インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者 作:白崎くろね
「授業に入る前に、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」
三時間目は実践で使用される各種装備の特性について解説されるはずだったが、織斑姉が思い出したように言った。
「代表者はクラス対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への主席する代表だ。まあ、クラス委員長ってやつだな。一年間変更は認めないからそのつもりで」
その言葉に教室は色めき立つ。
もちろん、俺は面倒なことが嫌いだ。当然、代表に立候補するなんてこともないし、積極的に推薦する気もない。
が、クラスの他生徒はそうは思わなかったらしい。
「わたしは織斑くんが相応しいと思います!」
「じ、じゃあ、私は深見くんを推薦します!」
「深見くんがいいと思いまーす」
……おい、じゃあって何だよ。そんな適当に人を推薦するんじゃねーよ。
「候補者は織斑一夏、深見静馬……他にはいないか? ああ、自薦他薦は問わないぞ」
「あの、やりたくないんですが……」
「ちょ、ちょっと俺もそんなのやらな――」
「拒否権はない。覚悟を決めろ」
俺と一夏の発言は簡単に切り捨てられてしまう。
(おいおい、まじかよ……取り消す方法はないのか……?)
そんなことを考えていた時、一人の甲高い声が飛んできた
「納得がいきませんわッ!」
椅子を跳ね飛ばす勢いで立ち上がり言ったのは、金髪碧眼のセシリア・オルコットだった。
反応してくれたのは嬉しいが、嫌な予感も同時に感じていた。い、いや、悪いようにはならないはずだ。見守ろう……。
「このような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんて恥さらしですわ! そのような屈辱を、このセシリア・オルコットに味わえとおっしゃるのですか!?」
口から飛びだしてきたのは、天使の助言などではなく……悪魔の言葉だった。
「そもそも実力から行けばわたくしがもっともクラス代表にふさわしいのですわ。それを適当な理由で、極東の猿男にされては困りますの! わたくしはIS技術を修めにきたのであって、サーカスの必修にきたわけではございませんわ!」
ああ、これはひどい。場が場なら、外交問題に発展していてもおかしくないのではないだろうか? いくらIS学園が他国の干渉を受けないとはいえ、流石に危険な発言ではないだろうか。まあ、反論する気もなければ、関わる気もないわけだが……。それより、俺は放課後にこの人とISの勉強するん? マジで?
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべきで、それはわたくし以外におりませんわ!」
そうね。こいつより強いやつなんていないでしょうね。だって、教官を倒す実力だぜ? しかも、唯一ときたもんだ。いいぞ、このまま行けばセシリア・オルコットがクラス代表になるのは明白だ。
「文化にしても後進的な国で暮らさなくてはならないこと自体、わたくしにとっては――」
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一メシマズで何年の覇者だよ」
お、おい――ッ!? 何してくれてんの? その発言は火に油を注ぐに等しい行為だって理解できてるか!? ああ、こいつ馬鹿だったな。
恐る恐る、隣に顔を向けるとそこには驚愕に目を見開くセシリア・オルコットの姿があった。周りの生徒たちも、俺と同様に『うわあ言っちゃったよ』って
「あ、あなた! 私の祖国を侮辱しますの!?」
ブーメランだからな、それ。
「け、決闘ですわ!」
「いいぜ、四の五の言うよりわかりやすい」
織斑も満更ではないらしく、余裕のある
決闘成立おめでとう。んじゃ、俺は関係ないな。
「あなたもですわ! 深見静馬、あなたにも決闘してもらいますわ!」
「あ?」
思わず低い声が出てしまう。
……は? コイツ、今なんて言った?
俺も、決闘、参加ぁ? ふざけんな! 誰が参加するか!
