インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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11.学年別トーナメント

 今月も最終週に入り、学年別トーナメントも月曜日から始まる。そのため慌ただしさは先月のクラス対抗戦とはわけが違った。全学年が忙しなく動き周り、生徒会役員が雑務や開場の安全確認、来賓や観客の誘導を行っていた。

 

 それから開放された生徒たちは急ぎ足で各アリーナの更衣室へと駆け込む。当然ながら、男子生徒(といっても三人)はいつもの無駄に広い更衣室を使うことになっていた。どうせなら、女子と男子の更衣室を逆にすればいいだろうに。

 

 着替えを手早く済ませ、待機室へと入る。そこには既にISスーツを装着したラウラがモニターを見上げていた。

 

「よお、うまい具合に一夏と噛み合うといいな」

「ああ。私と当たる前に予選落ちしたのではつまらんからな」

 

 一夏とシャルルのコンビは余程のことがなければ、予選落ちなどという結果にはなりえないだろう。それにブロックは同じなわけだし絶対にどこかで当たるはずだ。

 

「お前は完璧か?」

「当たり前だ。戦闘前にきちんと食事と水分補給は済ませた」

「それは立派なことだな。というかお前はISの腕前はどの程度だ? まさか初心者同然とは言わないだろうな」

「……瞬時加速が使える程度には乗れる」

「そうか。まあ、いざとなったら私の後ろに隠れてるといい」

「あ? 生憎と女の後ろに隠れるほど落ちぶれちゃいねーよ」

 

 この会話からもわかる通り、オレたちは一度も訓練を共にはしていない。むしろ実力を隠すという意味で一夏たちとでさえ訓練を行っていなかった。だからといって、負ける気はしないがな。

 

「さて、そろそろ対戦表が決まるな」

「ああ」

 

 モニターの表示が切り替わり、トーナメント表が映し出される。

 そこに映し出されていた対戦相手は――

 

 深見静馬&ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

    ∨  S

 

 織斑一夏&シャルル・デュノア

 

 

  と、映し出されていた。

 

(まさか……一回戦目から本命と当たるとはな……)

 

 いや、それよりも少しだけ気になることがあった。

 "更識簪"……? アイツの妹だろうか? にしては話題に出てきたことがないな……。

 まあ、同じ苗字の別人か。

 

「では行くぞ」

「――ほどほどに、な」

 

 ふん、と吐き捨ててスタスタとアリーナの方へ向かっていく。それを追いかけるようにオレが付いていく。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

「なによりだ。こっちも同じ気持ちだからな」

 

 ラウラと一夏がお互いに火花を散らせ、オレとシャルルはお互いに苦笑した。

 試合開始まで――5、4、3、2、1――戦闘開始(オープン・コンバット)

 

「「叩きのめす」」

 

 ラウラと一夏の言葉が重なる。

 試合開始と同時に一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行い、こちらとの間合いを一気に詰めてくる。

 一夏の瞬時加速(イグニッション・ブースト)の練度は以前よりも遥かに向上しており、予備動作に無駄が見られない。だが、それでも加速時のムラがあった。それはラウラ相手では致命的な隙だ。

 

「おおお――ッ!」

「ふん……」

 

 ラウラが右手を突き出す。あれは……。

 以前にセシリア&鈴との戦闘で見せた動き。あれはシュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵器だったはずだ。AICと呼ばれるもので、正式名称を慣性停止能力(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)。慣性停止能力はパッシブ・イナーシャル・キャンセラー――PICを元にしているのだろう。空間作用系の兵器なのだから、理論上では零落白夜の攻撃で無力化させることは可能なはずだが、その欠点は一夏の腕なり身体なりを止めればいいだけの話だからな。

 

「開幕の先制攻撃か。わかりやすい」

「そりゃどうも」

 

 せっかくラウラが一夏の動きを完全に止めているので、オレは《ヴァナルガンド》を呼出(コール)し、動かない的同然の一夏に向かって《ヴァナルガンド》を向ける。

 

「させないよ!」

 

 それをシャルルが阻止するべく、六一口径アサルトカノン《ガルム》の射撃が降り注ぐ。それを軽く躱しながらシャルルに《ヴァナルガンド》の照準を合わせ、引き金を引く。ダダダダダ――ッと音を鳴らし、向かい来る弾丸を弾丸でもって叩き落とす。その芸当にシャルルは驚きの表情を浮かべる。

 

