インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者 作:白崎くろね
「ではHRは終わりだ。各人は早急に着替えを済ませて第二グラウンドへ向かうように。今日の模擬訓練は二組との合同だ。解散だ」
教壇で力強くこの後の説明をする織斑姉。色々と問題はあるが、今は置いておくことにする。
目下の問題は早急に第二アリーナ更衣室を確保しなければ……でなければ女子と着替えることになってしまう。
「織斑、深見。デュノアの面倒はお前たちで見てやれ」
まあ、そうなるよな。
「君が織斑君と深見君? 初めまして。僕は――」
「詳しい話は後でにしよう。話ぐらいは更衣室でもできるだろう」
簡単に言ってから、俺たちは教室を出る。
「今向かってるのは第二アリーナの更衣室だ。実習での着替えは大体そこで行うんだが、いかんせん女子と共同仕様なんだよ」
「う、うん……」
俺の説明に落ち着かなさそうにしているシャルル・デュノア。
そんな様子に、一夏が言う。
「トイレか?」
「……違うよ!」
「それは何より」
……何が何よりなんだ。更衣室にもトイレくらいあるぞ。
階段を下って一階へ行くと、大勢の女子が何故か待ち受けていた。
(ああ、もう……この展開が容易に予想できたから急いだんだがな……)
ちなみに後ろからも女子の大群が追いかけてきている。
「噂の転校生を発見!」
「しかも織斑くんと深見くんも一緒よ!」
「……追いかける」
「こっちよ、こっち!」
中には一組だけではなく、二組や三組までもが混ざっている。
もっと例外的なのは、二年生や三年生も一緒になっているということ。全く情報が早過ぎる……。
二年生といえば、たっちゃんだが……存在は確認できない。
(率先して混ざりそうな気もするけどなあ……生徒会長として自重しているんだろうか)
女子に捕まれば面倒この上ない。絶対に逃げ切らねばならない。
……はあ、この行動が既に面倒だ。
「黒髪もいいけど、金髪美少年ってのもいいわね!」
「……瞳はエメラルドグリーン」
「見て! 見てよ、織斑くんがデュノアさんと手を繋いでる!」
「お母さん愛してる! 今年は必ず墓参りに行くからね!」
……何気に重い事実を告白するな。周りの女子も少しだけ苦笑い入ってんぞ。
てか毎年行けよ。
そんな状況を飲み込めていないのか、シャルル・デュノアが困惑顔で訊いて来る。
「何で皆騒いでるの?」
「……男子が転入してきたからだろ」
「うんうん。男子が俺たちだけだからな」
「……?」
そこまで言っても疑問符を浮かべていた。
「いや、普通に珍しいだろ。IS操縦者の男って。今のところは俺たちだけなんだろ?」
「……あっ! ああ、うん……そ、そうだね」
「アレだ。この学園の女子って男子との接触が少ないから、ウーパールーパー状態なんだよ」
「ウー……?」
「二○世紀の珍獣。流行ったんだとさ」
「ふうん」
「……なんでウーパールーパーで例えたし」
本当にお前何歳なんだよ。
まあ、そんなことはどうでもいい。今はこの完璧なまでに囲まれた状況を打破すべきだ。
「しかしまあ、助かったよ」
「何が?」
「やっぱ学園に男は少ないからな。増えてくれた方が心強い」
「そうなの?」
だというのに、こいつらは呑気に会話を続けている。
シャルル・デュノアはともかく、一夏まで……面倒な奴らだな。
「……急ぐぞ。一夏はこの状況を切り抜けられる自信は?」
「うーん、大丈夫じゃねえか?」
「シャルル・デュノアは?」
「び、微妙かな……」
「……そうか。じゃあ一夏は後でな」
「は?」
一夏の間の抜けた声が耳に届いたが、片方の耳で聞き流す。
俺はシャルル・デュノアを軽く抱き抱える。
所謂お姫様抱っこというやつだが、男相手にやるのは物凄い抵抗感が……だが、この方が手っ取り早い。
「え、ええっ!? ちょっと!?」
「……少し黙ってろ。舌を噛まないようにな」
身体に力を入れ、軽く跳躍する。
もちろん、これだけでは人垣を超えることはできない。
ならば――壁を蹴ればいい。
窓ガラスを蹴り破らないように壁を上手く蹴り、反対の壁を更に蹴って奥へ。
……前なら完全に無理だと感じられたが、身体能力が上昇した今となっては余裕の一言。
今の身体能力ならギネス記録だって軽々と更新できちゃうんじゃないか? まあ、無理だろうな。
「え? 今何したの?」
「……何って跳んだんだよ。壁を蹴ってな」
「…………」
抱き抱えた時はやけに恥ずかしそうにしていたが、今度は真顔で閉口してた。
……言うほど超人的な動きではない気がする。織斑姉は勿論だが、たっちゃんなどは普通にできるんじゃないか?
