インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者 作:白崎くろね
パーティ。
またの名を『織斑一夏クラス代表就任おめでとうパーティ』。
一夏はクラスのほぼ全員から拍手を受けている。クラッカーも弾け、一夏の頭はテープだらけ。
心の底から俺がクラス代表に選ばれなくてよかった。マジで。一夏には悪いが、本当に感謝している。
そして、パーティの主賓である一夏だが……全然おめでたくなさそうだった。
「これでクラス対抗戦も盛り上がるね!」
「ほんとほんと」
「ラッキーだよね、同じクラスで」
「うんうん」
「このクラスも安泰だねぇー」
そんな感じで女子たちは勝手に盛り上がっている。
しかも、二組の女子まで混ざって。
……なんでいるんだよ?
「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生である織斑一夏君と深見静馬君に特別インタビューしに来ましたー」
眼鏡をした女生徒が大きな声で言う。
……え、俺も?
インタビューという言葉に生徒たちが『オー!』と盛り上がる。
オーじゃないよ。オーノーって言いたいよこっちは。
せっかく隅っこの方でサワー・グラスに入ったコーラを飲んでたのに……。
仕方ない……俺もそっちへ行くか……。
「おー、キミが深見静馬君だね? よろしくね。はいこれ名刺」
あ、どうも。なんて頭を下げながら名刺を受け取る。
名前は黛薫子というらしい。黛って字と薫って字が混同しそうだな。
……って二年生か。じゃあ、たっちゃんとも知り合いだったりするのか……?
それに俺と同い年だ。やったね。
「では早速インタビュー! まずは織斑君ね。クラス代表になった感想を、どうぞ!」
ボイスレコーダーを向けながら、瞳を輝かせている。
「えーと……」
そう言いながら、俺の方と篠ノ之箒の方を見る一夏。
篠ノ之箒は目を逸し、俺は目を合わせた上で無視。
「まあ、なんというか、がんばります」
「えー。もっといいコメントちょうだいよ~。俺に触るとヤケドするぜ、とか!」
それは何目線なんだろうか? ファッション誌とかに載ってそうな台詞だな。
「自分、不器用ですから」
「うわ、前時代的!」
一夏って何時生まれの人だよ。その台詞って結構前じゃん。
「じゃあまあ、適当に捏造しておくからいいとして」
こうやって新聞記者による捏造問題が蔓延るんだよ。インタビューを受けたとして、そのまま掲載されるケースなんてほぼないからな。それか音声と音声を繋ぎ合わせて、言葉遊びのように台詞をつくるんだぞ、知ってたか?
「じゃ次は静馬君ね」
こういう時のコメントって何を言えばいいんだろうか? 適当に流してしまってもいいが、変な捏造を流されては困る。かといって、大仰なことを言ってしまえば後に響く。うーん、困ったぞ。
「えー。なんだ。その、アレだ。オレに触るとヤケドするぜ――?」
適当にポーズまで作り、高らかに宣言。ついでに声も低くさせる。
これならばインパクトで捏造はされないだろうな。まあ、少し目立つけど捏造されるよりはマシだしな。
黛薫子が目を点にさせ、驚きを露わにしている。……ちらほら笑っている生徒もいる。
一夏に至っては『大丈夫か……』みたいな目をしている。お前よりはマシだろうが!
「お、おー! イイね静馬君! 新聞の見出しは『オレに触るとヤケドするぜ』に決定っと」
……まあ、いいだろう。見出しは少し恥ずかしいが、捏造がないのなら良しとする。
「じゃあ最後にセシリアちゃんね」
「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですね」
好きではないと言いながらも、満更ではなさそうな笑みのセシリア。
まあ、インタビューとか好きそうだもんな。
「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したのかというと、それはつまり――」
「ああ、長そうだしいいや。写真だけ頂戴」
「さ、最後まで聞きなさい!」
「いいよ、適当に捏造しとくから。よし、織斑君に惚れたからってことにしよう」
「な……! ち、違いますわ!」
少しだけ顔を赤くさせ、怒りを露わにするセシリア。うーん、一夏が本当は好きになっていて、図星だったのだろう。だから怒っているわけだ。
「何を馬鹿なことを」
と、一夏が人を小馬鹿にしたような顔で言う。
……うわあ。これはセシリアもダメージデカいな。
「そうかなー?」
「そうですわ。何を持って一夏さんを好きだなどと」
……あ? なんでセシリアは一夏に同調しているんだ?
しかも、何故かセシリアが一瞬こっち見てきた。
――なんだ? どういう意図があるんだ?
えっと、つまり、この場を流してくれってことか?
頼む相手を間違えてるぞ……。まあ、協力してやろう。
「黛薫子さん。セシリアと一夏をからかうのはやめてあげてください」
「ほー? じゃあ静馬君がセシリアに惚れてる……っと」
「……いや、全然?」
「えっ?」
意外そうなセシリアの声。心なしか落ち込んでまでいるように見える。
……あ? 何か間違えたのか?