「勘弁してくれ……代表候補である君と俺では天と地ほどの差があるだろ」
「ええ、ですからハンデを差し上げますわ! それぐらい強者の特権ですわ!」
えぇ……この人どんだけ決闘したいんだよ……。
「俺はハンデいらないぞ? むしろ俺がハンデつけた方がいいのではー?」
と、そこで一夏が素っ頓狂なこと言い出しはじめた。
教室からは笑い声がどっと上がり、軽い嘲笑の声も聞こえてきた。
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
「それは言い過ぎよ」
ちなみに大昔ってほどでもないからな? 篠ノ之博士って人が生まれたのは数十年くらい前の話だから。
「……う。じゃあ、ハンデはいい」
些か落ち込んだようで、織斑は意気消沈したように座りながら言った。
「ふふっ、日本の男子はジョークセンスだけは一流のようですね」
いや、一夏が馬鹿なだけだと思うけど。
「よし、決まったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで執り行う。織斑と深見とオルコットはそれぞれ用意しておくように。では授業に戻る」
「いや、あのですね……俺は決闘なんて……」
「うるさいぞ深見。黙って座れ」
「はい……」
(え……マジで決闘するの? 本気で? 嘘でしょ……嘘だと言ってくれよ!!)
ああ、もう……なんか一気に疲れた!
俺は睡眠を取ることに決めた。ただ、セシリア・オルコットと織斑姉が怖いので、ノートと教科書は開いたまま普通の姿勢で意識をシャットアウトさせた。
ちなみに、これは俺が編み出した特技のうち一つである。
◇
今日の授業を乗り越え、今は放課後になっていた。
濃厚な一日だったが、いざ放課後になってしまえばなんてこともない一日だ。
嘘吐いた。決闘するハメになったのは許せそうにないっていうか、もう退学したいレベルだった。
しかし、現実は甘くはない。退学するっていう選択肢は選べないし、決闘を取り消すのも不可能だった(昼休みに織斑姉へと掛け合ったが時間の徒労に終わった)。
さて、俺も適当に帰りますか……。
「お、深見。今から帰るのか?」
「織斑ァ……」
「な、なんだよ。どうかしたか?」
私怨で殺気を乗せて睨むが、織斑は少し困ったように苦笑いするだけだった。
まあ、殺気なんて飛ばせないしな。
「で、お前も帰るのか」
「おう。そういえば昼休みは何してたんだ?」
「ああ、お前の姉さんと話してた」
「……何の話だよ?」
「あー、決闘を取り消してくれって話だ」
なんで織斑姉と話してたって言ったら少しだけ睨むんだよ、お前の方が怖ぇよ。
「別に適当にやればいいだろ? それに一週間もあるんだしさ」
「おまえ、やっぱり馬鹿だな。相手はお国の代表候補生だぜ? 俺等がいくら頑張っても勝てねーよ」
「そんなの、やってみなきゃわからないだろ」
「あのなあ……おまえだってあの姉に勝てるなんて思えねえだろ? そういうことだ」
「ぐっ……た、たしかに」
授業で知ったことだが、一夏の姉は初代チャンピオンであるらしい。ブリュンヒルデと呼ばれ、一部では絶大な人気を誇ってるとか。道理で教室に織斑姉が現れた時に騒がしかったわけだ。
で、流石の一夏も姉には勝てないと察したようで、言葉を詰まらせる。
「あっ、織斑くん、深見くん。まだ教室にいたんですね。よかったぁ」
「はい?」
俺たちを呼んだのは、副担任の山田先生。いざ同じ目線で立ってみると、結構小さいな。まあ、女子ってこんなサイズだろうけど……でも、この人、いちおう大人の女性。
「えっとですねぇ、寮の部屋が決まりました」
そう言って器用に部屋番号のタグが付いたキーをくれる。
あー、たしかIS学園って全寮制だったか。忘れてたわ。
全寮制の理由は簡単で、IS操縦者たちは常に危険が付きまとっているらしい。それも特に男性操縦者は珍しいので輪をかけて危険なのだとか。そんなことをパンフレットで見たが、すっかり忘れていた。
「あれ、それってまだ決まってなかったんじゃあ……」
「そうだったんですけど、事情が事情なので部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……そのあたりのことを政府から聞いてますか?」
うーん、なんか電話があったような……?
「政府命令もあって、とにかく寮での安全を最優先したみたいです。なので、一ヶ月もしたら個室が用意できますから、しばらくは相部屋で我慢してくださいね」
相部屋って一夏とじゃないのか?