そのまま足を休めることもなく、更衣室まで到着。
当然だが、更衣室に着いたらすぐさまに下ろした。
「……時間は割りと余裕があるな」
「あ、あの……ありがとう」
「ああ、別にいいよ。織斑先生に後で文句言われるのが面倒なだけだし」
適当なロッカーの前へ行き、制服のボタンを外す。それを丁寧に折り畳んでから、シャツも脱ぐ。
「わあっ!?」
「……どうした。ゴキブリでもいたのか?」
「い、いや……」
「……まあ、いいけど。早く着替えてしまえよな。織斑先生は時間に煩いからな……って先生として当たり前だが」
「う、うん……き、着替えるけど……でも、その……後ろ。後ろ向いててね」
「あ? 何を女みたいなこと言ってるんだ」
「お、女!?」
無駄にびっくりした声を上げ、その場から飛び退く。
……まさか、その容姿のせいで過去にトラウマでもあるのか?
それは悪いことしたかもな。
「……わかった」
「え?」
「後ろ向いてる」
そう言ってから、俺は反対側を向く。
「…………」
背中に視線を感じる。それもむずむずするレベルで。
「……人の背中をジロジロと見るのはどうかと思うがな」
「み、見てないよっ!? 別に見てないから!」
バサバサっと慌てたような音が聞こえてくる。そんなに取り乱さなくても。
というか見てないは流石にないだろ。凝視してたぞ、絶対。
ジッパーの上げる音が聞こえ、俺はシャルルの方へと向き直る。
「着替えたか。意外と早いな……」
「そ、そうかな……?」
「まあ、一夏よりは早いと思う。それにISスーツは着づらいからな。引っかかるし」
「ひ、引っかかる?」
「ああ」
「…………っ」
気の所為ではないレベルで、シャルル・デュノアがカーッと顔を赤くさせている。……なんなんだ。
「ホモなのか?」
「違うよ!!」
否定された。それも即答で。
……まあ、認められるのは非常に嫌だ。生理的に無理ってやつだ。
俺たちが着替えを終えた頃、更衣室に一夏がやってきた」
「ぜぇ……はぁ……っ。お、お前ら早いって……」
「お疲れ様。流石に両方は運べん」
「くそ……なんであんなに追いかけてくるんだ」
それは標的を失った影響で狼たちがより一層と飢えてしまったからだろう。
「遅れないようにさっさと着替えろよ」
肩で息している一夏にそんな言葉を投げかけ、俺とシャルル・デュノアはグラウンドへと向かった。
グラウンドで仁王立ちとなって待ち構えていたのは――
「一夏さんは?」
セシリアだった。
「ああ、一夏ならまだ着替え中だ」
「ISスーツを着るだけで、どうしてそんなに時間がかかりますの?」
「……さあな」
引っかかるという意味では胸の大きい女子もそれに該当すると思う。
たしか、女子の一部はISスーツを下着代わりに着用している生徒もいるのだとか。確かにこのフィット感は着用していないと錯覚できてしまう程には張り付いている。もはや皮膚のような感覚。慣れれば更に着ている感覚がなくなるのかもしれない。
まあ、一番の要因は女子のISスーツが水着のような形状なのに対して、俺たちのISスーツは全身が覆われている。ダイバーが身に着けている全身水着が近いかもしれない。こういう露出度は女子の方にするべきではないだろうか。
「や、やっと着いた……」
酷く疲れた顔で列に並んできたのは一夏。
「遅いですわね」
「……遅いな」
「なにやってんのよアンタ」
俺、セシリア、鈴が一夏を責め立てる。
「で、アンタは何をやらかしたのよ?」
「こちらの一夏さんは、今日来た転校生に叩かれましたの」
「はあっ!? 一夏、なんでアンタってそうバカなのよ!?」
「――安心しろ。バカは目の前にもいる」
ギギギギッ――。
そんな怪奇音が聞こえてきそうな光景が目の前に。
鬼――織斑姉が鈴とセシリアの頭をボールのように掴んでいた。
その後、出席簿による一撃が決まった。なんというコンボ……。人の頭をポンポンと叩くなよ。
