魔法科高校の留年生   作:火乃

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注意

このストーリーはIFストーリーとなっています。

留年生本編とは別と思ってください。
これで本編ヒロインが決まった訳ではありません。

以上の事が許せる方は、どうぞ。


クリスマスIF(泉美)

 二〇九?年十二月二十五日。

 いつの時代になろうとも十二月の下旬に近づくにつれて周りがクリスマスムードに染まっていく。

 そしてここにも例に漏れず染まった女性が一人。

 阿僧祇紅葉の姉、双葉はジングルベール、ジングルベールとクリスマスでよく聞く歌を口ずさみながら家のキッチンでせっせと準備を進めていた。

 紅葉はその姿を見て固まっていた。彼はすでに冬休みへと突入していた事と、彼女との約束が午後からであった事から時間までのんびり過ごす予定だったのだが、そんな日に限っていつもの如く姉に蹴り起こされていた。姉がいる=二度寝が許されない。その為、紅葉は渋々と起き上がり着替えてから居間へと降りてきたのだが、キッチンに姉が立っていて目を疑った。

 

「なにしてんだ姉貴?」

 

 紅葉が知る限り双葉は料理などできないはず。そんな姉がキッチンに立っているのは何か怖いものを感じていた。

 

「何って……準備?」

 

 話かけられた双葉は動かしていた手を止めて振り返る。なぜ、紅葉が驚いているのかわからなかったが、質問にははぐらかす様に答えていた。

 

「何のだよ。つかなんで疑問系なんだよ」

「まぁ、いいじゃない」

 

 そういいながら双葉は止めていた手を動かす。

 

「あぁ、そうそう。紅葉、あんた今日、那由多にバイト行ってきてね」

 

 そこで今思い出したかのように双葉から意味不明な事を言われ、紅葉は再び固まってしまった。

 

「……は?」

「隆弘さんにはちゃんと行くって言っといたから」

 

 隆弘さんとは和菓子店『那由多』の店長である。双葉は隆弘に連絡をとり、紅葉を働かせに行かせる事を決めていた。

 

「もうそろそろ出た方がいいんじゃないかしら」

「っておいこら、なに勝手に決めてんだよ! こちとら予定ってのがあってだな」

 

 紅葉としてはクリスマスということもあって普段とは違う雰囲気になるかも知れないと前日から少しドキドキしていたのだ。それを少しでも落ち着かせる意味で遅めの時間にしたというのに、働いていたら落ち着くどころの話ではなくなる。

 

「そりゃ勝手だったかもしれないけど、あんた今日暇でしょ。まぁ、正確に言えば五時頃まで」

「ちょっとまて、なんで知ってんだよ」

 

 まさか姉に知られているとは思わなかった紅葉。今日の事は彼女以外に知る人はいないはず。あれか、彼女が彼女の姉に言ってこっちの姉に流れたかと考えていると、

 

「まぁそれはどうでもいいじゃない。という訳で時間は有効に使わないとってね。大丈夫、隆弘さんには時間になったらちゃんと上がらせてとも言ってあるから」

 

 グッと親指を立ててドヤ顔でそう告げる双葉。

 紅葉は色々とツッコミというか聞きたい事はあったのだが時計を見ると確かに那由多が開店する三十分前だった。

 

「大丈夫大丈夫、紅葉にはなーんにも悪い事はないよ。むしろ嬉しいんじゃないかなー」

 

 ドヤ顔からニヤニヤと笑う双葉を見て紅葉はこの先何を聞いても埒があかないと悟って、ハァとため息一つ。

 

「わかったよ。行ってくればいいんだろ」

「そうそう。あと、終わったら一回こっちに帰ってきなさい。絶対だからね」

 

 出来れば那由多を出たらそのまま彼女と待ち合わせしている場所にいきたかったので無視しようかと考えるも双葉が何を企てているかはわからない為、無視すると後々面倒な事になりそうだと思った紅葉は仕方がないと「わかりましたー」と気だるく言って上着を来て家を出たのだった。

