インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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6.クラス対抗戦

――クラス対抗戦、当日。

 

 組み合わせは一夏と鈴。

 噂の男性操縦者というネームバリューもあって、アリーナは全席満席。それどころか、通路に立つ人やリアルタイムモニターで観賞するという生徒たちが多くいる。皆がこの試合を期待して見ている。

 

 そんな中、俺はセシリアたちとピットにあるリアルタイムモニターで見ている。既に一夏と鈴は対峙しており、試合開始のブザーがなるのを待っている。一夏の方は緊張をしているのか、リラックスさせるように身体を動かしている。

 

 鈴の専用機『甲龍』は第三世代型の近距離格闘型。ブルー・ティアーズ同様、非固定浮遊部位が特徴だ。おまけに凶悪な棘付き装甲が攻撃性を主張している。『甲龍』の特徴はそれだけではない。燃費が非常に良く設計されており、格闘と射撃のどちらも行えるという複合型ISなのだ。どう考えても、一夏に不利な条件が色々と揃っていた。鈴の技術がどこまでのものなのか。それはわからないが、簡単に勝てるような相手でもないだろう。

 

「……勝てると思うか?」

「わたくしが訓練に付き合っているんですもの。これぐらいは勝ってくださらないと」

「……」

 

 いつものセシリアだった。そうだよなあ……セシリアに聞いたらこう返ってくるよな。

 

「一夏、今謝るなら少しくらいは手加減してあげるわよ」

「雀の涙程度だろ。そんなのはいらない。全力で来い」

 

 対ブルー・ティアーズ戦。つまりセシリア戦の記録映像を見て思ったが、どうやら一夏は真剣勝負で手を抜かれるのが嫌いなようだった。流石は道場で篠ノ之箒と剣道を究めんとしてたわけだ。俺は真剣勝負は嫌いだし、負けるのも嫌いだ。手を抜かれてこっちが勝てるならソレでいい。ただ負けるのが嫌なんだよ。そこら辺が俺と一夏の違いなんだろうな。向上心が足りない。だって、ある程度のことは何でも人並み以上にこなせるのだから。

 

「言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギー吹っ飛ばすほどの攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる」

 

 鈴の言っていることは本当のことで、実際にIS操縦者をダメージで殺す為の武装も存在している。もちろん、それは競技規定違反なので対抗戦で見ることはないだろう。しかし、殺さない程度にいたぶることは不可能ではない。だから、鈴が言っていることは本当に間違いではないし、代表候補生の技量であれば可能なのは間違いない。

 それを鈴が脅しではなく実際にやるとは限らないが……。一夏のことが好きな鈴がトラウマになりかねないようなオーバーキルはしないことだけはわかる。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

 試合開始のブザーが鳴り響き、試合が開始される。

 

 最初に動いたのは鈴だ。《雪片弐型》が展開された瞬間、鈴の攻撃によって弾かれる。それによって一夏の機体は軽く吹き飛ばされるが、一夏は三次元躍動旋回を上手くこなして鈴を正面に捉える。

 

「ふうん。よく初撃を防いだじゃない。でもね――」

 

 鈴が手にした翼形の青龍刀をペンを回しでもするかのように回し、一夏へと切り込む。高速回転する軌道は読みづらく、一夏は躱しづらそうにしていた。実際、武器を扱う技量も全てが上な鈴だ。ここは一旦引くしかない。そう考えた一夏が距離を取るが――。

 

「そこッ!」

 

 肩のアーマーが鉄球のように放たれ、一夏に直撃する。

 

「今のはジャブだからね――っ!」

 

 見えない何かが一夏のISを吹き飛ばす。その攻撃はシールドエネルギー越しの攻撃で、大きいダメージが一夏に与えられる。吹き飛ばされた一夏が地表に叩き付けられた。

 

「なんだ、あれは……」

 

 篠ノ之箒が疑問を口にする。

 俺も同じようなことを考えていた。予備動作がほとんどなく、見えない攻撃が一夏を襲ったのだから。

 光学兵器の類なんだろうか。

 その疑問に答えたのは、隣で見ていたセシリア。

 

「《衝撃砲》ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、そこで余剰に生まれる衝撃自体を砲弾化して撃ち出す第三世代型兵器ですわ」

「……なるほど」

「砲身射角もほぼ制限がなく撃てるみたいですね」

「……要は背後からの攻撃にも反応できるってわけか」

「一夏……」

 

