インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者 作:白崎くろね
――鈴が転校してきてから数週間。
その間にクラス
もちろん、それ以外にも色々とあった。
鈴が一夏と喧嘩をしたり、俺が鈴とラーメンをキッカケに仲良くなったり、一夏をセシリアや篠ノ之箒と一緒に訓練することになったり。色々と疲れる数週間だったが……実りがなかったというわけではない。
まず、一夏との訓練をすることによって俺の操作技術も向上した。生身とIS時での差異が動きに出ていたが、それもなくなって今では生身と変わらないように動かせるようになっていた。
いま、俺たちはアリーナへと向かっている途中だ
「一夏、来週から対抗戦が始まるぞ。実質訓練は今日で終わりだな」
そう言うのは、篠ノ之箒。
最初に訓練をしていた頃は、セシリアや一夏とちょっとしたことで言い合っていたが、今では落ち着いている。鈴とは仲良くなれた俺だが、篠ノ之箒とは未だに距離のある関係だった。つうか、共通の話題が全くといってもいいくらいにない。篠ノ之箒は篠ノ之箒で一夏以外に興味がないのか、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているし。そもそも俺がめんどくさがり屋だから積極的に話しかけにいくこともない。セシリアみたいにぐいぐいと来るなら別なんだが……。
「一夏の操作技術も上がってきてるし、優勝も夢じゃないな」
「そうですわね、最初の頃に比べて上手くなっていますわ。ですが、鈴さんの実力は折り紙付き。一年で代表候補にまで上り詰めた天才ですもの」
「お前ってやけに鈴をライバル視するよな」
――恋敵的な? まあ冗談はさておき、セシリアは鈴をライバル視している。その理由は鈴の『一年で上り詰めた』という事実がセシリアの中で許せないのだろう。まあ、ライバルは多いに越したことはない。その分やる気とか出るし。俺にはライバルなんていないけど。敢えて言うなら一夏の存在だろうか。同じ男性操縦者として負けられないという気持ちが少なからずある。
「当然ですわ! 同じ代表候補生として負けていられませんもの!」
「……まあ、頑張れ」
その言葉に目を光らせ、喜びを露わにするセシリア。
鈴がどの程度の実力を持っているのか、それはわからないが……セシリアならやれるだろう。たぶん。保証はできないけど。
「そういえば、篠ノ之箒」
「ん……なんだ?」
「一夏に別で剣道を教えてるんだったよな」
「そうだが」
「…………一夏って剣道はどれくらいなんだ?」
「全然ダメダメだ」
……ダメダメなのか。
一夏が第三アリーナ・Aビットのドアセンサーに触れ、指紋認証やら脳波だかによってゲートが開放される。
「待ってたわよ、一夏!」
ゲートの先にいたのは、鈴だった。仁王立ちしながらドヤ顔の鈴の姿は……なんというか、子供が胸を張っているようにも見える。正直に言えば、すごく微笑ましい光景だ。
「そこの静馬! アンタ、変なこと考えてたでしょ!」
「…………いや、別に何も考えてないぞ」
「すごく微笑ましいものでも見るような目になってたわよ!」
どうやら顔に出ていたらしい。俺って結構表情に出さないタイプなんだがな……鈴が感情の機微に鋭いのだろうか。わからん。
「貴様、どうしてここにいるんだ!」
篠ノ之箒が鬼のような形相で鈴を睨む。それに対して、鈴は余裕の表情で「はんっ」と笑う。そして鈴は自信満々に言い切る。
「あたしは関係者よ。だからここにいても問題なしね」
そうかもしれんが、敵が同じ訓練場所にいるのは問題だろ。
「……鈴。対戦相手であるお前は関係者かもしれんが、色々と問題大アリだろ」
「うっさいわね! アンタは黙っててよ」
「……そうっすか」
まさかの黙れである。これ以上言い合っても面倒なだけなので、俺は潔く引く。
「ええい! お前は出て行け!」
「はいはい、脇役はすっこんでてね」
「わ、わきっ……!?」
「で、一夏。反省した?」
「へっ? なにが?」
「だ・か・らっ! あたしを怒らせて申し訳なかったなーとか、仲直りしたいなーってそこら辺よ!」
「いや、そう言われても……鈴が避けてたんじゃねえか」
「あんたねぇ……。女の子が放っておいてって言ったら放っておくわけ!?