「映像で確認はしてたけど、本当に出来るなんて……」

「別にこんなのは大道芸の一種だ。戦闘には役に立つもんか。それよりも――オレと付き合ってもらおうか?」

 

 オレはラウラからシャルルを引き離すために、《ヴァナルガンド》を展開したまま《単分子ブレード》を呼出(コール)。一夏と同じく瞬時加速(イグニッション・ブースト)でもって一気に距離を詰める。一切の予備動作のない瞬時加速(イグニッション・ブースト)にシャルルの反応が一瞬遅れたが、間合いを取るために高速切替(ラピット・スイッチ)で呼出したアサルトライフルの弾丸を吐きながら後退していく。そこへすかさず弾丸を撃ち込む。

 

 左腕部、右脚部などに弾丸が掠り、シャルルの機体にダメージを着実に与えていく。その間にオレへの着弾は四発で、シャルルに当てた弾丸は九発だ。この時点で倍近くもアドバンテージを得ていた。

 

「思ってたよりも、強いね……静馬」

 

 射撃戦では埒があかないと思ったのか、一気に間合いを詰めてくる。お得意の高速切替(ラピット・スイッチ)でもって呼出した《ブレッド・スライサー》で斬りかかり、既に持っていたアサルトライフルが火を噴く。

 

 しかし、斬り込みも射撃も甘い。

 

 斬撃を身体を動きだけで躱し、弾丸も軽く捻るように躱していく。それでも当たりそうな弾丸をハイパーセンサーのアシストに從いながら、斬り伏せる。

 

 ――ガギィンッ! ダダダダ――ッ! 

 

 弾丸を斬り落とす度に火花が散り、銃口という名の顎門(あぎと)が火を噴き、スラスターから出る蒼色の残光が浮かび上がり、更に空中をグルグルと加速していく。とっくに目を廻していても不思議ではない立体交差にシャルルは喰らい付いてくる。流石は代表候補生といった腕前。

 

『さて、これぐらい引き離せばいいだろ?」

『流石は同類だな』

 

 個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)を通じてラウラと会話を交わす。

 

 ラウラの目的は当然ながら、一夏との対戦だ。ならばオレはそのための場を作るだけだ。

 

「そろそろ反撃の時間だ」

 

 ほぼ至近距離での瞬時加速(イグニッション・ブースト)。思いっきり空中で回し蹴りを叩き込み、シャルルをフィールドの端まで吹き飛ばす。そんな最大のチャンスを黙って見ているわけもなく、すかさずスラスターを吹かしながら角度を決めて追撃。が、シャルルは追撃を入れるよりも早く体勢を立て直しており、いつの間にか展開されていた五九口径重機関銃《デザート・フォックス》の弾丸が一斉に飛んでくる。流石に重機関銃の弾丸を斬り落とすのは不可能で、被弾しながらも射程外へと退避。

 

「まだだよ!」

「――ッ」

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)をシャルルが使ったのだ。訓練や戦闘データでシャルルが瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使うというデータは存在しない。つまり、戦闘中に覚えたというわけだ。……ほんと、天才は困るな。オレがいくら瞬時加速(イグニッション・ブースト)を連発したからといってそう簡単に使えるようなものではない。

 

 オレの反応が追いつかず、超至近距離での《デザート・フォックス》を浴びてしまう。

 

 ――バリア貫通、機体のダメージレベル高。

 

 今の一瞬で一気にシールドエネルギーが半分以上も削られてしまった。

 

(まずいな……思ったよりもシャルルが強敵だなあ……。本気、出すか?)

 

 本気を出す。つまりは越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)を開放するということだ。

 

 しかし、それにはリスクが色々とある。それはオレのことが学園側にバレてしまう可能性だ。それを考えれば越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)を使うのは控えた方がいいだろう。だが、それをしないで果たしてシャルルに勝てるだろうか?