「はいはい、もうわかったわ。とりあえず三人で並んでね。写真撮るから」
写真か。あまり写真は得意ではないが、嫌がるのも何か違うよな。
「そうね~三人で手を重ねるとかいいかもね」
あれか。野球だとかでチームの全員が『勝つぞー!』『おー!』みたいなやつ。
「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃあもちろん」
「でしたら今すぐにでも着替えて――」
「ダメー。時間がかかるからね。はい、さっさと並ぶ」
黛薫子がセシリアの手を引き、俺たちの元へと連れてくる。
かなり不満そうだが、先輩相手に断れない様子。
「それじゃあ撮るよー。474×27÷4は~?」
「え? えっと……?」
「――わからん」
「答えは3199・5でした」
咄嗟に答えるにしては難易度の高すぎる問題だろ……。
パシャリ。デジカメのシャッタが切られるが……が、俺たちの周りを囲むように女子が集まっていた。
みんなも輪に入りたいのだろう。でも後ででもよかったんじゃないのか。
「クラスの思い出だからねー!」
「ねー」
と誰かが言った。
まあ、確かにな。
俺はグラスのコーラを一気に飲み干す。
パーティは十時過ぎまで続いた。
思ったより疲れたので、すぐに部屋へ戻る。
部屋ではたっちゃんがベッドで寛いでいた。
「おかえり、静馬くん」
「おう」
「こら。帰ってきたら『ただいま』でしょう?」
「……ただいま」
「おかえりなさーい」
満足したように頷きながら、ニコニコと笑顔なたっちゃん。
「楽しかったかしら?」
「そこそこ。疲れの方が大きいけど」
「薫子ちゃんに疲れたかしら?」
「あー、やっぱり知り合いなんだな」
「そうよ? 静馬くんと同じく私をたっちゃんって呼ぶわね」
「……そんなに仲がいいのか?」
「まーねー。機体を組み上げる時にも意見とかもらったりしたし。って静馬くんは初対面から私のことをたっちゃんって呼んでたじゃない。何? お姉さんに惚れてたの?」
「何を馬鹿なことを」
一夏の言葉を借り、間髪をいれずに返す。
なるほど。こういう時に使うのか。
というか、俺が楯無をたっちゃんと呼ぶのは「たっちゃん」でもいいって言われたからだ。
「じゃあ名前で呼ぶか?」
「たっちゃんでいいわよ。面白いし」
「……そうか」
何というか、名前で呼ぶのは逆に恥ずかしさがあるような。いままで愛称で呼んでたのに、名前で呼ぶのは何かおかしいような……。それに、楯無って名前が女の子っぽくもなければ、名前っぽくもないんだよなあ……結構失礼だけど。
「静馬くんも一度見てもらったらいいわ。きっと、役に立つわよ?」
「まあ、気が向いたらな」
まだ会って一回目だが、黛薫子のことが苦手だ。もちろん、たっちゃんも苦手な部類に入るが……同室で生活している以上は回避のしようがない。過激とも言えるスキンシップ的なアレをやめてくれればマシなのだが。というか、常に真面目でいてくれ……。
「むー。静馬くんが余計なこと考えている」
「全然考えてないぞ? たっちゃんが面倒……いや、鬱陶しい人だなあ、と」
「ちょっ!? ひどすぎないかしら!?」
「事実だろ」
「ぐ、ぐ……ぬぬぬ」
反論の余地がないのか、『ぐぬぬ』と唸っている。
普段はすまし顔でイニシアチブを取ってる人がいざ取られる側に回ったら面白いよね。……それすら演技のように見えるのがたっちゃんなんだけども。
だって、セシリアみたいに本気で『ぐぬぬ』って感じの顔してないし。
「まあいいや。俺はもう寝るわ」
「えー。もう寝るの?」
「眠いし。眠いし。たっちゃんと会話疲れるし」
「今どさくさにまぎれてひどいこと言ったわね……まあいいわ」
俺はたっちゃんと会話しながら、洗顔やら歯磨きやら着替えを済ませていた。
「おやすみ」
「おやすみ♪」
「…………おい」
「なにかしら?」
「布団に入ってくるな。鬱陶しい……」
「えー。お姉さんと一瞬に寝れるのよ? 嬉しいでしょー?」
「お前は俺のお姉ちゃんとかじゃないけどな……」
本当に何なんだろうか。
俺に襲われても文句は言えないだろ。流石にしないけど。
そういうのを見越してるからたっちゃんは恐ろしい。
想像だが、俺が誰彼構わずに襲うようなクズだったなら、たっちゃんはこういうことを仕掛けてはこないだろう。想像は想像でしかないがな……。
「もう何でもいいよ……おやすみ」
もう構うことすら面倒になり、俺は意識を落とす。
それは特技の一つでもあった。
◆
――――夢を見ていた。
『……お前は私と違って才能があるのだな』
白い研究室のような場所で、銀髪の少女が言う。
『私は見ての通りの出来損ないだ』
憂いを帯びた瞳で言う少女の姿に、■■■■■■は何か出来ないかと考えた。
そこで■■■■■■が考えたのは、少女と一緒に居てあげることだった。他の誰かが少女を『出来損ない』と烙印を押して見られるのであれば、自分だけは味方でいてあげよう、と。この妹みたいな少女をそっと抱きしめながら、■■■■■■は決意した。
それから、程なくして■■■■■■と銀髪の少女は別の施設へと移送されることとなる。
――暗転し、シーンが入れ替わる。
――夢なのにも関わらず、ノイズが激しい。
――ノイズの向こうで誰かが、話しかけていた。
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■』
何も聞こえない。だが、聞こえる。
その言葉を理解していないが、理解している。
誰かはわからないが、知っている。
――誰よりも、この世界の誰よりも――
■■は■■■■■■を知っている。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――、
『目覚めろ、■■■■■■/■■■■』
その言葉と共に、夢は終わる。
最後を除いて、今までで一番薄い話だったのではないでしょうか。
ちなみに静馬は面倒ごとを回避するためなら大体なんでもやります。それが恥ずかしい行為だろうと。
最後シーンはすっごく意味深にしたけど、現状では銀髪の少女ぐらいしかまともわかってない状況ですね。
まだ物語は始まったばかり(9/22~9/26)
……意外と進んでる? 展開としては全然だけど!
読者が飽きてしまう前に進めなければ……むずかしい。