ガールズ&パンツァー Each of the everyday 作:メトロポリスパパ
とある晴れた日の午後、茨城県某所の商店街・・・。
白いツナギを着た男が歩いている。
紙袋を抱えて自分の店の前にたどり着くと、その店の前に1台の車と口髭を生やした紳士が一人・・・。
ツナギの男はニヤッとほくそ笑みながら言った。
「困るね・・・そんな派手な車をうちの店の前に横付けされちゃあ」
紳士はハッと気付き挨拶をする。
「はは・・・どうも。お久しぶりですね・・・北見さん」
「ククク・・・まだ生きてたのか(笑)イシダ、久しぶりだな・・・よくここが分かったな」
「ええ、この町で店を構えていると聞いたもんで。ほんと、俺みたいな奴ほどちゃっかり生きてたりするんですよ(笑)」
「ククク・・・そうだな(笑)」
北見は停めらている車に目をやる。
「・・・このテスタ・・・まだ乗っていたんだな」
リトラクタブルライトを固定式にし、羽無しのケーニッヒ仕様のエアロ。
本物のケーニッヒマフラーを纏った純白のフェラーリ『テスタロッサ』がそこに在った。
「ええ、俺の本妻ですから(笑)」
「ククク・・・本妻ねぇ・・・」
「俺ね、北見さん・・・実は今、大洗女子学園の学園長なんかやってたりするんですよ」
「ああ?!・・・お前がか?・・・何をどう転ぶとグラビアカメラマンが女子高の学園長になるんだよ」
イシダは頭を掻きながら
「いや・・・たまたまだったんですよ・・・あれから真面目にカメラマンやって、もう十分稼いだし引退しようと思っていた時に、学園長の選考会みたいなのに気まぐれで応募したら選ばれちゃって・・・ま、本当の所は文科省の傀儡としてだったんですが・・・」
北見は黙ってイシダを見つめる
「で?・・・その学園長さんがわざわざ本妻引っ張り出して自転車屋にご挨拶に来たのか?イシダ」
イシダは一瞬俯き、北見に向きなおすと
「北見さん・・・このテスタを縛っている鎖・・・切ってもらえませんか?」
北見は目を瞑り俯き、ほくそ笑む
「ク、ククク・・・どうしちまったよイシダ・・・まさかまた、Zを追うなんて言わねえだろうな?」
イシダは首を横に振る
「いや、Zとはもう・・・うちの自動車部の生徒がね、黒森峰のアウトバーンで魅せられてしまったんですよ、本物の”竜”に・・・真っ黒なポルシェ911ターボに・・・」
北見の目つきが変わる
「まさかブラックバードじゃないだろうな?あいつはまだ・・・」
「いや、走り方とかよく似ていましたが違います。ブラックバードではないですが・・・でもあれは・・・”本物”でしたよ」
「じゃ、なにか?お前もそのポルシェを追うってのか?」
またしても首を横に振るイシダ
「いえ、俺ね、自動車部の生徒とよく草レースをしてたんですよ。俺に勝ったら部費を増額してやるって。昔取った杵柄ってやつですか?(笑)まあ、暇つぶし、遊びですよ。だけど今回は違う・・・本物を追うと決めたからには遊びじゃない・・・彼女達には圧倒的に足らない物が二つある。すべてを失う覚悟と、死なない覚悟・・・この相反する覚悟を彼女達は知らない。その判断が出来る奴だけが本物として生き残っていく。言葉じゃ伝わらないでしょ?こういうの。やめさせるのは簡単です。ですが、それは違う・・・。スピードの世界で生き残っていく為には、身体で知って行かなくちゃいけない・・・そうでしょう?俺は・・・それを・・・」
北見が話を遮る
「もういい・・・わかった・・・だがイシダ・・・それと引き換えにお前が命を落とす事になるんじゃないのか?あの頃のようにとは行かねえだろ」
イシダは黙って北見の目を見ている・・・。
「・・・そうかい・・・それも織り込み済みって事か・・・だがそれは・・・等価交換にはならないだろう?」
「・・・北見さん・・・この店に一度、うちの生徒が来ませんでしたか?」
北見はしばし考え
「ああ・・・自動車部のお嬢ちゃんが来た事があるな・・・」
「その時、バイト代として渡しませんでしたか?タービンを・・・」
「ああ・・・渡したな・・・06を」
「そのタービンはもしかして、Zに積まれていたものじゃないんですか?」
北見はニヤッとする
「ククク・・・ああ、そうだ。あのZに積まれていた06だよ・・・」
「L28改3.1・・・そのエンジンに積まれていた2基のTD06は今、彼女達が作っている竜に積まれますよ。7M改ツインターボ・・・MZ20ソアラに・・・」
「へぇ・・・」
「お願いします北見さん!このテスタの鎖、切ってください!」
しばしイシダの目を見ていた北見
「・・・とりあえず400万・・・それと・・・お前の覚悟と引き換えにこのテスタをあの時の仕様にしてやる」
「ありがとうございます!それと・・・意外と安いですね?」
「ああ、戻すだけだからな・・・だがイシダ・・・2度目の先は、無いかもしれないぜ・・・」
「・・・かまいません」
「ガレージを借りとく、準備が出来たら連絡すっから。それと連絡先を教えてくれ」
イシダはジャケットの内ポケットから名刺ケースを取り出し、名刺を北見に渡した。
「ククク・・・本当に学園長なんだな・・・じゃあな」
北見はサッシをピシャリと閉めて店の奥に消えた。
イシダは、ふう・・・と息を吐く。
「親父も・・・こういう気持ちだったのか?」
次回、題名未定です。