ガールズ&パンツァー Each of the everyday 作:メトロポリスパパ
黒森峰空港
Me323輸送機への車の積み込みを終えた大洗女子学園自動車部の4人と学園長。
西住まほと逸見エリカも見送りに来ていた。
「黒森峰学園艦はまだしばらく銚子沖に停泊予定だ。いつでも来ると良い」
「ありがとうまほちん。目標も出来たし、また来るよ」
まほと中嶋が握手をする。
エリカは中嶋の傍らに行き耳打ちをする。
「ティーガーⅡの整備の件・・・忘れないでよ」
「わかってるってエッちゃん」
輸送機はソアラとフェラーリ、4人と学園長を乗せて離陸していった。
安定飛行に入り、学園長は4人の様子を見つめていた。
あれこれと話をしているようだが騒音で聞こえない。
彼女達はあのポルシェを追うのだろうか・・・。
もし追うのだとしたら、気持ちは分からなくもない。
だが・・・。
「足らないんだよ・・・圧倒的に・・・子猫ちゃん達には・・・」
そうつぶやく学園長であった・・・。
数日後・・・。
日が落ちた頃、戦車の整備を終えた自動車部のガレージでは、ストリップされたソアラがH鋼で組んだ車1台分程の定盤の上に乗せられている。
4人はその横に集まっていた。
星野は腕組みをしながら中嶋に質問する。
「なあ中嶋、まずはエンジンの仕様だけど・・・どうするつもりだ?2Jでも載せるか?それなら1000PSも夢じゃない」
中嶋も腕組みをしながら言う。
「それなら初めから80スープラで行けばいい・・・私達は、このソアラでポルシェの前を走りたい。そう思わないか?」
「・・・そうだな!」
星野、土屋、鈴木が頷く。
今度は鈴木が質問する。
「なら、7Mで行くんだね、けど中嶋・・・仕様は目途が有るの?」
「エンジン本体はフルオーバーホールしつつ7Mのネガな部分を埋めていく事になるね、後はクランク、コンロッド、オーバーサイズピストン、カムと一通り・・・肝は最新の補器類と制御系を今使っているフルコンで細かく制御してあげれば7Mでも行けそうな気がするんだ・・・」
「ならタービンは?タービンはどうするの?」
土屋の質問に答える中嶋
「タービンはね・・・有るんだよ・・・もう・・・」
その頃、ガレージの入り口の影に立っている男が一人・・・・。
「・・・やっぱりポルシェを追うか・・・子猫ちゃん達は・・・」
タバコに火を点け燻らせる学園長のイシダ・・・。
中嶋は倉庫からくたびれた段ボール箱を持ってきた。
「よいしょっと。これなんだけどね・・・」
中嶋が段ボールを開け、新聞紙、ビニール、油紙と順にめくっていくと、ターボチャージャーが2機入っていた。
星野がそれを見て言う
「
鈴木は笑いながら言う
「こんなの隠し持ってたんだね(笑)」
土屋がニッコリ顔で言う
「程度よさそうじゃん!」
「これはね、バイトで貰ったんだ・・・1年生の頃・・・」
中嶋はタービンを取り出し、何かを思い出しながら話し始めた。
「ごめんくださーい!毎度おなじみ大洗女子学園自動車部でーす!お手伝い出来る事はありませんか~?」
1年生の中嶋は茨城県のとある商店街に来ていた。
大洗女子学園自動車部はバイトと称して自動車や機械類の修理、店の手伝い等をして部品や油脂類等を調達して運営に充てているのである。
中嶋はある店の前に立っていた。
「すいませーん!・・・居ないのかな?・・・」
ガラスのサッシは開いていたので開けて中に入る。
「ごめんくださ~い・・・誰も居ないのかな?不用心だな~・・・」
諦めて外に出ようと中嶋が振り向くとサッシの所に紙袋を抱えた男性が一人立っていた。
「うわ!びっくりした・・・」
男性はこちらをじっと見ながら
「なんか用かい?・・・お嬢ちゃん」
中嶋はこの人が店の主人だと気付き挨拶をする。
「すいません!開いていたもので・・・大洗女子学園自動車部の者です。何かアルバイトは無いかなと思って・・・お邪魔したんですが・・・」
左目の辺りに傷のある男性はククク・・・とほくそ笑みながら・・・
「自転車操業の自転車屋にか?・・・手伝える事なんかねえよ。帰んな」
中嶋はしょぼんとしながら
「そうですか・・・あの・・・また来ますんで何かあったら手伝わせてください・・・ね」
そう言い、店を出ようとしたところで・・・
「北見のおっちゃーん!チャンバー付けて~!」
ブレザー姿にボンタン、伸びきったパンチパーマとリーゼントの二人組が2ストのDIOを押して店の前に現れた。
「ばかやろう、またか。そんなもん・・・」
北見と呼ばれたその人は、中嶋を見て・・・
「ククク・・・お嬢ちゃん、そいつのチャンバー付けてやってくれよ・・・バイト代はそいつ等から貰いな。工具は貸してやっから」
そう言いカウンターに座り新聞を読み始めた。
「姉ちゃん付けれんの?ほんとに?」
訝し気にみてくるヤンキーニーチャンをしり目に中嶋は
「わかりました、んじゃ、工具借りますね」
DIOを店内に入れ、工具棚の方へ行く。
自転車屋には似つかわしくない工具棚の引き出しを開けると、綺麗に並んだメガネ、コンビ、首振りラチェットのスパナ類が並んでいる。
