を滲ませながら・・・
「ふう・・・きついぜ、やっぱあの頃のようにとはいかないな・・・しかし、レッスン1は合格って所か・・・だが、それじゃあまだ、あのポルシェとやらせる訳にはいかないな・・・それに・・・」
3台はチェックゲートを抜け、テスタロッサを先頭に加速に入る。
左のパーキングからの合流にヘッドライトの光が見える・・・何かが合流してくる・・・。
ヘッドライトの明かりの反射に浮かぶ黒いボディー、尾を引く赤いテールランプ・・・あれは・・・。
黒いポルシェ911!!
レーンを加速しているポルシェの横を三台が抜いて行く・・・。
ポルシェ合流!!
”Schwarzer Vogel”と、アウトバーンで呼ばれているポルシェ911が三台の後ろに付いた。
中嶋が咽頭委マイクを握り叫ぶ。
「来た!あのポルシェだ!」
土屋の瞳が開きステアリングをギュッと握りなおす。
ランサーから無線が飛んでくる。
「私達の後ろに付いたよ!」
「わかった!」
イシダもミラーで確認している。
「揃ったな・・・レッスン2だ!子猫ちゃん!」