ジリリリリリリリリリリリ!
朝5時半、目覚まし時計が暴れだす
「うるさいなぁ…一時間だけ寝かせて…」
日常ものや恋愛もののワンシーンにありそうなシチュエーション、風森ツカサは目覚まし時計の音で目を覚ます…わけもなく
「うるさーい!目覚ましをこんな時間にかけたのはどこのドイツだイタリアだ!
よろしい、ならば戦争だ!」
どんな夢を見たのか、どこぞの漫画で見たようなセリフが並んでいる…がこの時間に目覚ましを設定したのは他でもないツカサ本人である
「目覚ましを止めたところで、さぁ二度寝だ」
「ん?だがよく考えたら僕は一人暮らし、僕以外の誰かが目覚ましをこんな時間に設定できるわけがない・・・」
ようやく目覚ましを自分で設定したことを思い出すツカサ
「そうだった、今日から新しい会社に勤務するんだ…
絶対断るつもりだったのに気づいたらOKのメールを返しちゃってたんだよな」
「イーグルジャンプ社・・・フェアリーズストーリーで一躍有名になった会社
働いてるのはどんな人たちなのだろうか」
人間関係を築くことに抵抗がある彼は今日から勤務する会社にどんな人間がいるのかを真っ先に気にしてしまったのだった
以前の会社では入社二年目、20歳にして1シリーズのディレクターを任され、世間で天才クリエイターとして注目されていた彼だが、若年で上に立つということは年上の部下と一緒に働くということ、人間関係を築くのが苦手で自ら壁を作ってしまいがちな彼としては制作チームのメンバーとどう接していいのかわからなかった、故にチームのことを考えずにゲーム制作を進めてしまいチーム内の彼への不満は溜まっていく一方だった、結果ゲーム自体は完璧に仕上がり売り上げ的にも大ヒットしたが、優秀であれば本来は先輩である自分たちを駒のように使っていいのか、才能があるからって年上を馬鹿にしている、などの部下たちの反感を買い、会社内での彼に対する嫌がらせが頻繁に起きるようになり、それに耐えかねた彼は、その会社を辞めてしまい、1年間何もせずに過ごしていたのだった
そんな彼に1か月前イーグルジャンプの"葉月しずく"から
開発室長としてイーグルジャンプへ来ないかという誘いがあった
開発室長という役職はディレクターの補佐
ディレクターに代わり現場で指揮をとったり、制作状況を把握し、まとめそれをディレクターに報告、そしてその後の方向をディレクターとともに決めていく…という重要なポジション、というかディレクターの次に偉い役職だ