インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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この章は「対抗戦前」の数週間にあったお話になります。


2.一夏の部屋でトランプ

「なあ、静馬」

 

 放課後。

 

 珍しく一夏が俺に話しかけてくる。

 基本、放課後はクラス対抗戦へ向けて訓練をしているのだが……流石に毎日は辛いだろうってことで休みの日を設けている。それが今日だ。

 

「……なんだ?」

「折角だし、一緒に部屋で遊ばないか?」

 

 まさかのお誘いである。

 最近は一夏とも話す機会が増えたが、それでも俺たちは会話が少ない方だった。基本的に篠ノ之箒やその他クラスメイトが一夏と話しているからだ。そして、俺は面倒くさくて速攻で部屋に帰るから。……まあ、部屋に戻っても少し面倒な人物が俺を待っているのだが、それは別の話。

 

「……別にいいけど」

「おお! 静馬の部屋ってどうなんだ?」

「……あー」

 

 たっちゃんがいる部屋に一夏を呼ぶのはどうなんだ? なんか地獄絵図になるような気がするな……。

 

「……一夏の部屋じゃダメなのか」

「別にいいけど。静馬の部屋がどうなってるのか気になってな」

「同じだぞ」

「そうなのか。ってことは女子の同居人がいるのか」

「……お前もか」

「おう。俺のところは箒だけどな」

「なるほど」

「お前のとこは?」

「…………青髪の痴女が一人」

「……え」

 

 俺の言葉に一夏が間の抜けた声を出す。

 そりゃそうか。痴女が部屋にいるなんておかしいよな。天下のIS学園に。

 いるのだから仕方ない。

 

「女子高的なノリで接してくるもんだから毎日が苦労の連続だ」

「……大変だったんだな」

「まあ、お前のとこは幼馴染でよかったよな」

「ああ、本当に助かってる。……大変なとこもあるけど」

 

 幼馴染が同居人にでも大変なことはあるらしい。そりゃそうだろうな、男子と女子が二人同じ部屋で過ごすのは苦労が付き物だ。それに、篠ノ之箒なら『男女七歳にして席を同じゅうせずだ! 常識だろう!』とでも言いそうだな。

 

「ってわけで一夏の部屋にしよう」

「いいぜ。箒もいるけどいいよな」

「……まあ、問題はない」

 

 本当は問題が少しだけあるけど、同じ部屋なのだから仕方ない。

 篠ノ之箒って眼光鋭いからなあ……常に何か警戒してるのか睨んでくるし。俺が何をしたんだろうか。もしかして、セシリアを訓練に参加させる原因をつくってしまったのがダメだったのだろうか。

 

「……一夏」

「どうした?」

「……お前と篠ノ之箒って実は付き合ってるのか?」

 

 結構前から気になってたことだ。聞こうと思ってたのだが、別にあんまり関係のないことだな……ってことで聞いてなかった。

 

「いや、付き合ってないぞ」

「そうなのか」

「ああ、なんでそう思うんだよ?」

「……いや、単に気になっただけだ」

 

 ああ、付き合ってないのか。ってことは篠ノ之箒の片思いってことなんだな。残念だったな、篠ノ之箒。あんなにアピールしてるのに一夏は欠片も気付いてないっぽいぞ。

 

「それに彼女とか興味ないしな」

「……は?」

「いや、彼女に興味ない……」

「そうじゃねぇよ! 繰り返すな!」

「お、おう……ど、どうした静馬」

 

 俺は珍しく声を荒げてしまう。いや、これは仕方ないだろ。誰だってこうなる。

 少しだけ落ち着かせ、一夏に向き直る。

 

「お前、ホモなのか」

「ちげぇよ! てか前にもこのやり取りしたよな!?」

「だって、なあ、お前……」

「な、なんだよ」

「このIS学園にいて彼女に興味がないってどうなってるのかなって思うだろ」

「そう言う静馬はどうなんだよ」

「……興味はあるぞ。だけど、それだけだ」

 

 そりゃあ興味はある。彼女を作ってみたいとも思う。だけど、本当にそれだけだ。実際に彼女を作るとなると色々と面倒なことになる。自分のことで精一杯なのに、どうして他人のことにリソースを割けようか。それに好きな人がいないってのもあるな。

 

「そうなのか。てっきり静馬のことだから興味ないのかと」

「……俺って一夏から見てどんな感じなんだ?」

「常に達観してる感じだ」

「……そうか」

 