◇
「では本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」
織斑姉が説明すると、みんなが気合入った返事を一斉にした。
そんな中、セシリアと鈴だけが唸っている。
「くぅ……っ。何かと付けて人の頭を……」
「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい」
セシリアはまだ良かったが、鈴に至っては呪詛を吐いてた。
まあ、言いたいことはわかるが。織斑姉の時点で把握できたことだろうに。
「今日は戦闘の実演だ。ちょうど活気を持て余す十代後半女子もいることだしな。凰、オルコット出番だ」
「なぜ、わたくしが!?」
鈴に巻き込まれた形。ああ、ドンマイ……俺が選ばれなくてよかったわ。
「専用機持ちの責務だ。いいから準備しろ」
「ぐう……」
「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい」
鈴が既にボットと化してる件について。
「やる気を出せ。アイツにいいところを見せつけるチャンスだぞ」
織斑姉が極小の声で言うが、聴覚が上がっている俺には余裕で聞こえた。
……恋する乙女にこれほど効き目がありそうな言葉は存在しないかもしれない、というレベルの煽り。
当然、二人は全身から闘気を出していた。
「ふふん。やはりイギリス代表候補生、セシリア・オルコットの出番ですわね!」
ドヤ顔で胸を張り、金髪を揺らすセシリア。
「実力の差ってものを見せるいい機会よね! 専用機持ちとして!」
なんてチョロさ。好きな男のためにやる気を出すのもいいが、一夏相手に通じるわけがないだろ。
……恋する乙女にそんなのは関係ないか。
「お相手はどちらに?」
「お前らの対戦相手は――」
ギュイィィィィン――。
空気を裂き、ジェットを吹かす音が遥か上空から聞こえてきた。
釣られ、上を見上げる。
「ああああっ!? ど、どいてください~!」
そこにいたのは、我がクラス担任の山田真耶教諭。
(おいおい……ここには生身の人間もいるんだぞ?」
下手したら死傷者の出かねない空襲に、俺は半ば無意識にISを展開していた。
地を抉る勢いで迫る山田先生の腕を掴み、落下の勢いを殺してから、ゆっくりと地上へ運ぶ。
……なんて無茶な操縦なんだ。
「あ、ありがとうございます……深見君」
「……いえ。踏み潰されては困るので身体が動いただけです」
「見事だ、深見。どうだ? お前も実演に参加してみないか」
「…………勘弁してください。第一、このメンバーでどう実演を?」
実演メンバーはセシリア、鈴、山田先生――三つ巴ならぬ、四つ巴になってしまう。俺の参加する余地なんてないと思うんだが……。
「ふん。何を言っている? 山田先生との三対一に決まってるだろ」
「あ? それは流石に……」
「そ、そうですわ」
「安心しろ。今のお前らで敵う相手じゃない」
……敵わない。その言葉に反応したのはセシリアが最初だった。
残念ながら、俺はそんな安っぽい挑発程度に流されたりはしない。
「――俺も、参加する」
口から吐いて出た言葉は、拒否する言葉ではなかった。
マジか。マジ……か。………………ああ、もう。
俺は負けず嫌いだ。自分でもよくわかってる。それに、俺の向上した身体能力でどこまでやれるか気になるのもまた事実だったりもする。
「――そうか。では位置に着け」
観客――クラスメイトたちから少し離れ、俺たちは所定の位置に着く。
「絶対に勝つぞ」
「当然ですわ!」
「ふん。アンタらこそ合わせなさいよ」
……不安だな、このパーティー。
「戦闘開始だ」
号令と同時にセシリアと鈴が飛翔。少し遅れて俺が飛翔する。それに合わせるように山田先生が空中に先回りする。先程のような稚拙な動きが全く感じられず、織斑姉の言っていたことが本当なのだと改めて実感させられた。
