インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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3.お菓子少女とマッサージ

「なあ、ティナ」

 

 俺はベッドの上で雑誌を広げ、ポテトチップスを食べる女子――ティナに話し掛ける。

 

「なに?」

「あのさあ、俺ってなんでこの部屋にいるんだっけ」

「さー?」

 

 帰ってくるのは間延びした声。雑誌に夢中なのか、それとも聞く気が全くないのか。返事が雑だった。

 別にそれでも構わない。問題があるとすれば、ティナの服装が非常に無防備であること。薄いキャミソールに、短パンといった服装だ。肩紐が微妙にズレているし、俺を全く警戒していないということがわかる。

 鈴は普通にシャツと短パンだった。

 

 そんな警戒心が微塵もないティナと俺が同じ部屋にいる理由は簡単だ。この部屋は鈴とティナの二人部屋で、俺が鈴に用事があってきたのだが……中国の候補生管理官とやらの呼び出しで席を外している。そういう理由で俺はティナと同じ部屋で過ごしていた。別に明日や明後日に回してもよかったのだが、『待ってなさいよ!』と言うので待ってることに。

 

「……なんていうか、警戒心が足りないよな」

 

 本当にそう思う。思わず口から出てしまうほどに。

 そんな俺の言葉にティナが軽くこっちを見てから再び雑誌に目を戻した。

 

「んー。別に静馬だったら気にしないけど」 

「……気にしろよ。襲うぞ」

「どうぞー?」

「…………はあ」

 

 もうため息しか出ない。本当に俺が襲わないとでも思ってるのか? ちょっと魔が差して手が出るかもしれないだろうが……。

 

 自分で淹れた紅茶を口へ運び、心を落ち着かせる。

 心を落ち着かせる紅茶として有名なのは、やはりダージリンだろうか。飲みながら考えるが、今飲んでいるのはダージリンではない。そもそもあまりダージリンが好きな方でもない。どちらかと言えばアールグレイの方が好みだ。

 で、今飲んでいるのはディンブラ。やっぱりディンブラは美味しいな……。

 

 椅子からゆっくりと立ち上がり、ティナに近寄る。

 そして、そのまま――、

 

 キャミソールと短パンの間から覗く部分。つまりはお尻の上の部分をスーッと撫でた。

 

「んひぁあっ!?」

 

 突然の接触に甲高い声を上げるティナ。

 なんというか、俺にしては珍しく魔が差してしまったのだ。

 意外と触り心地がいいんだな……とか考えながら、背中のへこみ――両肩甲骨の間を撫でる。

 

「ひゃぁ……な、なにすんの」

「……『どうぞ』なんて言うから遠慮なく」

「あ、ちょ……ぁっ」

 

 身体をピクっとさせ、撫でる指先に反応する。

 言うほど変態的な行為をしているわけじゃないのに、ティナは喘ぐように声を出す。

 それでもなお、ティナは逃げる気配を見せない。

 俺は調子に乗って、キャミソールの中にまで手を通して撫でてみる。

 

「やぁ……っ、ちょ……しずまぁ」

「……なんだ?」

「い、いつまで続けるの……」

 

 こっちも見ずに聞いてくるので、笑顔と少し弾んだ声で返す。

 

「……俺が満足するまで?」

 

 ……こりゃあ、たっちゃんのことを言えないかもしれない。

 しかし、女の子ってこんなに触り心地がいいんだな。

 ベッドに軽く腰を掛けながら、より積極的に触っていく。

 

 さわさわ。ふにふに。

 

「ひゃ……っ」

 

 あ、そうだ。ついでにマッサージでもしてやろう。

 お姉ちゃん直伝のマッサージが俺にはあるのだから

 昔、お姉ちゃんが体育の授業で疲れて帰ってきた時に『……マッサージを学ぼう』と言った。それから二年くらいでマッサージをマスター。そして、どこからか連れてきたのか不明なマッサージ師顔負けな技術をお姉ちゃんは身に付けていたのだ。それより劣るものの、俺もある程度のマッサージができる。

 

「……よし」

「よ、よし? ってな、なにがああああ!?」

 