 ハイパーセンサーの視野角は360度全方位であり、後ろからの奇襲に対しても反応が可能となっている。だから、後ろからの奇襲に対するカウンターとして《衝撃砲》を撃ち込めるということに他ならない。非常に厄介な武装だ。しかし、どんな武装にも弱点が存在する。それは間違いない。が、弱点がわからない。今見た限りで考えられるのは、連射性能と威力だろうか。圧力を加えているということは、その分だけ時間が掛かる。適当に見積もって回避が間に合う程度の。であるからして、空間の歪み値と照らし合わせてある程度は躱せるはず。その間に間合いを詰めて零落白夜の一撃を入れるのが一番だろうか。

 

 一夏は覚悟を決めた面構えで鈴に向き直る。

 

「鈴」

「なによ」

「本気で、行くからな――」

 

 一気に加速した一夏に、鈴が青龍刀で迎え討つ。

 そこで一夏は更なる加速体制に入っていた。

 一夏がこの一週間で身に付けていた技能の一つ――《瞬時加速(イグニッション・ブースト)》。

 一瞬で間合いを詰める最高速度の加速を行うソレは、出しどころさえ間違わなければ必殺へと繋げる最善手となる。使用の際に尋常ではないGが全身を襲うが、ISの操縦者保護機能が働くので問題はない。

 

「うおおおおっ!」

 

 一夏が咆哮を上げ、鈴へと迫った瞬間――

 

 大きな衝撃と共に《正体不明》の何かがアリーナの遮断シールドを貫通して侵入してきた。

 

 もちろん、遮断シールドはそんなに柔な代物ではない。普通は壊れないはずの代物で――。

 

「あれはなんなんですの!?」

「……織斑先生。アレはなんですか」

「わからん。山田先生、アリーナにいる生徒たちに避難を促せ」

「わ、わかりました!」

 

 正体不明の何かによって、アリーナは大パニックへと陥る。

 遮断シールドを破壊できるということは、アリーナへと侵入することも可能だと言うことだ。

 だから、アリーナで観賞している生徒たちの避難が優先であると言える。

 

『全生徒は速やかに避難してください。繰り返します、全生徒は速やかに避難してください』

 

 そんな中、俺はリアルタイムモニターを見ていた。

 正確に言うならば、侵入してきたであろう何かを。

 

 ――深い灰色の躯に、異様に長い手足。異形の全身装甲がそこにはいた。

 何故かはわからないが、アレは人間ではない。と思った。それどころか、俺の身体はあの時のように昂ぶっていく。意識が別の意識で塗り替えられるような気持ちの悪い感覚。誰かが俺の身体を乗っ取ろうとでもしているかのような――。

 

「静馬さん? どうかしましたの?」

「……なんでもない。状況はどうなっているんだ?」

 

 セシリアに話しかけられ、呑まれそうな感覚がなくなる。

 気づけば、俺は数分くらいぼうっとしてたようだ。

 

「今、一夏さんたちに逃げるよう山田先生が言ってますわ」

「織斑くん聞いてます!? 凰さんも! ちょっと聞いてください!?」

 

 秘匿回線で通信を行っていたらしい山田先生が声を大にして叫ぶ。声は上げる必要はないのだが、冷静さを欠いている山田先生は忘れているようだ。というか、一夏は秘匿回線での通信ができないって言ってたような……鈴は流石にできるだろうが。

 

「ふん。本人がやる気なら、やらせてみればいい」

「織斑先生! 何を呑気なことを!」

「まあ、落ち着け。コーヒーだ。飲んで、糖分でも摂れ」

「……あの、先生? それ塩ですけど……」

「………………」

 

 織斑姉にしては珍しく、開口した口が塞がらないようだった。

 一夏のピンチに姉である織斑姉は相当に動揺しているのだろう。重度のシスコンだし。

 

「誰だ塩を用意したのは」

「……織斑先生、塩って書いてありますが」

「糖分も大事だが、塩分も大事だ。さあ、飲め深見」

「……まあ、いいですけど。貰います」

 

 俺は塩入りのコーヒーに口を付けた。

 ……塩、だな。

 

「の、呑気なことをしている場合ではありませんわ! 先生、私にISの使用許可を!」

 

 そんな俺たちの様子を見ていたセシリアが焦れたように声を上げる。

 

「そうしてやりたいところだが、これを見ろ」

 

 織斑姉が端末を俺たちに見せる。そこに表示されていたのは、第二アリーナのステータス。

 

「遮断シールドがレベル4……? 全ての扉や隔壁がロック――あのISの仕業ですの!?」

「そうだ。これでは救援に向かうこともできんな」

「で、でしたら政府に助力を――」

「もう既にやっている。現在も三年の精鋭がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドを解除できれば、すぐにでも部隊が突入できる」