 別に『達観』してるわけじゃないんだ。ただ、俺の中で『面倒』の割合が多いだけ。だから達観してるとかじゃなくて、『諦観』の方が近いと思う。深い理由はないのだが、そんな気がする。

 

「まあいいや。それより行こうぜ」

「……わかった。その前に一度だけ部屋に寄る」

「部屋はわかるよな?」

「『1025』だろ?」

 

 前に見た時、そんな感じの部屋番号だったはずだ。あとたっちゃんが『1025』号室の扉はすぐに壊れるってボヤいてたのを覚えてる。

 

「おう。じゃあ後でな」

「……後でな」

 

 一夏と別れ、俺は自室へと向かった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「入ってもいいか?」

 

 俺は自室で必要なものと、軽く食べる物を持って一夏の部屋へ訪れていた。

 ついでに軽くシャワーを浴びてから、着替えも済ませておいたのだった。一夏だけならともかく、この部屋には篠ノ之箒もいるのだから当然だ。

 

「おー、いいぞ」

 

 その声を聞いて、俺はゆっくりと扉を開く。

 部屋の中は俺の部屋と変わらない。内装も、配置も、大きさも。

 ビジネスホテルの大きい部屋みたいな感じの寮室は相変わらずだ。

 

 椅子には一夏と篠ノ之箒が座っている。二人ともラフな格好だった。一夏はわからないが、篠ノ之箒は俺が来る前にシャワーを浴びていたようだ。黒髪が艶っぽく濡れているのがわかる。……どうでもいいが、黒髪って二割増しくらいで美人に見えるよな。

 

「……で、遊ぶって何をするんだよ」

 

 小さいバッグを机に置いてから、一夏に聞いた。

 

「あー、そうだなあ……トランプとか?」

「……トランプあるのか?」

「…………ないわ」

「おい」

「千冬姉が持ってきた鞄にはほんと必要最低限しかなくてなあ」

「……まあ、いいけど。トランプならあるぞ」

 

 予めポケットに突っ込んでいたトランプケースを取り出し、一夏の方へ投げた。

 

「お、っとと。準備がいいな。静馬のことだから何も持ってこないと思ってた」

「……失礼な」

 

 まあ、そう言われても仕方ないとは思う。

 

「……ああ、篠ノ之箒にはこれを」

「なんだ?」

 

 お茶っ葉を篠ノ之箒へと投げる。

 ……さっきから物を投げているが、いちいち近寄るのは面倒だからだ。

 少しだけ行儀が悪いが、別に誰も気にしないだろう。

 俺が投げたのは煎茶のお茶っ葉だ。普段は紅茶以外は淹れないのだが、お姉ちゃんが用意したボストンバッグに入っていたのだ。飲む予定もないし、それならあげてしまおうという。

 

「あ、ありがとう」

「……どうせ安物だし」

 

 値段は知らない。見たことないパッケージだったし、相当な安物か高級品のどちらか。

 

「……それで、ゲームは何にするんだ?」

「んー、最初は軽くババ抜きでもどうだ?」

「ババ抜きか。別にいいぞ」

「じゃあ、やろうぜ。箒もいいよな?」

「構わないが……」

「……あー、少し待ってくれ」

 

 ババ抜きを三人でやるのもいいが、どうせなら4人くらい欲しいゲームだ。

 俺は薬指の指輪に意識を集中させる――。

 個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)を開くために。

 そして、俺はセシリアへと回線を開いた。

 

『……起きてるか?』

『っひゃあ!? し、静馬さん?』

『……すまん、何かしてる最中だったか?』

『い、いえ。静馬さんの声がいきなり聴こえましたので……』

『……なるほど。いや、用事というほどでもないんだが――』

 

 俺はセシリアに軽く説明する。

 いま、一夏の部屋で遊んでいてババ抜きというゲームをするということを。

 すると、セシリアは興奮したように『すぐに行きますわ!』と行って通信を終了した。

 ……おお、まさか即答とは。どんだけ一夏と遊びたいんだ。

 

「というわけで、わたくし、セシリア・オルコットが参りましたわ」

「どういうことだ静馬ぁ!」

「……落ち着けって。ババ抜きは人数がいた方が楽しいから。それだけだ」

「そうですわ! 静馬さんがどうしてもというので来た次第ですわ!」

「……いや、どうしてもとは言ってない」

「おお、セシリア」

 

 ……あれ。軽いノリで呼んでしまったが面倒なことになるのでは? 