他の引き出しも開けるとラチェットにボックス、エクステンション等、綺麗に置かれていた。
ピカピカだけど使い込まれている、自転車やスクーターでは使わないであろう工具達・・・。
「うわ・・・すごいな~綺麗に使い込まれてる・・・この人一体?」
必要な工具をバットに入れDIOの元に戻りバラし始める中嶋。
カウルを外し、エキゾーストのナットにCRCを降りナットを緩め外していく。
ヘッドに付いているスタッドボルトを掃除し、ナットもタップを立ててねじ山を修正、掃除し綺麗にした後、ガスケットは再利用し、逆の手順で組み付けていく。
カウルを元に戻し、点検の為、エンジンをかける。
パイーンと吹けるDIO。
「お~!付いた付いた!かっちょいー!」
「お待たせしました~。あの~工賃はいくら頂けばいいですか?」
中嶋は北見に尋ねていると・・・
「姉ちゃんありがとね~ヒャッホ~!」
ヤンキーニーチャン達はニケツでパイーンと行ってしまった・・・。
「あ!あの!工賃はーーー?!」
北見がカウンターから出てきて中嶋に言う
「ククク・・・やられちまったな」
「すいません・・・・」
中嶋がしょぼんとしていると
「店の裏に廃車のスクーターやガラクタが置いてある小屋が有るから・・・好きなの持って行きな」
「は・・・はい!ありがとうございます!実は・・・バイトで何か貰うの初めてなんですよ~!嬉しいな~!」
「ククク・・・そうかい・・・貰うもん貰ってとっとと帰んな、お嬢ちゃん」
中嶋は店の裏の小屋へ行き、使えそうな物を物色していると・・・ガラクタの奥から段ボール箱が見えた。
その箱を引っ張り出す。
厳重に蓋がしてある段ボール箱・・・そして異常に重い。
スクーターのエンジンだろうか・・・中嶋は恐る恐るその箱のテープをめくり蓋を開ける。
詰め込まれた新聞紙、ビニール、油紙をめくると・・・・。
「タービンだ・・・TD・・・06?」
ズッシリと重いタービンを取り出し眺める中嶋。
外観を眺め、軸を掴み上下、前後に動かし軽くブレードを回してみる。
「こいつ、使い込まれてるけど、まだ生きてる・・・」
「そいつが欲しいのか・・・お嬢ちゃん・・・」
「ひゃっ!」
「ククク・・・」
戸口にもたれ掛かりほくそ笑む北見。
よく後ろから現れる人だな・・・と思いながら中嶋は答える。
「すいません!勝手に開けてしまって・・・いえ・・・さすがにこれは頂けません、仕事に対して釣り合いが取れませんよ・・・」
「ククク・・・いいぜ、お嬢ちゃん・・・持って行きな」
中嶋はタービンを箱に仕舞う。
「いえ、これはまだ生きていますし、やっぱり頂けませんよ・・・」
「自転車屋が持ってても仕方ねえだろそんなもん(笑)使わなければただのガラクタだ・・・そうだろう?お嬢ちゃん。それ持ってとっとと帰んな」
「い・・・いいんですか?」
「ああ・・・かまわねえよ」
「あ、ありがとうございます!」
中嶋は段ボール箱を抱えて店の外に出て再度お礼を言う。
「ありがとうございます!何か手伝える事が有ったら言ってください!また来ますね!」
「ククク・・・じゃあな、お嬢ちゃん」
サッシをピシャッと閉めて店の奥に消えた北見を見ながら、中嶋は思った。
「なんか・・・すごい人だな~・・・それにあの工具・・・どうやったらあんな感じになるんだろう・・」
集合時間になり集まった自動車部。
中嶋は自慢げにタービンを部長に見せた。
「高橋部長、見てください!タービンを頂きましたよ!」
「そうかい?どれどれ?06か~すごいじゃないか中嶋君・・・」
高橋と呼ばれた自動車部部長は中嶋の肩を叩き
「それは君が取っておきなさい。君が今使う時だと判断した時に、使うといい」
「え、でも・・・それじゃあ・・・」
「はじめて自分の手で手に入れた物だろう?なら・・・とっておきなさい」
「あ、ありがとうございます!部長!」
「・・・・という事があったんだ」
中嶋はタービンを見つめながら感慨深く思い出を語った。
「そんな事があったのか?その時、あたし達も居たけど知らなかったぞ!」
星野が訝し気に言った。
「ごめんごめん、秘密にしてたからね~」
鈴木が尋ねる。
「で、その自転車屋さんはなんて言う名前なの?」
「確か・・・『北見サイクル』とかいう名前だったかな?あれから行ってないんだよね~。また機会が有ったらソアラで行ってみようかな」
ガレージの扉の向こうでは学園長のイシダがタバコをポロッと落としながら驚いていた・・・。
「北見・・・サイクル!?」
イシダは頭を抱えながら笑うのを堪えていた・・・。
「ははは・・・ここで北見さんの名前まで出てくるとはな・・・タービン持ってる自転車屋なんか北見さん位しか居ないだろ?まさかこっちに来ていたとは・・・本当に・・・人生てのは分からないもんだ。そう思わないか?・・・・Z・・・」
イシダはタバコの火を点けなおし一服すると
「なあZ・・・俺は彼女たちに何を残せる?」
そう言うとイシダはタバコの火を消して携帯灰皿に吸殻を入れて闇に消えて行った・・・。
次回
黒森峰MIDNIGHT 【ACT.5 等価交換②】
よろしくお願いします。