 

 一見して冷静そうに見える織斑姉だが、言動の節々からは苛立ちを感じさせる。それを抑えられているのは、流石は大人といったところだろうか。

 

「……結局は待っていることしかできないんですね……」

「いや、どちらにせよお前は実働部隊に加えられん」

「な……な!?」

「お前のIS装備は一対多向きだからだ。むしろ邪魔だ」

「そんなことないですわ! このわたくしを邪魔だなどと!」

「ふん。連携訓練の有無は? その時のお前のポジションは? 戦闘想定はどの程度できている? 敵に攻撃を与えるという意味を理解できているのか? 連続稼働時間は――」

「……わ、わかりました! もう結構です!」

「ふん。わかればいい」

 

 織斑姉の言葉の猛攻にセシリアは参ったように両手を降る。

 

「はぁ……」

「……ところで、セシリア。篠ノ之箒はどこへ行ったんだ?」

「あら? そういえばどこへ……?」

 

 どこへ行ったんだ……?

 そう思った時、スピーカーから大声が響き渡る。

 

「一夏ぁっ!」

 

 篠ノ之箒の声。場所は中継室だと思われる。

 

「男なら、男ならその程度の敵をどうにかしてみせろ!」

 

 なんて無茶苦茶な。とは思うが、それで一夏は覚悟を決めたらしい。

 ……俺も、覚悟を決めるべきだろうか。

 このまま傍観していても……。

 

「わたくしもいきますわ!」

 

 ………………。

 

「……俺も行く」

「おい、お前ら――」

 

 後ろで織斑姉が何かを言っているが、今はどうでもいい。

 後で適当に言い訳でも考えるさ。いざとなったらたっちゃんにでも味方をしてもらおう。

 ……たっちゃんを使うのは面倒くさそうだが、織斑姉に説教されるよりはマシかもしれない。というか、身体的スキンシップ的なアレならどちらかと言えば役得だしな!

 

 そんな風に言い聞かせながら走り出しISを展開させる。

 その途中でセシリアを抱き上げながら、ピットを全速力で後にする。

 

「し、静馬さん!?」

「少しだけ我慢してくれ」

 

 顔を赤らめながら、慌てるように身体を動かすセシリア。

 セシリアがISでアリーナへ向かうよりも、純粋な機動力では俺の方が上だ。それにISを展開していたのも俺の方が先だった。だったら、待つよりも一緒に向かった方が早い。

 通路をぶち抜き、アリーナへと出る。遮断シールドは一夏に攻撃によって既に壊されていた。隔壁もISによる蹴りでぶち抜いた。

 

「……えっと、アレだ。ビット攻撃をあのISに頼んだ」

「わ、わかりましたわ」

 

 ……咄嗟に動いたが、やっぱり俺が運ぶよりもセシリアが展開してた方が早かったんじゃないのか、これ。

 まあ、いい。終わったことは仕方ない。

 

「狙いは?」

「完璧ですわ!」

 

 一夏が呟いた声に、セシリアが答える。一夏はこの瞬間を狙っていたんだろう。セシリアが狙撃する瞬間を。

 ブルー・ティアーズによる四機同時狙撃。認識外から飛んできた攻撃に対して謎のISに回避行動を見せることなく直撃する。

 なんにせよ、謎のISは煙を上げて沈黙した。

 

「ギリギリでしたわね」

「……悪いな」

「い、いえっ! 問題なんてありませんわよ!」

「終わり良ければ全て良し――っ?」

 

 ――敵ISの再起動を確認! 

 

「――ッ! 一夏、避けろ!!」

 

 考えるよりも先に声が出ていたが、

 既に遅く、片腕だけのISが零距離で一夏にビームを当てていた。

 

 ――ドクン。

 

 鼓動が跳ねる。

 

 ――ドクン。

 

 全身が沸騰するように熱くなる。

 

 ――ドクン、ドクン。

 

 思考が加速し、ハイパーセンサーの視界が更にクリアになる。

 

 ――意識が、切り替わる――。

 

「うおおおお――ッ!!」

 

 気づけば敵ISに全速力で突撃していた。

 それは文字通りの突撃で、やったことのない《瞬時加速》を土壇場で成功させる。

 

 俺はためらいなく、敵ISに飛び込んで――

 

 

 

 

 ――敵ISを吹き飛ばした。




展開として雑っぽいですかね。
もうちょっとかっこいい感じで書こうと思ったのですが……。
ちなみにまだ少し続きます。では次回をお楽しみに……。

進めば進むほどに雑っぽくなる展開。文才なさすぎィ……。
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