 紅葉が家を出たのを見送った双葉は再び嬉しそうにジングルベール、ジングルベールと口ずさみながら準備を進めていく。

 それから一時間が経った頃、自宅のインターホンからお客が来た事を告げる音が鳴った。

 ちょうど準備が終わった双葉は「来た来た」とニコニコ笑いながら、来客者を迎える為に玄関へと向かいドアを開けるとそこには恥ずかしそうに立っている人の姿があった。

 

 時間は流れ午後四時頃。

 和菓子店とはいえクリスマスに乗っからない手はないと那由多はクリスマス限定メニューを出した事もあって店内は満席であった。

 そんな最中、出来上がった和菓子を受け取る為に厨房に入った紅葉に店長である那由多隆弘から声が上がった。

 

「紅葉、上がっていいぞ」

「……この状況で?」

 

 店内に目を向ければ満席&待ち客有りで店員フル稼働状態である。ここで自分が抜ければ人手が足りなくなるだろうと思うのも仕方がない。

 

「なんとかなるだろう。それより、お前は彼女と約束があるんだろ」

「まぁ、そうなんだけどさ。って、なんで店長まで知ってるんだよ!?」

 

 「俺のプライバシーどうなってんだ」と嘆いてみるも隆弘から「双葉に知られた時点で無駄だろ」と身も蓋もないことを言われてしまい力弱く「ですよねー」と返すしかなかった。

 

「気にするな、とにかく楽しんでこい」

 

 そんなうなだれている紅葉を隆弘は苦笑いしながらポンと肩を叩いていた。

 

 

 

 

 

「はぁー、さみっ」

 

 那由多を出ると店内の温かさはなくなり冬の風が肌を刺した。

 

「……あいつの事だから待ち合わせ場所にもう居てもおかしくないんだよなぁ」

 

 彼女の性格を考えるとやはりこのまま駅に向かうべきかと思ったところで時間を確認するべく情報端末を見ると一件のメールが入っていた。

 

「エスパーかよ」

 

 そのメールは双葉からのものであり『帰ってこないとブレイクするぞ☆』と紅葉の行動を牽制&脅迫する内容だった。

 双葉のブレイクは色々と洒落にならない為、やはり無視できそうにない。

 

「仕方がない」

 

 乗ってきた自転車に跨がりグッと力強くペダルを踏む紅葉。

 

「さっさと帰るべ!」

 

 そして猛ダッシュをかけるのだった。そうすれば那由多から自宅までものの十分以内で着ける。

 というか着いた。

 ガシャンと雑に自転車を自宅の壁に立てかけ、その勢いのまま扉を開く。

 

「おら、姉貴帰ってきたぞ! 何のよ……う……?」

 

 そして意味のわからない命令を下した姉を呼びながら自宅に入ったのだが、そこで固まってしまった。

 理由は簡単である。

 

「お、お帰りなさい、紅葉さん」

 

 なぜか目の前に私服にエプロンを付け、恥ずかしそうに立っている自分の彼女である七草泉美がいたのだから。

 

「い、泉美?」

 

 固まってはいるものの、紅葉の視線は周囲を探っていた。そしてここは間違いなく阿僧祇家だと再認識する。

 

「あの、その、……お邪魔しています」

「あ、あぁ、いらっしゃい?」

 

 まさか自宅に泉美がいて、自分を出迎えるなど少しも思っていなかった紅葉の頭の中は見事に混乱していた。

 そして泉美の方は混乱はしていないようだったが顔を真っ赤にして口どもっていた。

 二人ともありきたりな事しか話せないでいると、この状況を作り出した張本人がにゅっと現れた。

 

「もー、いずみん違うでしょ。お邪魔しています、じゃなくて、ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも──」

「って、おいこら姉貴、泉美に何言わせようとしてんだ!」

 

 双葉の登場と共に吐かれる言葉にある種のお節介を感じた紅葉は全てを言い切る前に横入りして彼女の言葉を遮っていた。

 

「何って紅葉が嬉しくなるやつ?」

「う、うっせぇ! ってかなんだって泉美がウチにいんだよ」

 

 確かに言われたら嬉しいが、と少しでも思ってしまったのはこの際仕方がないだろう。

 このまま双葉ペースのままでは会話の主導権が握れないと思った紅葉は半ば無理やり主題を変えた。

 

