インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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15.再起(リスタート)

 ――暴走した福音の手によって、一夏が撃墜された。

 

 それは俺が大座敷・風花の間のから飛び出して、数十分も経たずにして起きた。

 あまりにも呆気ない決着の事実を聞いて、「やっぱりな」という思いが大半を占めていた。

 勝てるわけがないのだ。俺たちみたいな学生気分のIS操縦者が軍用ISに勝てるわけがないのだ。

 

 当たり前の理屈。当たり前の事実。当たり前の結果。

 

「…………」

 

 だから、俺は作戦には参加しない。

 それは正しい判断のはずなのに……

 

「………………」

 

 一夏が撃墜されてから時間が経ち、あれから数時間経過している。

 俺は夕陽が顔を出す浜辺で何をするわけでもなく突っ立っていた。

 俺の心が不安定なのは、夕陽のせいだと思いたい。

 ……大体だな、どうして俺はIS操縦者なんかになってしまったんだ。男なのに。

 IS操縦者になんかなってなければ、俺は今頃――

 

(あれ……?)

 

 よく考えてみれば、俺ってどんな学校生活を送っていたんだっけ……?

 去年までは普通の高校一年生だった気がするんだが、イマイチ思い出せない。

 いや、正確には()()()()()()()()()()()()()

 ハッキリ言って異常だ。だが、俺は俺のことを()()()()()()()()()()()()()()()()()ことのように感じてしまう。

 それがたまらなく気持ち悪い。

 

「…………」

「…………」

 

 そして、もう一つの疑問。

 先程から黙って立っている女子――簪のことが思い出せない記憶以上に気になる。

 かれこれ数時間はこうして黙って立っている俺なわけだが、簪も同様に数時間は黙って立っていた。

 何か俺に用事があるのだろうが、こうして黙っているのに何か理由があるに違いない。

 

 さて、どうしたものか……

 

「なあ、一夏はまだ目が覚めないのか?」

「あ……う、うん」

 

 まずは、無難な話題から。

 今まで簪が立っていることに気付いていたのにも関わらず、気付かない振りをしていたのだから気まずい。

 簪に心配を掛けているのは間違いないし、それで黙っていてくれたのだから余計にだ。

 

「でも、そのせいで篠ノ之さんが……」

「あー、何となくわかる。一夏の部屋で落ち込んでるんだよな、きっと」

 

 箒の性格上、一緒に作戦行動していた一夏が撃墜され、自分だけが助かったとなれば自分を責めるだろう。

 いや、もしかしたら一夏は箒を守るためにダメージを受けたのかもしれない。箒は専用機を手に入れたばかりだからな。

 

「それで、簪は俺に何の用なんだ?」

 

 まさかとは思うが、俺も作戦行動に参加しろ……ってことではないよな?

 もしも、そうだったとしても……俺にはムリだ。一夏の代わりはできない。第一、一撃で堕とせるような決戦兵装は有していないのだから。

 

「静馬が、深刻そうな顔をして飛び出していくから……それで……心配で」

「――それは」

「何か悩みでもあるの……?」

「まあ、な」

 

 悩みが無いと言えば嘘になる。

 だが、この悩みを打ち明けたってどうにもならない。余計に不安を煽るだけだ。

 だって、そうだろ? 自分のことが思い出せないだなんて言われても困るだろ。

 だから、俺は話を逸らす。

 

「……それよりも、簪はどうするんだ?」

「私は……」

「織斑先生は待機命令を出しているみたいだけど、それで黙っているような代表候補生たちじゃない。きっと、鈴辺りが箒を立ち直らせて、一夏の仇を取りに行くだろう……」

 

 これは予想でしかないが、かなりの確率で当たると思う。

 そうなれば、専用機持ちを全員集めた上での総力戦になるに違いない。

 俺には戦う気はないが、目の前の簪はどうだろうか。

 戦うのか……? それとも……?

 

「わ、私は……戦うよ」

 

 簪の口から出てきたのは、簪にして珍しいほどに芯のある声だった。

 俺が少しだけ面食らっていると、簪は軽く笑いながら続ける。

 

「姉さんならそうすると思うから……」

「……姉さん?」

「きっと、姉さんなら率先して行動すると思う。だから……私も更識の名に恥じない行動をしたい」

 

 その言葉には、明確な意志が感じられた。

 絶対に逃げないのだと、自分は自分の意志を貫き通すのだと。

 そして、その言葉に俺は――

 

「――ははっ、簪はすごいな」

 

 最初の頃、明確な目標を持ちながらも……叶わない理想を追い求める上で、それを叶わない理想なのだと諦めてしまっていた。だが、今の簪にはそれが感じ取れない。自分の夢を、理想に辿り着こうと頑張っている。

 この短期間で簪はかなり成長していたのだ。

 

 ――こんなの見せられたら、俺が諦めるわけにはいかないよな。

 

「まったく、オレは何をしてんだ。こんなのは考えるまでもないことじゃねえか」

 

 オレの中で何かが切り替わり、霧がかったような頭の中が急激にスッキリしていくのがわかる。

 肝心のことは何も思い出せず仕舞いだが、そんなのは大した問題じゃない。

 

「やってやろうじゃねえか。軍用ISだろうが何だろうがぶっ倒してやる」

 

 よし、そうと決まればさっそく準備だ。

 

「行くか、簪。オレたちも福音戦に参戦するぞ」

「――う、うんっ!」

 

 ポケットが小さく振動し、、端末に一つのメールが届く。

 宛先は鈴からだ。内容を端的に言えば、『箒を説得したから福音と戦いに行くけどアンタはどうすんの』という内容だ。

 もちろん、行くに決まっている。

 オレは『待ってろ』とだけ返して、簪と共に旅館へと戻っていった。

 




今回は再起(リスタート)ということで主人公の静馬が以前の状態へと戻ります。

タイトルにルビ振れたみたいなので振ってみました。
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