 

「いいや、オレが勝つんだよ――勝利を手にするしかないだろッ!」

 

 結果、越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)を開放しないことに決定。

 今の持てる力でオレは勝利を手にするのだ。勝てて当たり前。オレとシャルルじゃ年季が違う。負けるのは論外ってことだ。それはラウラが一夏に負けないのと同じで、オレもシャルルに負けるわけがない。

 

 ――個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)

 

 むかし、気まぐれで編み出した技だ。四つもあるスラスターのうち二つで瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行い、終了と同時に残りのスラスターでもう一度行う。それが二段瞬時加速(ダブル・イグニッション・ブースト)。更に瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行うスラスターを減らし、リボルバーのように個別で連続に瞬時加速を行う大技を個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)と呼称した。

 

 この技のメリットは単純に角度を調節し、瞬時加速でもって背後に回ることができる点。逆にデメリットは多いのが特徴で、そもそもが無茶苦茶な加速なために一度失敗すればあらぬ方向へぶっ飛ぶ点だ。かなりむかしにやった時は大きなクレーターを作ってしまったことを思い出す。

 

「この一撃を躱せたら褒めてやるよ」

「――!」

 

 オレの言葉にシャルルが身構える。しかし、身構えたところで意味はない。だってそうだろ? こんな技を誰が予想できるって言うんだよ。

 

 最初は普通に瞬時加速(イグニッション・ブースト)。それを向かい撃つ形で《ガルム》を引き金を引くシャルル。そして、オレは個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)を使う。その瞬間、シャルルが目を見開いたが、気にせずに角度を調節し――一瞬のうちにシャルルの背後へ回り込みながら、サマーソルトキックと同時に《単分子ブレード》を突き刺して起動させる。

 

 ――ギュギィィィィンッ!

 

「う、うああああっ!」

「シャルル! くっ……!」

「ふん、次にああなるのは貴様だ!」

 

 シャルルの悲鳴に一夏がこちらを見た。その隙を見逃すわけがなく、ラウラのプラズマブレードが正確無比に捉える。

 

「ぐああっ……!」

 

 一瞬だけ電撃が弾け、一夏の白式が地面へと堕ちていく。

 

「は……ははっ! 私の勝ちだ!」

「――それはどうかな!」

 

 オレに吹き飛ばされ、完全に機能停止したと思われたシャルルが瞬時加速(イグニッション・ブースト)でもってラウラの背後から攻撃。流石に反応が追いつかず、ラウラももろに攻撃を受けてしまう。オレはオレでシールドエネルギー残量的に個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)で追いつくことが不可能な状態だ。もう少しだけ時間があれば、間に合うのだが……。

 

「き、貴様ぁあああああッ!」

「油断大敵ってね」

 

 盾による体当たり。地味だが実に効果的な攻撃だった。更にシャルルは攻撃を重ねる――六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》通称――

 

「『盾殺し(シールド・ピアース)』……!」

 

 ラウラが焦燥し、必死の形相で抵抗する。が、しかし既に遅すぎたのだ。

 

 片手でシャルルが六二口径連装ショットガン《レイン・オブ・サタディ》を撃ち込みながら、パイルバンカーでそのまま地面へと強引に叩き付ける。これには流石のラウラも大ダメージを受け、シールドエネルギーがほぼ全損しかける。

 

「ぐううううッ!」

 

 しかし、それだけでは終わらずにリボルバー機構を内蔵した《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》の炸薬が連続で火を噴く。

が連続で火を噴く。

 

 ズガンッ、ズガンッ、ズガンッ――!

 

 三発もの弾丸を叩き込まれ、ラウラのシールドエネルギーがほぼ全損の領域へと堕ちていた。これでラウラの脱落は決まったも同然――そう思った時、異変が起きた。

 

「あああああああああッあああぁ!!」

 

 突然、ラウラが叫ぶ。その叫びが周囲の空気を震わせ、衝撃波となって周囲にいたオレたちを吹き飛ばす。一番近くにいたシャルルには激しい電撃が放たれ、一気に吹き飛ばされた。

 

「――は?」

「ぐっ! 一体、何が……ッ!?」

「なっ!?」

 

 ラウラを正体不明の何かが飲み込んでいた。否、それは正確ではない。

 より正確に言うのならば、その正体不明こそがシュヴァルツェア・レーゲンなのだろう。

 

(一体どうなってやがる……)

 

 よくわからないが、アレは()()だということだけが理解できた。

 




久し振りの戦闘ですが、やっぱり戦闘描写が下手ですね。

色々な知識がある主人公ですが、ラウラに関しての情報は"過去"と"現在"のラウラしか知らないのです。まあ、そもそも記憶の方も完全ではないので。


*個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)について
半分はオリジナルで、半分は原作の技。
設定の通り各スラスターを連続で吹かし、吐き出したスラスターのエネルギーを他スラスターで吸収――という滅茶苦茶な大技。今作で使用できる人間は2、3人程度です。
技能難易度は★★★★★


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