 俺が圧したのは『命門(めいもん)』と呼ばれるツボで、場所は丁度ヘソの裏部分と背骨が交わっているところ。効果は主に腰痛や冷え性などに効き、他には生理不順や精力促進といった効果にも繋がる。数秒圧してから、ゆっくりと離すのがコツらしい。それを俺が急に指圧したもんだから、ティナは驚いたような声を上げたのだろう。

 

(感覚は鈍ってないな……)

 

 次は近くにある『腎兪』と呼ばれるツボを圧す。

 

「……次はなにしてるのよ」

「……マッサージ」

「な、なんで……」

「……気持ちいいだろ?」

「きもち……いいけど」

 

 すごく小さな声で感想を口にする。その顔は真っ赤で、やけに艶っぽい

 立派なマッサージ行為なのに、俺が間違っていることしている気分になるから不思議だ。

 しかし、俺は悪いことをしていない。だって抵抗とかしてこないし。

 

 次は『志室(ししつ)』と呼ばれるツボを圧す。このツボは腎兪の外側にあり、胃腸などに効果のあるツボだ。

 

「ひぐっ!?」

「痛いのは効いてるって証拠だ。ってお姉ちゃんが言ってた」

「痛いっ!?」

「ポテトチップスの食べ過ぎなんじゃないのか」

「別に太ってないけど……」

「……いや、そういうことじゃなくてな」

 

 ちなみにツボは基本的に痛くないように指圧するのが本当の指圧師というもの。

 痛くないように刺激を与えれるということは痛いようにもできるということでもある。

 

「……ティナって割と肩凝ってるよな」

「突然、どうしたの」

「で、どうなの」

「まあ、割と凝ってるかも……?」

「……わかった」

「ちょ、ちょっと」

 

 ティナの背中に馬乗りになってから、軽く背中を膝で押さえ付ける。

 そんな俺の様子にようやくティナが雑誌から顔を上げ、こっちを見る。

 

「……もう完全にセクハラなんだけど」

「……いや、色々と遅いんだが」

「それは静馬が行動に移さないかと思ったから……」

「……男は狼って言うだろ」

 

 ……俺の機体名もシルヴァリオ・ヴォルフでピッタリだな。

 なんか俺が俺じゃないみたいに暴走しているような。これが……。

 

「まあ、別に取って喰ったりはしない」

「説得力ないよ……」

「このツボを圧したらやめる」

「……そう」

 

 俺が最後に指圧しようと決めたツボの名前は『天宗(てんそう)』。位置は肩甲骨の真ん中辺りにある。ツボとしての知名度は低いが、一部の人は罰ゲーム的な意味合いで知っているかもしれない。

 このツボを圧されると非常に痛いのだ。やり過ぎると痛みが指圧後にも残るケースがあるので注意が必要だが、それらも個人の感覚によるものなので、人によっては痛みを感じないこともある。しかし、軽くティナの背中を撫でていたら肩が凝っていることに俺は気付いた。なので『天宗』を圧して痛みを感じないということはないだろう。

 

 素肌を指先で直接触りながらツボを探る。その度にくすぐったそうな声を上げるので、変な気分になる。

 

 ――二人だけの部屋。薄暗い寝室。高校生の男女がベッドの上。

 

 訓練や試合の時とは違う緊張感が全身を駆け抜け、鼓動が早まる。

 呼吸も早まり、息が荒くなっていくのがわかる。

 

(……興奮してるな、これは)

 

「静馬?」

 

 唐突に息を荒らげる俺にティナが不思議に見てくる。

 ああ、なんか俺らしくないなあ……たっちゃんのせいで性欲的な何かが溜まってたのか?

