インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者 作:白崎くろね
――七月七日 合宿二日目。
今日は丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われることとなる。
一日目は丸一日自由時間で今日は丸一日試験運用のデータ取り……バランスというものを考えてほしいものだ。
「ようやく全員集まったか。――おい、遅刻者」
「は、はいっ」
遅刻者という不名誉な称号を授かったのは、まさかのラウラだった。
元ドイツ軍人……いや、現在もドイツ軍人の彼女が集合時間に五分も遅れてやってくるのは相当珍しい。それもドイツ軍時代の教官である織斑先生が定めた時間であるにも関わらずに、だ。
慣れない海で活動に疲労でも溜まっていたのだろうか?
「ISコアが持つコア・ネットワークについて説明してみろ」
「は、はい。ISコアにはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを保有しています。これは元々の設計である広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられたもので、現在は
いきなりの振りに対しても、特に動揺せずにラウラは教科書に書かれている項目を読み上げるかのようにスラスラと口にしていった。
先程の説明を要約すると……ISの宇宙空間での活動を想定されて創られた篠ノ之束の夢の結晶であり、全容は各国の天才ですら解明できていないということだ。つまり、篠ノ之束は凄い天才であるということの証明だな。時代の先取りという点では現代のニコラ・テスラといったところだろうか?
「流石に優秀だな。遅刻の件は見なかったことにしてやろう」
納得したよう織斑先生の発言に、緊張していたラウラがふうと息を吐く。
「さて、各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に開始しろ。一分一秒の遅れが大事だと知る良い機会だぞ?」
全員が大きな声で返事をし、各々に装備試験へと向かっていく。一学年全員がこの場に集まっているのにも関わらず、誰もが統率された軍人のように散っていく姿は感嘆の息を漏らさずにはいられない。
ちなみにだが、俺たちが現在いる場所はIS試験用に特別加工されたビーチで、四方を人工的に切り取ったような崖の上におり、四方には周辺に被害がでないように簡易的な遮断シールドが展開されている。これはアリーナのものほど頑丈なものではないが、単体攻撃程度では破壊されない代物だ。流石に複数機で攻撃したら壊れるけど。
「ああ、篠ノ之。お前はこっちだ」
「お前には今日から――」
そう言いかけた時だった。
「ちーちゃ~~~~~~~~~~~~ん!」
人間が空から降ってきた。それも奇抜な格好をした女性が。
その人物を俺はよく知っている気がする。そう、さっきも名前が出ていた――
「…………束」
織斑先生は心底うんざりしたような声を吐き出す。
――そう、彼女は篠ノ之束。ISの開発者にして全世界で比類なき天才中の天才。
「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を高め――ぶべらっ!?」
騒ぎ立てる束の顎に織斑先生の見事な掌底が入り、束は宙を再び舞う。そのまま頭から落下するかのように見えたが、宙でくるりと回転し綺麗な着地をしたのだった。
顎に掌底なんていれられたら軽い脳震盪を起こすはずなのに……天才は肉体面でも優れているのだろうか。胸も大きいし。
「うるさいぞ、束」
「ぐぬぬぬ、相変わらずの容赦ないね、ちーちゃん」
さて、と呟いた束はくるりとその場で翻し、今度は妹である箒の方へと顔を向ける。
「やあ!」
「…………どうも」
テンションがハイテンションマックスな束に対して、箒の対応は冷めていた。前々から察してはいたが、家族仲は良好とは言い難いみたいだ。
「えへへー、久し振りだねっ! こうして会うのも何年振りかなっ? おっきくなったねえ、特に箒ちゃんのおっぱいが!」
がんッ!! と、スパナで殴ったかのような殴打音。