「なんでって、そりゃいずみんから紅葉のクリスマスプレゼントは何がいいかって相談されたから、そんなの自分でいいじゃんって」

「ふ、双葉さん!? それは言わない約束では?!」

 

 しかし変えた主題の矛先は紅葉から泉美に変わっただけで、どの道双葉が主導権を握るのだった。

 

「あ、ごめーん。言っちゃった」

 

 あっさりと内緒にしていた事がバラされた泉美はより顔を真っ赤にして伏せてしまう。その様子を見ていた紅葉は泉美の可愛さにやられかけていた。

 そして双葉は二人の様子を見て『御馳走様』と心の中で合掌。

 

「さてと、それじゃお邪魔虫は出かけてくるね」

「え?」

 

 こうして双葉は見たいものが拝めた事で満足したのかコートに身を包みバッグを持つ。

 

「あとはお若い二人で楽しんでね~」

「ちょっ、てめっ、姉貴?!」

 

 そして、二人の横をスーッと通り過ぎて、二人に何を言わせる間もなく家を出て行った。

 

「……」

「……」

 

 まるで嵐が過ぎ去ったかのようにシーンと静かになる。

「あー、なんだ。とりあえず居間に行くか」

「は、はい」

 

 お互い気恥ずかしいのか、紅葉は泉美を気にしつつも頬をかきながら明後日の方へ視線を向け、泉美は伏せがちに紅葉の隣に付いて居間に向かった。

 

「すげっ。なんだこりゃ」

 

 そして居間に足を踏み入れると紅葉の目に今まで見た事のない光景が広がっていた。家を出た時は普通だった居間が、クリスマスカラーに装飾されているだけでなく、テーブルには綺麗に盛り付けられたら料理が並んでいた。

 

「これ、泉美が?」

「えっと、双葉さんと紅葉さんのお母様に手伝って頂きました」

「あぁ、母さんもいたのか。で、その母さんはどこいったんだ?」

 

朝見かけなかった為、朝からでかけていたと思ったらどうやら家のどこかにいたようだ。しかし、現在その母親の姿はどこにもない。

 

「三時頃に出かけられましたね」

「なるほど。なら、今は二人っきりって訳か」

 

 双葉は先ほど家を出て、母親はすでに居ない。となれば今、家には紅葉と泉美しかいない事になる。その事実を口にすると

 

「あぅ……」

 

 小さく呻きながら赤面していた。

 

「ははっ、可愛いやつだな」

 

 その姿に嘘偽りなしの言葉が漏れる。それを耳にした泉美はさらに顔を赤くする。

 紅葉は彼女の可愛い様子をからかいたい気になるがせっかく用意してもらった料理が冷めてしまうと思って、からかいたい気持ちをグッと抑えた。

 

「それじゃ、いただくとするか」

 

 紅葉は泉美に向かって笑って言った。

 

「な、何をですか?!」

 

 しかし泉美はその言葉をどう受け取ったのか今日一の赤面で勢いよく顔を上げていた。

 

「……」

 

 泉美の言葉に固まる紅葉。

 

「…………あ、あの、えっと、その、今のは違うんです」

 

 そして紅葉の様子から、自分が盛大に誤解したのを悟った泉美は弁解を始めるも

 

「あー、うん。予定変更」

 

 紅葉のグッと抑えた気持ちは泉美の自爆によって解放されてしまった。

 紅葉は椅子には座らず、泉美に一歩近づく。

 

「こ、紅葉さん?」

 

 泉美はその場から一歩下がった。

 

「今のは泉美が悪いからな」

 

 泉美の下がった分を帳消しにするかの様に紅葉は一気に彼女との距離を詰め抱き寄せた。

 

「こう、ようさん」

 

 そして泉美の頭を優しく撫で

 

「……泉美、今日は帰さないからな」

 

 耳元で囁いた言葉に泉美の心臓はオーバーヒートしたのだった。

 




大遅刻すみません。
そしてクリスマス要素皆無ですみません。
さらにぶつ切りですみません。

ただただ、恥ずかしがる泉美が書きたかったんです。

その先?
きっと誰かが書いてくれますよ、うん。
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