……もちろん、俺は放っておく。触らぬ神に祟りなしってやつだ。……たっちゃんが『今日は放っておいて」なんて言い始めたら風邪を真っ先に疑う。というか、怖すぎて逃げてしまうレベル……。それは置いておくとして、一夏も俺と同じように考えていたようで『変か?』などと口にする。
「……ああ、もうっ!」
もうダメだコイツぅ! って感じで鈴が癇癪を起こす。
まあ、ダメなのは鈴も一緒だけどな。
喧嘩の原因を考えると問題は一夏にもあるが、鈴にも大きな問題があると俺は思う。というか、あんな約束が通用するわけないだろ。『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』だぞ。そこは嘘でもお味噌汁に変換しろよ……。てか一夏が鈍感だって知ってるなら遠回しな発言は通じないってわかってるだろうに。
「謝りなさいよ!」
「だから、なんでだよ! 約束覚えてただろうが!」
「あっきれた。まだそんな寝言いってんの!? 意味が違うのよ、意味が!」
「…………一夏。意味はだな――」
俺が面倒になって言おうとした瞬間、鈴の蹴りが顔面に迫っていた。見事な飛び膝蹴り。身構えていなかった俺は顔面に直撃してしまう。が、本気の蹴りではなかったようで軽い痛みで済む。いや、どちらにせよ痛ぇよ。
「言わないって約束でしょうが! どいつもこいつも約束守らないわね!?」
「…………」
もう、いいわ。面倒だよ……なんで俺がこんな目に……。
セシリアが倒れた俺に駆け寄ってきて、顔をハンカチで拭いてくれる。
「……鼻血がつくぞ」
「別にいいのですわ。それよりも大丈夫ですの?」
「……鈴が手加減してたからな」
実際に鈴が手加減していなければ、俺の鼻頭は折れていたことだろう。
そこだけは感謝しなければ。それ以外はラーメン一杯で許してやろう。さもなくば一夏に全部ネタばらししてやるぞちびっ子。
「と、とりあえず説明はできないのよ!」
「だから説明してくれりゃ謝るっつーの!」
「説明できないって言ってるじゃない!」
一夏も適当に謝ればいいのに。つまらん意地とかなしにしようぜ。
「じゃあこうしましょう! 来週のクラス対抗戦、そこで勝った方が負けた方に何でも一つ言うことを聞かせられるってことでいいわね!?」
「おい、いいぜ。そん時は説明してもらうからな」
何でもとは大きく出たな。一夏もそこまで言われたら引けないだろうし。てか一夏の方が勝ち目薄いから鈴が有利だよなあ……。
「説明は……その」
「やめるならいいぞ」
「誰がやめるのよ! 誰が! アンタこそ、あたしに謝る練習でもしておきなさいよね!」
「なんでだよ、馬鹿」
「馬鹿とは何よ! 朴念仁! ヘタレ! アホ!」
「うるさいな、貧乳」
――ピシッ。
何かがヒビ割れるような音が聞こえた、気がした。
――ああ、言ってはならないことを。
女子を身体的特徴でバカにすると痛い目を見る――お姉ちゃんが口を酸っぱくして言っていた。むかし、俺がお姉ちゃんのことを貧乳だよね。とか言った時は軽く頭を殴られて数時間くらい口を聞いてくれなかったっけか。貧乳のどこが具体的にダメなのかはわからないけど……女子は言われたくない言葉ナンバーツーとかそこら辺らしい。
瞬間、爆発音。
部屋全体を衝撃吹き飛ばすような衝撃が走る。その衝撃は鈴の右腕から放たれており、右腕は既にIS装甲化していた。たしか、部分展開という技術の一つだ。難易度が地味に高く、けれど代表候補生としては必須レベルであるという話を聞いた。
「言ったわね!」
「い、いや悪い。今のは俺が悪かったよ。すまん」
「今のは!? 全部アンタが悪いのよ!」
「ご、ごめんって」
「手加減してあげようとか思ってたけど、死を見せてあげるわ……。全力で、本気で叩きのめしてやるわ」
そう言って、鈴は部屋から出ていった。
その鈴を見て、セシリアが口にする。
「パワータイプですわね。それも近接格闘型ですわ」
「……そうっぽいな」
「それにしても一夏さんはもっとデリカシーを持った方がいいですわよ」
「すまん……」
自分でも言い過ぎたと思っているのだろう。一夏は落ち込んだように答える。
「……過ぎたことはどうでもいい。訓練をさっさと始めよう」
さっさとISを展開し、アリーナへと降り立つ。
(はあ……やれやれ)
そうして、俺は一夏たちと優勝を目指して訓練を始めるのだった。
今回も原作と同じ流れ……。うーん、もう少しだけ変化があればいいのにね。
我ながら文才がなくて……。というか、このまま行ったら原作の引用で作品が消されちゃう!? ま、まずい……! ってことで次回からは展開が変わってくると思います。二章は二章で主人公の見せ場も作る予定ですし。というかそろそろ見せ場ないと主人公のいる意味ある? ですからね。
というか、箒と静馬を絡ませたいけど自然な感じで絡ませれない……。
箒のキャラってこんなに難しかったっけ。