インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者 作:白崎くろね
――暴走した福音の手によって、一夏が撃墜された。
それは俺が大座敷・風花の間のから飛び出して、数十分も経たずにして起きた。
あまりにも呆気ない決着の事実を聞いて、「やっぱりな」という思いが大半を占めていた。
勝てるわけがないのだ。俺たちみたいな学生気分のIS操縦者が軍用ISに勝てるわけがないのだ。
当たり前の理屈。当たり前の事実。当たり前の結果。
「…………」
だから、俺は作戦には参加しない。
それは正しい判断のはずなのに……
「………………」
一夏が撃墜されてから時間が経ち、あれから数時間経過している。
俺は夕陽が顔を出す浜辺で何をするわけでもなく突っ立っていた。
俺の心が不安定なのは、夕陽のせいだと思いたい。
……大体だな、どうして俺はIS操縦者なんかになってしまったんだ。男なのに。
IS操縦者になんかなってなければ、俺は今頃――
(あれ……?)
よく考えてみれば、俺ってどんな学校生活を送っていたんだっけ……?
去年までは普通の高校一年生だった気がするんだが、イマイチ思い出せない。
いや、正確には
ハッキリ言って異常だ。だが、俺は俺のことを
それがたまらなく気持ち悪い。
「…………」
「…………」
そして、もう一つの疑問。
先程から黙って立っている女子――簪のことが思い出せない記憶以上に気になる。
かれこれ数時間はこうして黙って立っている俺なわけだが、簪も同様に数時間は黙って立っていた。
何か俺に用事があるのだろうが、こうして黙っているのに何か理由があるに違いない。
さて、どうしたものか……
「なあ、一夏はまだ目が覚めないのか?」
「あ……う、うん」
まずは、無難な話題から。
今まで簪が立っていることに気付いていたのにも関わらず、気付かない振りをしていたのだから気まずい。
簪に心配を掛けているのは間違いないし、それで黙っていてくれたのだから余計にだ。
「でも、そのせいで篠ノ之さんが……」
「あー、何となくわかる。一夏の部屋で落ち込んでるんだよな、きっと」
箒の性格上、一緒に作戦行動していた一夏が撃墜され、自分だけが助かったとなれば自分を責めるだろう。
いや、もしかしたら一夏は箒を守るためにダメージを受けたのかもしれない。箒は専用機を手に入れたばかりだからな。
「それで、簪は俺に何の用なんだ?」
まさかとは思うが、俺も作戦行動に参加しろ……ってことではないよな?
もしも、そうだったとしても……俺にはムリだ。一夏の代わりはできない。第一、一撃で堕とせるような決戦兵装は有していないのだから。
「静馬が、深刻そうな顔をして飛び出していくから……それで……心配で」
「――それは」
「何か悩みでもあるの……?」
「まあ、な」
悩みが無いと言えば嘘になる。
だが、この悩みを打ち明けたってどうにもならない。余計に不安を煽るだけだ。
だって、そうだろ? 自分のことが思い出せないだなんて言われても困るだろ。
だから、俺は話を逸らす。
「……それよりも、簪はどうするんだ?」
「私は……」
「織斑先生は待機命令を出しているみたいだけど、それで黙っているような代表候補生たちじゃない。きっと、鈴辺りが箒を立ち直らせて、一夏の仇を取りに行くだろう……」
これは予想でしかないが、かなりの確率で当たると思う。
そうなれば、専用機持ちを全員集めた上での総力戦になるに違いない。
俺には戦う気はないが、目の前の簪はどうだろうか。
戦うのか……? それとも……?
「わ、私は……戦うよ」
簪の口から出てきたのは、簪にして珍しいほどに芯のある声だった。
俺が少しだけ面食らっていると、簪は軽く笑いながら続ける。
「姉さんならそうすると思うから……」
「……姉さん?」
「きっと、姉さんなら率先して行動すると思う。だから……私も更識の名に恥じない行動をしたい」
その言葉には、明確な意志が感じられた。
絶対に逃げないのだと、自分は自分の意志を貫き通すのだと。
そして、その言葉に俺は――
「――ははっ、簪はすごいな」
最初の頃、明確な目標を持ちながらも……叶わない理想を追い求める上で、それを叶わない理想なのだと諦めてしまっていた。だが、今の簪にはそれが感じ取れない。自分の夢を、理想に辿り着こうと頑張っている。
この短期間で簪はかなり成長していたのだ。
――こんなの見せられたら、俺が諦めるわけにはいかないよな。
「まったく、オレは何をしてんだ。こんなのは考えるまでもないことじゃねえか」
オレの中で何かが切り替わり、霧がかったような頭の中が急激にスッキリしていくのがわかる。
肝心のことは何も思い出せず仕舞いだが、そんなのは大した問題じゃない。
「やってやろうじゃねえか。軍用ISだろうが何だろうがぶっ倒してやる」
よし、そうと決まればさっそく準備だ。
「行くか、簪。オレたちも福音戦に参戦するぞ」
「――う、うんっ!」
ポケットが小さく振動し、、端末に一つのメールが届く。
宛先は鈴からだ。内容を端的に言えば、『箒を説得したから福音と戦いに行くけどアンタはどうすんの』という内容だ。
もちろん、行くに決まっている。
オレは『待ってろ』とだけ返して、簪と共に旅館へと戻っていった。
今回は
タイトルにルビ振れたみたいなので振ってみました。