 なんて人のせいにしながら、指圧を始めようとしたのだが――、

 

 ――完全に力加減を誤った。

 

「んひゃああッ!?」

 

 悲鳴が上がった。身体を仰け反らせ、全身で痛みを表現する。しかし、俺の膝が乗ってるのでその場から動くことはない。

 

(あ、あー。や、やっちまった)

 

 そこで、更に不幸が重なる出来事が発生した。

 

 ……ガチャリ。

 

「遅くなったわ。ごめんご……め……ん……」

 

 鈴が帰ってきた。まさに最悪のタイミングで。

 今の状況は相当に悪い。

 

 俺が撫で回してた影響でキャミソールは相当に乱れており、そんなティナの上に膝を立てるように俺が馬乗りになっている状況。更に付け加えるならば、ティナは涙目な感じだった。これは相当に状況が悪い。

 

 ――終わったな。

 

 そう思った瞬間、弁解する余地もない速度で膝が迫っていた。

 

「アンタ何やってるのよ――ッ!?」

 

 見事な膝蹴りだ……流石、代表候補生。

 ベッドの上から吹き飛ばされ、俺は軽く意識を落とす。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 俺は床に座りながら、鈴を見る。

 鈴は結構ご立腹なようで、俺を殺意のこもった瞳で見ている。

 

 問題のティナは雑誌を見るのをやめて、次は空中投影ディスプレイで何かを見ている。

 ……おかしいなあ、鈴はティナのために怒ってるはずなんだが。

 というか、ティナが何も言わないからこその状況なわけで……。

 

「……はあ」

 

 聞こえるか聞こえないかの大きさでため息を吐く。

 

「で、アンタは何してたのよ」

「……マッサージだが」

「どう見ても襲ってたじゃない! 襲う寸前って感じだったじゃないの!」

「……それは鈴の心が穢れてるからじゃないのか。というか、一夏と上手くいかないからって嫉妬してるんじゃあ……」

「な……っ!?」

 

 あ、図星みたいだ。

 

 まるで反省のない態度の俺だが、別にやましい行為をしていたわけじゃないし。

 少しだけやましい気持ちがなかったこともないが、ティナも抵抗してなかったしノーカン。

 

「……な、なんてこと言うのよ!」

「事実だろ」

「ぐぬぬ……」

「はいはい。解決方法は俺がティナの言うことを一つだけ聞くってことで」

 

 非常に面倒だが、それで手を打つことにする。

 そうでもしなきゃ鈴が納得してくれるようには思えないから。

 ……実際、ティナが何を俺に言うのかは予想できない。

 どんなことでも従うしかないのだ。流石に俺もやり過ぎたかなとは思ったし。

 

 ……うん、女の子の素肌を撫で回してた挙句に馬乗りになって痛みを与えた。悪いことしかしてない

 抵抗しなかったティナも悪いとは思うけど。

 

「……それで、何かないのか?」

「お菓子一年分とかじゃダメ?」

「本当にお菓子一年分がいいなら買うけど」

「なしで。じゃあマッサージでいいよ」

「……は?」

「私がマッサージしてほしい時にいつでもマッサージしてくれる。それでいいよー?」

「……マジかよ」

 

 マジかよ。マッサージを要求してくるとは。

 そんなに気に入ったのだろうか。

 

「は、はあ!? ティナもそれでいいわけ!?」

「そもそも襲われてたとかじゃないしね」

「……でも」

「じゃあ鈴も静馬にマッサージされてみれば?」

「「は?」」

 

 ティナの発言に俺と鈴が顔を見合わせること数秒。

 

「いやよ! 何されるかわかったもんじゃないわ!」

「……何もしないが」

「マッサージとは関係なしに散々撫でまされたけどね」

「おい!」

「し~ず~ま~ァ!」

 

 なんてタイミングで言いやがる!

 せっかく落ち着いた鈴が虎のような形相で睨んでくる。

 はあ……。 

 

「……鈴にはマッサージしないから。話を変えるようで悪いけど、お前の部屋に来た理由って愚痴を聞くことだろ? それで勘弁してくれ」

「そうだったわね――」

 

 そうして始まったのは、一夏に対する愚痴だった。

 半分は惚気話のような感じで、もう半分は一夏がいかに鈍感かって話。

 一夏も男なら人の好意には気付くべきだと思うぞ。鈴は分かりにくいかもしれないが、セカンド幼馴染だろ? 察しろよそれぐらい。

 

 鈴の話は小一時間程度続き、俺が部屋に戻った頃には日付変わる手前だった。

 

 




若干キャラ崩壊気味な静馬くん。
……最初はもっとキャラ崩壊してたんだよね。

微妙にエロい感じの内容になったけどただのマッサージです。

次から第三章突入……のはず。
外伝的な話に飽きてる人もいるでしょうしね。




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