インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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4.楯無の報告

 既に外は暗く、窓の外は闇が支配している。

 そんな中、楯無は学園長室の前に立っていた。

 

「失礼します」

 

 重厚な防音扉を開き、中へと足を運ぶ。

 

「ああ、更識くん」

 

 楯無を向かい入れたのは、温厚な笑みを浮かべる初老の男性。

 楯無の目の前にいるこの男こそが、事実上の学園長だ。表向きは彼の妻が務めているが、実際には彼が実務や運営などは彼が取り仕切っている。男尊女卑の世界において、男性が上の立場に席を置いているのは珍しいケースと言え、この人物が並々ならぬ人物であることの証明に他ならない。

 

「それでは報告をお願いするね」

 

 男性は机に手を置きながら、楯無に言葉を促す。

 温厚な笑みを浮かべている男性。その頭は総白髪で、顔には年相応の皺と傷が刻まれている。

 その彼の普段は用務員であり、学園長よりも学園に熟知しているために『事実上の学園長』と呼ばれているのが彼、轡木十蔵だった。

 

「まず、織斑一夏くんに関してですが、特に問題はありません。彼の幼馴染である篠ノ之箒による損害を除けば、です」

 

 楯無は普段の茶目っ気を一切出さず、真剣な表情で報告を始める。

 

「正直、損害額は馬鹿になりませんが……。こちらは指して問題ではないと思います。ただ、担任である織斑先生には報告を入れましたが」

「そうですね……若い者には色々とあるでしょう。それに若い男女ともなれば」

 

 十蔵は用務員の仕事の際、一夏と箒の会話を何回か耳にしていた。そこから箒が一夏に特別な感情を抱いているであろうことを年の功で察していた。それに男女を同じ部屋にしてしまったという面もあり、十蔵も指して問題に感じていなかった。

 

「次に深見静馬くんについてですが――」

 

 そこで楯無の声が少し、ほんの少しだけ途切れる。

 

「彼のIS能力は平均的です。試合で見せたような動きなどは確認できませんでした。ですが、生身における身体能力は条件的にではありますが異常な反応を見せます」

 

 楯無は最初に実力を測るために組手をした時の事を思い出しながら、報告を続ける。

 

「正直、驚きの一言です。身体能力と動きだけで言えば軍隊でも通用するレベルですね」

「更識くんにそこまで言わせるとは……私も一度話してみたいですね」

「今度言っておきます」

 

 楯無は静馬の面倒くさそうな顔を思い出し、内心で軽く笑いが込み上げる。

 

「次は深見静馬くんの経歴ですが……どこにも異常は見られませんでした。一般家庭に生まれ、両親は病気で他界。家族は深見くんと姉の二人。至って普通の家族です」

「それではあの身体能力は不自然。そういうことですね」

「はい」

 

 静馬の動きには様々な格闘術が含まれていた。彼が主に多用するのはクラヴマガとサンボと呼ばれる近接格闘術。主に軍隊で使われる近接格闘術なだけに疑問点が多かった。実は彼が軍のスパイなのでは、と思ったのだが不自然な点は一切ない。それでも一般男性以上に身体は鍛えられていたが。

 

「更識くんには苦労をかけますね」

「これぐらいはなんとも。特に問題は発生していませんし」

 

 そのことで楯無が問題を抱えるような自体には至っていないし、このぐらいで根を上げるようなほど柔でもなかった。

 

「さて……報告はここまでにして、お茶にしましょう。お菓子も用意してありますから、よかったらどうぞ」

 

 その言葉に楯無は真剣な表情を辞め、瞳を輝かせる。そこにいたのは真面目な生徒会長ではなく、年相応の女の子の姿でしかなかった。

 

「十蔵さんのお菓子チョイスは最高ですからね。楽しみだなあ♪」

「はははっ、そんなに大したものではありませんよ」

「いえいえ。本当においしいです。あ、そうでした! 私はお茶を持ってきたんですよ?」

「まさか布仏虚くんの?」

「ええ、そうです」

「おお! 彼女のお茶は最高ですからね、これは久方ぶりに心が踊ります」

 

 年相応の反応を見せる楯無、年甲斐もなくはしゃぐ十蔵。

 まるでその光景は仲の良い友達のようで、そんな二人を学園の長と生徒会長とは思いもしないだろう。




今回は本当に短いです。

実に2,000文字未満。

少しでも主人公……静馬くんの印象と能力を話に入れたためにできました。
実際はあんまりわかってないけど。



*原作にはなかった轡木十蔵の傷を追加(オリジナル)

*十蔵が用意したお菓子はベルギーのワッフルとイギリスのアップルクランブル(アップルパイとも呼ばれる)。

*今回用意された茶葉は「キームン」原産地は中国。

*篠ノ之箒による被害内容

・ドアを完全破壊&金具ごとふっ飛ばした


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