ガールズ&パンツァー Each of the everyday   作:メトロポリスパパ

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自動車部の四人は悪魔のZと対面する・・・。


黒森峰MIDNIGHT【ACT.7 悪魔と言われたZ】

「悪魔の・・Zだよ」

 

そう言うとリカコは工場の奥の水銀灯の電源を入れた。

ぼやっと点いた明かりにカバーを掛けられた車のシルエットが浮かび上がる。

リカコはその車の方に歩み寄りカバーをバサッと捲った。

水銀灯の明かりが徐々に明るくなっていくなか、ミッドナイトブルーのS30Zが色合いを変えながら現れた。

息を飲む自動車部の四人・・・・。

鈴木がポツリと言う。

 

「ねぇ・・・」

 

「ああ・・・分かるよ・・・この立ち姿・・・」

 

星野もそう言いZを見つめている。

 

「すっげぇ・・・」

 

「・・・そうだね」

 

普通の人が見れば、ただの古いS30Zである。

コンクールコンディションのようにピカピカでもなく車の前面は飛び石で傷だらけ、リアのマフラー出口辺りは少し焼けている。

だが・・・自分で走り、手を汚し、車を理解しようと試行錯誤している人間だけが分かるその存在感。

それだけでは無く、機械を超えた、不良性のある何かを感じていた。

似たような”者”を中嶋達は知っている・・・。

 

「まるでⅣ号みたいだね・・・悪魔ではないけど・・・」

 

中嶋はリカコに尋ねる。

 

「このZが、悪魔のZと言われてる北見さんが作ったZなんですね」

 

リカコは頷き答える。

 

「そうだよ。オーナーが変わる度に事故を起こし、そして蘇り、また走り出す・・・何時しか悪魔のZなんて呼ばれるようになった・・・北見のおじさんが作ったZだよ」

 

「でも、そのZをなぜリカコさんが?今はリカコさんがオーナーなんですか?」

 

「いや・・・私は預かってるだけ・・・本当のオーナーは他に居るよ。このZに認められたオーナー・・・その人は、このZと走り続ける為にやらなければいけない事がある。今はそれをやっているの。そして・・・このZに積まれていた06が今、君達のソアラに載っているんだよ」

 

4人は顔を見合わせる。

 

「やっべ~・・・」

 

「悪魔のソアラじゃん!」

 

「お祓い・・・行った方がいいかな?(笑)」

 

「おいおい・・・」

 

リカコはクスリと笑う

 

「はは、大丈夫だよ。Zは悪魔なんかじゃない。今はオーナーを見つけたからね。それにそのタービンはそのZの本質的な秘密の部分じゃないからね・・・たぶん」

 

中嶋は首をひねり聞く。

 

「リカコさんはもしかして・・・そのZのエンジンをバラしたことがあるんですか?」

 

「ああ、あるよ。今は私が、このZのエンジンを任されてるからね」

 

リカコはZのボンネットを開ける。

特にピカピカという訳でもない、しかし完璧に整備されている事が伺えるエンジンルーム。

 

キャブに繋がった特徴的なサージタンク、その下に有る手曲げのエキマニに載っているのは・・・RX6!

IHI石川島播磨重工製、かつてF-1でも使用されたボールベアリングタービンである。

 

「これ・・・ただのRX6(ペケロク)じゃなさそう・・・」

 

「ドライサンプになっているな・・・」

 

「これは・・・速そうだね」

 

「それで・・・エンジンには秘密があったんですか?オリジナルの燃焼室とか、シリンダーとか・・・」

 

「ないよ。ごく当たり前、手本どおりのL型チューン。ただ・・クランクだけは違った。北見のおじさんも言ってた。唯一機械的に違う所はクランクだって。普通の鍛造フルカウンター、特別に精度が良いという訳でもない・・・けど、通常の3.1仕様はストローク83㎜、でも、このクランクは84㎜、バランスを崩す3134㏄の3.1仕様・・・北見のおじさんが手を入れる前から入っていた物らしいんだけど、おじさんは、クランクを持った瞬間、これだけは触れないって思ったそうだよ。私も触れなかった・・・だからってこれであの走りが出来るのか、まるで生きているような躍動感が出るのかは、おじさんも私も、誰もわからない・・・それも悪魔のZと言われる由縁かな」

 

「そう・・・なんですか・・・」

 

なんか、とんでもない物を見てしまった・・・。

そんな気にさせられた自動車部の四人であった。

リカコはそんな4人をどこか懐かしむような表情で見ていた。

 

「ねえ?今日は2台で来たの?」

 

「はい。ソアラは2名乗車になったのでサポート用の軽バンと2台で来ました」

 

リカコは軽く微笑みながら言う。

 

「そうなんだ・・・で・・・君達のソアラのドライバーは誰?」

 

「あ、あたしです」

 

土屋が返事をする。

 

「君か・・・もう一人走れる子は居る?」

 

中嶋が即答する。

 

「星野だろうやっぱり」

 

鈴木も頷く。

 

星野はドキッとしながら言う。

 

「ま、まさか悪魔のZに・・・じょ・・・上等だよ!乗ってやろうじゃない!」

 

「ははは、悪いけどZは駄目だよ、けど・・・うちのデモカーなら貸してあげるよ。君たちの腕も見てみたいし・・・」

 

リカコが指を指した方を見ると、ブルーのランサーエボリューションが停まっている。

 

「うちのデモカーだよ。頭を張り続けるのは厳しいけど、ついて行けると思うよ・・・乗ってみる?」

 

自動車部の三人は星野を見る。

星野はニヤッとして頷く。

 

「はい、でも壊したら・・・」

 

「治せるでしょ?君達なら(笑)じゃあそういうことで、店を閉める準備をするから事務所で少し待ってて」

 

「わかりました~」

 

自動車部の4人は事務所で丸椅子に座ってリカコを待っていた。

中嶋が話し出す。

 

「すごいね、あのZ・・・なんかバシバシ来るものがあるよ。あの自転車屋のおじさんが作ったなんて・・・また挨拶に行かなきゃね」

 

「ああ・・・S30Zで200マイルオーバーなんてにわかには信じがたいけど・・・リカコさんが言うのなら間違いないんだろう」

 

「どんな走りをするんだろう?」

 

「ほら、オーナーが変わる度に事故を起こすとか言ってたから・・・ドッカンターボのじゃじゃ馬なんじゃないかな?よほどの腕が無いと乗りこなせないとか」

 

中嶋は腕組みをしながら言う。

 

「いや・・・そういうのとはちょっと違う・・・感じだね」

 

4人が神妙な面持ちになっている所でリカコが事務所に入って来た。

 

「お待たせ・・・なに?どうしたの?」

 

「あ!いえ、べつに・・・」

 

リカコは星野にランサーのキーを渡す。

 

「私は工場の扉を閉めるから、ランサーを出しておいて」

 

「わかりました」

 

そう言うと星野は事務所を出てランサーに乗り込み工場の外に出した。

ガラガラ・・・ビシャン・・・と扉を閉めるリカコ。

 

「さて、行こうか」

 

中嶋、土屋はソアラに乗り込み、星野、鈴木、リカコはランサーに乗り込み店を出た。

向かうはアウトバーンである。

 




次回
題名未定
よろしくお願い致します。
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