「殴りますよ」
「な、殴ってから言ったぁ!? し、しかも日本刀の鞘でぇ! ひどいひどいよ箒ちゃん!!」
流石に日本刀の鞘で殴られれば痛いのか、僅かに涙目になる束。
その様子を俺を含めた一学年の全員がぽかんと眺めている。言うなれば身内ノリを見る赤の他人状態とでも言えばいいだろうか? それ似たようなものだ。まあ、少し違うと思うけど。
「え、えっと、この合宿では関係者以外――」
「ん、むむ? 奇妙奇天烈なことを言う子だね。ISの関係者というなら、一番はこの私をおいて他にいないと思うんだけど? んん?」
「えっ、あっ、は、はい! そ、そうですよね……」
あっさりと負ける山田先生。今の発言は隙だらけの発言だよ! まだ言い返すべき点はあるよ! この合宿はIS関係者参加ではなくIS学園関係者のみ参加可能っていう……点がね。まあ、それで引き返すような人物ではないと思うけどさあ。
「おい。自己紹介くらいはしろ。うちの生徒が困り果ててる」
「えー、めんどくさいよぉ……私が稀代の天才の束さんだよ。はろー。はいおわり」
おおよそ自己紹介とは言い難いものだったが、その発言で周りはようやく目の前の人物がISの開発者であることを飲み始めたのか、がやがやと騒がしくなる。
「……はぁ。もう少しまともにできんのか、お前は。……出来ないんだろうな……はぁ」
あの織斑先生が束の登場によって一瞬でやさぐれてしまった。これでタバコでも吸ってれば完全に失業者のような雰囲気すら出てきそうだ。
「むぅー。ひどいなあ、ちーちゃんは。もっと束さんを敬うべきだよ?」
「うるさい、黙れ」
あと一つ言うとですね、織斑先生。そういう風なやり取りが生徒を困惑させる原因の一つだと思うんですよね、俺は。
「え、えっと……この場合、どうしたら……」
「ああ、こいつの存在は無視して構わない。というか徹底的に無視した方が身のためだ。山田先生は各班のサポートに専念をお願いします」
「わ、わかりました」
「むっ。ちーちゃんが優しい……。束さんは激しくじぇらしぃ。このおっぱい魔神めが! これで誑かしたのかぁぁぁぁ~!」
そう言うなり、忍者のような動作で一瞬のうちに山田先生の背後へと回り込み、山田先生の豊満な胸を両手で鷲掴みしてしまう。
「きゃああっ!? な、なんっ、なんなんですかぁっ――!」
「ええい、よいではないかよいではないかー!」
…………何とも羨ましい。じゃなくて、何なんだこの変態は……これがISの開発者だなんて信じたくない。
「やめろバカ。胸なら自分のを揉んでいろ」
「てへへ、ちーちゃんはえっちだなあ」
「死ね」
本気で殺意の乗った言葉と共に、本気の蹴りが束の顔に炸裂。これまた見事に砂浜までぶっ飛んでいく。間違いなく今のは致命傷だったが……特にこれといったダメージも感じられない動きで立ち上がった。この人は本気で人間なんだろうか? 実は宇宙人の類でISも未知のテクノロジーではないのか? という思いが出てくる。
「そ、それで……頼んでいたものは……?」
躊躇いがちに箒が尋ねる。
「ふっ――ふっふっふ。それは既に準備完了だよ。さあ、大空をいざ刮目せぇぇぇぇい!」
びしっと、天に浮かぶ太陽を指差す。それに釣られるようにして、他の生徒たちも空を見上げる。俺もサングラスの濃度を上げて空を見上げる。
ピカーンッ!
「……っ!」
太陽が何か光ったと思ったら、激しい閃光と衝撃が襲う。そして、地上には何かの金属の塊が砂浜に刺さっていたのだった。
銀色に輝く白銀の箱は、次の瞬間には壁がパカっと開き……その中身が露わになる。
――そこには、
「テッテレー♪ これぞ箒ちゃん専用機こと『赤椿』! 全スペックが現行のISを完全に上回る束さんお手製ISだよ!」
真紅の機体。その機体は束の言葉に反応し、自動で各アームが駆動し始め、外へと出てくる。
全スペックを完全に上回る、その言葉に間違いはない雰囲気が確かにあった。
《――第四世代型IS、
時折り聞こえてくる平坦な少女の声が、俺に赤椿の機体性能を教えてくれる。
《
そうなのか……つまり、俺から話しかければ反応してくれるということか。
《
それは……俺のプライベートとかに問題があるのではないだろうか!?