「先生だからって手加減はしませんわ!」
「……勝たせてもらう」
「あまり舐めないでよね」
「い、行きます」
セシリアが先生攻撃を仕掛けるが、容易に回避されてしまう。
「デュノア。山田先生が使っている機体の説明をしてみろ」
俺たちの戦闘を見ながら、織斑姉がそんなことを言っていた。
……話は聞きたいが、今は戦闘に集中だ。
先制攻撃に対して、山田先生が先生攻撃を仕掛ける。
……いや、冗談だ。
意識を集中させる。――開幕で瞬時加速を行い、山田先生の頭上に位置を取る。マシンガンを展開して頭上からの攻撃を図ったが、それも容易に回避されてしまう。その回避先に龍咆でもって迎え撃つ鈴。完全なコンビネーションプレイに思えたが、山田先生は回避を挟みつつ俺の方へと迫ってくる。
(ちっ……射撃型を潰すよりも先に、近接型の俺を狙うか)
山田先生の搭乗している機体は『ラファール・リヴァイヴ』だ。そのスペックは第三世代にも見劣りせず、高い汎用性を兼ね備えているのが大きい特徴である。格闘、射撃、防御が切り替え可能というわけだ。つまり、俺と近接で張り合うことが可能ということで――射撃を容易に行えなくなるというメリットが存在もしている。
(……流石は先生か)
左手でマシンガンを撃ち、牽制しながら右手で単分子ブレードを展開。もう必要のないマシンガンは解除する。
近距離での射撃をブレードで防ぎ、あまり張り付けないようにブレードを振るう。しかし、それでも山田先生に攻撃が当たることはない。……くそ、化物かよ。
『セシリア、俺を気にせずにBTを撃て。それぐらい躱してみせる』
『了解ですわ!』
俺の指示に対して、四機のBT兵器が放たれる。
「ちょ、ちょっと正気!?」
「静馬さんならこの程度当たりませんわ」
そうまでしてやっと山田先生に攻撃が当たる。流石に状況が悪いと考えたのか、距離を更に詰めてくる。
なんだ? 一体何を――ッ!?
突然、腹部が爆ぜた。
山田先生の展開した手榴弾×2が爆発したのだ。なんて自爆技――ッ!
しかし、熟練の山田先生にとって俺の隙はどうやら大きかったようで、そのままセシリアたちの方へ思いっきり蹴り飛ばされる。
そこへ更にゼロ距離射撃が加わり、俺のSEは完全に消失してしまった。
「そこまでだ。これでIS学園教員の実力は理解できただろう。諸君もあのレベルに達するように切磋琢磨と訓練に励むように」
……クソ。何もできずに負けるとは……先生が相手とはいえ、悔しい。悔しすぎる。
『セシリア、鈴。悪いな』
『別に構いませんわ……あれはレベルが違いますもの。試験時は手を抜いてらしたのかしら』
『まあ、仕方ないわね。一対一なら勝ってたけどね』
それはどうなんだ? 龍咆のチャージ時間的に撃たせない接近戦に持ち込まれると思うが……。
はあ、本当に強いな……山田先生。
「専用機持ちは織斑、深見、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では専用機持ちがリーダーとなるようにグループを組め」
織斑姉が言い切った瞬間、女子が一斉に詰め寄ってきた。
「織斑君、ご指導お願いします!」
「わかんないところを頼むね~」
「デュノア君に手を取って教えてもらいたいなぁ」
「ね、ね。静馬くん。私に教えてー!」
「……ハロー、静馬。よかったらグループに入れてよ」
予想はできたことだが、まさかここまでとは……。
ちなみに最後の金髪女子はティナだった。合同なのでいるよな、そりゃあ。
「おい、馬鹿者共が。さっさとグループを決めろ! 残り一分以内に組めないやつは生身でISを背負ってグラウンド100周してもらうぞ」
……それは流石に無理だろ。無起動状態のISってどんだけ重いと思ってんだ。織斑姉なら行けそうな気がしないでもないが。