 と思ったのだが、特に何もなかった。

 篠ノ之箒も最初は反発していたのだが、渋々といった具合で押し黙ってくれた。

 やれやれ、俺も迂闊だったなあ……。少し友達と遊べるってことで舞い上がってたかもな。

 

 そんなこんなで始まったババ抜き。

 

 ババ抜きのルールはとても簡単だ。

 カードを全員に均等に配り、手札から同数字2枚のペアを捨てる。順番はじゃんけんなどで決めるとして、最初の人は右隣の人からカードを引く。そこでペアだった場合は捨てる。そうして、手札が0枚になった人が勝利。

 で、ババ抜きにはジョーカーが一枚含まれており、それを最後に持っていた人が負けるというルール。

 

 一夏がカードを全員に配っていく。そして、ペアのカードを捨てていくのだが……。

 あれ……おれ、もう二枚しかないぞ。

 手札はハートの5と4だ。

 

「静馬どんだけ少ないんだよ」

 

 そう言う一夏は六枚のカード。

 

「カード枚数だけが強さではありませんことよ」

 

 そう言うセシリアは六枚のカード。

 

「ふん、重要なのは運だ」

 

 そう言う篠ノ之箒は五枚。

 

「……まあな。でも俺がジョーカーを持ってる場合はその限りじゃないけどな」

 

 ジョーカーを持ってる場合、俺から引く人は二択を迫られるからだ。対して、俺が次に引く時にジョーカーが回る確率が非常に低いからだ。まあ、俺の求めてるカードが俺の手札を引く人にある場合は非常に困難なことになる。本当に枚数が少ないからといって有利になるわけではない。

 

「じゃあ、じゃんけんしようぜ」

 

 じゃんけんで決まった順番は、俺、一夏、篠ノ之箒、セシリアという順番。

 つまりは俺の正面に篠ノ之箒がいて、右隣にセシリアがいるという座りだ。

 

「……じゃあこれだ」

 

 俺は無心で適当に引く。

 

「……あ!?」

 

 引いたのはスペードの5だった。

 つまり、俺の一発勝ちである。

 ……おかしいだろ。どんな確率なんだよ。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 全員が沈黙。

 

「な、なあ……イカサマしてないよな」

「……なわけないだろ。そもそも配ったのは一夏だし」

「一夏! お前がイカサマなどという真似を!」

「いやいやいや、俺に何の得があるんだよ!」

「そうですわ! イカサマなんて男の風上にもおけないですわよ!」

「だから違うって!!」

「ま、まあ……いいや。紅茶でも淹れてくるよ」

「まあ!」

 

 俺の一言にセシリアが瞳を輝かせる。

 どうやら、俺がクラス代表を辞退する際に淹れてやった紅茶が気に入ったらしいのだ。

 流石はイギリス代表候補生(なにが)だ。

 

「……みんなも飲むよな?」

「わたくしは当然いただきますわ!」

「……はいはい。で、一夏と篠ノ之箒は?」

「じゃあ俺も」

「では、私ももらおう」

 

 みんなが欲しいと言うので、俺はその場から立ち上がる。

 声を聞きながら、カバンから茶葉を取り出し、ついでに持ってきた紅茶セットを用意する。

 本当はすぐにでも淹れようと思ったのだが、お茶っ葉をあげた直後に紅茶というのもおかしな話だったので、我慢していた。

 

「おい、ジョーカーはどれだ?」

「言うかバカ」

「バカだと!?」

「落ち着いてくださいまし、箒さん」

「そうだぞ」

「むむ…………なん、だと!?」

「箒は分かりやすぎる」

「バカにするな!」

 

 なんて会話を聞きながら、俺は紅茶を淹れる工程を踏む。

 淹れる紅茶はアッサム。独特の甘い香りを持つ紅茶だが、今回はミルクティーとして淹れる。理由は一夏や篠ノ之箒が紅茶を飲みなれているとは思えないからだ。セシリアだけならストレートでもいいだろうが、初心者にアッサムのストレートはオススメできない。だからミルクティーだ。

 