《……? 道具に見られて困る人間がいるのでしょうか。……どうしても見られたくないと言うのであれば、その時は右薬指に嵌められているISをお外しください》
謎の少女はあくまでも平坦に、平常に、無機質に告げる。そこに彼女の意志はなく、ただあるがままに答えているのであると実感させられる。
そんな風に謎の少女と話している間に、現実では話が進んでいた。
「――はい、フィッティング終了~。超速いね。さすが私。
どうやら、ISのフィッティング作業が終わったところのようだ。さす束。
それにしても、白式といい赤椿といい近接メインの兵装なんだな……腰にも左右一本ずつ日本刀型ブレードが帯刀されてるし……。ちなみに兵装名は何て言うんだ?
《――右側の兵装は
……ありがとう。どうやら『赤椿』はオーバースペックであることがわかった。近距離型を模してはいるものの、最初に謎の少女が教えてくれたように、近距離主体万能型であるらしい。外見で騙されて距離を取ったとしても意味はないことがわかる。もしも、戦う際は気を付けなければ。
《――マスター。心配する必要は全くありません》
…………?
《相手が第四世代だからといって、私は負けません。IS戦では操縦者の技能と機体性能が物を言います。どちらかが劣っていれば、それは宝の持ち腐れというものです。ですから、私たちが負ける可能性はありません》
心なしか、今までで一番感情が乗っていたように感じられた気の所為だろうか。
《……………………気の所為です》
…………謎の沈黙があったがように感じられたが、気にしないことにする。
《懸命な判断です》
あまり深く考えると心を読まれてしまうので、この件はここまでにしよう。
「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの……? 身内ってだけで」
「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」
「私たちにだって用意するべきだよね……」
ふと、そんな声が耳に入ってくる。俺にも聞こえたのだから当然他の人にも聞こえただろう。
それに反応したのは、束だった。
「おやおや、歴史の勉強は学園でやらないのかな? 有史以来、世界が平等であったことなど一度もないよ」
先程までの巫山戯たような声色は一切なく、聞く者を凍えさせるような絶対零度の冷たさが言葉の中に含まれていた。
黙らされた女子は何も言い返すこともなく、顔面を蒼白にさせながら作業へ戻っていった。それをどうでもいいものを見るような目で流し、束もまた作業へと戻った。
「――あとは自動処理に任せておけばパーソナライズは終わるね。そんなことよりも、いっくんとしーくんのISを見せてよー。束さんはそっちの方に興味津々だよ」
「え、あ。はい!」
呼ばれた一夏は突然のことに驚きながらも、返事をした。
ところで、しーくんというのは誰のことだろうか? そんな人物に心当たりはないわけだけど……。
「おーい、しーくんってばー!」
「お、俺のことか!?」
すたすたと俺の方へ一直線に向かってきて、まるで旧友だったとでも言わんばかりの軽さで話し掛けてくる。どうやら俺の名前はしーくんだったらしい。しーくんってなんだよ……。
「えっと、お、俺もですか……」
「うん。初めて見た時から気になってたんだよね~、君の機体。何だったけ、名前」
「……シルヴァリオ・ヴォルフです」
……何だろう。中学生がハマりそうな厨二病ネームを読み上げているような恥ずかしさが。
《マスター、私の名前を妄想の産物と同列視しないでください。怒りますよ》
口調というか声色が既に怒ってるんですケド……。ごめんなさい。
ひょっとしたらと思ってたけど、やっぱりISだったのか。もしかして、これって束に言った方がいいのか?