そんな織斑姉の発言に、女子たちは統率の取れた軍隊のように散らばっていき、見事にグループが編成されていた。
(統率が取れすぎてて引くわ。ドン引きだわ)
「最初からやれ、馬鹿が」
ため息混じりに頭を掻く織斑姉。
「よろしくね、静馬」
「やったぁ! 織斑くんと同じ班だぁ!」
「……セシリアか。少し苦手だなぁ」
「凰さん、よろしくねっ! 後で織斑くんのこと紹介してね」
「デュノア君! わからないことがあったら聞いてね、何でも教えるよ!」
「………………………………」
唯一無口なのはラウラのグループで、編成された生徒たちの顔も暗い。絶対零度の眼差しに、葬式のような雰囲気。こんなんで訓練がまともにできるのか? できるわけがない。
「ラウラちゃん」
俺にしては珍しく、名前で呼んだ挙句にちゃん付けまでしていた。
そんな俺に不快そうな目で睨んでくる。
「馴れ馴れしくするな。貴様にちゃん付けで呼ばれる筋合いはない」
「……いいだろ? ラウラちゃん。最高にかわいいぞ」
「……ええい、馴れ馴れしくするな!」
俺の手首を取られ、一瞬で地に叩き付けられそうになるが――、
するりと拘束を解いた。
「ッ!?」
そんな俺の行動が予想外だったのか、ラウラが目を見開いていた。正直な話、俺も今の芸当ができたことに驚きを感じていた……。
「……まあ、なんだ。お前のグループメンバーが可哀想だろ? 少しは愛想出せよ」
これまた俺らしくない言葉が口から飛び出てくる。どうしたんだろうか、俺は。
ラウラの頭をポンポンと撫で、ラウラの元から離れる。
「貴様は……」
そんな言葉が後ろから聞こえてきたが、聞こえない振りをした。言いたいことはわかっている。本当に俺は何がしたいんだろうか。なぜか、ラウラを見ていると俺は妙な行動をしたくなってしまうのだ。……なんなんだよ、本当に。
「えーと、いいですかー? これから訓練機を一班一機を取りに来てください。『打鉄』か『リヴァイヴ』のどちらか班で選んで決めてくださいね。あ、早いもの勝ちですよー」
当然、初心者にはリヴァイブの方が向いている。
「リヴァイヴでいいんじゃないか?」
「そうね」
「……私もいいと思う」
「さんせー」
みんなの意見が聞けたので、俺はリヴァイヴを山田先生から借り受けた。
他のグループも俺たちよりは遅かったが、訓練機を借りていた。ラウラたちはどうやらリヴァイヴを借りたようだった。
『リーダーの一は訓練機の装着をサポートしてあげてください。全員にやってもらうので、フィッティングとパーソナライズは切ってあります』
ISのオープンチャネルで山田先生が告げる。
「……じゃあ、私からでいい?」
「あー、いいんじゃないか?」
適当に返事を返したが、この女子の名前を俺は知らない。一組の女子はほとんど覚えてるけど、流石に二組の女子はこれっぽっちも知らないのだった。鈴のルームメイトであるティナは別。
そんなことを考えていると、隣にいたティナが耳打ちしてくる。
「彼女の名前はエミリー・ウォーカーよ」
「……そうか。それにしてよくわかったな」
「たまたま、静馬を見てたからね」
どうして見ていたのかは不明だが、助かったのは事実。感謝の言葉を返すと、別に感謝される程でもないと言うだけだっった。
「さて。さっそく始めようか。エミリー・ウォーカーさん」
「……エミリーで」
「そうか、エミリーさん」
「さん付けもいらない」
「あ、そう……」
馴れ馴れしくないようにさん付けで呼んだが、別になくても問題はなかったらしい。
「……静馬さんの方が年上だから」
「あー、俺の年上設定って二組にも知られてるのか」
「ティナが言ってた」
「なるほど」
って呑気に会話をしている場合じゃない。後ろでシャルル・デュノア班が織斑姉に指導されている……ああ、ご愁傷様。
「まあ、始めるぞ。エミリーはIS搭乗経験があるのか?」
「……そこそこ」
「装着、起動、歩行までやるか」