さっきキーを渡された時に、一夏のタグを見たが『1025』だった気がする。
そして、俺の部屋番号は『1030』だ。
「部屋はわかりましたけど、俺荷物ないんで、今日は家に帰ってもいいですか?」
「あ、荷物なら――」
「私が手配してやった。喜べ」
織斑姉の声が聞こえ、俺は反射的に身構えてしまう。
「あ、どうも、ありがとございます……」
「生活必需品だけだがな。着替えと、充電器があれば大丈夫だな?」
大雑把すぎるだろ、そのチョイスは。
「で、深見。お前のはこっちだ。家族の人が用意してくれたんだ、感謝してやれ」
「……お姉ちゃんか。先生、ありがとございます」
自己紹介でも述べたが俺にはお姉ちゃんが一人いるのだ。お姉ちゃんはIS関係者ではないが、今は俺の家で暮らしている。お父さんやお母さんは既に他界しているので、用意できるのがお姉ちゃん以外にはいないので、そこからの推測だった。ちなみに曽祖父ならいるが、残念ながら既に耄碌して老人ホーム暮らしである。
「静馬って姉がいたのか」
「……自己紹介の時に言ったぞ?」
「悪い、緊張で記憶が飛んでたみたいだ」
「まあいいけどさ……」
推定二十キロ前後はあるであろうボストンバッグを肩に掛ける。
何入ってんだ、これ……少し重すぎだ。一夏のように少ないのはどうかと思うが、多すぎるのもどうよ? それを片手で重さを感じさせないで持ってきた織斑姉の方が驚きだけども。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の食堂で受け取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーもあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その、あの……織斑くんと深見くんは今のところ使えません」
「え、なんでですか?」
え、なんでですか? じゃないわ、アホ。IS学園が元々は女子校同然だったんだから、女子と入浴時間が被るからだろう。
「アホか。まさか同年代の女子と風呂に入るつもりか?」
「あー……」
どうやら納得がいった様子の一夏だが、逆に山田先生は顔を赤くしていた。
「おお、お、織斑くんっ、女子と入りたいんですかっ!? だ、ダメですよ!?」
「い、いや入りたくないです」
「ええぇっ!? 女の子に興味がないですか……? まさか、その……」
と言いながら、俺の方をチラッチラッと見てくる山田先生。
うっ、悪寒が走るから想像でもやめてください……。
「違いますって!」
否定を入れる一夏だが、周りの女生徒はヒソヒソと声を立てていた。
「……まさか、お前ホモだったりしないよな?」
「ないから! 静馬までそんなこと言うなよ!」
……まさか、部屋番号が一夏と違うのは一夏がホモであると織斑姉が知っていたから……っ?
おいおい、やめてくれよ。俺はノーマルだからな?
「えっと、先生は会議ですけど、ちゃんと道草食わないで寮に行くんですよ?」
「あ、はい。それは大丈夫です。すぐに部屋に行きますので!」
力強く宣言し、その場から足早に立ち去る。
後ろを一夏が追いかけてくるが、特に気にしない。
……ぜったい、きにしない。
「ちょ、おーい、待てよ!」
「……なんだ?」
「俺たちって相部屋じゃないのか?」
「俺は1030号室だ」
受け取ったキーのタグを見せ、別部屋であることを示す。
「なんだ、静馬と同じ部屋じゃないのか」
…………
「は、はぁ!? お前、まさか本当はホモなのかっ!?」
「ち、違う違う! 俺たち以外は女子だろ? 女子と相部屋ってのは落ち着かないなって思ってな」
「あ、ああ……なるほど……そういう」
ああ、安心した――。
柄にもなく狼狽してしまったではないか。
……はあ。
「じゃ、俺はこっちだから」
「おう、またな静馬」
――さて、ここが俺の部屋か。
「おじゃまします」
部屋にいるかもしれない同居人に気を遣い、入室の挨拶を口にしながら部屋のドアを開けた。
「お帰りなさい。ご飯にします? お風呂にします? それともわ・た・し?」
――俺の部屋には、裸エプロン(偽)をした見知らぬ女生徒(?)がいた。
静馬の相部屋の人とはいったい……?
ってな感じが今回の引きです。まあ、妥当な引きかな……?
誤字とか色々あるかもしれませんが、声を大きくして発言してくれれば訂正します。
……あと、設定のおかしい所の指摘も待ってます。
まだ原作深く読めてませんし。
今度アニメをレンタルしてこようと思います。
*静馬くんのお姉ちゃんは今後登場予定
描写を見てわかるとおり、結構な過保護
*地の文で裸エプロン(偽)なのは水色の水着が見えていたから