《――マスターのご自由にどうぞ》
一応、黙っておくか。
「ほほー、ヴォルフちゃんかー! いい名前ですなあー」
「この機体が女の子かどうかなんてわかるんですか……?」
「ん? もちろんだよ、私が創ったこの子たちはみんな私の娘みたいなもんだからね」
そういうもんか。俺も今度からヴォルフちゃんって呼んでみるかな。
《…………………………………………》
……何故か無言の力強い視線を感じた気がする。
「それにしても
「今日は……?」
「初めて会った時は激しかったのに」
「激しかった……?」
何を言っているんだコイツは。意味がわからない。
初めても何も今日が初めてだ。初めて会ったし、昨日は気絶していたから誰にも会っていないハズだ。
……いや、俺は
――
記憶が、感情が、意志が、気力が、その総てが
どういう経緯でソレに至ったのかは不明だが、そういうコトがあったのだ。それを思い出す。
「ご、ごめん。昨日はその、悪気はなかったんだ……」
問答無用で攻撃をしておいて、悪気はなかったなどと信じる方がおかしいだろう。だが、目の前にいる彼女は普通の人間ではない。故に──俺は彼女が笑って許してくれるような気がした。確証はないが、彼女は間違いなく俺のことを簡単に許すだろうと確信できる。
「別にいいよ。これっぽっちも気にしてないし。そんなことよりも早くISを見せてよ!」
俺は一夏に続いて、ISを展開させる。
「――ヴォルフ」
小声で呟いて、右薬指に嵌められている指環型のISに意識を集中させる。
《…………………………………………
何やら微妙なニュアンスの了解を頂いた。
強い光が指環から放たれ、光の粒子が全身を包むように纏わりつき、瞬く間に俺の専用機である『シルヴァリオ・ヴォルフ』が展開される。
「よーし、データ見せてね~。うりゃ」
許可を取るまでもなく白式とヴォルフの装甲にコードを刺す束。
「ん~……んん? どっちも摩訶不思議なフラグメントマップを形成してるね。なんだろ? これも二人が男の子だからかな? それにしてもしーくんの方はもっと不思議」
フラグメントマップ。それは各ISがパーソナライズによって独自発展していく構成データらしい。人間で言うところの可視化された遺伝子データだとか。
仮に俺が見たところで理解すらできないだろうということだけはわかる。
「束さん、そのことなんだけど、どうして俺たち男がISを使えるんですか?」
一夏がもっともな疑問を口にする。
「ん? ……どうしてだろうね。流石の私にもさっぱりんだよ。ナノ単位で分解すればあるいは理解できるかもしれないけど、してみてもいい?」
「いいわけがないでしょ……」
「にゃはは、そうだと思ったよー。ん、まあ、わかんないならわかんないでいいけどね。そもそもISは自己進化する設定で作ったし、それがいい方向に進むなら私的には問題ないよ。あーっはっはっは」
……ということは、だ。ISには女性しか乗れない原因は束にはないということだろうか。
「ちなみに
「そりゃ、私が設定したからだよん」
「そうですか……ってええっ!? 白式って束さんが作ったんですか!?」
「うん、そーだよ。とはいえ欠陥機として諦められてたものをもらって動くように魔改造しただけだけどねー。その影響で第一形態から
「馬鹿たれ。機密情報をぺらぺらと学生に喋るな」
ガンッ! と手加減なしの拳骨が束の頭に振り下ろされる。
「いたた。ちーちゃんの愛情は昔から過激だねぇ」
「やかましい」
……もう一発食らってもなお、束は笑顔でえへへと笑っていた。
機密情報ってどういうことだろう。確かに第一形態から
「あ、あのっ! 篠ノ之束博士のご高名はかねがね承っておりますっ。もしよろしければ私のISを見ていただけないでしょうか!?」
若干興奮した面持ちで束に言うのは、何と意外なことにセシリアだった。流石のセシリアも有名人それもISの生みの親である束を前にして興奮は抑えられないらしい。だが、そんな束の口から飛び出したのは冷酷な言葉だった。
「はあ? 誰だよ君は。金髪は私の知り合いにはいないんだよ。そもそも今は箒ちゃんとちーちゃんといっくんとしーくんとお話中なんだよ。なのにどうして君なんかがしゃしゃり出てくるんだよ。はっきり言って空気読めてないよ君」
何もかもが冷え切った返事。これが束の本質だろうと思わせるほどに。
「え、あの……」
「うるさいなあ。あっちいきなよ」
「う……」
ここまで明確に拒絶されてしまうと、流石のセシリアも引かざるをえない。というかいきなりのことで言われたことを瞬時には受け入れられていない様子だ。なので、俺は軽く涙目になっているセシリアのためにちょっとフォローを入れることに。
「あの……」
「ん? なにかなしーくん」
まるで先程の返事をした人物とは別人であるかのような変わりように面食らってしまう。しかし、言いたいことはさっさと言ってしまおう。
「その、あまり邪険にしてあげないでください。彼女はISのこと一番深く知っている束博士と話をしてみたかっただけだと思いますので。それに、それを言うなら俺も貴方とはあんまり関わりがないと思うんですケド」
「んー……まあ、そうかもね。でも興味のないものは興味ないんだよ。どうしても話したいなら束さんの興味を惹くようなことの一つでもしてみなよ」
……ダメだ。言って聞くような人物でもなければ、さっきの発言を謝るような大人げを持っていないみたいだ。セシリアには悪いが諦めるしかない……。
「そう、ですか」
「うん。まあ、そんなどうでもいいことは置いておいて。二人のIS改造してあげようかー?」
「えっと、ちなみにどんな風な改造ですか?」
「うむり。そうだなあ、執事の格好に変化するとかどう?