 淹れ方は普通にストレートとして淹れ、カップに注がれた熱々の紅茶にミルクを軽く入れるだけ。

 アッサムの蒸らし時間は茶葉によって異なるが、今回は3分程度で問題ない。1分や2分の場合もあるが、この茶葉は3分弱ってところだ。もしくは4分近くやってもいいかもだが。

 

 

 そして、ティーカップ(持参した)に注ぐ。

 

「牛乳って使ってもいいか?」

「いいぞー」

 

 許可を得たので、牛乳を軽く入れて完成だ。

 

「できたぞ」

「待ってましたわ!」

「紅茶飲むのは久しぶりだぜ」

「私は全然飲まないな」

 

 真っ先に反応したのはセシリアで、次に一夏が反応する。最後に篠ノ之箒。

 

「……ミルクティーだし飲みやすいはずだ」

「アッサム、ですの?」

「……早すぎる。紅茶淹れた経験はないとか言ってなかったか」

「これぐらい英国淑女の嗜みですわ」

「……淑女すげえな」

 

 流石はイギリス代表候補生(だからなにが)だ。

 

「静馬って淹れるの上手いのか?」

「うむ……私でも上手いって思うぞ」

「いや、全然?」

「そんなことありませんわよ? チェルシーと比べれば腕が落ちますけれど、もう少し誇ってもよくてよ?」

「……チェルシーって誰だ」

「専属メイドですわ」

 

 専属メイド……流石はイギリス以下略。

 

「セシリアって専属メイドがいるのか……」

「ええ、チェルシーはとても美人ですわよ」

「……ふーん。それって織斑姉くらいの年齢か?」

「たしか、今年で十八歳でしたわね」

「……は? 俺の一つ上……?」

「そういえば、静馬って俺たちより年上だったな」

 

 そんなに若いのに専属メイドなのか。代々仕えてきた関係なのだろうか? 布仏姉妹みたいに。って今思えば虚さんと同い年なのか……俺より年上って紅茶が上手く淹れれるという設定でもあるんだろうか。

 専属メイドなだけあって物腰が柔らかい人なんだろうか。会ってみたいと思う。虚さんみたいな感じだろうか。

 

「紅茶を飲みながら次のゲームをしないか? 流石にワンターン勝利はつまらん」

「そうですわね。次は大富豪なんてどうです?」

「大富豪か。ルールはみんな知ってるのか?」

「細かいルールって地方で違うよなあ……」

「そうだな。ジャックダウン、しばり、都落ち、スペードの3、4切り、革命、階段革命、エンペラーとかがあったな」

 

 本当に色々なルールがある。そこで、俺は提案をする。

 

「どうせなら全員の知っているルールを全部突っ込んでみないか?」

「おお、楽しそうだな」

「……それですとややこしくなりませんこと?」

「いや、いっそ全部乗せも面白いかもしれんな」

「みなさんがそう言うなら構いませんが……」

「じゃあ始めようぜ」

 

 そう言って、俺たちの大富豪は始まった……。

 

 結果は――

 

 1位:セシリア

 

 2位:俺

 

 3位:一夏

 

 4位:篠ノ之箒

 

 となったのだった……。

 

 知ってるルール全部乗せはカオスだった

 特殊ルールの殴り合いで、エンペラーをエンペラー返しで4切りやスキップで本当にカオス。

 ……まあ、楽しかったのだが。

 

 余談だが、カードゲームに熱中しすぎて寝坊しかけたのは言うまでもない……。

 




篠ノ之箒が一夏のことを好きだってことを知ったにも関わらず、部屋にセシリアを呼ぶ静馬くん。直後に忘れちゃってます、彼。

というのは嘘で、静馬くんは単に遊ぶ人数を増やすくらいにしか考えてません。
なんだかんだで人と遊ぶのは好きな天邪鬼ですから。

2~3話で幕間は終了です。

*静馬くんのワンターン勝利はリアルでの出来事です(実際は4連続ワンターン勝利)

*大富豪で使用されたルール一覧

 ・階段
 ・激縛り
 ・スペードロスト
 ・テポドン
 ・エンペラー
 ・ジョーカー返し
 ・ナンバーダウン
 ・8切り
 ・スペ3(返し)
 ・11バック
 ・10捨て
 ・9リバース
 ・砂嵐
 ・7渡し
 ・カラー縛り
 ・ゾンビ
 ・6切り
 ・アルカナ
 ・他(想像で足してください)
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