「了解」
そこそこに経験があるというエミリーの言葉に違わず、そこそこスムーズに装着、起動、歩行と進んだ。
しかし、エミリーは一つミスをしていた。それはISを立った状態で固定して降りてしまったのだ。高いところから降りるのは簡単だが、逆に高いところへ上がるのは難しいからだ。
「あー」
「……ごめん」
「自動で膝立ちにならないISが悪い」
本当にそう思う。人を搭乗させる機体としての欠陥ではないだろうか。まあ、してないからこうなったわけで。
「どうかしましたか?」
俺たちの様子に気付いた山田先生が駆け寄ってきて、俺たちに訊ねてくる。
「コックピットが高い位置に」
「あー、なるほど。それじゃあ仕方ないので深見くんが乗せてあげてください」
「……ああ、なるほど」
「できますか?」
「まあ、面倒ですけど」
次に搭乗する予定だったのはティナだ。俺はティナの近くへ行き、軽く抱き上げる。
「ひぁあっ!?」
ティナが素っ頓狂な声を上げる。急すぎたか? まあ、何にせよやることは変わらない。
「……突然なんてびっくりするじゃない」
抱かれた状態のティナが小声で言っているが、仕方のないことだろう。時間は有限なのだから。それとも俺では不満ということだろうか……。まあ、それは諦めてくれ。
「あの深見君? それじゃあ運べないと思いますが……」
「いえ、これで大丈夫です」
山田先生はISを展開しないで大丈夫なのか? という意味で聞いてきたのだと思う。それなら全く問題ない。なぜならば――
ISを蹴ってコックピットまで跳べばいいだけだ。
「……下ろしてもいいか? 乗れるだろ?」
「あ、うん」
なるべくゆっくりとコックピットにティナを下ろす。軽く調節をしてやってから、ISから飛び降りる。
「すごいですね深見君」
「そうですか?」
「生身で立った状態のISに乗れるなんて……まるで織斑先生みたいでした」
どこか遠くを見ている山田先生の姿に、俺は軽く苦笑いするしかなかった。
「じゃあ、ティナ。起動してみてくれ」
その一言にISが静かな駆動音を鳴らし、起動した。
ティナのIS適正はAと高く、鈴が来る前はクラス代表候補だったらしい。その役目を鈴に奪われた(本人は軽く許諾した)が、その実力に相違はなかったらしい。
ティナのIS操作を見ながら、俺はそんなことを思っていた。
お久しぶりです。
リアルが忙しく、更新が遅れてしまいました。
なのにも関わらず、この小説で最も多い文字数となってしまいました……。
山田先生との戦闘描写を入れたいなあ……と。
今回は山田先生と静馬、セシリア、鈴とのスリーマンセルでの戦闘。基本的に身体能力の上がっている静馬ですが、やはり山田先生には手も足も出ないという描写がしたかったのです。
他にはオリキャラを一人登場させました。
あまり設定のないキャラですが、軽く紹介を。
□エミリー・ウォーカー(Emily Walker)
アメリカからやってきた留学生で、IS学園一年二組。
口数が少ないのは日本語は不慣れという理由。
IS適性B。身長154cm 体重49kg スリーサイズ77-58-76
髪色:紫 瞳:紫 髪型:編み込みの入ったショート
エミリーの父親が整備工場に勤めている工場長で、その娘である彼女が比較的高い適性を持っていたことからIS学園に入学。一夏や静馬と同様に急遽入学することとなったために日本語が不自由。それでも持ち前の適応力の高さから人とのコミュニケーションには困っていない。好きなものはジャンクフード。嫌いなものはキノコ料理。
肝心のIS能力はそんなに高くないが、学習能力が高いので上達速度は早い。
余談ではあるが、エミリーは二組で三番目くらいに容姿が整っている。
……まあ、こんな感じです。静馬や姉の設定よりは凝った設定ではありませんが、それなりに考えました。もしかしたら今後絡むかも……? です。