《マスター。私はマスターの趣味がそういう類のものであっても、それだけは断固拒否させていただきます》
いや、俺も勘弁してほしい。
「勘弁してください。きっとISも嫌がると思いますし」
「ん? お、おお。そうかもね。じゃあじゃあ、逆にいっくんとしーくんが女体化するってのはどう?」
「だああああっ! ダメに決まってるじゃないですか!」
「俺もイヤですよ……」
少し興味がないわけでもないが、流石に勘弁してほしい。
それならまだISが執事かメイドに変化した方がマシだ。
《――マ・ス・タ・ー?》
……冗談だってば。本当に。
俺の冗談を本気と受け取ったヴォルフが実体のない瞳で睨んできているような気がしたので、変な妄想は頭の中から追い出すことにした。
「……こっちはまだ終わらないのですか」
「んー、あ、もう終わったよ。試運転も兼ねて飛んでみてよ」
「ええ。それでは飛びます」
俺たちの無駄話が終わった頃には、箒の専用機である赤椿も調整が終わったようだった。
プシュッ、プシュッ、と心地良い音を立てて連結されたケーブルが外れていく。それから箒が目を閉じた冗談で静止していると、覚醒したかのように赤椿が一瞬で遥か上空へと飛翔した。
「ぐっ……」
その際に発生した衝撃波が全身を覆い、ISを展開していても軽く飛ばされそうになる。それは生身の人間にとっては暴風と何ら変わらず、何人かの生徒が吹き飛ばされていた。めちゃくちゃだ。少しは加減をしてほしいものだ。
一夏がそれを追うように飛翔したので、俺も衝撃波が発生しないように気を付けて飛行状態へと移行する。
「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
「え、まあ、……そうですね」
どういう
「じゃあ刀使ってみてよー。右のが『雨月』で左のが『空裂』ね。武器特性データを送るよん」
束が説明した情報と事前にヴォルフが説明してくれた情報は一緒だった。束による武器解説を聞きながら箒が実際に武器の性能を証明していく。
言葉で聞くよりも実際に見る武器の性能は全く違って見えた。これならどんな訓練を受けていない民間人であっても楽に敵を殲滅することができるように感じる。本当の意味での戦争特化機体とでも言うべきか。
「……当然、肝心の
零れ落ちた独り言はオレの言葉であって、俺の言葉ではないように感じた。
「た、た、たた大変です! お、おお、織斑先生っ!!」
いきなり山田先生が大きな声を上げる。
……どうやら、先生の顔を見るに尋常ではない事態が起きてしまったようだ。
……この静馬には感情の昂ぶりが一定以上になると「
どうでもいいことですが、束さんは静馬のことを色んな意味で気になっています。まあ、ぶっちゃけると六章くらいのメインヒロインですし。
あとヴォルフちゃんに「ま・す・た・ぁ?」と言わせたかった。何かが違うので修正しましたが。